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短編 山口さんと私の新しい関係(ロス編)4 (完)
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次の日。
私達が目覚ましで起こされた頃にはダンさんは既に朝食を終えて車をわざわざこのホテルまで持ってきてくれていた。
私達も朝食を簡単に終わらせてフィアットに乗り込む。
「そろそろでよう。ダウンタウンでこむよ」
「そうだな」
私達は昨日来た道を引き返す。
海岸が朝日で輝いてる。
ランニングやウォーキングをしてる人たち、もう海に入っているサーファー、皆景色と一緒に後ろに飛んでいって思い出になっていく。
「直接LAX……『くうこう』に行く?」
「いや、この車で5人は無理だろう」
「お父さんは自分でレンタカー借りるって言ってました」
「ああ、広川さんはこちらの免許持ってらっしゃるんだな」
「もともとホテルまで来ると言っていましたから。飛行場で落ち合うのでもホテルに来るのを待つのでも大丈夫ですよ」
「じゃあ僕は一度ホテルに戻りたい。この格好でご挨拶というわけにも行かないよ」
私は別にいいと思うのだが洋介さんは気になるらしい。
洋介さんの要望でホテルに直行が決まる。
そこでふと気づいた。
「ダンさん、お仕事はいいんですか?」
「ヨウスケいる間は仕事お休みもらいました。大切な『接待』です」
ダンさんがバックミラーの中からニンマリ笑って答えてくれる。
「その割に最初の2日は僕に声かけて直ぐ姿が見えなかったが?」
「自分のお仕事してました。カンファレンスでブースに入ってたんです。ヨウスケ忙しくて来てくれませんでした」
「ああ、今回はブース回る余裕は無かったな」
ハイウェイは確かに途中から混み始めてダンさんがダウンタウンだという辺りはズラリと列になって止まってしまう。
「朝のトラフィックジャム。仕方ありません。新宿駅よりはベターです」
「まあ、この辺だけだからな。もう少し遅ければ良かったか」
景色が横に広いロサンゼルスで、ここだけがちょっと都心の様に感じられる。
半地下のハイウェイをノロノロ進む車から道沿いのビルを見上げれば、それでもそこら中に緑があってやっぱり何か違う。
「ロサンゼルスって結構緑が多いですよね」
「緑は全て人間のどりょくです。ロスは雨がとっても少ないです。スプリンクラー絶対必要。水あげないと育ちません。デザートです」
「え? デザートって砂漠ですか?」
「そうです。ここはオレ達人間がいるから街です」
不思議。
東京みたいに人間が開発して緑が減るのとは逆に人が水をあげないと砂漠になっちゃう街なんだ。
だから余計緑にこだわるのかな。
そう思って外を見るとなんだかすごく健気に見えてきた。
ホテルに付くとダンさんはちょっと買い物に行くと言って私達を下ろして行ってしまった。
「一度上に戻ろう」
洋介さんに促されて部屋に戻る。
洋介さんはシャワーを浴びたいらしい。
私も入ってもいいか聞くと「今日は駄目」っと悔しそうに答える。
「これから君のご両親にご挨拶するのに今ここで始めちゃうのはマズい」
本当に変に生真面目だよね、洋介さん。
言うとまたオジサマだと思ってると言って拗ねるので大人しく退散した。
今のうちに着替えてしまおう。
昨日は化粧水もないのでモーテルのシャワーは簡単に身体を流すくらいしかしてない。
時間的に今シャワーは使えなくてもやっぱり同じ服のままはちょっといやだ。
洋介さんがシャワーに入っている間にさっさと着替えを済ませてしまう。
ここまで来てもやっぱりなんだか着替えを見られるのは恥ずかしい。
洋介さんと入れ替わりでお風呂場に入って化粧をやり直す。
昨日は化粧を落とす事もできなかった。
元々薄い化粧だから目立たなかったと思うけど、お肌には非常に良くない。
お陰で今日は化粧が全然乗らない。
すると両親に合うのも全部面倒くさくなってくる。
お父さん、拗ねるかな?
