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番外編:二人のスイート・バレンタイン ★

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「洋介さん、ハイこれ」

 テーブルの横の棚に隠してあった紙の包みを引き出してきた私はそれを洋介さんに手渡した。

「本当にこれでよかったんですか?」
「ああ、これがよかったんだ」

 可愛らしいハートだらけの包装紙に真紅のリボン。包装だけは頑張ったけどね。これ、中身はあまり可愛くない。手作りのチョコレートケーキは夕食の時に一緒に食べたけど、こっちは別途洋介さんにリクエストされてた物だ。SNSを全くやらない洋介さんがインターネットショッピングなんてする訳もなく。前に話題に上がった時に買えるって言ったら飛びついた。

「アメリカにいた頃ハマってたんだけどね、これ。ダンが昔言ってたのを思い出したんだ」

 そう言って私が苦労して包んだ包装を気持ちいい程バリバリと破っていく。中から出てきたのは黒っぽいプラスティックのボトル。

「多分君も好きだと思うよ」

 ボトルを手に洋介さんがチラリとこちらを見る。

「バレンタインデーなんですからそれは洋介さん用ですよ」
「そこはダンに習ってバレンタインは恋人たちのものにしようか」

 そう言いながら洋介さんが微笑みを浮かべて私を脱がしにかかった。
 そう、今日は二人の二度目のバレンタインデー。去年は妊娠中で何もできなかったらから洋介さんも私もかなり気合が入ってる。以前からお願いしてあったから今夜秀仁ひでとはお隣のおじいちゃんとおばあちゃんの家にお泊りさせてもらってる。一晩預かってもらうのは初めてだしやけにお家が静かでちょっと寂しいけど、最近『バーバー』を言い始めたばかりなので二人とも喜んで預かってくれた。
 そういうわけで今日は久しぶりに二人きりで過ごすバレンタインデーなのだ。
 とはいえ。
 平日なので洋介さんは通常通り残業してたから帰ってきたのはかなり遅かった。それでも夕食も終わってケーキも食べて。その他やらなきゃならないことは全部済んでたけど。
 パジャマに着替えつつも今日はその下にしっかり下着を着けている。これには色々事情があって。
 とにかく私は立ったままダイニングテーブルの前ですっかりパジャマを脱がされて、下着だけの頼りない姿で洋介さんの前に立たされた。しかもダイニングの明るいテーブルライトに照らし出される中で。
 朝から今日はここで、って言われてはいたけどそれでもこれはやっぱり恥ずかしい。恥ずかしいけどこれもバレンタインのプレゼントの一つだと思って我慢してるんだよ。

「僕の奥さんは綺麗だからそのままでも充分なんだけどね」
「洋介さんこれちょっと恥ずかしい」

 何となく腕で胸を覆って隠しながら文句を言ったのに逆に洋介さんに優しく外されてしまった。
 この状況自体かなり恥ずかしいんだけど、実は今日はそれだけじゃなかったりする。

 今朝目を覚ましたら洋介さんがベッドにトレーに乗ったコーヒーを持ってきてくれてその横に乗せられた可愛らしいバラのブーケと『これ』を一緒にプレゼントしてくれたのだ。「今夜はこれ着て待っててくれ」っておねだり付きで。
 素敵なパッケージの箱を開いて丁寧に畳まれた薄葉紙を捲るとそこに現れたのは……ちょっとエッチな下着。
 ブラとショーツお揃いの黒の下着は総レースでスケスケ。下着というよりは飾りリボンのような生地の面積がかなり頼りない下着。それにガータベルトと肌の綺麗に透ける黒の薄いストッキングまで揃ってた。ガーターベルトなんて今まで付けた事もなかったから洋介さんが帰ってくる前にインターネットで付け方調べてしまった。
 脱がされるのはともかくいつものパジャマの下からこんな下着が出てくるのが凄く変な気分。

