斎藤先輩はSらしい

十一月は波乱の季節

６１話 本当にごめん

「やっぱり市川さんの反応は面白いよね」

　しばらく私と一緒になって笑っていた先輩は、お母さんが持ってきてくれていたお茶を一口飲んで改めて口を開いた。

「これで僕の試験の件はいいとして」

　そう言って顔を引き締める先輩に、私もベッドの上で正座し直す。

「さて市川さん、先に謝らせて。本当にごめん」

　そう言って、突然斎藤先輩が思いっきり膝につくほど深く頭を下げた。

「え」

　しばらくそのまま下げてた先輩は、驚いた私に暗い影を落とした顔を向け、覚悟を決めたように真実を語りだした。

「文化祭で一緒に回った時、三谷が言うように、僕には他に思うことがなかったわけじゃないんだ」

　先輩の言葉に、ズキリと胸の奥が痛んだ。

　やっぱり、三谷先輩が言ってたことは正しかったんだ。

　そう思うともうこれ以上なにも聞きたくなくて、今すぐ耳を塞ぎたくなる。
　それを見越していたかのように、先輩が膝に載せられていた私の両手をしっかりと握った。
　そのまま私が逃げられないようにしっかり私の目を見つめながら、先輩は長い長い懺悔を始めた。