お母さんに笑われそう。
ちょっとだけ緊張してきた。
風呂場を出るとキッチリとスーツを着込んだ洋介さんが鏡の前でネクタイを締めている。
眼鏡の向こうの目が前みたいにちょっと怖い。
「洋介さん、もしかして緊張してますか?」
「当たり前だろ」
憮然として答える。
「挨拶の言葉は色々なパターン研究して準備してあるけど何を聞かれるかによってはどう答えたらいいか……」
「へ? 研究?」
「プレゼンと同じだ。どうやって僕を売り込んだら彩音との結婚を許してもらえるか。絶対失敗できない」
「そ、そんな堅苦しく考えなくても単に私の両親に顔を合わせて結婚の報告をするだけじゃないですか」
「それは違うぞ。僕は彩音ちゃんのご両親に彩音ちゃんを貰いに行くんだ。報告じゃない。これからも離れて暮らすご両親に安心して彩音ちゃんを任せられると思ってもらいたいんだよ」
うわ、ちょっとジンとしてしまった。
どうも洋介さんは私が思っていた以上に色々ちゃんと考えて結婚を申し込んでくれてたみたいだ。
私的には自然にそれがいいなって思っただけだったんだけど。
「あ、ありがとうございます。私も洋介さんのご両親にご挨拶に行きたいです」
「それはいつでもいいよ。どうせ母も姉も東京だからいつでも会えるし。それに父にはもう挨拶してくれただろう」
以前ちょっとだけ経緯を聞いたんだけど洋介さんのお父さんはもう亡くなっているのだ。
前に閉め切られていて中が覗けなかった日本間には簡素な仏壇があった。
この旅行の前に始めて通して貰ってご挨拶のお線香をあげさせてもらってきたのだ。
「じゃあ帰国後セッティングして下さいね」
「ああ。喜ぶと思うぞ」
--- ・ ---
ホテルの受付けから部屋に連絡が入り、下のロビーに降りていくと両親が座ってお茶をしていた。
「洋介君。お久しぶり」
「広川さんお久しぶりです。わざわざこちらまで出向いて頂いてしまって申し訳ありません」
「いや構わないよ。出張で来ている君より僕達の方が動きやすいからね」
それにこっちの方が近いし、っと言う父を母が何かたしなめてる。
お母さんが目でサインを送ってくる。
ん?
またお父さん何か余計な事企んでる?
父は見た目常識人の硬そうな人間なのに時々突拍子もない事をして周りを巻き込む。
大抵はお母さんが最初に気付いて抑えてくれるのだが……
「それで? 二人の馴れ初めは?」
ロビーの一角のソファーにみんなで座った途端態度の変わったぶすっとした父が斜に構えて聞いてきた。
『ストーカー』と『覗き』ですとは間違っても言えない。
「本の趣味が似ていてそれで話が弾みまして……」
洋介さんが苦しい言い訳を始めた。
「ほう、洋介君はどんな物を読むんだい?」
多分お父さんは趣味が似ていてと言う言い訳自体を疑ったのだろう。
「彩音さんも僕も山本先生の本が好きで二人揃って『橋立』シリーズを全巻揃えた順番などで盛り上がっています」
そう山本先生の本は数少ない人様に言える二人共通の好きな本なのだ。
「ああ、あの本は結構古いからなぁ。新しい世代には何処から読んでいいか分かりづらいよな」
そうなのだ。山本先生の本にはシリーズの番号が付いていない。表紙の裏を確認したりウィキで確認しないとどの本がどの本の次か分かりづらいのだ。
「『山本ますみ』の『橋立』シリーズは今でも人気が高いからなぁ。あれを読むのなら池宮平治の『剣人』シリーズなんかも好きなんじゃないかい?」
「『剣人』シリーズは全巻ハードカバーで揃えています。古い巻は古書店で買い求めました」
「じゃあ、あの二巻と三巻の間に一冊短編が本当は入る筈なのを知っているかい?」
「え?」
してやったりとニカリと父が笑った。
「小説○○で連載されていた時にはあったんだが、ページの折り合いがつかない中途半端な長さだった為に結局バードカバーには出なかったんだ」
「っし、知りませんでした」
「よかったら今度貸してあげよう。その雑誌は保存してあるんだよ」
「宜しいんですか? ぜ、是非」
「ああ、彩音に場所を教えておくから後で届けさせよう」
よ、洋介さんの目が見た事もないほど輝いてる!
ず、ずるい、このままじゃお父さんに洋介さん取られちゃう!
