斎藤先輩はSらしい

こみあ

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十一月は波乱の季節

44話 この辺がモヤモヤする

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 次の日の昼休み。
 お昼も食べ終わって、今日はアッコちゃんが持ってきてくれたお菓子を三人で食べてる。

 アッコちゃんの家には時々お届け物が大量に届くのだそうで、これはそのおすそ分け、某有名洋菓子店のスイートポテト。
 大変豪華なおすそ分けだ。

 いつもならペロッと三つくらい食べられちゃうのに、今日はなぜだか食指が動かない。

「塔子、スイートポテト好きじゃなかった?」

 そんな私の様子に気づいたアッコちゃんが気遣うように話かけてきた。

「大好物……なんだけど」
「じゃあ好みの味じゃなかった?」

 ジッと目の前の小舟のようなスイートポテトを睨んでた私は、慌ててブンブンと首を横に振った。

 一個食べたから知ってる。
 艷やかでほんのり色づいたスイートポテトの表面も、中のホックリしていながらネットリと舌に絡む極上の甘みも、どちらも最高だった。
 このスイートポテトは現在、文句なく私の好きなものトップランキング上位に収まってる。

 それなのに。

「なんかお腹空かない」
「なに、お腹でも壊した?」

 情けない声で返事した私に、二つ目のスイートポテトを平らげたエッちゃんが、三つ目に手を伸ばしながら言う。

「違う。なんか、この辺がモヤモヤする」

 そう言って、私は胃の上辺りを両手で押さえた。

 なんかあれからずっと頭がボーッとして、イマイチ自分がなにを考えようとしてるのか分からない。
 気づけば先輩の髭の生えた顎と、赤面した先輩の顔が頭を占領してるのだ。

 私だって髭くらい、お父さんのを毎日見てる。なんなら知らない人の髭だってどこでも見かける。

 なのに、なんで斎藤先輩の髭がこんなに気になるのか分からない。

 先輩の髭と、それを手で押さえた赤い顔の斎藤先輩を思い出すと、こう胸の辺りがなにかモヤモヤっていうか、ムズムズっとしてスッキリしない。

 そんな私の様子を見て、アッコちゃんが喜色を浮かべてエッちゃんに顔を寄せた。

「聞いた悦子えつこ、塔子がなんか乙女し始めたわよ」
「聞いたよ暁子あきこ、どうしよう、お赤飯炊く?」
「茶化すならもういい」

 思わず頬を膨らませて、スイートポテトの入った箱をを二人の前に押しやった。
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