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20 ハリト
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アルベロの右手から撃ち出された小さな炎の塊は勢いよく壁にぶつかると弾けて爆発した。
「こ、これで、初級魔法なの……」
壁は強化されているからなのか、壊れることはなかった。しかしながら、炎の塊が爆発する様子は僕の思っていたファイアボールとは次元の違うパワーと衝撃があった。
スピードもかなり出ていた。多分、時速にして百キロぐらいはあった気がする。
何よりも驚いたのは壁に衝突した後に起こった爆発だ。
壁は強化されているからなのか何事もなかったものの、あれがホーンラビットに当たっていたのなら即死しても驚かない。もちろん、毛皮の追加報酬についてはあきらめざるを得ないだろうけど。
おそらくはジャイアントトードやゴブリンが相手でもそれなりにダメージは入るのではないだろうか。
「どう? やれそう?」
「うーん、魔力はどのぐらいこめるのかな」
「人によって違うんだけど、私の場合は『発火』の十倍ぐらいね」
発火にかけた魔力はほとんどない。何ならゼロに近いといってもいい。聞いといて何だけど、それの十倍と言われてもイメージしづらい。
「とりあえず、やってみるね」
アルベロのハリトを見る限りは、それなりに魔力の溜めがあって、撃ち出す際の魔力移動はかなり早かったように思える。
まずは、やるだけやってみて覚えていくしかないか。
温かい魔力をイメージして移動していく。目標に向けて右手を突き出す。そして、魔力の出力を高めて一気に撃ち出す。
「ハリト!」
僕の撃ち出した魔力は全体の五分の一程度。それが正解の数値だったのかはわからないけど、アルベロが撃ち出したハリトよりも若干小さめの炎の塊が壁に当たり爆発した。
「おおおぉ、撃てた……」
「また、一回で成功してるー!」
「ニールは魔法のセンスがあるのかもね」
「今のは成功でいいのかな?」
「ええ、成功よ」
「でも、アルベロのハリトと比べると一回り小さかったかなって」
「魔法の出力はランクや魔力量によっても変わってくるから人それぞれよ」
どうやら話を聞く限りだと、三分の一ぐらいの魔力をこめたらアルベロと同じぐらいの大きさのハリトが撃てるかもしれないとのこと。
ただ、その際に出力が遅くなるとスピードが遅くなってしまうらしい。
つまり、適度なスピードを維持しつつ撃ち出せる魔力量を見図る必要があるとのこと。
例えば僕の全魔力をこめてハリトを撃つとしよう。そうすると、出力スピードはかなり遅くなり、大きめのハリトがゆっくり放物線を描くように飛んでいく。
パワーは上がるのだろうけど、そんなゆっくりの魔法では魔物に当てることは難しいだろう。しかも、一回しか撃てないのだから微妙すぎる。
「だから、今ぐらいのサイズでいいんじゃない」
「そうだね。ホーンラビットならぎりぎり仕留められるぐらいのハリトが五回か」
「成長したら数も増やせると思うよー」
「えっ、成長とかあるの?」
「あっ、そっかー。そのあたりの説明してなかったねー」
僕のランクはランクアップしてE止まりだと思っていたのだけど、そこは異世界事情で成長する可能性があるのだという。
魔物を倒すと周辺に魔素と呼ばれるものが討伐者を中心に経験値のように入ってくるそうで、それが積み重なることでステータスがアップするのだとか。
「つまり、戦えば戦うだけ強くなれるんだね」
冒険者、どこかの戦闘民族みたいだな。
「魔物を大量に倒したとしてもすぐに強くなれる訳ではないの」
「そうそう、段階を踏んで少しずつ魔素を取り入れないと体に悪い影響が出るんだよねー」
「魔素も少しずつなら体にいい影響をもたらしてくれるけど、大量だとそれは毒になるのよ」
ありえない話だとは思うけど、誰かが倒したばかりのドラゴンがいて、僕がたまたまその場に居たりしたら大変なことになってしまうということか。この世界にドラゴンがいるかわからないけどね。
「ジャイアントトードは大丈夫?」
「ジャイアントトードはランクDだから平気だよ。今のニールだったらランクBとかAの魔物が出たら逃げた方がいいよ。というか、出会ったらやられちゃうと思うけど」
「だよね」
ランク的にEの僕にとって、三つもランクが上の魔物を相手に戦える力があるとは思えない。ランクCであるアルベロの洗練された動きを近くで見ているだけにランクによる強さの違いというのは十分理解しているつもりだ。
「安心して、王都周辺にそんな強い魔物は滅多に現れないからね」
「滅多にというのがこわいね」
「まあ、魔物もどんな行動するとかわからないからねー」
ルイーズがそう言うと、アルベロがフォローするようにつけ足してくれる。
「そういう異変がある時は、大抵の場合、ギルドで調査依頼が入ったりするものだから」
強い魔物がやってくることで、そこを縄張りとしていた魔物との争いや弱い魔物の移動などが起こるため、魔物もいつもとは違う動きになるため異変を感じとりやすいのだとか。
少なくともランクEの僕にそんな危険なクエストが回ってくることはありえないので大丈夫らしい。
「こ、これで、初級魔法なの……」
壁は強化されているからなのか、壊れることはなかった。しかしながら、炎の塊が爆発する様子は僕の思っていたファイアボールとは次元の違うパワーと衝撃があった。
スピードもかなり出ていた。多分、時速にして百キロぐらいはあった気がする。
何よりも驚いたのは壁に衝突した後に起こった爆発だ。
壁は強化されているからなのか何事もなかったものの、あれがホーンラビットに当たっていたのなら即死しても驚かない。もちろん、毛皮の追加報酬についてはあきらめざるを得ないだろうけど。
おそらくはジャイアントトードやゴブリンが相手でもそれなりにダメージは入るのではないだろうか。
「どう? やれそう?」
「うーん、魔力はどのぐらいこめるのかな」
「人によって違うんだけど、私の場合は『発火』の十倍ぐらいね」
発火にかけた魔力はほとんどない。何ならゼロに近いといってもいい。聞いといて何だけど、それの十倍と言われてもイメージしづらい。
「とりあえず、やってみるね」
アルベロのハリトを見る限りは、それなりに魔力の溜めがあって、撃ち出す際の魔力移動はかなり早かったように思える。
まずは、やるだけやってみて覚えていくしかないか。
温かい魔力をイメージして移動していく。目標に向けて右手を突き出す。そして、魔力の出力を高めて一気に撃ち出す。
「ハリト!」
僕の撃ち出した魔力は全体の五分の一程度。それが正解の数値だったのかはわからないけど、アルベロが撃ち出したハリトよりも若干小さめの炎の塊が壁に当たり爆発した。
「おおおぉ、撃てた……」
「また、一回で成功してるー!」
「ニールは魔法のセンスがあるのかもね」
「今のは成功でいいのかな?」
「ええ、成功よ」
「でも、アルベロのハリトと比べると一回り小さかったかなって」
「魔法の出力はランクや魔力量によっても変わってくるから人それぞれよ」
どうやら話を聞く限りだと、三分の一ぐらいの魔力をこめたらアルベロと同じぐらいの大きさのハリトが撃てるかもしれないとのこと。
ただ、その際に出力が遅くなるとスピードが遅くなってしまうらしい。
つまり、適度なスピードを維持しつつ撃ち出せる魔力量を見図る必要があるとのこと。
例えば僕の全魔力をこめてハリトを撃つとしよう。そうすると、出力スピードはかなり遅くなり、大きめのハリトがゆっくり放物線を描くように飛んでいく。
パワーは上がるのだろうけど、そんなゆっくりの魔法では魔物に当てることは難しいだろう。しかも、一回しか撃てないのだから微妙すぎる。
「だから、今ぐらいのサイズでいいんじゃない」
「そうだね。ホーンラビットならぎりぎり仕留められるぐらいのハリトが五回か」
「成長したら数も増やせると思うよー」
「えっ、成長とかあるの?」
「あっ、そっかー。そのあたりの説明してなかったねー」
僕のランクはランクアップしてE止まりだと思っていたのだけど、そこは異世界事情で成長する可能性があるのだという。
魔物を倒すと周辺に魔素と呼ばれるものが討伐者を中心に経験値のように入ってくるそうで、それが積み重なることでステータスがアップするのだとか。
「つまり、戦えば戦うだけ強くなれるんだね」
冒険者、どこかの戦闘民族みたいだな。
「魔物を大量に倒したとしてもすぐに強くなれる訳ではないの」
「そうそう、段階を踏んで少しずつ魔素を取り入れないと体に悪い影響が出るんだよねー」
「魔素も少しずつなら体にいい影響をもたらしてくれるけど、大量だとそれは毒になるのよ」
ありえない話だとは思うけど、誰かが倒したばかりのドラゴンがいて、僕がたまたまその場に居たりしたら大変なことになってしまうということか。この世界にドラゴンがいるかわからないけどね。
「ジャイアントトードは大丈夫?」
「ジャイアントトードはランクDだから平気だよ。今のニールだったらランクBとかAの魔物が出たら逃げた方がいいよ。というか、出会ったらやられちゃうと思うけど」
「だよね」
ランク的にEの僕にとって、三つもランクが上の魔物を相手に戦える力があるとは思えない。ランクCであるアルベロの洗練された動きを近くで見ているだけにランクによる強さの違いというのは十分理解しているつもりだ。
「安心して、王都周辺にそんな強い魔物は滅多に現れないからね」
「滅多にというのがこわいね」
「まあ、魔物もどんな行動するとかわからないからねー」
ルイーズがそう言うと、アルベロがフォローするようにつけ足してくれる。
「そういう異変がある時は、大抵の場合、ギルドで調査依頼が入ったりするものだから」
強い魔物がやってくることで、そこを縄張りとしていた魔物との争いや弱い魔物の移動などが起こるため、魔物もいつもとは違う動きになるため異変を感じとりやすいのだとか。
少なくともランクEの僕にそんな危険なクエストが回ってくることはありえないので大丈夫らしい。
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