勝手に二人だけで私の知らない小説の話でどんどん盛り上がっていってしまう二人をお母さんが制してくれる。
「ほらあなた、あなたが洋介さんを独り占めにするから彩音が妬いてますよ」
「別に妬いてなんかいません。ただそろそろお話を進めてほしいなって」
二人そろってゴホンとわざとらしい咳ばらいをしてこちらに向き直った。
「分かった分かった。洋介君。この通り彩音は一人っ子で本や漫画にばかりかまけて余り世間を知らないトボケた娘だが、これで君は本当にいいのかい?」
洋介さんはきちんと座り直し、父と母に向かい合って言葉を紡いだ。
「僕にとって彩音さんは生涯一人だけの特別な女性です。彼女と結婚出来ないのであれば多分僕は生涯独身を通す事になると思います」
そしてそれは私も同じだ。
洋介さんの言葉に自分の心がしっかり重なって凄く心強い。
「そうか。……そこまで言うなら、明日式を上げても大丈夫だな」
「え?」
「へ?」
「お父さん。それはいくら何でも行き過ぎだって言いましたよね!」
「何を言っている。僕達が一緒にいる今のうちに済ませてしまえば一石二鳥じゃないか」
「そんな事で結婚を急がせる人がいますか」
「なに、二人共パスポートはあるんだ。ちょっと行ってちょっと上げて帰ってくればいい」
話が見えません、お父さん。
いつもの事ながら父の思い付きでの行動はお母さん以外には理解できない。
「お父さん、お母さん、何を言ってるの?」
「ラスベガスに今から行けば明日の朝にはお前達夫婦になれるぞ。身分証明もパスポートがあれば充分だそうだ。若いもんが付き合い始めて長引くとろくな事が無い。とっとと結婚してしまいなさい」
うわ、久しぶりの無茶振りが出た!
暫く一緒に住んでなかったからすっかり忘れてたよ。
お父さんはこういう人だった。
「そ、それは流石に山口さんにご迷惑です……」
私が取りなそうとすると洋介さんが顔を輝かせてお父さんに向き直る。
「じゃ、じゃあ彩音さんとの結婚を許して頂けるんですね! 彩音ちゃん、今すぐ電話して今日のフライト取ってくる。お義父さんお義母さんもラスベガスに2泊されますよね? ホテルはツインとダブルどちらがい良いですか? ああ、確かウエディングドレスの店がダウンタウンにあったはずだ。ダンを捕まえないと……」
「や、山口さん、落ち着いて、待っていくら何でも今日の明日は……」
騒ぎ出した私の肩をガッシリ掴んで洋介さんが私を見つめる。
「彩音ちゃん、分かってるか? 結婚できるんだぞ。今。3ヶ月後でも5ヶ月後でも10ヶ月後でもなく今」
座り切った真剣な眼差しがはっきりと洋介さんの内心を伝えてくる。
ああ。そうですか。
そんなに証拠隠滅したいんですね。
良く分かりました。
私はもう諦めた。
土台最初から普通の結婚にはならないと思ってたし。
いきなりお休みから帰って来て名字が変わってたら部長、なんて言うかなぁ。
そんな事を考えている間にも洋介さんは電話をかけに飛び出して行ってしまった。
--- ・ ---
「彩音、本当にこれで良かったの?」
「もちろん。お母さんも知ってるでしょ? 私結婚なんて出来るとは思ってなかったんだから。結婚式に夢とかなかったし」
「いえ、そう言う事を言ってるんじゃないの。もう少し心の準備とか要らなかったの?」
普通はそうなんだろうな。
でも私にとって普通ってあまり意味ないみたいだし。
「別に心は決まってるから大丈夫よ。洋介さんも同じだと思うし」
多分今頃ゴム無しバンザイとか思っている可能性はちょっとあるけど。
私は小さな教会の控室で自分たちの番が回ってくるのを待っている。
ここみたいにその日のうちに結婚が出来る教会は一日に何組も上げるのでこうやって順番待ちになるのだ。
洋介さんもお父さんと別の部屋で待っている。
さっき係の人が今日の原稿を持ってきてくれた。
この通りに進むらしいんだけど私にはほとんど読めない。
