58 / 85
十一月は波乱の季節
57話 なんでここにいるの?
しおりを挟む
ピロロンって音が何度かして、ぼんやりとしながら私が目を覚ました時には、部屋はもう暗くなっていた。
のっそりと布団から起き上がった私は、スマホを取ろうとして、ベッドに寄りかかるように座る先輩の後ろ頭が目に飛び込んできてそのまま一気に凍りついた。
「さ、斎藤先輩、なんでここにいるの!?」
「市川さんのお母さんに通してもらっただけだよ」
床に座って自分のスマホを見てた先輩が、私を振り仰いで答えてくれる。先輩の少し困った顔がスマホの明かりで薄く照らし出された。
お、お母さんのバカ!
って、先輩が来るのはもういつものことだから、普通に部屋に上げてくれたんだよね。寝ちゃってた私が悪いのか。
「ごめんね、まさか寝てるとは思わなかったから。ただ具合が悪いのかもと思ったから、最悪市川さんのお母さんに知らせようと思いながら様子見してたんだ」
そこまで言った先輩が、ベッドに座る私を見て、すぐに目のやり場に困った様子で顔を背けた。途端、自分の格好を思い出す。
うわ、私パジャマの上しか着てない!
「もし体調が大丈夫なら、服を着てくれると助かるんだけど」
「す、すみません!」
よそ見してくれている先輩の横で、慌ててパジャマのズボンを探す。案の定ズボンはベッド横の椅子にかけてあって手が届かない。
先輩の視界を避けて、そっと手を伸ばして取ろうとしたら……
「危ない」
「ひゃぁっ!」
そのままベッドから転げ落ちた。
とっさに先輩が気づいて手を伸ばし、気づけば私は無事先輩の上に着地した。
してしまった。
この格好で!
目に入るのはとんでもない光景。
先輩の制服の膝の上に服を着ていない自分の足。片腕で背中を支えられ、もう一本の腕が腕の中の私ごと、上体を支えてる。
先輩の腕の中、私は先輩を仰ぎ見る形でなんとか頭も打たずに浮いていた。
ぎゃーーー、どうしよう、泣きたい!
あまりのドジ加減とこの状況に、ただただ頭が空回りして涙がにじむ。
「今手首捻らなかった?」
「だ、だ、だ、だいじょうっ、痛っ!」
自分の格好のことで頭がパニクってた私は、言われるまで自分の手首が痛いのにも気づいてなかった。
私の声に驚いた先輩が、私の格好もお構いなしに私を横抱きにしたまま立ち上がり、ベッドの上にそっとおろすと後ろも見ずに部屋の外へと向かう。
「ちょっと待ってて!」
そう言いおいて、珍しく慌てた様子で先輩は私の部屋を飛び出していった。
のっそりと布団から起き上がった私は、スマホを取ろうとして、ベッドに寄りかかるように座る先輩の後ろ頭が目に飛び込んできてそのまま一気に凍りついた。
「さ、斎藤先輩、なんでここにいるの!?」
「市川さんのお母さんに通してもらっただけだよ」
床に座って自分のスマホを見てた先輩が、私を振り仰いで答えてくれる。先輩の少し困った顔がスマホの明かりで薄く照らし出された。
お、お母さんのバカ!
って、先輩が来るのはもういつものことだから、普通に部屋に上げてくれたんだよね。寝ちゃってた私が悪いのか。
「ごめんね、まさか寝てるとは思わなかったから。ただ具合が悪いのかもと思ったから、最悪市川さんのお母さんに知らせようと思いながら様子見してたんだ」
そこまで言った先輩が、ベッドに座る私を見て、すぐに目のやり場に困った様子で顔を背けた。途端、自分の格好を思い出す。
うわ、私パジャマの上しか着てない!
「もし体調が大丈夫なら、服を着てくれると助かるんだけど」
「す、すみません!」
よそ見してくれている先輩の横で、慌ててパジャマのズボンを探す。案の定ズボンはベッド横の椅子にかけてあって手が届かない。
先輩の視界を避けて、そっと手を伸ばして取ろうとしたら……
「危ない」
「ひゃぁっ!」
そのままベッドから転げ落ちた。
とっさに先輩が気づいて手を伸ばし、気づけば私は無事先輩の上に着地した。
してしまった。
この格好で!
目に入るのはとんでもない光景。
先輩の制服の膝の上に服を着ていない自分の足。片腕で背中を支えられ、もう一本の腕が腕の中の私ごと、上体を支えてる。
先輩の腕の中、私は先輩を仰ぎ見る形でなんとか頭も打たずに浮いていた。
ぎゃーーー、どうしよう、泣きたい!
あまりのドジ加減とこの状況に、ただただ頭が空回りして涙がにじむ。
「今手首捻らなかった?」
「だ、だ、だ、だいじょうっ、痛っ!」
自分の格好のことで頭がパニクってた私は、言われるまで自分の手首が痛いのにも気づいてなかった。
私の声に驚いた先輩が、私の格好もお構いなしに私を横抱きにしたまま立ち上がり、ベッドの上にそっとおろすと後ろも見ずに部屋の外へと向かう。
「ちょっと待ってて!」
そう言いおいて、珍しく慌てた様子で先輩は私の部屋を飛び出していった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
青の時間
高宮 摩如(たかみや まこと)
青春
青という事。
それは未熟という事。
知るべき事がまだあるという事。
社会というものをまだ知らないという事。
そして、そういう自覚が無いという事。
そんな青い世代の生き様を登場人物名一切無しという”虚像”の世界観で絵描き出す青春群像劇。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ほつれ家族
陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる