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第3章 始動
13 夕食
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今日の夕食の準備は信じられないほど楽だった。って言うか、ほとんど何もしてない。
あの場を逃げるようにして厨房に戻った私たちは、だけど私の足の遅さのせいですぐに見つかってしまった。治療院の中に入り込んでいた面接希望者がそのまま厨房の入り口に長い列を作る。
その入り口に一番近い椅子にチョコンと座った黒猫君が外を威嚇気味に睨んでた。
「それでこれどうするんだ?」
アリームさんと二人で食事の準備をしてくれてたピートルさんが私たちの後ろから声を掛けてきた。一人で、しかも片手だけじゃやっぱり出来ないことも多かったみたいで、途中からはアリームさんにも手伝ってもらったのだそうだ。
お願いしてた通り野菜は全て洗ってあるし麦も挽いてあった。暖炉はきれいに掃除されて次の薪が積み上げられている。
木製のボールには新たに挽かれた粉が入っていて、その横の小さなスープカップにはボコボコと泡が浮いたドロドロの液体が入ってた。
「黒猫君、これ本当にどうするの?」
「悪いけどこっちの相手もしなきゃいけないからこっから指示する通りに進めてくれるか?」
黒猫君がこちらを振り返りもせずに答えてくれた。
「なんせ初めてのイーストだからな。どれくらい膨らむかも分からないしオーブンもない。一発勝負で無駄にしないぞ」
そう言いおいて指示を出してく。
粉と塩とさっきのドロドロを、ボールの中で混ぜてまとめて捏ねて丸めてから、先に粉を振っておいた鍋に入れる。今日のお鍋は昨日のより一回り小さい。それでも私の家にあった中華なべより大きいと思う。
そのまましばらく放置して、平らに広げてあった生地が倍以上に膨らんできたのを見て私は大喜び。
そこに指でツンツンいくつも穴を空けて、黒猫君が道中見つけてきてくれたハーブを短く切って穴に刺していく。そしてアリームさんとピートルさんが気絶しそうな様子で見守る中、溶かしバターを薄ーく上全面に塗って、鍋の蓋をしてそのまま薪の上にポン。
「なんでバターなんかあるんだよ! 他の街や王都への輸出用にしか作ってないって聞いたぞ!?」
「ある所にはあるんだよ」
ピートルさんのドスのきいた質問に、黒猫君が肩越しにぶっきらぼうな返事を返す。
その間に上にかけられた鍋にはたっぷりのお湯が沸いてて、そこはに数々の野菜と、そして今日は小さいながら豚の骨付き肉が入ってた。黒猫君曰く、今日のテリースさんの給料だそうだ。
骨付き肉はあばらの辺りらしく、骨から三枚肉を通して皮まで一続きで塩漬けになってた。豚さんの脇腹の様子が想像できてちょっと怖い。
これを水で塩を流してから鍋に入れ、一度水を捨てて後はもう一度茹でて野菜を入れるだけ。さっきの香草をここでも入れる。この辺りでアリームさんとピートルさんが放心したように鍋を掻きまわしてた。
さて、説明はしたけど、私ほとんど何もしてない。だってアリームさんとピートルさんが率先して全部やってしまったのだ。
私がやったのはパンを捏ねるのと指で穴を付ける所だけ。私がどうしてもやりたがったので二人が譲ってくれた。あ、あと野菜のみじん切りも途中で変わってもらった。二人が片手ずつで押さえたり切ったりしているのが見ててあまりにも怖かったから。
その間も黒猫君はその横で面接を続けてく。びっちり直立した偉そうなおじ様たちが、椅子にちょこんと座った黒猫君から質問を受けて冷や汗を掻いてる図は何ともシュールだった。
黒猫君の質問は多岐に渡ってた。側でなんとなく聞いている私にはなぜそんなこと聞くのか分からない質問もある。
例えば分かりやすい質問は暗算の問題。
「5に100を掛けて30を引いて20足して110引いて4で割って……」
どこまでも続く計算の末に答えだけを聞かれてる。ところが何回かに一回「じゃあ最初の数字は何だった?」なんて意地悪もあり。