洋介さんの説明によるとリピートしろと言われたら同じ事を繰り返せばいいだけらしい。
プロテスタント式と市民式と選べると言われて二人共宗教を持っていないので市民式と言ったら原稿が逆に長くなった。
ダンさんも急遽駆けつけて新郎のサポートをするベストマンをしながら写真を取ってくれるらしい。
「ヨウスケ、ショトガンマリッジなんてサイコーです!」
とわけ分からない盛り上がりを見せるダンさんに洋介さんが慌てて否定していた。
「ベガスで結婚するからって出来ちゃった訳じゃないから。違うから」
そう言い訳を続ける洋介さんは、実はラスベガスに到着してすぐダンさんに『ベストマンの大切な仕事です』と言って連れ出されたまま昨日は帰って来なかった。
私は私で昨日は久々の親子水入らずで父と二人……カジノで徹夜してしまった。
一人ちゃんと部屋で寝てた母に次の日全員そろってクマ作ってて怒られて。
よくよく話を聞けば、ここで結婚しても日本のお役所で別途結婚届を出す必要があるそうで、すぐに名字は変わらないのだそうだ。
部長に先に説明するくらいの時間はありそうだ。
私はもうウェディングドレスも着込んで髪も顔も全て近くのサロンでしてもらって準備万端なのに、お母さんは普通に無難なグレーのスーツ。
流石に今回はお父さんのわがままが通るとは思わなかったそうだ。
「ほら、もうすぐ呼びに来るみたいよ。支度して」
急いでベールをおろしてブーケを手にする。
会場の前にはお父さんが立っていた。ちょうどいいので立ったままだけど今の内にやってしまう。
「お父さんお母さん、今までありがとうございました。私、お嫁に行きます」
「……ああ。嫌になったらいつでも帰ってこい。どうせ隣なんだから」
「お父さん! 縁起でもない。彩音、簡単に帰ってくるんじゃありませんよ。ちゃんと洋介さんに愛想尽かされない様に頑張りなさい」
私はお父さんに手を取られてドアを開ける。
短い赤い絨毯の先には一段高くなった所に説教用の教壇があり、その向こうにはメガネをかけた優しい目のオバサマが白いローブを着て立っている。
今朝見たときにあった十字架が外されて代わりに旗が掛かっている。
その横には。
白のタキシードを着た洋介さんがブルーグレーのタキシードのダンさんと一緒に立っていた。
か、カッコイイ。
惚れ直しちゃう。
つい見惚れていて躓きそうになり、お父さんの手にしがみつく。
そこから先はよく思い出せない。
顔がニマニマ笑ってしまって元に戻らなかったのだけはよく覚えてる。
壇上のオバサマの言葉を一生懸命繰り返したけどダンさんが笑いを堪えていた。
そして私達は誓いのキスをして。
仮の結婚証書を頂きました。
数ヶ月後に本物が届くのだそうです。
「僕は乗らないぞ!」
「ヨウスケ、運転出来ないです。オレがします」
誰が頼んだの? ってきっとダンさんだよねこれ。
式場の目の前には真っ白なフィアットが後に缶カラ付きで待っていた。
ジャストマリッジとピンクのペンキでロゴ付きの。
後ろで缶カラがカラコロいう車でラスベガスの道を走るとそこら中からお祝いが飛んできて恥ずかしいの何の。
ダンさん一人が悪びれもせず大喜びで手なんか振ってるし。
普通にタクシーでホテルに着いた両親はそこから直接ニューヨークに戻るということでダンさんが明日空港まで送ってくれるそうだ。
私と山口さん、いえ、洋介さんは。
もう後の事はそれぞれに任せて両親にもお別れを言ってホテルの一室に二人で直行。
周り中の生やさしい目が痛い痛い。
でも今日だけは誰にも文句言われないし。
初めてじゃない初夜はシャンパン飲んで盛り上がって、でもある意味今までで一番普通に一番ゆっくり愛し合って。
「彩音。幸せになろうな」
「なりましょうね」
二人で手を繋いで眠った。
怒涛のロサンゼルス旅行を終えて日本に帰国して。
生活?
