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Ⅵ 迷う魔女
ix 遠い日の出来事(カルロスの回想)
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一度目の遠征は、カルロスがまだ十一かそこらの頃だった──。
当時、南にある大国とは交易が途絶えて久しかった。
二国間に横たわる砂漠が広がっていつしか二つに別たれたが、元々は同じひとつの国だ。
お陰で言語も慣習も近く、通貨も共通のものをまだ使っている。
交易が戻れば、お互い助け合うことも可能だろう。
そんな思惑からカルロスの仕える第三皇子、アルの最初の外交国に選ばれた。
そしてそのアルの初の遠征がカルロスの初の従軍になった。
進むにつれ景色は荒れ果て、カルロスたちの乗った馬車はどこまでも続く荒野を南へと走った。
途中、荒地に点在する街や村をいくつも通り過ぎたが、人影はほとんど見られなかった。
行軍の最初の日は、川に面して拓けた係留地で補給することになった。
隊が馬を休め、荷の載せ替えをする間、カルロスとアルは仮宿舎へと向かう。
そこで先に兵の仮宿の用意を指揮するはずだった。
二人の馬車が街の表通りを仮宿へ向かう途中、一人の痩せ細った女が幼子を抱えて転がり出た。
「何してやがる!」
突然のことに馬車は急停車し、御者が激しく怒鳴る。
それを黙らせ、カルロスたちは彼女を馬車に乗せ休ませた。
水を与え、やっと人心地ついた彼女は、二人にどうか村を助けて欲しいと懇願した。
「私はこの近くの農村からきました……」
そう言いおいて彼女が枯れた声で続ける。
この国は水源が少なく、水捌けがよすぎて農作には向かない。
それでも川の水を利用して、多くの農村が広く麦を育てていたそうだ。
だがこの年、例年以上にひどい旱魃が村をおそい、農作物が枯れ果ててしまったらしい。
「私もこの娘も、もう何日もまともに食べ物を口にしていません」
痩せ細った娘を腕に抱いた女は、夫に死なれ、万策尽きて助けを求めに街まで出てきたのだという。
「村の備蓄はとうに尽きて、このままでは村ごと死に絶えてしまいます……」
ではあの閑散としていた村や荒れ地も、全て田畑だったのだろうか。
それまでほとんど王都から出たことのなかったカルロスは、王都の外がすぐに農村なのをそれまで知らなかった。
カルロスもアルも、なにかしてやりたいとは思うものの、彼らはまだ遠征の途中だ。
ここで全てを捨てて村を救いに行くことも、物資を全て分けてやることもできない。
だが彼女の抱える幼い娘は今にも死にそうに痩せこけていた。
結局アルがその権限で王都に救済要請を送り、一時しのぎの物資は分け与えた。
それが行軍中の彼らに出来る、精一杯だった。
それから四年後。
彼らはまた同じ道を南へと向かう。
前回の遠征では南の国との交易のきっかけを見出すに終わった。
二度目の遠征では、なんとしても先方の王国と貿易協定を結びたかった。
カルロスも少しは育ち、自分で馬を駆って従軍していた。
南へ走る馬上からは、前回と打って変わって麦の実る畑がどこまでも続いていた。
旱魃は去り、この国はもと通り豊かになったのだな。
そうホッと胸を撫でおろしていた。
前回の遠征同様 、川岸の係留地で補給がてら休んでいると、今度は幼い娘がカルロスの馬前に飛びこんできた。
「危ないだろう!」
今回怒鳴ったのはカルロスのほうだった。
それでふと、前回の遠征の時に見た痩せた女を思い出した。
体を張ってカルロスの馬を止めたその少女は、行き過ぎそうになるカルロスにしがみついて、魔法陣の仕組みを教えて欲しいと懇願した。
