上 下
6 / 151

5 はじめてのクエスト

しおりを挟む
 とりあえず何かクエストをということで、清浄が扱えない僕は排水路の掃除ではなく薬草採取を行うことにした。

「気をつけてくださいね。あっ、これは周辺の簡易マップになります。こちらは無料ですよ」

「あ、ありがとうございます」

 実はカルデローネさんから薬草採取セットなるものを購入することを勧められ、小銀貨七枚が消えていった。

 お金、思っているよりすぐに無くなりそうでもう不安でいっぱい。

 ただ、薬草採取セットを買ったのにはちゃんとした理由がある。セットの内訳は、採取用ナイフ、一般的な薬草標本イラスト、薬草採取図、薬草保管バッグの計四点。これだけ揃って七千円ならお買い得だろう。

 当たり前だけど薬草を見たこともない僕にはなくてはならないセット。

 ナイフはもちろん持ってないし、どれが薬草なのかわからないので標本イラストも必須。そして、採取の仕方がわからないので、種類ごとに図でわかりやすく説明してくれているのはありがたい。

 それから、薬草を入れるバッグ。これは背中に背負うタイプのもので内側で薬草の種類が分けられるようになっている。

 見た目には初心者丸出しかもしれないけど、これでいい。例えバカにされたとしても、初心者だからこそ助けてもらえる場面だってあるだろう。

 異世界で頼れるものが何もない状況なだけに、こういったことは大事な気がしたのだ。

 ということで、さっそく冒険者ギルドを出発した。ギルドから程なくしてすぐに大きな門がある。ここには門番の方がいて、外に出る時と入る時にタグの掲示が義務づけられている。

「はい、どちらへ行くんだい? えーっと、ニール君ね」

「ラウラの森へ薬草採取です」

「なるほど、ホーンラビットには気をつけてな」

「はい、ありがとうございます」

 カルデローネさんにも言われたけど、薬草の取れる辺りにはホーンラビットもいるので気をつけてくださいとのこと。

 採取に夢中になってるところ、後ろから角で刺されたなんてのはよく聞く話らしい。そういうことなので。念のためポーションを買いましょうとリカバリーポーション三本セットを銅貨三枚で勧められた。

