斎藤先輩はSらしい

こみあ

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十月、ハロウィンはいつどこで?

43話 帰りの電車

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 帰りの電車は結構混雑してた。
 たった二駅だけど、先輩と並んで扉の前に立つ。

 電車が揺れる度に私がふらつくのを見た先輩は、無言で私を扉に寄りかからせてくれた。

「混んでるね」

 そう言った先輩の声がいつもより近い。
 私の前に立ってる先輩は、私の少し横の扉に手をついてる。私が周りに押されないようにしてくれてるらしい。
 この微妙な距離が、今までと違って視線のやり場に困ってしまう。

 下校時も私の家でも、斎藤先輩は普段私のパーソナルスペースを守ってくれる。その距離感がしっかりしてるから、こんな接近がやけに恥ずかしくなるのだ。

 しかも先輩私服だし。
 斎藤先輩なのに、ちょっと違うような……

 一駅過ぎて、人が増えた。お陰で先輩の距離が余計近付いてしまった。
 もう先輩は片手じゃなくて肩肘ついてる。

 見上げると、先輩の顎が近距離にあって。
 で、見えてしまった。
 目が丸くなる。

 先輩に、髭がある……?

 私の視線に気づいた先輩が、顎に手をやって見る間に赤面してしまった。

「ごめん、気になる?」
「い、いえ、ちょっと驚いただけ……」
「そっか」

 それだけの。
 たったそれだけのやり取りが。
 私の中で何かを決定的に変えてしまった。
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