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第6章 森
2 バッカスと黒猫君
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森に入っても黒猫君は何の苦もなく木々の間をバッカス達と同じスピードで歩いていく。
「……おい、もうその被ってるのとってもいいだろ」
言われた黒猫君が思い出した様に頭に撒いていた手拭いをはぎ取って自分の黒い猫耳を外に出した。
因みに黒猫君、ズボンはお尻のあたりに目立たない穴が開いてて普段は隠してる尻尾も治療院の中とかでは引き出してる。こっちは城門を出た時点でもう出してた。やっぱり走りづらいのかな?
「そう言えばお前すぐに俺があの時の猫だって気づいてただろう?」
黒猫君の問いにバッカスが鼻を鳴らす。
「当たり前だろ。お前俺の鼻先を掠めたんだぞ。その匂いを忘れるわけない」
そっか。それでバッカス黒猫君が謝った時も驚いてなかったんだ。
「ああ、そうか匂いか」
黒猫君も納得してる。
「そろそろ着くぞ」
バッカスが私達を連れて行ったのは勿論あの洞窟だった。私がいる間に少しは掃除もさせたので今はそれ程臭いもしない。
「まずは先に少し話したい」
そう言いながら私達を引き連れて自分の部屋に向かう。途中何人かに声を掛けてる。バッカスの部屋もまだ綺麗なままだ。ってまだ一日だけだもんね。
この部屋、勿論座れるような椅子なんてないので皆で岩肌むき出しの床に車座になって座り込む。
「一族のやつらに聞かれる前にはっきりしておいた方がいいだろう」
そう言って私を見たバッカスが少し真剣な面持ちでこちらを見た。
「あゆみ、お前は結局どうするんだ?」
バッカスが何を聞いてるのかはもちろん分かってた。黒猫君もこっちを見てる。
昨日黒猫君もちゃんと謝ってくれたし、もう拗ねててもしょうがないよね。
私はバッカスの顔を真っすぐに見返して話し始めた。
「あのねバッカス。私実は森の生活結構好きだよ。皆すごくきれいにしてくれる様になったし毛づくろいだってそんなに嫌いじゃない。ただね……」
私はそこで言葉を切る。
「私、キールさんとテリースさんには返しきれない恩があるの。私と黒猫君が怪我で本当に死にかけていた時に、バッカス達とも敵対しててすごく大変な中で私達を救ってくれたの。だから私はまずはあそこで恩返しがしたい」
そう言ってバッカスの顔をじっと見つめた。
「いつか全部終わってキールさん達も落ち着いて私達も落ち着いたら私絶対この辺に戻ってくると思う。私、こんなだから約束できないしいつになるか分かんないけど私はここ凄く好きだよ」
正直な気持ちを包み隠さず伝えた私をずっと黙ったままで見つめてたバッカスが、はぁっと大きなため息を1つついて頭の後ろで腕組みした。
「そんな風に言われちまったら俺も無理矢理ここに残れって言えねぇじゃねえか。恩義は返さなきゃならねえ。それは正しい。だけどお前が俺のペットなのには変わりないからな」
「バッカスそれは最初っから言ってるでしょ、私、ペットなんてなる気はないよ。でも家で飼ってた子達と同じ様に家族にだったらなったげる」
私の言葉に黒猫君とバッカスが目を丸くしてる。
あれ? 私なんか変な事言ったっけ?
「お前、それって俺と番うって事か?」
「え? ち、違うよ! 私が言ってるのは家族みたいに信頼できる存在って事。バッカスは今だって自分の思い通りにならなくても私のお願いを聞いてくれるでしょう?私もバッカス達が困ってたら自分の事の様に何とかしてあげたいって考えちゃうと思う。一緒に居て仲良くなったんだもん。だから家族みたいに思っててもおかしくないと思わない?」
「前から思ってたがお前ほんとに変わってるな」
バッカスの変な誤解を慌てて否定しながら説明するとバッカスがちょっと上を見上げながらボソリとそう呟いた。
そんなにおかしいだろうか。私としてはペットとか番とか訳わからない関係と違ってちゃんとしたものだと思うんだけど。
「ま、いっか。確かにそれは悪くない。ペットより上等な気がする。これから狼人族とあゆみは家族な」
結局バッカスはニカッと笑ってそう返してくれた。
「うん。あ、それから。毛づくろいには時々来るからね。ちゃんと水浴び続けるんだよ。部屋の掃除も忘れないでね。でないと狼女さん達にモテないよ」
バッカスはうるさそうに手を振りながら「ほっとけ」ってブチブチ言ってる。
これ以上うるさい事を言われてはたまらないとバッカスは今度は黒猫君に向き直って話し始めた。
「でそっちの、あんたはネロでいいんだっけか?」
「ああ。そう言えばちゃんと自己紹介してなかったんだな。あゆみには『黒猫君』呼ばわりされてるが他の奴らはネロって呼んでる。本名はもう捨てた」
あ、黒猫君、名前捨てちゃったんだ。もしかして私のせいか?
ちょっと心配になってきた。やっぱり後で一度黒猫君の本名を聞き直そう。
ポケッとそんな事を考えてた私の横でバッカスがガバッと立ち上がってネロ君に手を差し出す。
「じゃあ、ネロ、一回俺と勝負しろ」
「望むところだ」
気持ちいいくらい簡単に答えてネロ君がバッカスの手を取って立ち上がった。
「え? ええ??」
な、何でここでこの二人が勝負になっちゃうの???
そんな事言い出すバッカスもバッカスだけど何で黒猫君は即答してる訳!?
「ちょっと待って! それは昨日終わったはずでしょ!」
「あゆみ、これとそれは別だ。お前はいいからここで待ってろ」
そう言って黒猫君、私の杖を持って出て行っちゃった!
ひどい! これじゃあ後を追うこともできないじゃないか!
結局私はバッカスが送ってきた今日の予定の毛づくろいメンバープラス、私が街に住むと聞きつけた『あゆみのゴールデンフィンガー友の会』の皆さんの毛づくろいをしながら二人が帰ってくるのを待つ羽目になった。
因みにこの友の会、ここにいる狼人族の皆さんは全員入会しているそうだ。
一体誰がいつの間にそんなもん立ち上げてたんだか。
「……おい、もうその被ってるのとってもいいだろ」
言われた黒猫君が思い出した様に頭に撒いていた手拭いをはぎ取って自分の黒い猫耳を外に出した。
因みに黒猫君、ズボンはお尻のあたりに目立たない穴が開いてて普段は隠してる尻尾も治療院の中とかでは引き出してる。こっちは城門を出た時点でもう出してた。やっぱり走りづらいのかな?
「そう言えばお前すぐに俺があの時の猫だって気づいてただろう?」
黒猫君の問いにバッカスが鼻を鳴らす。
「当たり前だろ。お前俺の鼻先を掠めたんだぞ。その匂いを忘れるわけない」
そっか。それでバッカス黒猫君が謝った時も驚いてなかったんだ。
「ああ、そうか匂いか」
黒猫君も納得してる。
「そろそろ着くぞ」
バッカスが私達を連れて行ったのは勿論あの洞窟だった。私がいる間に少しは掃除もさせたので今はそれ程臭いもしない。
「まずは先に少し話したい」
そう言いながら私達を引き連れて自分の部屋に向かう。途中何人かに声を掛けてる。バッカスの部屋もまだ綺麗なままだ。ってまだ一日だけだもんね。
この部屋、勿論座れるような椅子なんてないので皆で岩肌むき出しの床に車座になって座り込む。
「一族のやつらに聞かれる前にはっきりしておいた方がいいだろう」
そう言って私を見たバッカスが少し真剣な面持ちでこちらを見た。
「あゆみ、お前は結局どうするんだ?」
バッカスが何を聞いてるのかはもちろん分かってた。黒猫君もこっちを見てる。
昨日黒猫君もちゃんと謝ってくれたし、もう拗ねててもしょうがないよね。
私はバッカスの顔を真っすぐに見返して話し始めた。
「あのねバッカス。私実は森の生活結構好きだよ。皆すごくきれいにしてくれる様になったし毛づくろいだってそんなに嫌いじゃない。ただね……」
私はそこで言葉を切る。
「私、キールさんとテリースさんには返しきれない恩があるの。私と黒猫君が怪我で本当に死にかけていた時に、バッカス達とも敵対しててすごく大変な中で私達を救ってくれたの。だから私はまずはあそこで恩返しがしたい」
そう言ってバッカスの顔をじっと見つめた。
「いつか全部終わってキールさん達も落ち着いて私達も落ち着いたら私絶対この辺に戻ってくると思う。私、こんなだから約束できないしいつになるか分かんないけど私はここ凄く好きだよ」
正直な気持ちを包み隠さず伝えた私をずっと黙ったままで見つめてたバッカスが、はぁっと大きなため息を1つついて頭の後ろで腕組みした。
「そんな風に言われちまったら俺も無理矢理ここに残れって言えねぇじゃねえか。恩義は返さなきゃならねえ。それは正しい。だけどお前が俺のペットなのには変わりないからな」
「バッカスそれは最初っから言ってるでしょ、私、ペットなんてなる気はないよ。でも家で飼ってた子達と同じ様に家族にだったらなったげる」
私の言葉に黒猫君とバッカスが目を丸くしてる。
あれ? 私なんか変な事言ったっけ?
「お前、それって俺と番うって事か?」
「え? ち、違うよ! 私が言ってるのは家族みたいに信頼できる存在って事。バッカスは今だって自分の思い通りにならなくても私のお願いを聞いてくれるでしょう?私もバッカス達が困ってたら自分の事の様に何とかしてあげたいって考えちゃうと思う。一緒に居て仲良くなったんだもん。だから家族みたいに思っててもおかしくないと思わない?」
「前から思ってたがお前ほんとに変わってるな」
バッカスの変な誤解を慌てて否定しながら説明するとバッカスがちょっと上を見上げながらボソリとそう呟いた。
そんなにおかしいだろうか。私としてはペットとか番とか訳わからない関係と違ってちゃんとしたものだと思うんだけど。
「ま、いっか。確かにそれは悪くない。ペットより上等な気がする。これから狼人族とあゆみは家族な」
結局バッカスはニカッと笑ってそう返してくれた。
「うん。あ、それから。毛づくろいには時々来るからね。ちゃんと水浴び続けるんだよ。部屋の掃除も忘れないでね。でないと狼女さん達にモテないよ」
バッカスはうるさそうに手を振りながら「ほっとけ」ってブチブチ言ってる。
これ以上うるさい事を言われてはたまらないとバッカスは今度は黒猫君に向き直って話し始めた。
「でそっちの、あんたはネロでいいんだっけか?」
「ああ。そう言えばちゃんと自己紹介してなかったんだな。あゆみには『黒猫君』呼ばわりされてるが他の奴らはネロって呼んでる。本名はもう捨てた」
あ、黒猫君、名前捨てちゃったんだ。もしかして私のせいか?
ちょっと心配になってきた。やっぱり後で一度黒猫君の本名を聞き直そう。
ポケッとそんな事を考えてた私の横でバッカスがガバッと立ち上がってネロ君に手を差し出す。
「じゃあ、ネロ、一回俺と勝負しろ」
「望むところだ」
気持ちいいくらい簡単に答えてネロ君がバッカスの手を取って立ち上がった。
「え? ええ??」
な、何でここでこの二人が勝負になっちゃうの???
そんな事言い出すバッカスもバッカスだけど何で黒猫君は即答してる訳!?
「ちょっと待って! それは昨日終わったはずでしょ!」
「あゆみ、これとそれは別だ。お前はいいからここで待ってろ」
そう言って黒猫君、私の杖を持って出て行っちゃった!
ひどい! これじゃあ後を追うこともできないじゃないか!
結局私はバッカスが送ってきた今日の予定の毛づくろいメンバープラス、私が街に住むと聞きつけた『あゆみのゴールデンフィンガー友の会』の皆さんの毛づくろいをしながら二人が帰ってくるのを待つ羽目になった。
因みにこの友の会、ここにいる狼人族の皆さんは全員入会しているそうだ。
一体誰がいつの間にそんなもん立ち上げてたんだか。
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