 確かに必要なんだろうけど、そういえば僕も一つ持っていたなーと思い出したのでご遠慮させてもらった。節約大事。

 初級ポーションの効き目とかどんなものかわからないけど無いよりはマシだろう。

 まあ、酷い怪我をしたならまたスキルでも使ってみようか。一日経ったし、またポーション出せるかもしれないよね。

 さて、ここからは周辺に注意しながら進んでいく。街道から少し外れて森の方へと進んでいくと、もうすれ違う冒険者が何組かいる。

 早めに街に戻る理由は大きな獲物を狩ったからだったり、足を引きずるような姿を見るに怪我のためだったりと様々な様子。

 ここから先は危険な魔物がいる森。さすがに街の近くの森で危ない魔物はそこまで多くないとのことだけど、もしもの場合はあるので気をつけたい。

 そうして、マップにあった一番近い薬草採取エリアにたどり着いた。

 周囲を見渡すと、薬草組の冒険者が地面に座り込んで採取している。

 ここはヒーリング草の群生地としてチェックされている場所だ。どうやら二人組になって背中合わせで採取するのが流行っているらしい。

 これはあれか。ギルドですすめられているホーンラビット対策だね。カルデローネさんに聞いたけど、僕には仲間なんていないからね……。

「あ、あの。よかったら一緒に組みませんか?」

 目の前に現れたのは十歳ぐらいの少女。どうやら二人組になれなくて困っていたようだ。

「僕でよければご一緒させてください」

「やったー! せっかくラウラの森まで来たのに薬草採取できないかと思ったよー」

「よろしくお願いします。ニールです」

「私はロージー。ニールさんの採取道具、新品ですね」

「今日がはじめての冒険者デビューなんだ。よろしくね、ロージー先輩」

「せ、先輩……!? そ、そうね。いろいろ教えてあげなくもないわ」

「よろしくお願いします」

「ヒーリング草は根元でカットするの」

 ロージー先輩の指導のもと、背中合わせになってヒーリング草の採取をしていく。まあ、これだけ人がいればホーンラビットも警戒して出てこないだろう。

 ヒーリング草は三束でひとまとめにしておく。根は残しておいてちゃんと土の中へ埋め戻しておく。そうすることでまた新しいヒーリング草が生えてくるそうだ。

「ロージー先輩が持っている紐は何ですか?」

「これはロータスのツタだよ。薬草を縛るのに使うの。森に入るところで集めるんです。今日のところは先輩である私が特別に差し上げますね」

「ありがとうございます、ロージー先輩」

 それからしばらくヒーリング草を集めたところで日も暮れてきたので終了することにした。

 ロージー先輩の帰りが遅くなったら家の人も心配するだろう。お家に帰るまでがクエストなのだ。本音を言うと湖近くの群生地にも行ってみたかったのだけど、またの機会にしようと思う。

 というわけで、初クエストは特に危険なこともなく無事に終了した。

 採取した薬草
 ヒーリング草、三十束 銅貨三十枚
 デトキシ草、二束 銅貨十枚
 マギカ草、一束 小銀貨一枚

 ゆっくりスタートだったとはいえ五千円ぐらいの稼ぎか。

 子供のお小遣い稼ぎならまだしも、薬草採取で生計を立てるとかちょっと現実的ではなさそうに思える。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「異世界に転生してくれぇえええええええええ!」  事故で命を落としたアラサー社畜の俺は、真っ白な空間で謎の老人に土下座されていた。何でも老人は異世界の賢者で、自分の後継者になれそうな人間を死後千年も待ち続けていたらしい。  賢者の使命を代理で果たせばその後の人生は自由にしていいと言われ、人生に未練があった俺は、賢者の望み通り転生することに。  読めば賢者の力をそのまま使える魔導書を五冊もらい、俺は異世界へと降り立った。そしてすぐに気付く。この魔導書、一冊だけでも読めば人外クラスの強さを得られてしまう代物だったのだ。  賢者の友人だというもふもふフェニックスを案内役に、五冊のチート魔導書を携えて俺は異世界生活を始める。 ーーーーーー ーーー ※基本的に毎日正午ごろに一話更新の予定ですが、気まぐれで更新量が増えることがあります。その際はタイトルでお知らせします……忘れてなければ。 ※2023.9.30追記:HOTランキングに掲載されました! 読んでくださった皆様、ありがとうございます! ※2023.10.8追記:皆様のおかげでHOTランキング一位になりました! ご愛読感謝!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

もう遅いざまぁ極めたパーティ追放、外れスキルガチャ開拓スローライフ/不遇職極めた俺だけスキル獲得チートな件

RichardRoe(リチャード ロウ)
ファンタジー
迷宮攻略トップランクのパーティに所属していた付与術士ミロクは、自分の居場所がなくなったことを悟り、とうとう訪れたパーティ追放処分を甘んじて受け入れる。 「もう遅い、ざまぁねえよ。俺は才能がなくなっちまったんだ」 無理矢理に酷使してきた付与魔術の代償は――自らの才能値(スキルポイント)。 殆ど全ての才能が枯渇したミロクは、しかしある日、付与魔術の隠された使い道に気が付く。 それは、自分の成長しすぎた魂(レベル)を他人に付与できるという外法。 「もしかして俺、低レベルから何度でもやり直せる?」 ・・・ 低レベルから何度でもやりなおして、たくさんのスキルポイントを稼ぐミロク。 外れスキルばかり手に入るガチャの祭壇に祈りを捧げて、たくさんのスキルを集めているうちに、いつの間にか【英雄十傑】へと返り咲くことになる。 悪徳令嬢と蔑まれて貴族社会から追放されてしまった不死者の娘クロエと一緒に、ミロクはやがて、歴史に残る一つの冒険を成し遂げるのだった。 かつて仲間たちに託した夢の、その続きにある冒険の物語。 ※タイトルを変更しました。  旧タイトル:【もう遅いざまぁ極めたパーティ追放、外れスキルガチャ開拓スローライフ】 〜役立たず付与術士ミロクと婚約破棄令嬢クロエの裏ダンジョン冒険記〜

処理中です...