沢山の兵の中からカルロスを選んだのは、多分彼が行軍中まで几帳面にも身につけていた近衛兵の軍服が一番貴族らしく見えたからだろう。
そまだ青年兵だったカルロスが、幼い彼女にとってまだ話しかけやすかったのもあったかもしれない。
体を張ってまで俺を止めた理由が、魔法陣の仕組みという奇妙な話に興味を覚えたカルロスは、軍の休憩を使って彼女の話を聞く約束をした。
痩せぎすなその少女に、なぜ魔法陣の仕組みなど知りたいのかと尋ねれば、村の石柱に刻まれた魔法陣を直したいからだと言う。
「村の石柱には水を出せる魔法陣が刻まれています。酷い旱魃で村が死にかけた年、私の母さんが通りかかった魔術師様にお願いして描いてもらったものだそうです」
幼いわりに利発なその娘は、カルロスの問にしっかりと返答する。
少女曰く、夫に先立たれ、自分一人では田畑に水を運ぶ力も尽きていた彼女の母は、最後の望みをかけて街で助けを探していたらしい。
その話を聞いて、あの日のやせ細った女のことがカルロスの頭に浮かんだ。
ならばこの娘は、あの時あの女が抱えていた幼子か……。
娘は父も母も、死んだという。
年若いカルロスは、自分たちの判断の甘さに愕然とした。
あの時、あと少し尽力していれば、もしかしたら彼女の母も生き残れたのかもしれない──。
言葉に詰まったカルロスをよそに、娘が説明を続けた。
村には同様に親や子をなくした家族が多く、お互い支えあって生きているという。
どちらにしろ、まずは一度見てみようと彼女の村に一緒に向かった。
村は補給を受けている街から子供の足で半日ほどの場所にあった。
街にくらべ内陸に入り、川から離れた分、この国の例にもれずとても乾いていた。
彼女曰く、この地域では毎日川から自分たちで水を運ばなければ作物は育たないという。
だから彼女たちの一日のほとんどは、その水運びで終わってしまうのだそうだ。
村の中ほどに立つ石柱には、なるほど確かに緻密な魔法陣が書き刻まれていた。
それが水を司る魔法陣であるくらいはカルロスでも見て取れた。
だがそれは予想以上に高度な魔法陣で、専門外のカルロスには直す術などわからない。
それでも、魔法陣が動かない理由だけは分かった。
単純に、魔力が尽きていたのだ。
そもそも、魔法陣が動作するには魔力が必要だ。
魔法だって無限に物質を生み出せるわけではない。
魔術を行使するには、それに見合った魔力が必要とされるのだ。
だがその魔法陣にはもう、微かな残滓しか感じられない。
とは言え、四年もの間、誰も魔力を供給せずとも動き続けたというのならば尋常ではない代物だ。とてもカルロスにどうこう出来るものではない。
それを娘に伝えれば、娘はあっさりと「まだまだ持つはずだった」と応えた。
その魔法陣を刻んだ魔術師は、一度に使っていい水の量をきっちり定めていたという。
だが旱魃が去り、恐怖が喉元を過ぎ去った今、この村の者たちが必要以上にこれを使いはじめてしまったという。
「みんなが魔術師様の言うことをちゃんと守っていれば、この魔法陣はずっと使えたはずです」
少女はひとりそう言い募る。
それが本当だとはカルロスには到底思えない。
魔法陣は本来、常に魔力を込め続けなければ動かない。
今回のように、魔法陣自体に魔力を溜め込む作り方にも、限界は無論ある。
たとえ村人が正しく使用数を控えていたとしても、いつかは必ず尽きたはずなのだ。
娘にそれを説明すると、今度はしばし無言で考え込んだ。
そしてやはりカルロスを見上げて、少女は再度魔法陣の仕組みを学びたいと申し出た。
だがたとえこの娘が魔法陣を描けるようになったとしても、魔力がなければ発動出来ない。
幼すぎて説明が理解できなかったのか?
