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Ⅲ 過去の魔女
v 夢の終り
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モントレー教授の研究室をあとにしたアズレイアは、レイモンドの姿を求めてまっすぐ図書館へと足を向けた。
胸に渦巻くのは怒りよりも混乱と焦り。
残り一か月で新しい論文提出。
この現実はもうどうすることもできない。
普通ならあきらめるか、泣き出すところだろう。
だがアズレイアの頭の中には、今回論文にまとめ切れなかった内容がまだ充分残っている。
あとは書くだけ。
そうは思うも、レイモンドのことを考えるといても立ってもいられない。
何かの間違いであってほしい……。
そう思う一方で、現実的な自分が他にありえないと結論を出す。
ならばなぜ私の論文を使ったのだろうか?
彼は自分よりよっぽど優秀で、素晴らしい論文を書ける実力も頭脳も備わっている。
彼がアズレイアの論文を奪う理由が、どうしても思い浮かばない。
なぜという思いと、やっぱりと諦める気持ちとが交互に襲ってくる。
すでに次の論文の目処がついている今、やろうと思えばこのまま有耶無耶にすることだってできるだろう。
追求などしなければ、今まで通りレイモンドを好きでいられるかもしれない。
……などと思うような、アズレイアではない。
結局、アズレイアはどこまでも事実にしか興味がない女なのだ。
まずはレイモンドと話さねば。
全てはそれからよ。
恐れと不安、怒りと激情。
全てを胸の底に押し込んで、とにかく足を速める。
その時のアズレイアは、ただもうはっきりとレイモンドの口からことの真相を聞きたいだけだった。
☆ ☆ ☆
王立魔術学院の研究棟から王立図書館へ向かうには、一度学院中央の講堂を通らねばならない。
高い天井の講堂には、明るい笑い声や歓談する学生の声がいくつもこだまする。
今のアズレイアには、楽し気に談笑し笑いあう生徒の姿まで憎らしく見えた。
そんな暗い気持ちを振り払い、一気に講堂を通り抜けようとして──
「ひゃ!」
──突然何かにつまずいたアズレイアが、パタリとその場に倒れこんだ。
と、転んだアズレイアのすぐ近くからクスクス笑いが聞こえてくる。
誰かに転ばされた?
そう思って周りを見回して驚いた。
先程までの喧騒が嘘のように、講堂中が静まりかえっている。
端ばしでは、数人づつ学生が集まってこちらをじっと見ていた。
「あーらごめんなさいね、どうにもこの学院にそぐわない雌犬が人間みたいな顔して歩いているんですもの、つい……」
講堂内の気まずい沈黙を破るように、甲高い女性の声がアズレイアのすぐ後ろから響きだす。
それを聞いたアズレイアが、深いため息をこぼす。
振り返れば案の定、胸まで伸びる細い銀髪を手ではね上げるリズの姿があった。
本人曰く、王族に連なる高位貴族だというリズは、非常に気位の高い女性だ。
気位が高いがゆえにただ一人農民出のアズレイアを哀れみ、友人だと言い張った。
そして気位が高いがゆえに、彼女ではなく、アズレイアの元にモントレー家からの婚約申し込みが届いたことが許せなかった。
そう、アズレイアが自分の研究室に近寄ろうとしなかったその理由。
それは、師たるモントレー伯爵が、なぜかアズレイアを彼の長子に嫁がせようと言い出したからだった。
無論アズレイアは断った。
だが師は全く聞き入れてくれない。
しつこく送られてくるモントレー教授の呼び出しのせいで、リズを含む研究室の皆にはあっという間に知られてしまった。