何も変わらなかったりする。
結局来年度末でお父さんの帰国が決まり、二人が帰って来るまでこのまま私は両親の家の面倒を見ながら仕事を続ける事になったのだ。
まだ週末婚が暫く続きそう。
それでも帰国後、籍を入れて晴れて夫婦になってしまった私達。
未だに信じられないけど、私も山口さんになってしまった。
でもそれ以外ほとんど何も変わらない生活。
「洋介さん、私たち本当に結婚しましたっけ?」
「したから。君もう奥さんだから。実感わかなくても忘れないでくれ」
「じゃあ、あれって新婚旅行だったんでしょうか?」
「……駄目だ、違う。新婚旅行は絶対やり直すぞ」
順番がめちゃめちゃな私達は最初っから飛ばしすぎててまだまだこれから沢山の「初めて」が待ってる気がする。
だから。
夕食を一緒に食べる事が多くなって。
朝洋介さんの部屋で目覚める事が多くなって。
私の本が洋介さんの本に混ざり始めて。
そして十年、二十年して子供が出来て、おじいさんとおばあさんになっても。
ロスで洋介さんと二人、名前で呼び合う様になったみたいに。
これからもきっと毎日毎週ちょっとずつ新しい関係を私たちは二人で築いていくのだ。
いつまでも。
- 完 -
私達が目覚ましで起こされた頃にはダンさんは既に朝食を終えて車をわざわざこのホテルまで持ってきてくれていた。
私達も朝食を簡単に終わらせてフィアットに乗り込む。
「そろそろでよう。ダウンタウンでこむよ」
「そうだな」
私達は昨日来た道を引き返す。
海岸が朝日で輝いてる。
ランニングやウォーキングをしてる人たち、もう海に入っているサーファー、皆景色と一緒に後ろに飛んでいって思い出になっていく。
「直接LAX……『くうこう』に行く?」
「いや、この車で5人は無理だろう」
「お父さんは自分でレンタカー借りるって言ってました」
「ああ、広川さんはこちらの免許持ってらっしゃるんだな」
「もともとホテルまで来ると言っていましたから。飛行場で落ち合うのでもホテルに来るのを待つのでも大丈夫ですよ」
「じゃあ僕は一度ホテルに戻りたい。この格好でご挨拶というわけにも行かないよ」
私は別にいいと思うのだが洋介さんは気になるらしい。
洋介さんの要望でホテルに直行が決まる。
そこでふと気づいた。
「ダンさん、お仕事はいいんですか?」
「ヨウスケいる間は仕事お休みもらいました。大切な『接待』です」
ダンさんがバックミラーの中からニンマリ笑って答えてくれる。
「その割に最初の2日は僕に声かけて直ぐ姿が見えなかったが?」
「自分のお仕事してました。カンファレンスでブースに入ってたんです。ヨウスケ忙しくて来てくれませんでした」
「ああ、今回はブース回る余裕は無かったな」
ハイウェイは確かに途中から混み始めてダンさんがダウンタウンだという辺りはズラリと列になって止まってしまう。
「朝のトラフィックジャム。仕方ありません。新宿駅よりはベターです」
「まあ、この辺だけだからな。もう少し遅ければ良かったか」
景色が横に広いロサンゼルスで、ここだけがちょっと都心の様に感じられる。
半地下のハイウェイをノロノロ進む車から道沿いのビルを見上げれば、それでもそこら中に緑があってやっぱり何か違う。
「ロサンゼルスって結構緑が多いですよね」
「緑は全て人間のどりょくです。ロスは雨がとっても少ないです。スプリンクラー絶対必要。水あげないと育ちません。デザートです」
「え? デザートって砂漠ですか?」
「そうです。ここはオレ達人間がいるから街です」
不思議。
東京みたいに人間が開発して緑が減るのとは逆に人が水をあげないと砂漠になっちゃう街なんだ。
だから余計緑にこだわるのかな。
そう思って外を見るとなんだかすごく健気に見えてきた。
ホテルに付くとダンさんはちょっと買い物に行くと言って私達を下ろして行ってしまった。
「一度上に戻ろう」
洋介さんに促されて部屋に戻る。
洋介さんはシャワーを浴びたいらしい。
私も入ってもいいか聞くと「今日は駄目」っと悔しそうに答える。
「これから君のご両親にご挨拶するのに今ここで始めちゃうのはマズい」
本当に変に生真面目だよね、洋介さん。
言うとまたオジサマだと思ってると言って拗ねるので大人しく退散した。
今のうちに着替えてしまおう。
昨日は化粧水もないのでモーテルのシャワーは簡単に身体を流すくらいしかしてない。
時間的に今シャワーは使えなくてもやっぱり同じ服のままはちょっといやだ。
洋介さんがシャワーに入っている間にさっさと着替えを済ませてしまう。
ここまで来てもやっぱりなんだか着替えを見られるのは恥ずかしい。
洋介さんと入れ替わりでお風呂場に入って化粧をやり直す。
昨日は化粧を落とす事もできなかった。
元々薄い化粧だから目立たなかったと思うけど、お肌には非常に良くない。
お陰で今日は化粧が全然乗らない。
すると両親に合うのも全部面倒くさくなってくる。
お父さん、拗ねるかな?
