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第十六話 炎の加護1【アルトリオ】
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「ぼ、僕にはどんな加護があるのでしょう?」
ジュードさんはヒューゴさんと何故かツェリを見てからこう口を開いた。
「アルトリオはどう思う? 加護を授かっている者は属性についての扱いというのが日常生活の中でも色濃く出てくることがある。例えば僕の場合は、小さな頃に畑を耕していたら僕の畑だけ成長が良く、大きな作物が採れることがあったんだ」
僕の場合はどうなんだろう。狩人の才能としてはツェリの方がありそうだし、鍛冶師としてはドノバンさんに遠く及ばない。だけど、そうだね。ある時から炎の扱いがとても上手になった気がするんだ。ドノバンさんに声を掛けられたのも炎がきっかけだった。
「炎でしょうか……」
「アルトリオがそう思うのならそうなのかもしれない。加護は自分でその属性を知ることからはじまる。人に言われて思うよりも、自分で信じて扱う方が習熟度は早くなるはずだよ」
自分に加護があるなんてまだ信じられないけどとてもうれしい。村でも力になれるだろうし、ツェリを守るための力を手に入れることができるかもしれない。
「それじゃあ、僕から加護について詳しく話をしておこうかな」
ヒューゴさんがそう言って、加護についての説明をしてくれた。
加護というものは生まれながらにして持つ人と成長過程で授かるケースの二パターンがあるのだそうだ。生まれながらの加護というのは血縁に左右されやすく、親の加護の影響を受けやすいのだという。これは一般的に貴族階級に多く、加護を得るために家族に迎えいれたり、加護持ち同士の結婚が多く進められてきた歴史があるのだそうだ。
僕にそのような血縁があるとは考えづらいので、成長過程で授かった加護ということになる。後天性の加護の方がその者の特徴を捉えており強い加護になる場合もあるが、一方で習熟度が低く知らないままで人生を終えてしまったり、訓練しても大きく育たないケースもあるのだとか。
「そういうことだから、炎の加護を持っていると思われるアルトリオには、加護を使った戦い方というのを念頭に教えていこうと思う」
「炎の加護の場合、どのような戦い方をするのでしょうか」
「そうだね、炎を撃ちだして攻撃したり、武器に炎を纏わせて攻撃力をアップさせるような人もいる」
「アルトリオ、何事もイメージは大事なんだ。まずはいろいろ試してみるところから始めてみよう」
「は、はい。ジュードさん、ヒューゴさんよろしくお願いします」
そうして、始まった訓練はひたすら二人の攻撃を受けるという心が折れそうになる稽古と、ショートスピアに炎の力をのせる訓練だった。
しかしながら、武器に炎の力をのせるといわれてもいまいちよくわからない。目の前には炎はないし、無いものを武器にのせるというのがよくわからないのだ。ということで、こちらは一旦保留に。
次はひたすら攻撃を受ける稽古だ。僕の加護は攻撃を受けた時に少しだけ発動しているので、自分の加護を知りイメージするにはこれが一番の近道とのこと。
「ぐはぁあ!」
もう何度目の攻撃なのかもわからない。飛び掛っては吹き飛ばされを繰り返し、ボロボロになりながらコツというものが掴めずに一日が終わってしまった。
「うーん、加護が使えたり使えなかったりだね」
「集中力が切れてしまってる感じかな。最初のコツを掴むまでは大変なんですよね。はい、ポーションを飲んでください」
「あ、ありがとうございます」
確かに少しだけ加護の力を感じることができた。でも、これが戦闘の役に立つのかというとさっぱりイメージができないぐらいの些細なレベル。加護を使いこなすというのはまだまだ先が長そうに思える。
「お前さま、お疲れさまでした。稽古とはいえ騎士様方の攻撃受けてもそのシールドやショートスピアは傷一つついておりませんね。さすがはお前さまとドノバンさんの合作でございます」
そういえば、何度も攻撃を受けていたこのシールドに傷が全くついていない。転がされて汚れは目立つものの、へこんだり、欠けたりは一切ない。
「ただの鉄製品でこれはおかしい。そうなるとシールドに加護が付与されていたということなのだろうか」
「お前さまに炎の加護があるのなら、炎で打ったその武具にも加護の力が濃く出ていてもおかしくありません。武具にある加護を信じて戦ってみたらよいでしょう」
何とも抽象的な言葉だけどツェリに言われると何だか腑に落ちる。実際に何度も吹き飛ばされながらも僕を守ってくれたのはこの片手シールドであることは間違いはない。
「そうだね、明日からはもう少しこのシールドを信じて稽古してもらうことにしよう」
「では、身体が疲れていると思いますのでお鍋を召し上がってくださいまし。生姜をたっぷり入れて煮込んでおりますので温まりますよ」