かと思えば「今月何回パンを食った?」とか「普段食ってる物を羅列しろ」とか「狼人族をどうするべきだと思う?」と言った聞き取り調査的な物もある。
それから本当に意味不明なのが「白と赤どっちがあったかい?」とか「空と海どっちが青い?」とか。聞いてどうするのってこっちが聞きたい。
あと、黒猫君は時々同じ質問を違う聞き方で繰り返す。ちょっとしつこい。
長い列も料理が仕上がる頃には終わりが見えてきた。やっと一通り全員の面接が終わったかなって思ったところに、一人遅れて駆け込んできた。どう見ても私より年下の男の子だ。
「手伝いならもういらないぞ」
黒猫君の冷たい言葉にもめげずに元気よく答える。
「遅くなってすみません。店主が中々休憩に出してくれなくて。俺もどうか面接を受けさせてください」
そう言ってペコペコと何度も頭を下げた。
「おっけい。時間が勿体ないから質問を始める」
そう言って今までと同じように質問を繰り返していくのだが、珍しくいつまでも質問と答えの応答が続いていく。しばらくして黒猫君が一度息をのんで続けた。
「それじゃ最後の問題だ。あんたエルフをどう思う?」
「え、エルフですか。そうですねぇ。あったことはありませんが是非綺麗なお姉さんならお会いしてみたいと思います」
「合格だ。あんた明日から俺たちの補佐な」
「え? 商取引の手伝いの面接と聞いてきたんですけど僕……」
「今更『嫌だ』はなしだ。これからこっちはやりたくもない仕事で滅茶苦茶忙しくなりそうだってのに、俺たちが使えるやつは誰もいなかったんだ。明日は夜明けからここに来てくれ。そんでもってここに引っ越してこい」
黒猫君の横暴に彼は目に涙を溜め始めた。
見かねて私が口をはさむ。
「ねえ、黒猫君、彼の意見も少しは聞いてあげたほうが良くない?」
「何言ってるんだ、これはお前の為でもあるんだぞ」
そう言って尻尾を伸ばしながらトンっとテーブルに飛び上がって私に歩み寄ってくる。
「えっと君名前なんて言うの?」
「パットです」
「パット君。この通り黒猫君は言い方がちょっと乱暴だけど、普段は必要なことじゃなきゃこんなふうに言わないんだけど。今回はどうにもちょっと強引な気がするの。多分私も巻き込まれた仕事に私の足のことも考えて言ってくれてるんだとは思うんだけど、もし君が本当に嫌なんだったら私は仕方ないと思うよ」
パット君は今の言葉で初めて私の足が片方ないのに気づいたみたいだ。ちょっと顔を赤くしてこちらに振り向いた。
「い、いえそんな、凄く嫌とかそう言うのではないんですけど。ただ、これでも商店の小間使いと見習いをもう7年以上勤めてきたんです。いずれは商人になりたくて頑張ってきたんですが、今の仕事場ではどうしてもこのまま見習いから抜け出せる機会が来そうにないんです。ですから、ここで働かせて頂いて箔をつけて、それから他の商会に引き抜いて欲しいと思って応募したんです」
「それだったら俺たちの補佐をやってたほうがよっぽどいい箔が付くはずだぞ」
「え、だってお二人はここの厨房で働いてるんですよね」
「……お前あの騒動を見損ねたな」
どうやらパット君は黒猫君がキールさんのスチュワードであることを知らなかったらしい。道理で最初っから口調も軽かったわけだ。
ま、黒猫君、見た目は猫だしね。
「商取引の手伝いもしてもらうぞ。ただ現場で監督するだけじゃなくそれの取りまとめを手伝ってもらう。安心しろ、三人でやれば多分、寝る時間くらいはあるだろうから」
「え? それってもしかして私も頭数に入ってるの?」
「当たり前だろ。あゆみは大学も行ってたんだもんな。計算くらい出来るだろ」
「うう」
「因みにあゆみ、お前専攻はなんだったんだ?」
「言いたくない」
「はぁ?」
「絶対に言いたくない。もういいじゃん。どうせこの世界では関係ないんだから。計算ならちゃんとするからいいでしょ」
私の専攻はこの世界で最も役に立たない物の一つだと思う。恥ずかしくて今更言えない。
「ま、いいか。アリーム、ピートル、夕食の準備はどうだ?」
「ああ、こっちも終わった所だ」
「じゃあ、パンの蓋を開けてみろよ」
ピートルさんがお鍋の蓋を開けた途端、ホワリと焼き立てのパンの匂いが部屋に広がった。そのにおいだけでお腹が鳴ってしまう。
「良し、夕食にするぞ。パットはまた明日な」
鍋の中身を涎を垂らさんばかりの物欲しそうな目で見てたパット君は、それでも殊勝に頭を下げてトボトボと帰っていった。
あの場を逃げるようにして厨房に戻った私たちは、だけど私の足の遅さのせいですぐに見つかってしまった。治療院の中に入り込んでいた面接希望者がそのまま厨房の入り口に長い列を作る。
その入り口に一番近い椅子にチョコンと座った黒猫君が外を威嚇気味に睨んでた。
「それでこれどうするんだ?」
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木製のボールには新たに挽かれた粉が入っていて、その横の小さなスープカップにはボコボコと泡が浮いたドロドロの液体が入ってた。
「黒猫君、これ本当にどうするの?」
「悪いけどこっちの相手もしなきゃいけないからこっから指示する通りに進めてくれるか?」
黒猫君がこちらを振り返りもせずに答えてくれた。
「なんせ初めてのイーストだからな。どれくらい膨らむかも分からないしオーブンもない。一発勝負で無駄にしないぞ」
そう言いおいて指示を出してく。
粉と塩とさっきのドロドロを、ボールの中で混ぜてまとめて捏ねて丸めてから、先に粉を振っておいた鍋に入れる。今日のお鍋は昨日のより一回り小さい。それでも私の家にあった中華なべより大きいと思う。
そのまましばらく放置して、平らに広げてあった生地が倍以上に膨らんできたのを見て私は大喜び。
そこに指でツンツンいくつも穴を空けて、黒猫君が道中見つけてきてくれたハーブを短く切って穴に刺していく。そしてアリームさんとピートルさんが気絶しそうな様子で見守る中、溶かしバターを薄ーく上全面に塗って、鍋の蓋をしてそのまま薪の上にポン。
「なんでバターなんかあるんだよ! 他の街や王都への輸出用にしか作ってないって聞いたぞ!?」
「ある所にはあるんだよ」
ピートルさんのドスのきいた質問に、黒猫君が肩越しにぶっきらぼうな返事を返す。
その間に上にかけられた鍋にはたっぷりのお湯が沸いてて、そこはに数々の野菜と、そして今日は小さいながら豚の骨付き肉が入ってた。黒猫君曰く、今日のテリースさんの給料だそうだ。
骨付き肉はあばらの辺りらしく、骨から三枚肉を通して皮まで一続きで塩漬けになってた。豚さんの脇腹の様子が想像できてちょっと怖い。
これを水で塩を流してから鍋に入れ、一度水を捨てて後はもう一度茹でて野菜を入れるだけ。さっきの香草をここでも入れる。この辺りでアリームさんとピートルさんが放心したように鍋を掻きまわしてた。
さて、説明はしたけど、私ほとんど何もしてない。だってアリームさんとピートルさんが率先して全部やってしまったのだ。
私がやったのはパンを捏ねるのと指で穴を付ける所だけ。私がどうしてもやりたがったので二人が譲ってくれた。あ、あと野菜のみじん切りも途中で変わってもらった。二人が片手ずつで押さえたり切ったりしているのが見ててあまりにも怖かったから。
その間も黒猫君はその横で面接を続けてく。びっちり直立した偉そうなおじ様たちが、椅子にちょこんと座った黒猫君から質問を受けて冷や汗を掻いてる図は何ともシュールだった。
黒猫君の質問は多岐に渡ってた。側でなんとなく聞いている私にはなぜそんなこと聞くのか分からない質問もある。
例えば分かりやすい質問は暗算の問題。
「5に100を掛けて30を引いて20足して110引いて4で割って……」
どこまでも続く計算の末に答えだけを聞かれてる。ところが何回かに一回「じゃあ最初の数字は何だった?」なんて意地悪もあり。
かと思えば「今月何回パンを食った?」とか「普段食ってる物を羅列しろ」とか「狼人族をどうするべきだと思う?」と言った聞き取り調査的な物もある。
それから本当に意味不明なのが「白と赤どっちがあったかい?」とか「空と海どっちが青い?」とか。聞いてどうするのってこっちが聞きたい。
あと、黒猫君は時々同じ質問を違う聞き方で繰り返す。ちょっとしつこい。
長い列も料理が仕上がる頃には終わりが見えてきた。やっと一通り全員の面接が終わったかなって思ったところに、一人遅れて駆け込んできた。どう見ても私より年下の男の子だ。
「手伝いならもういらないぞ」
黒猫君の冷たい言葉にもめげずに元気よく答える。
「遅くなってすみません。店主が中々休憩に出してくれなくて。俺もどうか面接を受けさせてください」
そう言ってペコペコと何度も頭を下げた。
「おっけい。時間が勿体ないから質問を始める」
そう言って今までと同じように質問を繰り返していくのだが、珍しくいつまでも質問と答えの応答が続いていく。しばらくして黒猫君が一度息をのんで続けた。
「それじゃ最後の問題だ。あんたエルフをどう思う?」
「え、エルフですか。そうですねぇ。あったことはありませんが是非綺麗なお姉さんならお会いしてみたいと思います」
「合格だ。あんた明日から俺たちの補佐な」
「え? 商取引の手伝いの面接と聞いてきたんですけど僕……」
「今更『嫌だ』はなしだ。これからこっちはやりたくもない仕事で滅茶苦茶忙しくなりそうだってのに、俺たちが使えるやつは誰もいなかったんだ。明日は夜明けからここに来てくれ。そんでもってここに引っ越してこい」
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「ねえ、黒猫君、彼の意見も少しは聞いてあげたほうが良くない?」
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そう言って尻尾を伸ばしながらトンっとテーブルに飛び上がって私に歩み寄ってくる。
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「パットです」
「パット君。この通り黒猫君は言い方がちょっと乱暴だけど、普段は必要なことじゃなきゃこんなふうに言わないんだけど。今回はどうにもちょっと強引な気がするの。多分私も巻き込まれた仕事に私の足のことも考えて言ってくれてるんだとは思うんだけど、もし君が本当に嫌なんだったら私は仕方ないと思うよ」
パット君は今の言葉で初めて私の足が片方ないのに気づいたみたいだ。ちょっと顔を赤くしてこちらに振り向いた。
「い、いえそんな、凄く嫌とかそう言うのではないんですけど。ただ、これでも商店の小間使いと見習いをもう7年以上勤めてきたんです。いずれは商人になりたくて頑張ってきたんですが、今の仕事場ではどうしてもこのまま見習いから抜け出せる機会が来そうにないんです。ですから、ここで働かせて頂いて箔をつけて、それから他の商会に引き抜いて欲しいと思って応募したんです」
「それだったら俺たちの補佐をやってたほうがよっぽどいい箔が付くはずだぞ」
「え、だってお二人はここの厨房で働いてるんですよね」
「……お前あの騒動を見損ねたな」
どうやらパット君は黒猫君がキールさんのスチュワードであることを知らなかったらしい。道理で最初っから口調も軽かったわけだ。
ま、黒猫君、見た目は猫だしね。
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「え? それってもしかして私も頭数に入ってるの?」
「当たり前だろ。あゆみは大学も行ってたんだもんな。計算くらい出来るだろ」
「うう」
「因みにあゆみ、お前専攻はなんだったんだ?」
「言いたくない」
「はぁ?」
「絶対に言いたくない。もういいじゃん。どうせこの世界では関係ないんだから。計算ならちゃんとするからいいでしょ」
私の専攻はこの世界で最も役に立たない物の一つだと思う。恥ずかしくて今更言えない。
「ま、いいか。アリーム、ピートル、夕食の準備はどうだ?」
「ああ、こっちも終わった所だ」
「じゃあ、パンの蓋を開けてみろよ」
ピートルさんがお鍋の蓋を開けた途端、ホワリと焼き立てのパンの匂いが部屋に広がった。そのにおいだけでお腹が鳴ってしまう。
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