以来、リズは手のひらを返したようにアズレイアを毛嫌いしている。
とはいえ、いくらリズでもこれはやりすぎでしょ。
言い返そうとするも、続けてリズの後ろから彼女の取り巻きたちが顔を出す。
「いいえリズ様、違いますわ。犬は無理やり殿方を押し倒したり、自分のベッドに引き入れたりしませんもの」
「そうですわ。そんなことを言ったら犬のほうがかわいそう」
言いたい放題の二人にリズがニヤニヤしながら頷いている。
たとえどんなにアズレイアを嫌っていても、気位の高い彼女が人目の多い場所でここまでするのは驚きだ。
だがそれだけではない。
驚いたことに、他の生徒たちも冷たい視線でこちらの様子をうかがっている。
いつもとは、何かが違う。
場の雰囲気に警戒するアズレイア。
その目前で、リズが小馬鹿にしたように、手にした書状をヒラヒラとはためかせた。
「フン、どうせあなた、まだ今日の通達書を見てないのでしょう」
そのリズの言葉で、やっとアズレイアも、彼女だけが知らない事実があることを理解する。
ここは貴族の子女が集まる学院だ。
学生寮でさえ、ほとんどの者が執事メイド付きで暮らしている。
だから学院からの通達も、届けられるのを待つことなく、朝のうちに召使いが取りに行くらしい。
無論アズレイアにメイドなどいない。
今日の通達はまだ、アズレイアにだけ届いていないのだ。
「見なさいよ、この身のほど知らず」
そんなアズレイアを苛立たし気に見下して、リズがわざとらしく書状をアズレイアの目前に投げ落とす。
それは一見、学院の通達書の形式をとっているが、その内容はとんでもないものだった。
『婚約中の婚前交渉の通報を受け、モントレー伯爵家は現嫡子の婚約を破棄する』
これはまさか、アズレイアのことだろうか。
アズレイアはモントレー家からの申し出を、まだ一度も正式に受けてはいない。
一瞬そう思ってすぐに考え直す。
あれだけ噂になっていれば、もう受けたも同じとみなされるのかもしれない。
これでは私のせいでモントレー教授にまで迷惑をかけてしまう。
先程教授室で会ったモントレー教授は、微塵もこのことには触れなかった。
それを思うと、心の底から申し訳なく恥ずかしい。
青ざめるアズレイアにリズが静かに告げる。
「あなた、婚約者が相手なら何をしてもいいとでも思ったの?」
リズは一体何をいっているの?
私はモントレー家の人となんて付き合ってない──。
疑問を顔に浮かべたアズレイアに、リズがイライラと先を続ける。
「わからない? いくら婚約者同士とはいえ、あなたたちはやりすぎたの。あなたとレイモンド様の爛れた関係を知ったモントレー家がとうとう決断を下したのよ。おかわいそうに、レイモンド様まで巻き込むなんて……」
なぜ私とモントレー家の問題にレイモンドが出てくるのかがわからない。
どうにも釈然とせず、リズを見上げて反論する。
「私、モントレー家の申し込みは何度もお断りしたわ。第一、レイモンド……様はモントレー家の件とは全く関係ないでしょ」
二人の噛み合わない会話にリズが首を傾げた。
そして理解不能という顔でアズレイアを見下ろして言う。
「何を言ってるの? レイモンド様こそ、モントレー伯爵家のご嫡子じゃない」
「……は?」
レイモンドがモントレー家の嫡子?
レイモンドがアズレイアの婚約者──。
告げられた言葉で、アズレイアの中の歯車がカチリと噛み合った。
だからレイモンドはアズレイアに声をかけたのか。
お父様から言われて、私とモントレー家との婚約を進める為に。
だがまだ疑問は残る。
ではなぜ、彼は一度もそのことをアズレイアに言わなかったのか?
