【完結】転生令嬢は逃げ出したい~穏便に婚約解消されたのにバッドエンドの監禁魔が追ってきます。

こみあ

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婚姻編

短編:微睡みの思索(カーティス視点)

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 今日も気絶したようにスヤスヤと眠る隣のリザを見下ろして、深いため息が勝手にこぼれる。

 本当に、申し訳ないと思う。

 この数日で俺の血と精をふんだんにその身に受け入れたリザは、確実にその身体を魔族の中でも最上位である俺に匹敵するところまで進化させてきた。結果、以前よりもすっかり丈夫になって眠る時間も減っている。それでもその短い睡眠中、げっそりとして死んだように寝る。

 俺との長いまぐわいの間も、常に感覚をギリギリまで引き上げているせいで、今までとは違うその感性に頭がまだついていかないのだろう。
 これは肉体的な疲労ではなく、間違いなく精神的なものだ。

 だが、今この時、俺は自分の欲望を止められる気が全くしない。

 俺たちの結婚が成ったあの日から、リザをこの小屋に囲って三日が過ぎた。
 そろそろ俺の陰茎がリザの中に収まりきらなくなり、最後は全身に擦りつけて終わらせた。
 ここから約ひと月、どんなに欲しくても俺はリザを抱くことが出来ない。
 いや、抱けないことはないが、抱いたら間違いなく壊してしまう。
 これがこれから俺を待ち受けている永遠の悲劇だ。

 毎夜、俺はこいつをイかせてやろう。
 たとえ俺自身は中に挿入れられなくても、そんなことはどうでもいい。
 こいつが不安になど絶対ならぬよう、疑う余地もないほどイかせ尽くそう。

 俺たちの永遠の時間は、ほんの少し気を許せば簡単に崩れてしまう。
 永遠の命があるがゆえに、簡単には修復出来ないところまで……
 だからリザとした約束は必ず守ろう。
 一瞬でも長く、リザをこの手に抱き続けるために。

 父王は俺がまだ幼い時分に死んだ。
 それは俺が充分に育ったからだとノーラが言った。
 多分俺も子を持てば、その子の成長とともに永遠の命を次の世代に渡すのだろう。
 それはきっとリザも同じだ。

 俺たちの生は永遠であって永遠ではない。
 たとえ身体がどれほど強くても、生はやがて膿み、限界を迎えるのだ。
 ただ人との違いと言えば、俺達はその時を自分たちで選んで決める。
 これもいつか、リザに言わねばならぬ。
 花嫁であったリザの身が、リザと俺の婚約から魔王城でお披露目をするまでの一ヶ月、最高のご馳走として全ての魔物に狙われていた事実とともに。

 言える事、まだ言えないこと、そして決して言えないこと。
 俺のうちには常に沢山の真実がある。
 それがリザを傷つける事実存在ならば、どうしても言わねばならぬ事以外、気づかれぬうちにを全て消し去ってしまいたい……。

 なのにあの娘は変に敏い。
 俺の真実をやたらと見抜く。
 それが本当に苦しくて、嬉しい。

 俺を叱るリザ。
 俺を理解しようとしてくれているリザ。
 俺を俺自身以上に気遣い、そして愛してくれるリザ。

 本当に。
 この出会いは必然運命だったのだろう。
 全ての基準が俺の中で変わろうとしている。
 リザのお陰で、俺の生は強く意味を持ち、初めて『時間』という概念を理解できた。

 この娘を愛せる「価値ある時間」と、それ以外の時間という概念を。


 微睡みの思索(完)
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登場人物をまとめてみました。:登場人物
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