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Ⅰ 塔の魔女アズレイア

iv 淫紋の副作用 ★

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 うつ伏せに倒れたアズレイアの体を抱きしめたカルロスは、ためらうことなく彼女の腰のくびれに顔をうずめた。


「カ、カルロス! 待って!」


 焦って制止する彼女の声はもう耳に入らぬようだ。そのままローブを引きあげたカルロスが、アズレイアの丸出しになった背中に頬ずりし始める。
 剥き出しにされた背を薄い無精髭がかすり、ゾゾゾゾっと寒気がアズレイアの背筋を駆け上がった。


「い、やだ、何してるの! カルロス、バカ」


 抗おうとするも、押さえつけてくるカルロスの身体はいくらアズレイアが押しのけようとしてもビクともしない。
 引っ掻こうと後ろに伸ばした手は、あえなくカルロスによって後ろ手に押さえつけられてしまった。

 相手は腐っても王国軍人だ。
 そうでなくても小柄なアズレイアなど、カルロスにすれば赤子の手をひねるのとそう変わらないのだろう。

 その間にも、今まで這っていた無精髭の感触が、いつの間にか艶かしい舌と唇の熱へと変わっていた。
 寒気だけだと信じたかった感覚が、もう誤魔化しようもない快感へと塗り替えられていく。

 その甘やかさに思わずアズレイアの思考が止まり、腰が震えた。


「はぁ……!」


 思わず声が漏れた。
 我慢しようとするも、カルロスの舌遣いは意外にも繊細で、腰骨をつたい、背骨を辿り、脇にキスを降らせてはまた執拗に腰骨をクスぐる。


「いぁ、、それ、もう、やめて……」


 押さえ込まれた手で、抗おうとするのに、なぜかカルロスがその手のひらに優しいキスを降らせ始めた。
 淫紋が刻まれて性欲に燃えてるハズなのに、カルロスのそれはまるで恋人にするかのように優しく甘い。

 そんなカルロスの顔を、アズレイアが必死に手で押し返す。
 だがカルロス相手に、そんな抵抗はムダだろう。
 それどころか、こともあろうに、されている行為の甘やかさに、アズレイア自身、身体が勝手に反応を返し始めてしまった。


 おかしい。
 もう何年もそんなことしてなかったし、別にしたいとも思ってなかったのに。

 まさか……
 もしかして落ちてきた素材が私にもなにか影響を及ぼして──?


 まとまらない思考でやっとそう思い至ったがすでに時遅し。
 とうとう、カルロスの太い指がアズレイアの下着の中に潜入した。


「な! い、いやぁ、やだ、カルロス、それ──」
「アズレイア……好きだ……」


 せめてもの矜持に、踵でカルロスの背中を思いっきり蹴ろうとしたアズレイアの背に、カルロスの思わぬ言葉が落ちてきた。

 一瞬、驚愕のあまり、動きも思考も停止する。
 その間にもカルロスの甘いキスが腰を伝い、太い指が下着の中を探りだす。気を抜いていたアズレイアの唇から、あえなく艶めいた喘ぎ声がこぼれ出てしまった。


「へ、ぁアン……」
「好きだアズレイア、お前を愛したい……」


 驚いたことに、カルロスがアズレイアに向かって愛の言葉を紡いでる。


 淫紋は性欲は高めるが、惚れクスリと違って恋に落ちる効果などないはずだ。
 いや待てよ、今回使った素材には確か一つ惚れクスリにも使われるものが……。


 そこまで一気に走った思考は、だけど次のステージへと指先を進めたカルロスの侵攻にあえなく霧散した。
 下着の中をさまよっていたカルロスの指が、アズレイアの最も敏感な膨らみを探り出し、執拗に嬲りだしたのだ。


「ア、アアァ、待って、それムリ、キツイ、キツイの、アア!」
「知っている。これが辛いほどいいのだろう。尋問ではよくやっている」


 よくやっているのか、カルロス!

 童貞のクセに、なんてヤツ!


 そんなことを思う間もなく、身動きもままならぬまま、一気にその強い快楽に追い詰められていく。
 こんなことしているのに、カルロスはやけに静かだ。
 そのせいで、冷静なカルロスの視線が背中に突き刺さる気がする。


 見られてる、見られちゃってる!


 見られたくない、そう思うのに、カルロスの指は容赦なかった。
 その太い指からは想像もつかない繊細な動きで花芯を苛まれ、アズレイアは我慢するどころか絶え間なく身もだえするばかり。
 しかもその痴態をずっと見られ続けているというこの異常な状況のせいで、肉体と精神の限界は抗うことも許されずに頂点へと駆け上がっていく。

 見下ろされながら強制的に快感を刻まれ、恥辱に熱された血液がドクンドクンと音を立てて体中を駆け巡り、やがて頭の芯が真っ白に焼きつくされていき──


 イク、イク、イっちゃう! 私、カルロスにイかされる……!


 ──腰が震え、反動で身体が勝手に痙攣して。

 あっけなく、アズレイアは久しぶりの絶頂に支配された。



「アズレイア」



 果てきったアズレイアの背に、カルロスのものとは思えぬ甘い声音で呼ばれた自分の名前が降ってくる。



「俺の指はそんなによかったか?」



 聞いたこともない艶めいたその声に、果てたばかりのアズレイアの体が勝手に反応を返す。

 それが多分、いけなかった。

 アズレイアをねぎらうように寄り添っていたカルロスの体が、ふるりと震えたアズレイアの動きに触発されたようにまたも動き出す。
 まだぐったりと横たわるアズレイアの白い背に、カルロスの柔らかい唇が押し当てられた。
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