そう思って再度説明するも、娘は頭を振って言い返した。
「この魔法陣が大変素晴らしく、兵隊さんには修復不可能なのは理解しました。だったら、私が普通の魔法陣を描けるようになれば、魔力の少ない私でも必要な魔力を流せるかもしれない。最悪、この街を通り過ぎる魔獣の血を集めれば、それでも賄えるのではないかと」
この娘はなかなか賢い。
確かに元の魔法陣は複雑すぎて、この村に来るような魔術師の魔力だけでは、起動することすら難しいだろう。
しかもカルロスたちは、またも遠征の途中だ。
軍が係留地に滞在するのも、ほんの数日だけの予定だった。
とは言え、前回のように中途半端にはしたくない……。
悩んだ末、カルロスは係留地の駐屯兵に金を与えて、娘が来たら魔法陣の基礎を教えてやってもらえるよう頼みこんだ。
そしてカルロスたちはまたも南へと向かった。
それから半年後、カルロスたちはようやく貿易調停を終えて岐路についた。
遠征の帰り道、やはり同じ係留地の街に寄ったカルロスは、あの娘がどうなったのか気になった。
帰りは特に急ぐこともなく、隊もその街でしばらく休む予定だった。
南の遠征地まで物資を運んでくれていた者からの報告で、彼女のずばぬけた優秀さについては少なからず伝え聞いてはいた。
彼らが教えたのは本当に基礎の基礎。
魔力のない彼女には、その行使はほぼできなかったそうだ。
それでも彼女は、根気よく学んでいるという。
街についた俺は早速もう一度、同じ村を訪ねた。
驚いたことに、村にあった魔法陣の周りには新しく多数の小さな魔法陣が描き足されていた。
すぐに娘も俺に気づいてやってくる。
娘曰く、古い魔法陣のすぐ円周に沿って、いくつもの小さな魔法陣を描き、巡るように一つづつに魔力を流してもらうことで、古い魔法陣までも起動させることが出来るという。
素晴らしい改良だと褒めると、彼女は全く満足していない顔で答えた。
「これでは不完全です。今はまだ、ここに寄ってくださる方に魔力を提供していただけなければ止まってしまう。私たちには、半永久的に水を出せる仕組みが必要なのです。魔力がない私たちでも、誰かの力を借りずに水を出せる魔法陣が……」
俺なんかより、よっぽど学ぶ力があり、根気もあり、意欲もある。
今度こそ、カルロスはこの少女をこのまま放置していくことが出来なかった。
「彼女はもっと学べる環境にいるべきだ」
そして、カルロスは街の人間と交渉し、彼女が街の学校に通えるよう手配したのだった。
当時、南にある大国とは交易が途絶えて久しかった。
二国間に横たわる砂漠が広がっていつしか二つに別たれたが、元々は同じひとつの国だ。
お陰で言語も慣習も近く、通貨も共通のものをまだ使っている。
交易が戻れば、お互い助け合うことも可能だろう。
そんな思惑からカルロスの仕える第三皇子、アルの最初の外交国に選ばれた。
そしてそのアルの初の遠征がカルロスの初の従軍になった。
進むにつれ景色は荒れ果て、カルロスたちの乗った馬車はどこまでも続く荒野を南へと走った。
途中、荒地に点在する街や村をいくつも通り過ぎたが、人影はほとんど見られなかった。
行軍の最初の日は、川に面して拓けた係留地で補給することになった。
隊が馬を休め、荷の載せ替えをする間、カルロスとアルは仮宿舎へと向かう。
そこで先に兵の仮宿の用意を指揮するはずだった。
二人の馬車が街の表通りを仮宿へ向かう途中、一人の痩せ細った女が幼子を抱えて転がり出た。
「何してやがる!」
突然のことに馬車は急停車し、御者が激しく怒鳴る。
それを黙らせ、カルロスたちは彼女を馬車に乗せ休ませた。
水を与え、やっと人心地ついた彼女は、二人にどうか村を助けて欲しいと懇願した。
「私はこの近くの農村からきました……」
そう言いおいて彼女が枯れた声で続ける。
この国は水源が少なく、水捌けがよすぎて農作には向かない。
それでも川の水を利用して、多くの農村が広く麦を育てていたそうだ。
だがこの年、例年以上にひどい旱魃が村をおそい、農作物が枯れ果ててしまったらしい。