お母さんに笑われそう。
ちょっとだけ緊張してきた。
風呂場を出るとキッチリとスーツを着込んだ洋介さんが鏡の前でネクタイを締めている。
眼鏡の向こうの目が前みたいにちょっと怖い。
「洋介さん、もしかして緊張してますか?」
「当たり前だろ」
憮然として答える。
「挨拶の言葉は色々なパターン研究して準備してあるけど何を聞かれるかによってはどう答えたらいいか……」
「へ? 研究?」
「プレゼンと同じだ。どうやって僕を売り込んだら彩音との結婚を許してもらえるか。絶対失敗できない」
「そ、そんな堅苦しく考えなくても単に私の両親に顔を合わせて結婚の報告をするだけじゃないですか」
「それは違うぞ。僕は彩音ちゃんのご両親に彩音ちゃんを貰いに行くんだ。報告じゃない。これからも離れて暮らすご両親に安心して彩音ちゃんを任せられると思ってもらいたいんだよ」
うわ、ちょっとジンとしてしまった。
どうも洋介さんは私が思っていた以上に色々ちゃんと考えて結婚を申し込んでくれてたみたいだ。
私的には自然にそれがいいなって思っただけだったんだけど。
「あ、ありがとうございます。私も洋介さんのご両親にご挨拶に行きたいです」
「それはいつでもいいよ。どうせ母も姉も東京だからいつでも会えるし。それに父にはもう挨拶してくれただろう」
以前ちょっとだけ経緯を聞いたんだけど洋介さんのお父さんはもう亡くなっているのだ。
前に閉め切られていて中が覗けなかった日本間には簡素な仏壇があった。
この旅行の前に始めて通して貰ってご挨拶のお線香をあげさせてもらってきたのだ。
「じゃあ帰国後セッティングして下さいね」
「ああ。喜ぶと思うぞ」
--- ・ ---
ホテルの受付けから部屋に連絡が入り、下のロビーに降りていくと両親が座ってお茶をしていた。
「洋介君。お久しぶり」
「広川さんお久しぶりです。わざわざこちらまで出向いて頂いてしまって申し訳ありません」
「いや構わないよ。出張で来ている君より僕達の方が動きやすいからね」
それにこっちの方が近いし、っと言う父を母が何かたしなめてる。
お母さんが目でサインを送ってくる。
ん?
またお父さん何か余計な事企んでる?
父は見た目常識人の硬そうな人間なのに時々突拍子もない事をして周りを巻き込む。
大抵はお母さんが最初に気付いて抑えてくれるのだが……
「それで? 二人の馴れ初めは?」
ロビーの一角のソファーにみんなで座った途端態度の変わったぶすっとした父が斜に構えて聞いてきた。
『ストーカー』と『覗き』ですとは間違っても言えない。
「本の趣味が似ていてそれで話が弾みまして……」
洋介さんが苦しい言い訳を始めた。
「ほう、洋介君はどんな物を読むんだい?」
多分お父さんは趣味が似ていてと言う言い訳自体を疑ったのだろう。
「彩音さんも僕も山本先生の本が好きで二人揃って『橋立』シリーズを全巻揃えた順番などで盛り上がっています」
そう山本先生の本は数少ない人様に言える二人共通の好きな本なのだ。
「ああ、あの本は結構古いからなぁ。新しい世代には何処から読んでいいか分かりづらいよな」
そうなのだ。山本先生の本にはシリーズの番号が付いていない。表紙の裏を確認したりウィキで確認しないとどの本がどの本の次か分かりづらいのだ。
「『山本ますみ』の『橋立』シリーズは今でも人気が高いからなぁ。あれを読むのなら池宮平治の『剣人』シリーズなんかも好きなんじゃないかい?」
「『剣人』シリーズは全巻ハードカバーで揃えています。古い巻は古書店で買い求めました」
「じゃあ、あの二巻と三巻の間に一冊短編が本当は入る筈なのを知っているかい?」
「え?」
してやったりとニカリと父が笑った。
「小説○○で連載されていた時にはあったんだが、ページの折り合いがつかない中途半端な長さだった為に結局バードカバーには出なかったんだ」
「っし、知りませんでした」
「よかったら今度貸してあげよう。その雑誌は保存してあるんだよ」
「宜しいんですか? ぜ、是非」
「ああ、彩音に場所を教えておくから後で届けさせよう」
よ、洋介さんの目が見た事もないほど輝いてる!
ず、ずるい、このままじゃお父さんに洋介さん取られちゃう!
