スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ

文字の大きさ
上 下
35 / 151

34 ソードフィッシュ狩り1

しおりを挟む
 ご飯を満喫したルリカラは満足げな表情のまま眠りについてしまった。睡眠時間は必要と言っていたので起こさないように僕の部屋のベッドに運んであげた。

 言葉では強気な部分もあるものの、まだまだ幼生体で赤ちゃんなのだ。食事と睡眠は大事だと思う。

 その後の話し合いで、ルリカラについてはお留守番させるわけにもいかないので魔物討伐にも参加させつつ、戦闘能力については実戦の中で判断していくことにした。

 ルリカラの言葉を信用していないわけではないけど、少し盛っている可能性は否定できない。

 爪や牙の攻撃はほとんど通用しないと思っていい。気になるのはブレス攻撃ぐらいだ。

 ということで翌朝は港の方へ行きレンタルの船を借りる。この船の船底部は王都の壁のように魔法で強化されているらしく、船底への攻撃をしっかり防御してくれるらしい。

 もちろん、大型の海獣などが相手ではひとたまりもないが、それはかなり沖の方に出なければ大丈夫とのこと。

 海獣もその巨大さから考えて港付近の浅いエリアには来ることができないのだろう。

「風が気持ちいいねー」

 船といっても戦闘をするため、それなりの大きさがある。それを一人で漕いでいる僕は大変だ。いや、自分でやるって言ったんだけどね。

 ルイーズはまだ眠たそうにしているルリカラを抱っこして、アルベロは海面をチェックしながら警戒をしている。

 魔道具か何かを動力として動かしてくれると楽なんだけど、それはそれでとても高価な乗り物になってしまうらしく僕たちのような冒険者にレンタルされることはない。

「ニール、疲れたら代わるから言ってねー」

「だ、大丈夫。あの灯台の近くでいいんだよね?」

「そうそう。あの辺りがソードフィッシュが多いエリアなんだってー」

 港と沖の中間地点にあるのがこの灯台で、夜は大型船の目印になるように魔道具で光が灯されている。

 その光がプランクトンを集めることになり、プランクトンを食べる魚がやってきて、その魚を狙ってソードフィッシュも現れるとのこと。

 朝なので夜ほど集まりはよくないけど、ソードフィッシュにとっては馴れた狩場になっているため、日中でもそれなりに出現するらしい。

 ソードフィッシュランクE
 討伐報酬小銀貨二枚(ツノ)
 追加報酬小銀貨三枚~

 大きさは二メートルから最大で五メートルぐらいまで。ツノと呼ばれる上顎が発達した部分が剣のようになっており、海面から飛び出して襲いかかってくる。とても美味しい白身肉であるため、討伐報酬よりも追加報酬の方に魅力がある魔物だ。

 ランクEながら追加報酬がいい。イメージ的にはカジキマグロのような魔物といった感じだろう。ただ、ランクが示す通り動きが直線的であるためそこまでの脅威度はないらしい。

「早くこれで射ってみたいわ」

「そうだねー。私も楽しみー」

 二人とも新しい武器を使うことをとても楽しみにしている。通常の弓だとソードフィッシュを倒す武器としては弱いのだけど、アルベロが感じる短弓ハジャーダのパワーなら問題ないのではとのこと。

 風の加護が力を与えてくれるらしく、「身を吹き飛ばさないように注意が必要ね」とか怖いことを言っていた。

 ルイーズの持つ疾風のレイピアは身体能力を向上させてくれるので、この狭い船上でも身軽にすばやい動きでソードフィッシュを迎え撃ってくれるだろう。

 ちょっと二人がうらやましい。何で僕の武器は出なかったのだろうか。少しだけ複雑な気持ちを抱えつつ、ようやく予定していた場所の近くに到着できた。

 人気のエリアと聞いていたけど、早めに出発したので場所とりには無事成功したらしい。

 一応、近くに船がある場合は近寄らないのがバブルラグーンルールらしい。

 人の目を気にしなくていい海上なので、気兼ねなく僕もスピード解体を使用できるというもの。ただこの討伐には僕も可能な限り参戦させてもらう。この旅の目的でもあるソードフィッシュ討伐で俊敏性を高めたいのだ。

「錨を下ろすよー」

 ここからは、ソードフィッシュをおびき寄せての討伐と、僕は適度にスピード解体をしていく役割になる。

 二人が戦闘するエリアを確保するのが優先だけど、僕も討伐には参戦する。

 ということで、今回はルイーズが愛用していたショートソードを借りている。本来はスティレットと呼ばれる突刺武器を中古で買おうと思っていたのだけど、ルイーズが新武器を使うことになったので借りることにしたのだ。

「じゃあ、撒くわね」

 アルベロが用意したのはバブルクラブや貝の殻をよくすり潰したもの。これは屋台の店主から譲ってもらったもので、殻だけでなく少し身が付いていたりもするので小魚にとってはいい匂いがすると思う。

 その撒き餌にはルリカラも興味津々で、すっかり目が覚めてしまっていた。

「ピュイ!?」

 ご飯? あれ、ご飯じゃないの? 臭くて美味しそうな匂いがするよ。というルリカラからの感情がすごく早口で伝わってくる。

 ご飯じゃないと伝えると、とても悲しそうにしていたけどもっと美味しい白身魚を捕まえるためと説明したらやる気を出してくれた。

「ルリカラは僕のそばを離れないようにね」

 大盾とショートソードで守りつつ隙をついて攻撃をしたい。そう考えていたのだけど、ルリカラは好戦的な気持ちが強いらしい。

 ルリカラご主人様守る。白身魚いっぱい捕まえる。

 そんな気持ちと共に目がキラーンと光っていた。

 僕はとりあえず二人の討伐を見学しながら戦い方を勉強しよう。最初は解体と防御中心でいこうと思う。

 撒き餌の効果なのか、船の周りには小さな魚がいっぱい集まってきた。

 これなら、すぐに本命のソードフィッシュもやってくるだろう。

「来たわよ!」

 小魚を狙うように、すばやい動きで黒く濃い魚影が急浮上してきた。撒き餌に夢中だった小魚も慌てて右往左往と散っていく。

 ジャンプ一番、豪快に飛び出したソードフィッシュは三メートルはあるなかなかのサイズだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

遅刻勇者は異世界を行く 俺の特典が貯金箱なんだけどどうしろと?

黒月天星
ファンタジー
 命の危機を女神に救われた高校生桜井時久(サクライトキヒサ)こと俺。しかしその代価として、女神の手駒として異世界で行われる神同士の暇潰しゲームに参加することに。  クリア条件は一億円分を稼ぎ出すこと。頼りになるのはゲーム参加者に与えられる特典だけど、俺の特典ときたら手提げ金庫型の貯金箱。物を金に換える便利な能力はあるものの、戦闘には役に立ちそうにない。  女神の考えた必勝の策として、『勇者』召喚に紛れて乗り込もうと画策したが、着いたのは場所はあっていたけど時間が数日遅れてた。 「いきなり牢屋からなんて嫌じゃあぁぁっ!!」  金を稼ぐどころか不審者扱いで牢屋スタート? もう遅いかもしれないけれど、まずはここから出なければっ!  時間も金も物もない。それでも愛と勇気とご都合主義で切り抜けろ! 異世界金稼ぎファンタジー。ここに開幕……すると良いなぁ。  こちらは小説家になろう、カクヨム、ハーメルン、ツギクル、ノベルピアでも投稿しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

処理中です...