斎藤先輩はSらしい

こみあ

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九月、まずは文化祭

18話 次は後夜祭だね

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 それからも先輩は無口で、二人でざっと校内を回った後、わざわざ私の教室まで送ってくれた。
 ペンギンくんはお持ち帰りしていいらしい。

「次は後夜祭だね」

 それだけ言って、手を離してくれる。そこでまだ手を繋いでたのを思い出した。
 慌てて手を引っ込めると先輩がまたあの綺麗な笑顔で手を振った。

 先輩、これからずっとあんな笑顔のままなのかな。

 そんなことを考えてモヤっとしてる間に、先輩の後ろ姿は人混みに紛れて見えなくなった。

「塔子、あんたなに考えてるの???」

 そこで突然、エッちゃんの大きな声が後ろから響いた。

「あ、エッちゃん遅くなってゴメン」
「違う、遅くなったのなんていいよ、それよりなんで塔子が城島きじま先輩と手を繋いでたの???」

 謝りつつ振り返った私の両肩を、エッちゃんの両手がガッツリ掴む。

「え? なんのこと?」

 訳が分からず問返すと、エッちゃんがじれったそうに私を揺さぶった。

「今一緒に歩いてきたじゃん! 城島先輩と! 手を繋いで!」
「え、待ってそれ絶対人違い。あれは斎藤先輩だよ?」
「うわ、なに言ってんの! そんな訳ないじゃん。あの流し目と金のカラコンが城島先輩じゃなかったら誰だって言うの?」
「え? え? あれだって、あれは斎藤先輩……」
「誰そんなウソをあんたに教えたのは?」
悦子えつこ、なんかうるさいけどなにしてるの?」

 騒ぐエッちゃんの後ろからアッコちゃんが出てきた。

暁子あきこ聞いて。この子今、城島先輩と手を繋いで帰ってきた」
「あらまあ。彼氏の斎藤先輩はどうしたの?」
「違うあれが斎藤先輩……」
「そんな訳あるか! 誰が城島先輩を見間違えるっての」
「そうね、あの目立つ先輩を見間違えるのは難しそう」
「え、でも普段はもっとこう、ボサッとしてて目立たなくて……」

 私の言葉に、二人が顔を見合わせた。
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