「よく似合ってる。綺麗だ」
「洋介さん……」

 今日も残業で遅かった洋介さんは一人まだスーツのままで私を抱き寄せる。それでなくともこんな場所で私だけ下着姿なのがいつも以上に恥ずかしいのに、洋介さんとほぼ裸で抱き合う自分の姿がダイニングの横の姿見に映ってて輪をかけて恥ずかしい。それを気にして私が顔を背けてるのに気づいた洋介さんが小さく笑ってポケットを探り出した。

「これも着けなくちゃね」

 そう言って洋介さんが小さな平べったい箱をポケットから取り出す。洋介さんは自分で箱を開けて中から今朝同様、丁寧に薄葉紙に包まれてた下着と同布の帯を取り出した。その正体が分からなくて私が首をかしげると洋介さんが薄く笑って私の後ろに回り込む。
 すぐに何かがスッと私の目の上を覆い洋介さんが器用に後ろでそれを結った。
 これ目隠し!
 でも……でもレースでできたそれは目隠しなのに全然見えちゃう。見えちゃうけど突然レース越しになった世界は黒い影のせいで同じダイニングなのに別世界みたいに感じた。
 これも下着同様、着けてるほうが着けてないより恥ずかしいよ。

「よく見せて」

 私が恥ずかしがってるのを分かっていて洋介さんが私を抱き上げてテーブルに腰掛けさせる。しかもちょうど姿見の前に来る位置で。これ絶対わざとだよね。
 そのまま洋介さんは少し横にずれて鏡に映る私の姿を満足そうに見つめてる。鏡越しの洋介さんの視線にさらされて体中がポッポと熱を持ち始めた。

「本来バレンタインは男性も女性にプレゼントを送る日だからね。折角だから思いっきり君を飾ってみたかったんだ」

 そう言う洋介さんは目を少し細めてネクタイを緩めながら私の様子をじっと見つめてくる。見られてるだけで心臓がドキドキと高鳴り下腹部に熱がだんだん集まってくるのが分かる。

「じゃあ最後の仕上げを始めようか」

 そう言った洋介さんはテーブルに置かれていたさっき私がプレゼントしたボトルに手を伸ばす。
 『Her〇hey’s』って白抜きで書かれた黒っぽいそれはチョコレートソースのボトル。まあ何に使われるのかは流石に私だって予想はしてるけど。分かってても実際に手にされると余計ドキドキしてしまう。
 しかも私が二階で着替えをしてる間に洋介さん、しっかりテーブルクロスをビニールの見た事もない奴に替えちゃってるし、テーブルには買った覚えもないイチゴがクリスタルの小さなお皿に乗せられて用意してあるし。今日の洋介さん、手加減なくエッチだよ。
 洋介さんは中の封を切ってボトルを開けてテーブルに用意してあったイチゴにほんのちょっとチョコレートを絞り出した。絞り出されたチョコレートが真っ赤なイチゴを徐々にコーティングしていく。まだソースが滴りそうなイチゴを一つ指で掴んだ洋介さんがそれを私の目の前に差し出した。
 思わずぱっくり食いついちゃうと甘酸っぱいイチゴとネットリと甘いチョコレートの味が口いっぱいに広がった。私のほっぺたが勝手に綻んでそれを見た洋介さんが嬉しそうにほほ笑んでる。

「彩音、今度は咥えてて」

 もう一度同じようにチョコレートでコーティングされたイチゴを差し出して洋介さんが甘い声でお願いしてくる。私が言われるままにそれを歯で軽く食んで突き出すように咥えると、洋介さんが待ちきれないというように私の頭を支えながらそのイチゴに齧り付いてきた。洋介さんの唇がイチゴごと私の唇を濡らす。すぐに柔らかいイチゴが二人の歯の間で潰れ、イチゴの汁が私の唇から首へと滴った。それを洋介さんがそのまま唇を私の肌に這わせながら下へ下へと追っていく。
 胸を覆う下着のすぐ上でやっと滴りの先端に追いついた洋介さんが、そのまま何度も下着の際にキスを落とす。

