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十一月は波乱の季節
49話 助けてください
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「先輩から宿題が出ました、助けてください」
次の日のお昼休み。
アッコちゃんとエッちゃんを前に、私は貢物の箱入り8個入りのチョコを差し出して頭を下げた。
「それ私たちに聞いていいの?」
「ダメとは言われなかったよ」
すかさず手を伸ばしたエッちゃんの横でアッコちゃんが尋ねたのに返事しつつ、エッちゃんが一つ目のチョコに手を出したのを見て私も手を伸ばす。
貢ぎはしたけど私だって食べたい。
「まあ、先輩も塔子が一人で解決できるとは思ってないわよね」
「私はあんまり役に立たないと思うよ」
思案顔のアッコちゃんとは違い、エッちゃんは遠慮なくチョコを食べながら、教室の後方をチラ見して自信なさげに返してきた。
実は先週、とうとうスッチーがエッちゃんに告白した。
だけど今朝聞いたのだが、エッちゃんは週末を超えてもまだ返事が出来ないでいるらしい。
エッちゃんはエッちゃんで今大変なのだ。
「それで宿題の内容は?」
尋ねられて、アッコちゃんたちに詳細を伝えた。
話してる途中、アッコちゃんが爆笑しながら私の頭を撫でてくれた。
……気のせいか、私の扱いが近所の小学生並に下がった気がする。
「『なんで僕に会えないと寂しいのか』ねえ。斎藤先輩攻めてきたわね」
「どう言うこと?」
尋ねた私に「塔子にはどうでもいいことよ」と言いつつ軽く手を振ったアッコちゃんは、子供に教え含めるような口調で話しだす。
「さてじゃあ塔子、まず先輩に会えないって私たちに言った時、どう感じたのか言ってみて」
なんかアッコちゃんの私の扱いには物申したくもあるけれど、助けてくれとお願いした身としてはあまり文句も言えない。
私は気持ちを切り替え、素直に答えることにした。
「ズーンと胸が重くて、痛くて、辛いかな」
「じゃあ先輩とスマホで話してるときは?」
昨日の二人での会話を思い出す。
「えーっと、怖かった? なんか先輩がどんな反応するのか全然分からなくて、私が喋ってることが正しいのか間違ってるのか、先輩を嫌な気持ちにしてないか、すごく気になった」
通話を終えて気づけば手汗がすごかったのは、ちょっと言えない。
そこでアッコちゃんはチラリとエッちゃんを見て、またも先生のような口調で続けた。
「じゃあここで『もしも』を想定した質問をします。『来週スッチーは学校を一週間休みます』……同じ気持ちになった?」
「ならない」
首を横に振って答えた。
「じゃあ『来週悦子は学校を一週間休みます』……今度は同じ気持ちになった?」
「ちょっとだけ?」
今度は首を傾げつつ答える。
「次、『今夜悦子に相談の電話をします』……先輩の時と同じ気持ちになると思う?」
「……ならないと思う」
エッちゃんにあんな相談をするとは思えないけど、なにを話してもあんなに手汗をかくとは思えない。
「じゃあ最後の質問です。どうして斎藤先輩にだけはそんな気持ちになったのでしょうか?」
「それは……」
それまでスルスル出てきてた答えが、ここでピタリと止まってしまった。
アッコちゃんの質問を脳内で繰り返し、自分の胸の底を漁って答えを探す。
「先輩が大切だから……」
だけど、それならエッちゃんだって同じだ。
「先輩に嫌われたくないから……」
でもそれだけじゃなくて、
「先輩に喜んで欲しいから……」
そう、そしてなにより、
「先輩が特別だから」
言ってるうちに、先輩のことを思い出して、勝手に胸が締め付けられる。
「合格。今夜しっかりそれを先輩に伝えてね」
