斎藤先輩はSらしい

こみあ

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十月、ハロウィンはいつどこで?

35話 時間には気をつけてね

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「本当にいいの?」
「なに言ってるの、あんな素敵な先輩があなたの勉強を見てくださるって言うのになんの文句があるのよ!」

 お母さんが新しいお茶とケーキを用意しながら、私に満面の笑顔で答えてくる。

 あのあと先輩は本当に我が家にやってきた。
 お父さんはまだ帰ってなかったけど、我が家の食卓に座った先輩はお茶を勧めるお母さんを前に、笑顔できっぱりはっきり言ったのだ。

「市川さんにはいつも図書室で親しくしていただいています。最近、お付き合いをしていますが、市川さんが成績に自信がないとおっしゃるので、僕でよろしければ家庭教師をさせて頂こうかと思って伺いました」

 最初は驚いてたお母さんも、先輩が全国模試二桁だって聞いて目の色が変わった。しかも推薦がもうほぼ決まってるって言うのが決め手。
 二階の私の部屋で二人っきりとかなにか言われるかと思えば──

「斎藤君のお勉強の邪魔にならないように、時間には気をつけてね」

 ──逆に私が釘を刺された。
 模試の順位は娘の信用より高いらしい。

 お茶とケーキを持って先輩が待つ自室へ向かうと、後ろからニヤニヤ笑いを浮かべたお母さんの「がんばれ~」って小さな声が聞こえてくる。

 待ってお母さん、一体なんの応援してるつもり?

「お待たせしました」

 部屋に入ると、先輩がきた時と全く同じ格好で私の部屋の椅子に座ってた。
 手元には私の教科書とノート。それをパラパラと凄いスピードで捲ってる。
 先輩が私の部屋にいる状況があまりにも非日常的で、変に緊張してしまう。
 部屋が散らかってない日で本当に良かった。

「ああ、わざわざありがとう」

 ケーキとお茶を机に置くと、先輩はそれを横に置いて私に向かって一言。

「市川さんらしいノートだね。真面目で、しっかり取れてる。ただ無駄がとっても多いね」

 そう言って、私のノートを添削し始めた。

 それから小一時間。
 私は先輩に添削の説明を受けて終わった。

 先輩は最後にケーキを冷めたお茶で飲み下して帰っていった。
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