彼は父が婚約の話を持ってきたと言っていた。
そのうえ論文まで……。
一気に頭の中を沢山の疑問と推察が走り去る。
そんなアズレイアの鈍い反応を見て、ふとすべてを理解したリズの顔が残虐に歪んだ。
「あなた、まさかレイモンド様がご自分の婚約者であることも知らずに褥に誘ったっていうの?」
しまった。今はこんなことを考えている場合ではなかった。
「そ、それは──」
「まあ、なんてはしたない!」
「本当に、なんて恩知らずなんでしょう!」
気づいたアズレイアが慌てて言い訳をしようとした時には、すでに手遅れだった。
まるで鬼の首を取ったような様相で、リズの取り巻きたちが叫びだす。
「大方、教授にも色香でも使って婚約者の立場をねだったのでしょう」
「やはり農民の出は下品ですこと」
「おーいやだ。こんなアバズレが学院にいるだなんて」
すぐに憶測と野次、罵倒が入り乱れる。
平穏で退屈な学院において、今のアズレイアはめったにない特上の生贄でしかない。
いつの間にか立たされたアズレイアの頬に、誰かの手がぶつかる。
それを機に、いくつもの平手が飛んできた。
「おかわいそうなレイモンド様! こんなアバズレのせいで」
「あなたが出ていけばいいのよ!」
「とっとと学院から出ていきなさいよ!」
ここまでくるともう収拾がつかない。
講堂はアズレイアに非難を浴びせる者で溢れかえり、ヒートアップする罵倒と怒声に、アズレイアは周囲を振り切るようにしてその場から逃げ去った──。
☆ ☆ ☆
それからの一ヵ月。アズレイアは寮の自室に閉じこもった。
その間、レイモンドは一度も部屋を訪れなかった。
友人がいないことには慣れていた。
身分差もしっかり分かっていたはずだった。
それでも、初めて心を許した相手がレイモンドだった……。
こうしてアズレイアの初恋は終わり、彼女の名誉と胸には深く取り返しようのない傷が刻まれた。
傷心のどん底の中、アズレイアは逃げるように研究にのめりこむ。
ひと月後、アズレイアは新たな論文を携えてモントレー教授の教授室を訪れた。
その論文のタイトルは『肉体関係による魔力移譲と魔力差の相関関係』。
アズレイアがレイモンドとの逢瀬の合間に記録し続けた、自分の魔力値の変動記録を元に書ききった論文である……。
アズレイアの論文は高く評価されたものの、その内容があまりにも物議をかもすものだったため、詳細はモントレー教授と数人の教授の間でのみ閲覧され評価された。
にも関わらず、学年の終わりに発表された成績順位は主席レイモンド、次点アズレイアという破格なものであった。
胸に渦巻くのは怒りよりも混乱と焦り。
残り一か月で新しい論文提出。
この現実はもうどうすることもできない。
普通ならあきらめるか、泣き出すところだろう。
だがアズレイアの頭の中には、今回論文にまとめ切れなかった内容がまだ充分残っている。
あとは書くだけ。
そうは思うも、レイモンドのことを考えるといても立ってもいられない。
何かの間違いであってほしい……。
そう思う一方で、現実的な自分が他にありえないと結論を出す。
ならばなぜ私の論文を使ったのだろうか?
彼は自分よりよっぽど優秀で、素晴らしい論文を書ける実力も頭脳も備わっている。
彼がアズレイアの論文を奪う理由が、どうしても思い浮かばない。
なぜという思いと、やっぱりと諦める気持ちとが交互に襲ってくる。
すでに次の論文の目処がついている今、やろうと思えばこのまま有耶無耶にすることだってできるだろう。
追求などしなければ、今まで通りレイモンドを好きでいられるかもしれない。
……などと思うような、アズレイアではない。
結局、アズレイアはどこまでも事実にしか興味がない女なのだ。
まずはレイモンドと話さねば。
全てはそれからよ。
恐れと不安、怒りと激情。
全てを胸の底に押し込んで、とにかく足を速める。
その時のアズレイアは、ただもうはっきりとレイモンドの口からことの真相を聞きたいだけだった。
☆ ☆ ☆
王立魔術学院の研究棟から王立図書館へ向かうには、一度学院中央の講堂を通らねばならない。
高い天井の講堂には、明るい笑い声や歓談する学生の声がいくつもこだまする。
今のアズレイアには、楽し気に談笑し笑いあう生徒の姿まで憎らしく見えた。
そんな暗い気持ちを振り払い、一気に講堂を通り抜けようとして──
「ひゃ!」
──突然何かにつまずいたアズレイアが、パタリとその場に倒れこんだ。
と、転んだアズレイアのすぐ近くからクスクス笑いが聞こえてくる。
誰かに転ばされた?
そう思って周りを見回して驚いた。
先程までの喧騒が嘘のように、講堂中が静まりかえっている。
端ばしでは、数人づつ学生が集まってこちらをじっと見ていた。
「あーらごめんなさいね、どうにもこの学院にそぐわない雌犬が人間みたいな顔して歩いているんですもの、つい……」
講堂内の気まずい沈黙を破るように、甲高い女性の声がアズレイアのすぐ後ろから響きだす。
それを聞いたアズレイアが、深いため息をこぼす。
振り返れば案の定、胸まで伸びる細い銀髪を手ではね上げるリズの姿があった。
本人曰く、王族に連なる高位貴族だというリズは、非常に気位の高い女性だ。
気位が高いがゆえにただ一人農民出のアズレイアを哀れみ、友人だと言い張った。
そして気位が高いがゆえに、彼女ではなく、アズレイアの元にモントレー家からの婚約申し込みが届いたことが許せなかった。
そう、アズレイアが自分の研究室に近寄ろうとしなかったその理由。
それは、師たるモントレー伯爵が、なぜかアズレイアを彼の長子に嫁がせようと言い出したからだった。
無論アズレイアは断った。
だが師は全く聞き入れてくれない。
しつこく送られてくるモントレー教授の呼び出しのせいで、リズを含む研究室の皆にはあっという間に知られてしまった。
以来、リズは手のひらを返したようにアズレイアを毛嫌いしている。
とはいえ、いくらリズでもこれはやりすぎでしょ。
言い返そうとするも、続けてリズの後ろから彼女の取り巻きたちが顔を出す。
「いいえリズ様、違いますわ。犬は無理やり殿方を押し倒したり、自分のベッドに引き入れたりしませんもの」
「そうですわ。そんなことを言ったら犬のほうがかわいそう」
言いたい放題の二人にリズがニヤニヤしながら頷いている。
たとえどんなにアズレイアを嫌っていても、気位の高い彼女が人目の多い場所でここまでするのは驚きだ。
だがそれだけではない。
驚いたことに、他の生徒たちも冷たい視線でこちらの様子をうかがっている。
いつもとは、何かが違う。
場の雰囲気に警戒するアズレイア。
その目前で、リズが小馬鹿にしたように、手にした書状をヒラヒラとはためかせた。
「フン、どうせあなた、まだ今日の通達書を見てないのでしょう」
そのリズの言葉で、やっとアズレイアも、彼女だけが知らない事実があることを理解する。
ここは貴族の子女が集まる学院だ。
学生寮でさえ、ほとんどの者が執事メイド付きで暮らしている。
だから学院からの通達も、届けられるのを待つことなく、朝のうちに召使いが取りに行くらしい。
無論アズレイアにメイドなどいない。
今日の通達はまだ、アズレイアにだけ届いていないのだ。
「見なさいよ、この身のほど知らず」
そんなアズレイアを苛立たし気に見下して、リズがわざとらしく書状をアズレイアの目前に投げ落とす。
それは一見、学院の通達書の形式をとっているが、その内容はとんでもないものだった。
『婚約中の婚前交渉の通報を受け、モントレー伯爵家は現嫡子の婚約を破棄する』
これはまさか、アズレイアのことだろうか。
アズレイアはモントレー家からの申し出を、まだ一度も正式に受けてはいない。
一瞬そう思ってすぐに考え直す。
あれだけ噂になっていれば、もう受けたも同じとみなされるのかもしれない。
これでは私のせいでモントレー教授にまで迷惑をかけてしまう。
先程教授室で会ったモントレー教授は、微塵もこのことには触れなかった。
それを思うと、心の底から申し訳なく恥ずかしい。
青ざめるアズレイアにリズが静かに告げる。
「あなた、婚約者が相手なら何をしてもいいとでも思ったの?」
リズは一体何をいっているの?
私はモントレー家の人となんて付き合ってない──。
疑問を顔に浮かべたアズレイアに、リズがイライラと先を続ける。
「わからない? いくら婚約者同士とはいえ、あなたたちはやりすぎたの。あなたとレイモンド様の爛れた関係を知ったモントレー家がとうとう決断を下したのよ。おかわいそうに、レイモンド様まで巻き込むなんて……」
なぜ私とモントレー家の問題にレイモンドが出てくるのかがわからない。
どうにも釈然とせず、リズを見上げて反論する。
「私、モントレー家の申し込みは何度もお断りしたわ。第一、レイモンド……様はモントレー家の件とは全く関係ないでしょ」
二人の噛み合わない会話にリズが首を傾げた。
そして理解不能という顔でアズレイアを見下ろして言う。
「何を言ってるの? レイモンド様こそ、モントレー伯爵家のご嫡子じゃない」
「……は?」
レイモンドがモントレー家の嫡子?
レイモンドがアズレイアの婚約者──。
告げられた言葉で、アズレイアの中の歯車がカチリと噛み合った。
だからレイモンドはアズレイアに声をかけたのか。
お父様から言われて、私とモントレー家との婚約を進める為に。
だがまだ疑問は残る。
ではなぜ、彼は一度もそのことをアズレイアに言わなかったのか?
彼は父が婚約の話を持ってきたと言っていた。
そのうえ論文まで……。
一気に頭の中を沢山の疑問と推察が走り去る。
そんなアズレイアの鈍い反応を見て、ふとすべてを理解したリズの顔が残虐に歪んだ。
「あなた、まさかレイモンド様がご自分の婚約者であることも知らずに褥に誘ったっていうの?」
しまった。今はこんなことを考えている場合ではなかった。
「そ、それは──」
「まあ、なんてはしたない!」
「本当に、なんて恩知らずなんでしょう!」
気づいたアズレイアが慌てて言い訳をしようとした時には、すでに手遅れだった。
まるで鬼の首を取ったような様相で、リズの取り巻きたちが叫びだす。
「大方、教授にも色香でも使って婚約者の立場をねだったのでしょう」
「やはり農民の出は下品ですこと」
「おーいやだ。こんなアバズレが学院にいるだなんて」
すぐに憶測と野次、罵倒が入り乱れる。
平穏で退屈な学院において、今のアズレイアはめったにない特上の生贄でしかない。
いつの間にか立たされたアズレイアの頬に、誰かの手がぶつかる。
それを機に、いくつもの平手が飛んできた。
「おかわいそうなレイモンド様! こんなアバズレのせいで」
「あなたが出ていけばいいのよ!」
「とっとと学院から出ていきなさいよ!」
ここまでくるともう収拾がつかない。
講堂はアズレイアに非難を浴びせる者で溢れかえり、ヒートアップする罵倒と怒声に、アズレイアは周囲を振り切るようにしてその場から逃げ去った──。
☆ ☆ ☆
それからの一ヵ月。アズレイアは寮の自室に閉じこもった。
その間、レイモンドは一度も部屋を訪れなかった。
友人がいないことには慣れていた。
身分差もしっかり分かっていたはずだった。
それでも、初めて心を許した相手がレイモンドだった……。
こうしてアズレイアの初恋は終わり、彼女の名誉と胸には深く取り返しようのない傷が刻まれた。
傷心のどん底の中、アズレイアは逃げるように研究にのめりこむ。
ひと月後、アズレイアは新たな論文を携えてモントレー教授の教授室を訪れた。
その論文のタイトルは『肉体関係による魔力移譲と魔力差の相関関係』。
アズレイアがレイモンドとの逢瀬の合間に記録し続けた、自分の魔力値の変動記録を元に書ききった論文である……。
アズレイアの論文は高く評価されたものの、その内容があまりにも物議をかもすものだったため、詳細はモントレー教授と数人の教授の間でのみ閲覧され評価された。
にも関わらず、学年の終わりに発表された成績順位は主席レイモンド、次点アズレイアという破格なものであった。
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