「ん……」

 甘い洋介さんのキスが気持ちよくて、でもその様子が透けるレースと鏡越しに視界に広がってて私はあまりにドキドキし過ぎて頭がぼーっとしてきた。

「今度はこっちにも」

 そう言って洋介さんが手の中のボトルを私の下着の上にかざして優しく絞るとその先端からトロリと濃い茶色のソースが私の胸の先端に滴り落ちる。

「あん!」

 レースのブラは全然乳首を守ってくれなくて、チョコレートソースのネットリとした感触が直で伝わってきてつい声がでちゃった。一度乳首に絡んだ後、また下にこぼれ落ちそうになるチョコレートソースを洋介さんの舌が下着ごと舐め上げる。
 そのまま洋介さんの熱い舌がチョコレートを広げながらネロネロと私の乳首の辺りを這いまわり始めた。

「あんっ……アァ……」

 声が漏れる私を洋介さんは嬉しそうに時々見上げながら両手で私の胸を少し持ち上げるように優しく揉み上げながら美味しそうに舐め続ける。
 舌で掬えるチョコレートがなくなっても洋介さんったら全然止めてくれない。下着ごと私の乳首を吸い上げる音がいつものダイニングに響いて余計私を追い詰めてくる。
 最後に唇を離した洋介さんが私の敏感になった乳首を指で突きながら呟いた。

「彩音の乳首、イチゴみたいに赤くなったね」
「ひ、も、もう恥ずかしいからおしまいに──」
「ダメ。今日は目いっぱいチョコレートを味合わせてもらうつもりだから」

 そういってまた反対の乳首にもチョコレートソースをたっぷりとこぼした洋介さんが私を見上げながらそれをまた艶めかしい舌使いで舐め取っていく。黒い下着のレースが洋介さんの唾液で濡れてテカり、その下で自分の乳首が起立してるのが見える。しかも洋介さんごと全ての痴態が鏡の中に映し出されてて、自分でも自分とは思えない、レースを纏った淫靡な姿までしっかり見えちゃう。どこに目をやっても恥ずかしくてエッチで頭がどんどんその快感だけに集中して私はいつの間にか洋介さんの頭を抱え込んでた。
 洋介さんに執拗に嬲られて両方の乳首がしっかりと赤く熟れた頃、洋介さんが今度は私を抱き上げて転がし、テーブルに私の上半身をうつぶせにする。起立した乳首がレースの下着ごしに少し冷たいビニールのテーブルクロスに押し当てられ、乳房が自分の体重で潰されて喉の奥で声が鳴った。

「テーブルに擦れただけで声が出るほど気持ちいい?」

 容赦なく洋介さんがそれを耳元で指摘してくる。テーブルの上に上半身を寝かせた私はなんかまな板の鯉の気分。洋介さんにされるがまま、まるっきり抵抗する気が出てこない。

「今度はこっちも飾ろうね」
「ひぁあ!」

 洋介さんの言葉と背中に生ぬるいトロリとした感触が落ちてくるのが一緒だった。思わず声が上がっちゃった。

「あれ、出しすぎたかな。ちょっと待って」

 目の前に洋介さんの手が伸びてきてイチゴを一つ拾って背中にそれを転がす。濡れたイチゴがちょっと冷たくてゾクゾクと寒気が背中を走った。でもすぐに洋介さんの大きな手がテーブルにうつぶせになったせいで横を向いてる私の唇にチョコレートソースを絡めた大きなイチゴを押し当て中に押し込む。

「食べて」

 言われるままに私がその大きなイチゴを頬張り何とか咀嚼してる間に洋介さんの舌が背中を這いまわり始めた。チョコレートを少し引き伸ばしては洋介さんの舌がスルスルと私の肌を舐め上げていく。肩甲骨の上の辺りから首の下、背骨の上、ブラの後ろ。
 口いっぱいにイチゴが入っててまだ飲み込めなくて声が上げられない私は身じろぎするしかない。そんな私の突き出されてる下半身に舌を這わす洋介さんの下半身がピッタリと押し当てられた。熱を持った洋介さん自身が私の薄い下着と洋介さんのスラックス越しに感じられる。
 ああ、もう硬くなってる……
 だけど洋介さんは執拗に私の背中を舐めまわして中々先に進んでくれない。時々ほんの少し腰を揺らして私の下半身を刺激してくる。それが凄くエッチで切なくて。
 ひどいよ、こんなの拷問みたい。快感が背中化から下半身からせりあがってきて、息が上がってきちゃう。そのままテーブルに押し倒された私の背中をチョコレートソースを垂らしながらゆっくりと下がってきた洋介さんの舌がとうとう腰の上の辺りを這いまわり始めた。 