勝手に二人だけで私の知らない小説の話でどんどん盛り上がっていってしまう二人をお母さんが制してくれる。
「ほらあなた、あなたが洋介さんを独り占めにするから彩音が妬いてますよ」
「別に妬いてなんかいません。ただそろそろお話を進めてほしいなって」
二人そろってゴホンとわざとらしい咳ばらいをしてこちらに向き直った。
「分かった分かった。洋介君。この通り彩音は一人っ子で本や漫画にばかりかまけて余り世間を知らないトボケた娘だが、これで君は本当にいいのかい?」
洋介さんはきちんと座り直し、父と母に向かい合って言葉を紡いだ。
「僕にとって彩音さんは生涯一人だけの特別な女性です。彼女と結婚出来ないのであれば多分僕は生涯独身を通す事になると思います」
そしてそれは私も同じだ。
洋介さんの言葉に自分の心がしっかり重なって凄く心強い。
「そうか。……そこまで言うなら、明日式を上げても大丈夫だな」
「え?」
「へ?」
「お父さん。それはいくら何でも行き過ぎだって言いましたよね!」
「何を言っている。僕達が一緒にいる今のうちに済ませてしまえば一石二鳥じゃないか」
「そんな事で結婚を急がせる人がいますか」
「なに、二人共パスポートはあるんだ。ちょっと行ってちょっと上げて帰ってくればいい」
話が見えません、お父さん。
いつもの事ながら父の思い付きでの行動はお母さん以外には理解できない。
「お父さん、お母さん、何を言ってるの?」
「ラスベガスに今から行けば明日の朝にはお前達夫婦になれるぞ。身分証明もパスポートがあれば充分だそうだ。若いもんが付き合い始めて長引くとろくな事が無い。とっとと結婚してしまいなさい」
うわ、久しぶりの無茶振りが出た!
暫く一緒に住んでなかったからすっかり忘れてたよ。
お父さんはこういう人だった。
「そ、それは流石に山口さんにご迷惑です……」
私が取りなそうとすると洋介さんが顔を輝かせてお父さんに向き直る。
「じゃ、じゃあ彩音さんとの結婚を許して頂けるんですね! 彩音ちゃん、今すぐ電話して今日のフライト取ってくる。お義父さんお義母さんもラスベガスに2泊されますよね? ホテルはツインとダブルどちらがい良いですか? ああ、確かウエディングドレスの店がダウンタウンにあったはずだ。ダンを捕まえないと……」
「や、山口さん、落ち着いて、待っていくら何でも今日の明日は……」
騒ぎ出した私の肩をガッシリ掴んで洋介さんが私を見つめる。
「彩音ちゃん、分かってるか? 結婚できるんだぞ。今。3ヶ月後でも5ヶ月後でも10ヶ月後でもなく今」
座り切った真剣な眼差しがはっきりと洋介さんの内心を伝えてくる。
ああ。そうですか。
そんなに証拠隠滅したいんですね。
良く分かりました。
私はもう諦めた。
土台最初から普通の結婚にはならないと思ってたし。
いきなりお休みから帰って来て名字が変わってたら部長、なんて言うかなぁ。
そんな事を考えている間にも洋介さんは電話をかけに飛び出して行ってしまった。
--- ・ ---
「彩音、本当にこれで良かったの?」
「もちろん。お母さんも知ってるでしょ? 私結婚なんて出来るとは思ってなかったんだから。結婚式に夢とかなかったし」
「いえ、そう言う事を言ってるんじゃないの。もう少し心の準備とか要らなかったの?」
普通はそうなんだろうな。
でも私にとって普通ってあまり意味ないみたいだし。
「別に心は決まってるから大丈夫よ。洋介さんも同じだと思うし」
多分今頃ゴム無しバンザイとか思っている可能性はちょっとあるけど。
私は小さな教会の控室で自分たちの番が回ってくるのを待っている。
ここみたいにその日のうちに結婚が出来る教会は一日に何組も上げるのでこうやって順番待ちになるのだ。
洋介さんもお父さんと別の部屋で待っている。
さっき係の人が今日の原稿を持ってきてくれた。
この通りに進むらしいんだけど私にはほとんど読めない。
洋介さんの説明によるとリピートしろと言われたら同じ事を繰り返せばいいだけらしい。
プロテスタント式と市民式と選べると言われて二人共宗教を持っていないので市民式と言ったら原稿が逆に長くなった。
ダンさんも急遽駆けつけて新郎のサポートをするベストマンをしながら写真を取ってくれるらしい。
「ヨウスケ、ショトガンマリッジなんてサイコーです!」
とわけ分からない盛り上がりを見せるダンさんに洋介さんが慌てて否定していた。
「ベガスで結婚するからって出来ちゃった訳じゃないから。違うから」