「私もこの娘も、もう何日もまともに食べ物を口にしていません」
痩せ細った娘を腕に抱いた女は、夫に死なれ、万策尽きて助けを求めに街まで出てきたのだという。
「村の備蓄はとうに尽きて、このままでは村ごと死に絶えてしまいます……」
ではあの閑散としていた村や荒れ地も、全て田畑だったのだろうか。
それまでほとんど王都から出たことのなかったカルロスは、王都の外がすぐに農村なのをそれまで知らなかった。
カルロスもアルも、なにかしてやりたいとは思うものの、彼らはまだ遠征の途中だ。
ここで全てを捨てて村を救いに行くことも、物資を全て分けてやることもできない。
だが彼女の抱える幼い娘は今にも死にそうに痩せこけていた。
結局アルがその権限で王都に救済要請を送り、一時しのぎの物資は分け与えた。
それが行軍中の彼らに出来る、精一杯だった。
それから四年後。
彼らはまた同じ道を南へと向かう。
前回の遠征では南の国との交易のきっかけを見出すに終わった。
二度目の遠征では、なんとしても先方の王国と貿易協定を結びたかった。
カルロスも少しは育ち、自分で馬を駆って従軍していた。
南へ走る馬上からは、前回と打って変わって麦の実る畑がどこまでも続いていた。
旱魃は去り、この国はもと通り豊かになったのだな。
そうホッと胸を撫でおろしていた。
前回の遠征同様 、川岸の係留地で補給がてら休んでいると、今度は幼い娘がカルロスの馬前に飛びこんできた。
「危ないだろう!」
今回怒鳴ったのはカルロスのほうだった。
それでふと、前回の遠征の時に見た痩せた女を思い出した。
体を張ってカルロスの馬を止めたその少女は、行き過ぎそうになるカルロスにしがみついて、魔法陣の仕組みを教えて欲しいと懇願した。
沢山の兵の中からカルロスを選んだのは、多分彼が行軍中まで几帳面にも身につけていた近衛兵の軍服が一番貴族らしく見えたからだろう。
そまだ青年兵だったカルロスが、幼い彼女にとってまだ話しかけやすかったのもあったかもしれない。
体を張ってまで俺を止めた理由が、魔法陣の仕組みという奇妙な話に興味を覚えたカルロスは、軍の休憩を使って彼女の話を聞く約束をした。
痩せぎすなその少女に、なぜ魔法陣の仕組みなど知りたいのかと尋ねれば、村の石柱に刻まれた魔法陣を直したいからだと言う。
「村の石柱には水を出せる魔法陣が刻まれています。酷い旱魃で村が死にかけた年、私の母さんが通りかかった魔術師様にお願いして描いてもらったものだそうです」
幼いわりに利発なその娘は、カルロスの問にしっかりと返答する。
少女曰く、夫に先立たれ、自分一人では田畑に水を運ぶ力も尽きていた彼女の母は、最後の望みをかけて街で助けを探していたらしい。
その話を聞いて、あの日のやせ細った女のことがカルロスの頭に浮かんだ。
ならばこの娘は、あの時あの女が抱えていた幼子か……。
娘は父も母も、死んだという。
年若いカルロスは、自分たちの判断の甘さに愕然とした。
あの時、あと少し尽力していれば、もしかしたら彼女の母も生き残れたのかもしれない──。
言葉に詰まったカルロスをよそに、娘が説明を続けた。
村には同様に親や子をなくした家族が多く、お互い支えあって生きているという。
どちらにしろ、まずは一度見てみようと彼女の村に一緒に向かった。
村は補給を受けている街から子供の足で半日ほどの場所にあった。
街にくらべ内陸に入り、川から離れた分、この国の例にもれずとても乾いていた。
彼女曰く、この地域では毎日川から自分たちで水を運ばなければ作物は育たないという。
だから彼女たちの一日のほとんどは、その水運びで終わってしまうのだそうだ。
村の中ほどに立つ石柱には、なるほど確かに緻密な魔法陣が書き刻まれていた。
それが水を司る魔法陣であるくらいはカルロスでも見て取れた。
だがそれは予想以上に高度な魔法陣で、専門外のカルロスには直す術などわからない。
それでも、魔法陣が動かない理由だけは分かった。
単純に、魔力が尽きていたのだ。
そもそも、魔法陣が動作するには魔力が必要だ。