「んん…あ、やぁ……」

 顔の片側をテーブルに押し付けてるせいで自分の喘ぎ声が近くで反射して余計恥ずかしい。目隠しのおかげで視界がはっきりしないのがせめてもの救いだ。
 それでも洋介さんの舌、ほんとに気持ちよくて腰がガクガク勝手に揺れそうになる。思わず手を付いて立ち上がろうとすると洋介さんが優しく私の手を掴んで後ろに合わせ、自分のネクタイで結わき上げちゃった。

「洋介さん……」
「しばらくそのまま大人しくしてて」

 洋介さんの拘束はいつも優しくて、つい流されて私は受け入れちゃう。だってきっと私が本気で抵抗すれば洋介さんもう二度としてくれない気がするから。洋介さんは本当はすごく優しくて、これも決して私を傷つけるようなものではなく、私をより感じさせるためだって知ってしまってる。だから洋介さんの拘束は結局気持ちいい。
 それでも流石にこれでおしまいだと思ってた私は甘かった。チョコレートソースがまた垂らされて洋介さんの舌がそのまままだ下にさがってく。左右のお尻の上にも舌が這いまわり、レース越しにお尻の間の谷間にも舌が這う。
 も、もうそれ以上は流石にダメ!

「洋介さん、それ以上は……」

 なんとか絞り出した声に洋介さんの舌がぴたりと止まった。

「そうだね。じゃあ脱がせてあげるから少し腰を浮かせて」

 これ以上舐められるよりは、っと受け入れたのに下着を下ろす洋介さんの指がゆっくりと私の腰から太ももを撫でおろしていく。そ、そんな下ろし方したら絶対見えてる!
 私からは見えないけど分かっちゃうよ、洋介さんの視線がなぜか感じられちゃう。それだけで……勝手にそこに熱が集まってじっとりと濡れていくのが自分でも分かって余計ジンジンと熱くなってくる。
 しかも今まで洋介さんの舌で執拗に愛撫を繰り返されてたせいで敏感になってる私の肌は洋介さんの指先の動きに過剰に反応して膝が快感に震え出した。
 それでもやっと下着を下ろされてこれで普通に始まるって思ったのに。

「今度はこっちで咥えて」

 えっと思ったらとんでもない事された!
 クチュリと小さな水音がして洋介さんの指が私のそこにイチゴを埋め込む。その上からネットリとチョコレートソースが掛けられて。

「今日のメイン」
「え、いやぁ…アァァ、ちょ、やぁあ」

 そうつぶやいた洋介さんがそのままそこにしゃぶりついた。唇が全体を優しく食んで続けてチョコレートを舐め上げる洋介さんの舌が容赦なく私の秘裂を引きずる様に一緒に舐め上げてく。中に押し込まれたイチゴを洋介さんの舌が押し転がされて入り口をグリグリと何度も刺激してくる。恥ずかしいのと気持ちいいのとでもう声が止まらない。

「イチゴが潰れてきたよ。美味しいの?」
「ち、ちがぁぁぁぁ、やぁぁぁ、んぁっ」

 やめて、そんな事聞かないで!
 そう叫ぶはずが洋介さんの唇がイチゴから滴った汁気ごと私の花芯を吸い上げて声が言葉にならない。そのまま洋介さんの舌が器用に私の中からイチゴを掘り出し始める。洋介さんの舌の蠢く感触、イチゴの潰れる音とそこに堪った蜜を洋介さんの舌が掻きまわす音、全部しっかり聞こえてもう何も考えられなくなってきた。

「入れるよ」

 少しくぐもった洋介さんの声が聞こえたけどその頃にはもう頭はチカチカしてて洋介さんがいつスラックスを脱いだのかも分からない。しっかりと洋介さんの舌に解された私の入り口に今度は熱い洋介さんの物が押し当てらえる。ゆっくりと少し柔らかい傘が私の入り口を何度も押し開いてはまた抜き取られる。

