あの時助けて頂いた不死鳥です~人に変身出来るようになったので恩返しに参りました~

つちねこ

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第十三話 オースレーベンへ【アルトリオ】

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 翌日は朝早くからの出発となった。久し振りにお酒を飲みすぎたせいなのかまだ少し眠い。

 昨夜は旅に出る僕ら二人のためにと、村中総出で大騒ぎな酒会となった。

 村長がヒュージワイルドボアの内臓と肉、それから酒を提供してくれたのもあってか、とても騒がしい会となった。

 こういうのは今まで苦手にしていたのだけど、いざ中に入ってみると楽しいもので、この機会をくれたツェリには感謝したい。

 領主様の使いの方も一緒に楽しんでもらえたようで、同じく眠い目を擦りながらも、どこか昨日よりもその距離が縮まったように思える。

 二人はオースレーベンの騎士とのことで、どちらも三十代前半。ジュード・ランドールさんにヒューゴ・オードネイさんと名乗った。


「村長、それでは行ってまいります」

「うむ、気をつけるのだぞ。ツェリをしっかり守りなさい」

「はい」

 街の騎士が二人もいて僕がツェリを守るようなことがあるのかと思わなくもないけど、僕にとってもツェリはやはり大事な人なので言われなくても守るつもりだ。

 馬車に少しばかりの荷物と最後にショートスピアと片手用シールドを積み込むと出発となる。すると、積み込む武器を見てツェリが考え込むような顔をしている。

「何か気になることでもあったのかツェリ?」

「い、いえ、何でもございません。ところでお前さま、オースレーベンまではどのぐらいなのでしょうか?」

「そうだなぁ、十日はかからないと思うんだけど、ジュードさんどのくらいなのでしょう」

 御者役は騎士の二人が交互にやっていただけるので、今はヒューゴさんが馬を操り、同じ馬車にジュードさんが腰掛けている。

「順調に行けば七日ぐらいでしょうか。道中は騎士団が魔物狩りをしているのでスムーズな旅になると思いますよ」

 そういえば、念のために騎士団が周辺に盗賊がいないか捜索していると話していたっけ。村から街に続く道周辺は安全に保たれているようだ。

「それは安心いたしました。よかったねツェリ」

「ええ、とても安心しました。山を降りるのは初めてなのでとても楽しみです」

 そうか、ツェリは記憶がないから村でのことしか覚えていないのだったね。知っている景色を見ることで何か思い出すきっかけになればいいんだけど。

 ちなみに、道中の食事については僕とツェリで行うことになっている。これはジュードさんとヒューゴさんがやると言っていたのだけど、何から何まで面倒になるのはちょっとなと思い任せてもらうことになった。

 それでも、御者から夜の見張りまで二人でするというのは大丈夫なのかと心配になる。

「それで、二人はどんな料理を作るのが得意なのかな?」

 旅の楽しみは景色と食事。ジュードさんは僕たちの作る料理がどんなものなのか気になるようだ。

「得意という程のものではございませんが、二人でよく食べるのは鍋料理が多いでしょうか」

「そうだね。ツェリの作る鍋料理は味に深みがあってとても美味しいんですよ」

「おお、鍋ですか。では今夜は鍋料理に決定するとして、お昼はどうしますか?」

「夜に鍋料理をするなら、お昼は少し軽めにいたしましょうか」

「ツェリ、それなら川魚の燻製を使ってみないか?」

「おお、川魚の燻製ですか」

「ツェリの燻製は村でも人気なんです」

「それは楽しみですね」

「それでは、軽く炙ってから身をほぐして、ペンネと簡単な野菜スープに合わせてみましょう。お前さまは火を起こして周辺から野草を集めてくださいまし」

「うん、わかった」

「そ、それで軽めの食事なのですね」

「はい、食はとても大事なものです。栄養バランスの整った食生活は身を助けます」

 ツェリの食事は多くの食材を組み合わせて作り上げるのが特徴で、肉や根菜をスパイスや香草で味を整えていく。

 肉とパンが中心だった食生活も、ツェリと暮らすことになってから野菜を多くとるようになった。

 野菜も食べてみると美味しいもので、肉を引き立たせたり、汁を吸い込んだりと使い方ひとつでメインにもなりうる食材だ。

 ツェリが鍋料理を得意とするのは、食材の組み合わせを熟知しているからなのだろう。尚且つ、火加減の調整は完璧なのだ。美味しくならないわけがない。

「さて、川魚の燻製に合う野草となると爽やかなオオガラ草がいいのだろうな」

 オオガラ草は秋に採れる野草で、魚料理の時にツェリが多用する。

 それから、今夜鍋料理になるので使えそうな野草も集めておこうか。

 目当てのオオガラ草はすぐに採取できたので、サルトリ草やハコベラ草等の香りのいい野草も集めておくことにしよう。

 夜ご飯が楽しみになってきたな。きっと騎士様方もツェリの料理には満足してくれるはずだ。
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