魔法だって無限に物質を生み出せるわけではない。
魔術を行使するには、それに見合った魔力が必要とされるのだ。
だがその魔法陣にはもう、微かな残滓しか感じられない。
とは言え、四年もの間、誰も魔力を供給せずとも動き続けたというのならば尋常ではない代物だ。とてもカルロスにどうこう出来るものではない。
それを娘に伝えれば、娘はあっさりと「まだまだ持つはずだった」と応えた。
その魔法陣を刻んだ魔術師は、一度に使っていい水の量をきっちり定めていたという。
だが旱魃が去り、恐怖が喉元を過ぎ去った今、この村の者たちが必要以上にこれを使いはじめてしまったという。
「みんなが魔術師様の言うことをちゃんと守っていれば、この魔法陣はずっと使えたはずです」
少女はひとりそう言い募る。
それが本当だとはカルロスには到底思えない。
魔法陣は本来、常に魔力を込め続けなければ動かない。
今回のように、魔法陣自体に魔力を溜め込む作り方にも、限界は無論ある。
たとえ村人が正しく使用数を控えていたとしても、いつかは必ず尽きたはずなのだ。
娘にそれを説明すると、今度はしばし無言で考え込んだ。
そしてやはりカルロスを見上げて、少女は再度魔法陣の仕組みを学びたいと申し出た。
だがたとえこの娘が魔法陣を描けるようになったとしても、魔力がなければ発動出来ない。
幼すぎて説明が理解できなかったのか?
そう思って再度説明するも、娘は頭を振って言い返した。
「この魔法陣が大変素晴らしく、兵隊さんには修復不可能なのは理解しました。だったら、私が普通の魔法陣を描けるようになれば、魔力の少ない私でも必要な魔力を流せるかもしれない。最悪、この街を通り過ぎる魔獣の血を集めれば、それでも賄えるのではないかと」
この娘はなかなか賢い。
確かに元の魔法陣は複雑すぎて、この村に来るような魔術師の魔力だけでは、起動することすら難しいだろう。
しかもカルロスたちは、またも遠征の途中だ。
軍が係留地に滞在するのも、ほんの数日だけの予定だった。
とは言え、前回のように中途半端にはしたくない……。
悩んだ末、カルロスは係留地の駐屯兵に金を与えて、娘が来たら魔法陣の基礎を教えてやってもらえるよう頼みこんだ。
そしてカルロスたちはまたも南へと向かった。
それから半年後、カルロスたちはようやく貿易調停を終えて岐路についた。
遠征の帰り道、やはり同じ係留地の街に寄ったカルロスは、あの娘がどうなったのか気になった。
帰りは特に急ぐこともなく、隊もその街でしばらく休む予定だった。
南の遠征地まで物資を運んでくれていた者からの報告で、彼女のずばぬけた優秀さについては少なからず伝え聞いてはいた。
彼らが教えたのは本当に基礎の基礎。
魔力のない彼女には、その行使はほぼできなかったそうだ。
それでも彼女は、根気よく学んでいるという。
街についた俺は早速もう一度、同じ村を訪ねた。
驚いたことに、村にあった魔法陣の周りには新しく多数の小さな魔法陣が描き足されていた。
すぐに娘も俺に気づいてやってくる。
娘曰く、古い魔法陣のすぐ円周に沿って、いくつもの小さな魔法陣を描き、巡るように一つづつに魔力を流してもらうことで、古い魔法陣までも起動させることが出来るという。
素晴らしい改良だと褒めると、彼女は全く満足していない顔で答えた。
「これでは不完全です。今はまだ、ここに寄ってくださる方に魔力を提供していただけなければ止まってしまう。私たちには、半永久的に水を出せる仕組みが必要なのです。魔力がない私たちでも、誰かの力を借りずに水を出せる魔法陣が……」
俺なんかより、よっぽど学ぶ力があり、根気もあり、意欲もある。
今度こそ、カルロスはこの少女をこのまま放置していくことが出来なかった。
「彼女はもっと学べる環境にいるべきだ」
そして、カルロスは街の人間と交渉し、彼女が街の学校に通えるよう手配したのだった。
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