旅先でも変わらず美味しいツェリの料理がいただけるのは本当にありがたい。これだけで明日も頑張ろうと思えるから不思議でならない。ツェリの料理には何か元気になる加護でも付与されているのかもしれないな。
ジュードさんはヒューゴさんと何故かツェリを見てからこう口を開いた。
「アルトリオはどう思う? 加護を授かっている者は属性についての扱いというのが日常生活の中でも色濃く出てくることがある。例えば僕の場合は、小さな頃に畑を耕していたら僕の畑だけ成長が良く、大きな作物が採れることがあったんだ」
僕の場合はどうなんだろう。狩人の才能としてはツェリの方がありそうだし、鍛冶師としてはドノバンさんに遠く及ばない。だけど、そうだね。ある時から炎の扱いがとても上手になった気がするんだ。ドノバンさんに声を掛けられたのも炎がきっかけだった。
「炎でしょうか……」
「アルトリオがそう思うのならそうなのかもしれない。加護は自分でその属性を知ることからはじまる。人に言われて思うよりも、自分で信じて扱う方が習熟度は早くなるはずだよ」
自分に加護があるなんてまだ信じられないけどとてもうれしい。村でも力になれるだろうし、ツェリを守るための力を手に入れることができるかもしれない。
「それじゃあ、僕から加護について詳しく話をしておこうかな」
ヒューゴさんがそう言って、加護についての説明をしてくれた。
加護というものは生まれながらにして持つ人と成長過程で授かるケースの二パターンがあるのだそうだ。生まれながらの加護というのは血縁に左右されやすく、親の加護の影響を受けやすいのだという。これは一般的に貴族階級に多く、加護を得るために家族に迎えいれたり、加護持ち同士の結婚が多く進められてきた歴史があるのだそうだ。
僕にそのような血縁があるとは考えづらいので、成長過程で授かった加護ということになる。後天性の加護の方がその者の特徴を捉えており強い加護になる場合もあるが、一方で習熟度が低く知らないままで人生を終えてしまったり、訓練しても大きく育たないケースもあるのだとか。
「そういうことだから、炎の加護を持っていると思われるアルトリオには、加護を使った戦い方というのを念頭に教えていこうと思う」
「炎の加護の場合、どのような戦い方をするのでしょうか」
「そうだね、炎を撃ちだして攻撃したり、武器に炎を纏わせて攻撃力をアップさせるような人もいる」
「アルトリオ、何事もイメージは大事なんだ。まずはいろいろ試してみるところから始めてみよう」
「は、はい。ジュードさん、ヒューゴさんよろしくお願いします」
そうして、始まった訓練はひたすら二人の攻撃を受けるという心が折れそうになる稽古と、ショートスピアに炎の力をのせる訓練だった。
しかしながら、武器に炎の力をのせるといわれてもいまいちよくわからない。目の前には炎はないし、無いものを武器にのせるというのがよくわからないのだ。ということで、こちらは一旦保留に。
次はひたすら攻撃を受ける稽古だ。僕の加護は攻撃を受けた時に少しだけ発動しているので、自分の加護を知りイメージするにはこれが一番の近道とのこと。
「ぐはぁあ!」
もう何度目の攻撃なのかもわからない。飛び掛っては吹き飛ばされを繰り返し、ボロボロになりながらコツというものが掴めずに一日が終わってしまった。
「うーん、加護が使えたり使えなかったりだね」
「集中力が切れてしまってる感じかな。最初のコツを掴むまでは大変なんですよね。はい、ポーションを飲んでください」
「あ、ありがとうございます」
確かに少しだけ加護の力を感じることができた。でも、これが戦闘の役に立つのかというとさっぱりイメージができないぐらいの些細なレベル。加護を使いこなすというのはまだまだ先が長そうに思える。
「お前さま、お疲れさまでした。稽古とはいえ騎士様方の攻撃受けてもそのシールドやショートスピアは傷一つついておりませんね。さすがはお前さまとドノバンさんの合作でございます」
そういえば、何度も攻撃を受けていたこのシールドに傷が全くついていない。転がされて汚れは目立つものの、へこんだり、欠けたりは一切ない。
「ただの鉄製品でこれはおかしい。そうなるとシールドに加護が付与されていたということなのだろうか」
「お前さまに炎の加護があるのなら、炎で打ったその武具にも加護の力が濃く出ていてもおかしくありません。武具にある加護を信じて戦ってみたらよいでしょう」
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「そうだね、明日からはもう少しこのシールドを信じて稽古してもらうことにしよう」
「では、身体が疲れていると思いますのでお鍋を召し上がってくださいまし。生姜をたっぷり入れて煮込んでおりますので温まりますよ」
旅先でも変わらず美味しいツェリの料理がいただけるのは本当にありがたい。これだけで明日も頑張ろうと思えるから不思議でならない。ツェリの料理には何か元気になる加護でも付与されているのかもしれないな。
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