斎藤先輩はSらしい

こみあ

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十一月は波乱の季節

52話 ホラー喫茶で猫娘コスしてた先輩

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「市川さん、ちょっと一緒に来てくれる?」

 教室を訪ねてきた三年の先輩には見覚えがあった。
 キツイ感じの眉に可愛いハート型の唇、耳にかかる茶髪をカールさせフワフワな猫っ毛。
 そう、確か斎藤先輩と同じクラスの、文化祭の時にホラー喫茶で猫娘コスしてた先輩だ。

「三谷先輩、塔子になんの用事でしょう」

 私を庇うように一緒に来てくれたアッコちゃんが、しっかりした声で聞き返す。エッちゃんも、他にも数人のクラスメイトが私の後ろに立ってた。
 この猫娘コスしてた先輩は三谷先輩というらしい。どうやらアッコちゃんは先輩のことを知ってるみたいだった。

「そんなに警戒しないで。別にあの子たちみたいに市川さんを虐めようって訳じゃないから。落ち着いて話がしやすいように静かな場所に行こうって言ってるだけよ」

 入り口に集まってきた私たちの様子に、三谷先輩が苦笑いして口を開く。
 笑うとハート型の唇が美しい弧を描いて一層可愛らしく見えた。
 その堂々とした態度にアッコちゃんが次の言葉を言いよどむ。

 この様子だと、三谷先輩のお話はまた城島先輩のことに違いない。
 だけどこの先輩はちゃんとお話ができる相手に見えた。
 ならば、もう逃げないと決めている以上、これは私とこの先輩の問題だ。

 そう判断した私は先輩にまっすぐに返答した。

「分かりました」

 すぐにアッコちゃんとエッちゃんが口を開こうとするのを遮って、二人にも言っておく。

「アッコちゃん、エッちゃん、やっぱりこれは私の問題だし、私ちょっと行ってくるね」

 前の時とは違う。もう一人でだって向き合える。
 そう思えるくらいには、私は今、ちゃんと斎藤先輩とも向き合ってる……
 そう思って二人に大丈夫だよの意味で笑顔を向けた。
 それでもアッコちゃんが、心配を隠せない様子でこちらを見てる。
 それに元気に手を振って、私は三谷先輩とともに教室を後にした。
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