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十月、ハロウィンはいつどこで?
41話 だからペアシート
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映画はアクションを選んだ。
私も好きだし先輩も好きらしい。
変に迷わなくて済んで良かった。
そこで先輩がペアシートなるものを選んだのが、私の一時間余りに及ぶ試練の始まりだった……
一応デートだし、ああカップルってそういうところに座りますよねってそれくらいの気持ちでついていった私は甘かった。
この映画館、片側が全部ペアシートなのはうん、なんかわかる。
だからペアシートの前がペアシートなのも、わかる。
先輩と少しゆったりしたシートにいつもの距離で隣り合わせに座って、ああゆったりしてて楽かも~と思ったのは、映画が始まるまででした
「……んフフ」
「……ダメ?」
「……え?」
「……ん……」
前の席に座ったカップルさん。
後ろの私は人生初デートなんです。
お付き合い始めて2ヶ月弱の初心者マークなんです。
これとか、それとか、あれとか。
なぜ私達の前で始めちゃうんですか!?
いや全部はモチロン見えないし、そんな凄いことはしてないんだと思う。思いたい。
見なきゃいいし、見ちゃダメだし、覗くつもりなんてこれっぽっちもないのに。
だけどついつい見てしまう、揺れるペアシート。
映画なんて、アクションシーンの度に揺れる前のシートが気になって、全く内容が頭に入ってこない。
うう、これ先輩も絶対に困ってるはずだ。
そう思って横を見ると。
先輩もこっち見てた。
暗がりで、手で口元を覆って。
私の顔見ながら一人クツクツ笑い転げてた……
ひどい。
映画館を出る頃には、私はグッタリと疲れ切っていた。
あれからも私は先輩を無視してなんとか映画に集中しようとしたけれど、前の揺れるペアシートと先輩のクツクツ笑いの板挟みで、内容はほとんど頭に入ってこなかった。
なんで最後、あの女性がヒロインに収まってたのか全く分からない。
前のカップルさんに映画代返してって言いたい……出してくれたのは先輩だけど。
ヘナヘナとふらつく私に、先輩が手を差し出してくる。
「アクション映画より、目前のラブロマンスのほうが刺激的だったみたいだね」
先輩、口元がまだ笑ってます。
それでも差し出された手はしっかり握り返す。
だってそれは多分、グッタリしてる私への気遣いだから。
ずっと笑ってたせいか、以前は冷たかった斎藤先輩の手が、今日は温かい気がした。
私も好きだし先輩も好きらしい。
変に迷わなくて済んで良かった。
そこで先輩がペアシートなるものを選んだのが、私の一時間余りに及ぶ試練の始まりだった……
一応デートだし、ああカップルってそういうところに座りますよねってそれくらいの気持ちでついていった私は甘かった。
この映画館、片側が全部ペアシートなのはうん、なんかわかる。
だからペアシートの前がペアシートなのも、わかる。
先輩と少しゆったりしたシートにいつもの距離で隣り合わせに座って、ああゆったりしてて楽かも~と思ったのは、映画が始まるまででした
「……んフフ」
「……ダメ?」
「……え?」
「……ん……」
前の席に座ったカップルさん。
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なぜ私達の前で始めちゃうんですか!?
いや全部はモチロン見えないし、そんな凄いことはしてないんだと思う。思いたい。
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だけどついつい見てしまう、揺れるペアシート。
映画なんて、アクションシーンの度に揺れる前のシートが気になって、全く内容が頭に入ってこない。
うう、これ先輩も絶対に困ってるはずだ。
そう思って横を見ると。
先輩もこっち見てた。
暗がりで、手で口元を覆って。
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ひどい。
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あれからも私は先輩を無視してなんとか映画に集中しようとしたけれど、前の揺れるペアシートと先輩のクツクツ笑いの板挟みで、内容はほとんど頭に入ってこなかった。
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それでも差し出された手はしっかり握り返す。
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