30 / 31
婚姻編
短編:微睡みの思索(カーティス視点)
しおりを挟む
今日も気絶したようにスヤスヤと眠る隣のリザを見下ろして、深いため息が勝手に溢れる。
本当に、申し訳ないと思う。
この数日で俺の血と精をふんだんにその身に受け入れたリザは、確実にその身体を魔族の中でも最上位である俺に匹敵するところまで進化させてきた。結果、以前よりもすっかり丈夫になって眠る時間も減っている。それでもその短い睡眠中、げっそりとして死んだように寝る。
俺との長い交わいの間も、常に感覚をギリギリまで引き上げているせいで、今までとは違うその感性に頭がまだついていかないのだろう。
これは肉体的な疲労ではなく、間違いなく精神的なものだ。
だが、今この時、俺は自分の欲望を止められる気が全くしない。
俺たちの結婚が成ったあの日から、リザをこの小屋に囲って三日が過ぎた。
そろそろ俺の陰茎がリザの中に収まりきらなくなり、最後は全身に擦りつけて終わらせた。
ここから約ひと月、どんなに欲しくても俺はリザを抱くことが出来ない。
いや、抱けないことはないが、抱いたら間違いなく壊してしまう。
これがこれから俺を待ち受けている永遠の悲劇だ。
毎夜、俺はこいつをイかせてやろう。
たとえ俺自身は中に挿入れられなくても、そんなことはどうでもいい。
こいつが不安になど絶対ならぬよう、疑う余地もないほどイかせ尽くそう。
俺たちの永遠の時間は、ほんの少し気を許せば簡単に崩れてしまう。
永遠の命があるがゆえに、簡単には修復出来ないところまで……
だからリザとした約束は必ず守ろう。
一瞬でも長く、リザをこの手に抱き続けるために。
父王は俺がまだ幼い時分に死んだ。
それは俺が充分に育ったからだとノーラが言った。
多分俺も子を持てば、その子の成長とともに永遠の命を次の世代に渡すのだろう。
それはきっとリザも同じだ。
俺たちの生は永遠であって永遠ではない。
たとえ身体がどれほど強くても、生はやがて膿み、限界を迎えるのだ。
ただ人との違いと言えば、俺達はその時を自分たちで選んで決める。
これもいつか、リザに言わねばならぬ。
花嫁であったリザの身が、リザと俺の婚約から魔王城でお披露目をするまでの一ヶ月、最高のご馳走として全ての魔物に狙われていた事実とともに。
言える事、まだ言えないこと、そして決して言えないこと。
俺の中には常に沢山の真実がある。
それがリザを傷つける事実ならば、どうしても言わねばならぬ事以外、気づかれぬうちにを全て消し去ってしまいたい……。
なのにあの娘は変に敏い。
俺の嘘をやたらと見抜く。
それが本当に苦しくて、嬉しい。
俺を叱るリザ。
俺を理解しようとしてくれているリザ。
俺を俺自身以上に気遣い、そして愛してくれるリザ。
本当に。
この出会いは必然だったのだろう。
全ての基準が俺の中で変わろうとしている。
リザのお陰で、俺の生は強く意味を持ち、初めて『時間』という概念を理解できた。
この娘を愛せる「価値ある時間」と、それ以外の時間という概念を。
微睡みの思索(完)
本当に、申し訳ないと思う。
この数日で俺の血と精をふんだんにその身に受け入れたリザは、確実にその身体を魔族の中でも最上位である俺に匹敵するところまで進化させてきた。結果、以前よりもすっかり丈夫になって眠る時間も減っている。それでもその短い睡眠中、げっそりとして死んだように寝る。
俺との長い交わいの間も、常に感覚をギリギリまで引き上げているせいで、今までとは違うその感性に頭がまだついていかないのだろう。
これは肉体的な疲労ではなく、間違いなく精神的なものだ。
だが、今この時、俺は自分の欲望を止められる気が全くしない。
俺たちの結婚が成ったあの日から、リザをこの小屋に囲って三日が過ぎた。
そろそろ俺の陰茎がリザの中に収まりきらなくなり、最後は全身に擦りつけて終わらせた。
ここから約ひと月、どんなに欲しくても俺はリザを抱くことが出来ない。
いや、抱けないことはないが、抱いたら間違いなく壊してしまう。
これがこれから俺を待ち受けている永遠の悲劇だ。
毎夜、俺はこいつをイかせてやろう。
たとえ俺自身は中に挿入れられなくても、そんなことはどうでもいい。
こいつが不安になど絶対ならぬよう、疑う余地もないほどイかせ尽くそう。
俺たちの永遠の時間は、ほんの少し気を許せば簡単に崩れてしまう。
永遠の命があるがゆえに、簡単には修復出来ないところまで……
だからリザとした約束は必ず守ろう。
一瞬でも長く、リザをこの手に抱き続けるために。
父王は俺がまだ幼い時分に死んだ。
それは俺が充分に育ったからだとノーラが言った。
多分俺も子を持てば、その子の成長とともに永遠の命を次の世代に渡すのだろう。
それはきっとリザも同じだ。
俺たちの生は永遠であって永遠ではない。
たとえ身体がどれほど強くても、生はやがて膿み、限界を迎えるのだ。
ただ人との違いと言えば、俺達はその時を自分たちで選んで決める。
これもいつか、リザに言わねばならぬ。
花嫁であったリザの身が、リザと俺の婚約から魔王城でお披露目をするまでの一ヶ月、最高のご馳走として全ての魔物に狙われていた事実とともに。
言える事、まだ言えないこと、そして決して言えないこと。
俺の中には常に沢山の真実がある。
それがリザを傷つける事実ならば、どうしても言わねばならぬ事以外、気づかれぬうちにを全て消し去ってしまいたい……。
なのにあの娘は変に敏い。
俺の嘘をやたらと見抜く。
それが本当に苦しくて、嬉しい。
俺を叱るリザ。
俺を理解しようとしてくれているリザ。
俺を俺自身以上に気遣い、そして愛してくれるリザ。
本当に。
この出会いは必然だったのだろう。
全ての基準が俺の中で変わろうとしている。
リザのお陰で、俺の生は強く意味を持ち、初めて『時間』という概念を理解できた。
この娘を愛せる「価値ある時間」と、それ以外の時間という概念を。
微睡みの思索(完)
5
Twitter:こみあ(@komia_komia)
お気に入りに追加
906
あなたにおすすめの小説

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる