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第6章 森

* ここまで(1〜5章)のお話(あゆみ談)

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1~5章のまとめです。一応間話としても読めますが、読み飛ばしても問題ありません。

ーーーーー

 始発電車で向かいに座った男性が、正にドンピシャ私のモロ好みだった!

 ↑ここ、「私」ことあゆみの運命の恋が始まるとこだったはず。なのに、突然の電車事故に巻き込まれ、私はなぜか異世界へ。その事故で片足を失った私は、担ぎ込まれた洞窟のような砦で黒猫に出会い、その存在に癒され徐々に異世界に馴染んでく。
 だけどその黒猫君、実は魔法で猫にされた王子様だったのです──じゃあなくて。
 正しくは、死にかけてた体から精神だけ猫に移された転生モドキ、中身は「私のモロ好み」の顔だった人。
 そんなこととは露知らず、猫だと安心しきってしばらくお世話してた私。
 ところが折角避難してた洞窟も、恐ろしい狼人族の急襲で夜逃げのように逃げ出すハメに。
 ハーフエルフのテリースさんと軍の隊長キールさんを頼って生活を始めるも、片足の私は生きるだけでも楽じゃない。しかも逃げ込んだ街は今も狼人族の脅威に晒されてる。お陰で他の街から隔離され、経済的にも食糧事情的にも詰んじゃってた。

 だけど黒猫君、只者じゃなかった。
 元現代人にも関わらず、なぜかサバイバルな人生を生きてきた黒猫君が、猫にも関わらず時に悪知恵を絞り、時に私たちをこき使って次々に問題を解決していく。頼りになる隊長キールさんが、実はこの世界の半分を統治する国の皇太子だってことだけは私だってちゃんと気づいてたけど。
 言いたい放題でキールさんに皇太子を名乗って街を統治しろって焚きつけた黒猫君は、私と二人でキールさんのランド・スチュワードに選ばれた。
 黒猫君は嫌がったけど、私はお役にたちたい一心で一も二もなく引き受けちゃって、でもこれ死ぬほどきついお仕事だった。
 黒猫君とキールさんが組んで、なんか手品みたいに皆を丸め込んだのはいいけれど、日が昇る前から夜中までひっきりなしに買取したり、税金の計算したり、街の税制の見直しやら住民の台帳の作り直しやら、やらなきゃいけない事は全然減らない。
 因みに黒猫君、人化した。うん、帰ってきたよ、あの「モロ好み」の顔が。まあ、それで私が個人的に色々とっても困ったのは横に置いておいて。

 そんな中、キールさんの執政官に選んだタッカーさんの裏切りで、私は眠らされてる間に狼人族の人質に。狼人族に拐われた私を心配しつつも、裏切り者タッカーさんの企てが相次ぎ、皆が待ち望んだ麦も実っちゃって、黒猫君とキールさん忙しくて全然私を迎えに来てくれない。
 片や連れ去られた私はと言えば。狼人族の皆さんの毛繕いやら、洗濯やら、料理やら、色々やって地味にいつの間にか解けこんでました。だって人付き合いが苦手な私には、ちょっと犬っぽい彼らは人間より付き合いやすかったし。
 とは言え、いつまで経っても迎えに来てくれない黒猫君たちにムカついた私は、私のゴールデン・フィンガーで籠絡した狼人族の皆さんと一計企てる。
 私が死んだと思い込んだ黒猫君、ボロボロ泣きながら怒ったりあやまったり。そこにつけ込んで、「街の代表の黒猫君」対「狼人族代表のあゆみ」、私たち二人の決闘は黒猫君が泣きながらやめてくれと懇願するほど恥ずかしいものを選ばせてもらいました。

 その結果、やっと狼人族の族長バッカスとちゃんとお話し出来て、全てはタッカーさんたちが仕組んだ対立だと判明。
 聞けばバッカスたちが街を襲った理由、それは彼らが人間の皇太子キールさんとその従者ハーフエルフテリースさんを恨んでの事だった。彼らが暮らしてたのは北の森。そこを突然軍隊が襲ってきて、沢山彼らの仲間が殺されたのだそう。そして今も捕まえられた仲間が北の鉱山で働かされてるらしい。その時、軍隊を指示してるのがキールさんだと教え込まれてた。
 無論、キールさんにそんな覚えは全くない。怪しいのはタッカーさんが働いていた裏社会の組織「連邦」と、そして鉱山で石炭を掘らせたり、蒸気機関を作らせようとしてる中央の誰か。

 蠢く裏社会の組織、王都に見え隠れする他の転移者の影。
 そして私たちは北の大都市、ナンシーを目指すことになる。
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