そう言い訳を続ける洋介さんは、実はラスベガスに到着してすぐダンさんに『ベストマンの大切な仕事です』と言って連れ出されたまま昨日は帰って来なかった。
私は私で昨日は久々の親子水入らずで父と二人……カジノで徹夜してしまった。
一人ちゃんと部屋で寝てた母に次の日全員そろってクマ作ってて怒られて。
よくよく話を聞けば、ここで結婚しても日本のお役所で別途結婚届を出す必要があるそうで、すぐに名字は変わらないのだそうだ。
部長に先に説明するくらいの時間はありそうだ。
私はもうウェディングドレスも着込んで髪も顔も全て近くのサロンでしてもらって準備万端なのに、お母さんは普通に無難なグレーのスーツ。
流石に今回はお父さんのわがままが通るとは思わなかったそうだ。
「ほら、もうすぐ呼びに来るみたいよ。支度して」
急いでベールをおろしてブーケを手にする。
会場の前にはお父さんが立っていた。ちょうどいいので立ったままだけど今の内にやってしまう。
「お父さんお母さん、今までありがとうございました。私、お嫁に行きます」
「……ああ。嫌になったらいつでも帰ってこい。どうせ隣なんだから」
「お父さん! 縁起でもない。彩音、簡単に帰ってくるんじゃありませんよ。ちゃんと洋介さんに愛想尽かされない様に頑張りなさい」
私はお父さんに手を取られてドアを開ける。
短い赤い絨毯の先には一段高くなった所に説教用の教壇があり、その向こうにはメガネをかけた優しい目のオバサマが白いローブを着て立っている。
今朝見たときにあった十字架が外されて代わりに旗が掛かっている。
その横には。
白のタキシードを着た洋介さんがブルーグレーのタキシードのダンさんと一緒に立っていた。
か、カッコイイ。
惚れ直しちゃう。
つい見惚れていて躓きそうになり、お父さんの手にしがみつく。
そこから先はよく思い出せない。
顔がニマニマ笑ってしまって元に戻らなかったのだけはよく覚えてる。
壇上のオバサマの言葉を一生懸命繰り返したけどダンさんが笑いを堪えていた。
そして私達は誓いのキスをして。
仮の結婚証書を頂きました。
数ヶ月後に本物が届くのだそうです。
「僕は乗らないぞ!」
「ヨウスケ、運転出来ないです。オレがします」
誰が頼んだの? ってきっとダンさんだよねこれ。
式場の目の前には真っ白なフィアットが後に缶カラ付きで待っていた。
ジャストマリッジとピンクのペンキでロゴ付きの。
後ろで缶カラがカラコロいう車でラスベガスの道を走るとそこら中からお祝いが飛んできて恥ずかしいの何の。
ダンさん一人が悪びれもせず大喜びで手なんか振ってるし。
普通にタクシーでホテルに着いた両親はそこから直接ニューヨークに戻るということでダンさんが明日空港まで送ってくれるそうだ。
私と山口さん、いえ、洋介さんは。
もう後の事はそれぞれに任せて両親にもお別れを言ってホテルの一室に二人で直行。
周り中の生やさしい目が痛い痛い。
でも今日だけは誰にも文句言われないし。
初めてじゃない初夜はシャンパン飲んで盛り上がって、でもある意味今までで一番普通に一番ゆっくり愛し合って。
「彩音。幸せになろうな」
「なりましょうね」
二人で手を繋いで眠った。
怒涛のロサンゼルス旅行を終えて日本に帰国して。
生活?
何も変わらなかったりする。
結局来年度末でお父さんの帰国が決まり、二人が帰って来るまでこのまま私は両親の家の面倒を見ながら仕事を続ける事になったのだ。
まだ週末婚が暫く続きそう。
それでも帰国後、籍を入れて晴れて夫婦になってしまった私達。
未だに信じられないけど、私も山口さんになってしまった。
でもそれ以外ほとんど何も変わらない生活。
「洋介さん、私たち本当に結婚しましたっけ?」
「したから。君もう奥さんだから。実感わかなくても忘れないでくれ」
「じゃあ、あれって新婚旅行だったんでしょうか?」
「……駄目だ、違う。新婚旅行は絶対やり直すぞ」
順番がめちゃめちゃな私達は最初っから飛ばしすぎててまだまだこれから沢山の「初めて」が待ってる気がする。
だから。
夕食を一緒に食べる事が多くなって。
朝洋介さんの部屋で目覚める事が多くなって。
私の本が洋介さんの本に混ざり始めて。
そして十年、二十年して子供が出来て、おじいさんとおばあさんになっても。
ロスで洋介さんと二人、名前で呼び合う様になったみたいに。
これからもきっと毎日毎週ちょっとずつ新しい関係を私たちは二人で築いていくのだ。
いつまでも。
- 完 -
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