斎藤先輩はSらしい

こみあ

文字の大きさ
上 下
17 / 85
九月、まずは文化祭

16話 席に案内しますよ

しおりを挟む
── パシャーン!

「ひゃあああ!」

「アハハハハ!」
「最高!」
「撮れた?」
「撮れた、撮れた!」

 突然、なにが起きたのか分からなかった。
 暗闇でパニクった私は、顔面にぶつかって来たグシャっとしたなにかに思わず悲鳴を上げて飛び上がった。
 先輩が腰を支えてくれていなければ、間違いなく転んでたと思う。

「もういいかな、じゃあ席に案内するよ」

 そう言ったのは斎藤先輩。

 どうやら今騒いでたのは、カーテンの奥に隠れてる人達のものらしい。
 理不尽に囃子たてられた気がして、顔に血がのぼった。

 私、なんかそんな変なことしたの?
 なにがそんなにおかしかったの?

 ズンと心が沈みこむ。

 暗い気持ちで先輩に促されるままに次の角を曲がると、薄暗い後ろ半分の教室に出た。

 そこは少し雰囲気のある喫茶エリアになってる。
 机を寄せて作られたテーブルは、ウェイターさんが歩きやすいように、まばらに置かれてた。
 奥の一部が黒いカーテンで区切られているのは、多分給仕用のブースになってるんだと思う。

 薄暗い中、それぞれのテーブルにはお祭りで売ってるような蛍光スティックが束になって置かれ、うっすらとテーブルの上を照らし出してた。
 その隙間を先輩みたいに仮装した生徒たちが、銀のトレイ片手に歩き回ってる。

 私たちの他にも数組、お客様が座ってた。
 暗がりで、顔を寄せて話してる。
 暗くてよく見えないけど、なんかこちらを見てる気がする。
 っと、

「おわぁ!!」
「撮れてる?」
「撮れたよ、大丈夫!」

 私のすぐ後ろでまた同じ騒ぎが繰り返された。
 なんだ、私だけじゃなかったのか。
 ちょっとホッとした。

 隣に立つ先輩を見上げたけど、暗がりで先輩の顔色はあまり見えない。

「座ろっか」

 そう言って私の背を押した先輩の顔は、ちょっとだけホッとしてるように見えた気がした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

弁当 in the『マ゛ンバ』

とは
青春
「第6回ほっこり・じんわり大賞」奨励賞をいただきました! 『マ゛ンバ』 それは一人の女子中学生に訪れた試練。 言葉の意味が分からない? そうでしょうそうでしょう! 読んで下さい。 必ず納得させてみせます。 これはうっかりな母親としっかりな娘のおかしくて、いとおしい時間を過ごした日々のお話。 優しくあったかな表紙は楠木結衣様作です!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

十の結晶が光るとき

濃霧
青春
県で唯一の女子高校野球部が誕生する。そこに集った十人の部員たち。初めはグラウンドも荒れ果てた状態、彼女たちはさまざまな苦難にどう立ち向かっていくのか・・・ [主な登場人物] 内藤監督 男子野球部監督から女子野球部監督に移った二十代の若い先生。優しそうな先生だが・・・ 塩野唯香(しおのゆいか) このチームのエース。打たせて取るピッチングに定評、しかし彼女にも弱点が・・・ 相馬陽(そうまよう) 中学では男子に混じって捕手としてスタメン入りするほど実力は確か、しかし男恐怖症であり・・・ 宝田鈴奈(ほうだすずな) 一塁手。本人は野球観戦が趣味と自称するが実はさらに凄い趣味を持っている・・・ 銀杏田心音(いちょうだここね) 二塁手。長身で中学ではエースだったが投げすぎによる故障で野手生活を送ることに・・・ 成井酸桃(なりいすもも) 三塁手。ムードメーカーで面倒見がいいが、中学のときは試合に殆ど出ていなかった・・・ 松本桂(まつもとけい) 遊撃手。チームのキャプテンとして皆を引っ張る。ただ、誰にも言えない過去があり・・・ 奥炭果歩(おくずみかほ) 外野手。唯一の野球未経験者。人見知りだが努力家で、成井のもと成長途中 水岡憐(みずおかれん) 外野手。部長として全体のまとめ役を務めている。監督ともつながりが・・・? 比石春飛(ひせきはるひ) 外野手。いつもはクールだが、実はクールを装っていた・・・? 角弗蘭(かどふらん) 外野手。負けず嫌いな性格だがサボり癖があり・・・?

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

Cutie Skip ★

月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。 自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。 高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。 学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。 どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。 一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。 こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。 表紙:むにさん

元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。

立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は 小学一年生の娘、碧に キャンプに連れて行ってほしいと お願いされる。 キャンプなんて、したことないし…… と思いながらもネットで安心快適な キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。 だが、当日簡単に立てられると思っていた テントに四苦八苦していた。 そんな時に現れたのが、 元子育て番組の体操のお兄さんであり 全国のキャンプ場を巡り、 筋トレしている動画を撮るのが趣味の 加賀谷大地さん(32)で――。

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

処理中です...