痛いほど強く締め付けられる胸元を両手で押さえて、ちょっと泣きそうになった私を見たアッコちゃんは、まるで満点をとった子供を褒めるような満面の笑顔でそう言った。
次の日のお昼休み。
アッコちゃんとエッちゃんを前に、私は貢物の箱入り8個入りのチョコを差し出して頭を下げた。
「それ私たちに聞いていいの?」
「ダメとは言われなかったよ」
すかさず手を伸ばしたエッちゃんの横でアッコちゃんが尋ねたのに返事しつつ、エッちゃんが一つ目のチョコに手を出したのを見て私も手を伸ばす。
貢ぎはしたけど私だって食べたい。
「まあ、先輩も塔子が一人で解決できるとは思ってないわよね」
「私はあんまり役に立たないと思うよ」
思案顔のアッコちゃんとは違い、エッちゃんは遠慮なくチョコを食べながら、教室の後方をチラ見して自信なさげに返してきた。
実は先週、とうとうスッチーがエッちゃんに告白した。
だけど今朝聞いたのだが、エッちゃんは週末を超えてもまだ返事が出来ないでいるらしい。
エッちゃんはエッちゃんで今大変なのだ。
「それで宿題の内容は?」
尋ねられて、アッコちゃんたちに詳細を伝えた。
話してる途中、アッコちゃんが爆笑しながら私の頭を撫でてくれた。
……気のせいか、私の扱いが近所の小学生並に下がった気がする。
「『なんで僕に会えないと寂しいのか』ねえ。斎藤先輩攻めてきたわね」
「どう言うこと?」
尋ねた私に「塔子にはどうでもいいことよ」と言いつつ軽く手を振ったアッコちゃんは、子供に教え含めるような口調で話しだす。
「さてじゃあ塔子、まず先輩に会えないって私たちに言った時、どう感じたのか言ってみて」
なんかアッコちゃんの私の扱いには物申したくもあるけれど、助けてくれとお願いした身としてはあまり文句も言えない。
私は気持ちを切り替え、素直に答えることにした。
「ズーンと胸が重くて、痛くて、辛いかな」
「じゃあ先輩とスマホで話してるときは?」
昨日の二人での会話を思い出す。
「えーっと、怖かった? なんか先輩がどんな反応するのか全然分からなくて、私が喋ってることが正しいのか間違ってるのか、先輩を嫌な気持ちにしてないか、すごく気になった」
通話を終えて気づけば手汗がすごかったのは、ちょっと言えない。
そこでアッコちゃんはチラリとエッちゃんを見て、またも先生のような口調で続けた。
「じゃあここで『もしも』を想定した質問をします。『来週スッチーは学校を一週間休みます』……同じ気持ちになった?」
「ならない」
首を横に振って答えた。
「じゃあ『来週悦子は学校を一週間休みます』……今度は同じ気持ちになった?」
「ちょっとだけ?」
今度は首を傾げつつ答える。
「次、『今夜悦子に相談の電話をします』……先輩の時と同じ気持ちになると思う?」
「……ならないと思う」
エッちゃんにあんな相談をするとは思えないけど、なにを話してもあんなに手汗をかくとは思えない。
「じゃあ最後の質問です。どうして斎藤先輩にだけはそんな気持ちになったのでしょうか?」
「それは……」
それまでスルスル出てきてた答えが、ここでピタリと止まってしまった。
アッコちゃんの質問を脳内で繰り返し、自分の胸の底を漁って答えを探す。
「先輩が大切だから……」
だけど、それならエッちゃんだって同じだ。
「先輩に嫌われたくないから……」
でもそれだけじゃなくて、
「先輩に喜んで欲しいから……」
そう、そしてなにより、
「先輩が特別だから」
言ってるうちに、先輩のことを思い出して、勝手に胸が締め付けられる。
「合格。今夜しっかりそれを先輩に伝えてね」
痛いほど強く締め付けられる胸元を両手で押さえて、ちょっと泣きそうになった私を見たアッコちゃんは、まるで満点をとった子供を褒めるような満面の笑顔でそう言った。
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