「入れる度に滴ってくるよ」

 言われなくても分かってる。入っては出される洋介さんの熱い肉の感触にどんどんヌメリが増えてきてるから。そして数回それを繰り返した洋介さんがそのままゆっくりと奥まで押し入ってきた。

「アアァ……」
「んぁ……」

 自分のうめき声に洋介さんの呻きが重なった。珍しい洋介さんの色っぽい声に一気に中が収縮しちゃう。洋介さんはまるでそれをじっくりと味わうようにそのまま中で動かない。

「今度は彩音が食べる番だな」

 声と共にすっかり敏感になってる私の背中を洋介さんの指先が何度も撫で下げていく。その度にあまりの快感に勝手に中がキュッキュッと締まって私の中を一番奥まで満たしている洋介さんのそれに思いっきり喰い付いてしまう。

「美味しい?」

 言えないよ、そんな事。でも意地悪な洋介さんが無言で通すのを許してくれるわけがない。

「ちゃんと答えて」

 そう言って今度は少し爪を立てながら私の太ももからお尻まで撫で上げた。一気に電気が走ったように背中がわなないて中が震えるほど締まっちゃう。

「言わないと動いてあげないよ」

 そう言って一度だけ、ぐっと腰を前に押し出してテーブルのせいで逃げられない私の奥を軽く押し上げる。でも私が歓喜の呻きを上げた途端スッと腰を引いてやめてしまった。
 一度味わってしまったその奥の快感はただただ私を飢えさせる。奥が切ない、奥が欲しい。もっと。言わないと貰えない。

「美味しいの。洋介さんの。もっと欲しいぃぃぃアァ!」

 私の言葉が終わらないうちに一気に腰を振り付けて洋介さんが私の最奥に快感の楔を打ち込む。一時に激しい快感がそのまま頭の頂点まで駆け抜けた。そのまま何度もガッガッと洋介さんの物が奥を穿つ。

「いっぱい、食べさせて、あげるから、もっと、言って」
「ほ、欲しい、もっと、もっと」

 洋介さんのそれに突き貫かれて思考が完全に崩れてただ欲望だけがあふれ出して。恥ずかしいのなんてどこにもなくてただ洋介さんが欲しくて。何度も何度も求めねだって洋介さんの物にしゃぶりつく。

「中にいくよ、飲み込んで」

 言われるまでもなく洋介さんの膨れ上がった熱を私の奥が喉を鳴らすようにうねって吐き出されるものをことごとく飲み込んでいく。
 子宮で味わってると感じられるほど、それはしっかりと私の中心を温めてくれた。


「洋介さん、気持ちよかったけどね」
「……ん?」

 最低限体裁を整えてくれた洋介さんにソファーでだっこされながら私もしばらく余韻を楽しんでたんだけど。少しして意識がはっきりしてきた私はぐったりとして反応が鈍い洋介さんにテーブルを指さしながら物申した。

「あれ、後片付けが凄く恥ずかしいんですけど」

 テーブルの上には潰れたイチゴとチョコレートソースが点々と広がってる。テーブルの下には脱ぎ捨てた黒いレースの下着。それからあまり言いたくない何か色々床に広がってる。
 やってる間あまりに熱中しすぎてたから余計その名残が恥ずかしい。

「そうだな。彩音はシャワーに行っておいで。後は僕がやるよ」

 洋介さんが苦笑いしながら私を起こし上げてくれる。

「え、でも……」
「明日朝日の下で見たら君きっと悶死するだろ」

 た、確かに。
 そう言って甘い甘い私の旦那様は私を一人お風呂に送り出してくる。お言葉に甘えて立ち上がってフラフラと二階に向かう私の背中に洋介さんの声が響いた。

「それで懲りちゃったら困るからね」

 ……これってまたやる宣言、だよね?
 でもそれも悪くないかも。だって私も洋介さんと一緒にバレンタインをとことん楽しめたんだから。

二人のスイート・バレンタイン(完)


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