上 下
43 / 151

42 ルリカラ人気

しおりを挟む
 ちなみにディルトをバブルクラブに使用したところ、とても簡単に倒せてしまった。

 暗闇に覆われたバブルクラブは動きが止まってしまい、後ろから接近するルイーズにも全く気づいていなかった。

 闇属性すごいな。どのぐらい上のレベルの魔物にも通用するのか不明ではあるけど、かなり期待できる魔法だ。

 相談の結果、小銀貨ガチャで得られる魔法のスクロールに関しては極力ストックしていくようにしようということになった。

 魔力は必要ないし、あるだけ撃ち放題。困った時にこれほど頼りになるものはないだろう。

 インベントリの一つがスクロールで埋まってしまうのは勿体ない気もするけど、僕としては戦闘方面で一つ役割が出来たような気がして嬉しく思っている。


 それから単体のバブルクラブを討伐しながら戻ることに。何だかんだで、バブルクラブ十二体を倒したので荷車はいっぱいになっている。

 冒険者ギルドに戻ると、何やらひそひそと話し声が聞こえてくる。

「ちょっと、聞いてみようよ」
「噛まないかな?」
「大丈夫だよ。寝てるみたいだし」

 僕の腕の中でまるまって寝ているルリカラを見ながら、若い女性冒険者三人組が近づいてきた。

「あ、あのー、すみません」

「はい、なんでしょう」

「その従魔さわってもいいですか?」

 従魔というのは、テイムした魔物のことを指す言葉だ。ルリカラの場合は魔物ではなく聖獣なので、正確には従聖獣とでも言うのだろうか。

 おそらく人見知りではあるものの、ルイーズとアルベロにはすぐに心を開いたルリカラ。

 知らない人にさわられるというのは、やはり嫌がることかもしれない。

 でも、今後のことを考えたら少しでも人に馴れた方がルリカラも生きていきやすいのではないだろうか。あと、今は寝てるからちょうどいい気もする。

 悪いねルリカラ。これも君の人馴れの一歩ということで。

「寝てるので起こさないように、頭のあたりをやさしく撫でてください。ルリカラって言います」

「う、うわぁ、や、やった。ありがとうございます」

 僕よりも少し若く見える年齢の三人組。魔法使いの子と僧侶っぽい子に細剣を持った前衛の戦士タイプの子。

「ふわふわであったかーい」
「か、かっわいい!」
「ル、ルリカラちゃん」

 代わる代わる撫でられ、どこかうなされているようにも見えるルリカラ。もう少しだけ頑張るんだ。

「君たちは?」

「鉱山の町ミストマウンテンから来た駆け出し冒険者です。私はリリィ」

「最近になって薬草採取から卒業したばかりなんです。ラウラと申します」

「私たち、幼なじみなんです。あっ、私はエイミーです」

 話を聞くと、どうやら女性冒険者を中心にルリカラのことが話題になっていて、アイドル的なかわいさだと噂になっていたようだ。

 ちなみに鉱山の町であるミストマウンテン周辺では魔物や薬草などの素材も少ないらしく、冒険者の多くはバブルラグーンへと稼ぎを求めてやって来るらしい。

「僕もつい最近まで薬草採取をしてました」

 というか、ルイーズたちと出会ってなかったら、まだロージー先輩と薬草採取をしていただろう。そういえば、ロージー先輩は元気にしているだろうか。相方はちゃんと見つけているだろうか。

「それなのに、こんなかわいい従魔ちゃんがいるんですね。いいなー、テイマースキル」

 テイマースキル。そんなの持ってないけど、ちゃんとテイム登録できている不思議。これもスキルガチャの恩恵なのだろうか。

 どうやらテイマースキルはそこそこ珍しいスキルのようで、そんなに多くはいないそうだ。

 大抵の場合は一人につき一体の契約がほとんどのため、一般的にテイムする従魔は強く獰猛なタイプが人気になる。なるべく自分が御せるギリギリのラインの子供従魔を選ぶことが普通らしい。

「こんなかわいい子、どこで見つけたんですか?」

「えーっと、それは秘密です」

 スキルガチャの景品ですとか言えないし、すぐそこの砂浜ですとも言えない。

「ですよねー。高貴な赤ちゃんって感じがします」

「きっと、大変な思いをして契約したんですね」

 まったく大変な思いはしていないものの、一応は格上討伐ガチャだから、進化個体を倒してるので苦労しているのも事実だ。うん、これは苦労しているでいいかもね。

「そ、そうなのかな」

「ちなみにルリカラちゃんの種族は何なのでしょう?」

「何だと思いますか?」

 これはいずれ聞かれるだろうと思っていたので、ちゃんと回答は用意している。

「ちっちゃいけど翼もありますから、ジャイアントバードの子供ですか?」

 ジャイアントバード、大型の鳥でBランクの魔物らしい。この周辺にはいない魔物なので、その幼生体ともなると色が白くても誰も気にしないかもしれない。

「違います。実はホワイトドラゴンの赤ちゃんなんですよ」

「ふ、ふぇぇぇー」
「ホワイトドラゴン!?」
「こんなにかわいいのにドラゴンさんでしたか……」

 ちらっと冒険者ギルドの受付嬢さんを見ると僕が何というのか聞き耳を立てているようだった。

 冒険者ギルドには冒険者の秘密を守る義務があるものの、こうも話題性が高いとうっかり漏らしてしまうことも可能性としてはなくない。

 それほどドラゴンの従魔というのは珍しいらしい。

 次に従魔を奪われる可能性についてだけど、僕と契約している状態なので、極端な話、僕を殺してしまえば契約は解除される。

 しかしながら悪意をもって近づく者に対してルリカラは敏感らしく、偉大な聖なるブレスを吐くと息巻いていた。

 その言葉を信頼できるのか微妙なところではある。今も力尽きてぐっすりお眠りになっている訳で、今攻撃されたらどうなの? という気持ちがなくはない。

 それでも僕を主として慕ってくれるルリカラの気持ちを尊重したいと思った。

「ダンパーの件があったと思うんですけど、彼の性格があのように善人に変わってしまったのはルリカラの魔法の影響なんです」

「あー、あの危ない人ですね。急に心が洗われてしまった……」
「あれをルリカラちゃんが!?」
「さすが……ホワイトドラゴン」

「悪意を持った者には聖なるブレスの効果が抜群らしくって」

「あ、あれっ、さわっても大丈夫……ですよね?」

「悪意がなければ」

 若干腰が引き気味になってしまった三人組だけど、ギルドでの噂を広めてもらうために利用させてもらった。

 今ここにいる冒険者やギルド職員もダンパーが善人に変わってしまった理由を知ったはずだ。

 このことを広めていくことで少しでも僕を殺してルリカラを奪おうとする人が減ることを祈りたい。いや、本当にやめてよね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。 女神の話によれば、異世界に転生できるという。 ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。 父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。 その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。 食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。 そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...