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婚姻編
婚姻編6 魔王様は自白した
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カーティスがお皿をティー・テーブルに戻したすぐそのあと、呼び鈴を鳴らす間もなくセバスチャンが部屋に来て全て片付けていきました。
私もカーティスが休む邪魔にならないよう、部屋に戻ろうと立ち上がろうとしたのですが……
「カーティス、あなた本当に大丈夫?」
「ああ、少し苦しいだけだ」
気づいたら、カーティスがベッドに伸ばした脚にかがみ込むようにして俯いています。
身体の大きなカーティスがそんな格好をしていると、まるでしょんぼりしたクマのようで余計哀愁が漂っていて。
「気持ち悪い?」
「いや」
「じゃあお腹が痛いとか?」
お腹の傷が心配になって尋ねましたが、カーティスがどちらにも頭を横に振って、
「単に胸のあたりがこう……」
そう言って心臓の辺りを掴みました。
「え! 大変、そんなの私じゃとても診れないわ、どうしましょうノーラに連絡つくかしら」
心臓って、心臓麻痺とか心筋梗塞なんかだったら私じゃなにもできないじゃない!
これはやっぱり蛇の毒が残っていたのかも……。
でも慌てる私を今度はカーティスが少し焦ったように止めに入ります。
「い、いやいや、ノーラはダメだ。ノーラを呼ぶような痛みじゃない。ノーラじゃなくお前がここにいてくれ」
「でも私じゃなにもしてあげられないわよ?」
正直に自分の無力を訴えてるのに、カーティスが無言でただ私をジッと見つめて来ます。
さっきスープを飲ませてあげたりしたせいでしょうか、そんな仕草がやけにしょんぼりして見えて。
「しょうがないわね。貴方が寝付くまでだけよ」
弱ってるときに独りが辛いのは私にもよくわかります。
前世では子供の頃お母さんが一緒に寝てくれたりしてましたが、今世では必要ならいつでもメイドを呼びなさいと言われて、誰も付き添ってはくれませんでした。
今日くらい、一緒にいてあげてもいいわよね。どーせ朝には潜りこまれてたんですから、ここで寝かしつけて私が帰っても同じようなものだし。
なんて思っていると。
「何してるの!?」
唐突に、カーティスが着ていたシャツを脱ぎ始めています。
慌てて尋ねる私を、少し熱っぽい顔で見返して、
「服を脱がねば寝づらかろう」
首をかしげてそんなこと言われましても。
半分脱ぎかけの白いシャツからのぞく大胸筋と腹直筋がもうたまらな過ぎて迷惑です!
「だからって!」
なんて言って止めればいいのよ!
困って言葉に詰まった私を見たカーティスが、
「仕方ない……」
ため息混じりに指を鳴らします。
途端、カーティスの服がよく見かけてる彼の夜着に入れ代わり、同時に私の服までいつもの夜着に入れ代わっていました。
「便利というか、もう何でもアリね」
私が自分の夜着に驚いている間に、カーティスが当たり前のようにベッドに入ろうとしています。
その上で私の腕を掴んで引き寄せられて布団までかけられて。
待ってこれはいくらなんでもおかしいですよね?
いつも私のベッドに潜り込まれているとはいえ、これはかなり意味合いが違いませんか?
戸惑いと不安からカーティスを見れば、
「一緒にいてくれるのだろう」
目前の悪魔がやけに情けない顔でこちらを見ています。
これに負けてはいけない気もするのですが。
「カーティス、近い」
「ああ」
文句を言っても私の腕を掴んで放しません。
こんな向かい合わせにベッドに並んでいたのでは、私のほうまで胸が痛くなってきて。
でも一体なんで私の胸が痛くなるのでしょう。
いえ、私だってちょっとくらい理由には心当たりがあるのです。
多分、これは、きっと……
認めてしまえば楽になります。でも同時に、胸の奥に押し込んで無視し続けてきた気持ちを認めてしまうと、カーティスと二人の時間が余計辛くなる気がして。
だって、カーティスにとって私は単なる契約者なのですから。
「ねえ、カーティス。そう言えば私達は本当に結婚するの?」
だから、ほんの少し話題を変えようと、それだけの理由で尋ねただけだったのですが。
「結婚してもらうのは、契約の一部だったな。嫌か?」
逆に問返されて言葉に詰まってしまいました。
正直、嫌じゃないから困るのです。
結婚までしてしまったら、もう私にはカーティスを拒む理由がなくなります。いえ、今だって、もしカーティスが本気で迫ってきたら、私は多分もう拒んだりしないのかも……
「まあ、そんなすぐというわけにはいかないだろう」
「そう、なの?」
なんとなく、婚約から結婚はすぐに来るものだと思っていました。だからカーティスの答えが意外で、つい問返しましたが、
「俺との結婚はそれそのまま、お前の身体を奪うことになるからな」
「え?」
「前に言っただろう。俺たち悪魔の婚姻は身体での契だ」
返ってきた追加情報が私の予想をかなり上回っていて。
「お前はいますぐそれを俺に許せるのか?」
その上、いつの間にか距離を詰めていたカーティスの顔が、本当に至近距離から私を覗き込んで尋ねてくるのです。
それを私はただ見つめ返すばかりで、断ることも頷くことも出来ません。
ただ間違いなく胸の痛みとともに、許してもいい、そういう思いがそこにあることをこれ以上無視することもできませんでした。
そんな無言の私を見つめるカーティスの瞳が、ゆるく欲望を灯し、私の腕を放したカーティスのその大きな手が私の後頭部に添えられて。
「お前が許すなら、今すぐだって俺は……」
すぐ目前で紡がれたカーティスの呟きは、その唇から吐息とともに私に届き、甘い口づけとその温かい唇の中に消えていきました。
私は目を閉じ、そして……
カーティスの口づけは長く、そして静かで、まるで労るようにただ優しく私の唇を何度もついばみ、されるがままの私の唇を確かめるように何度も味わい尽くし。
ゆっくりと離れていくその唇に寂しさすら感じていると、すぐ近くからカーティスの切なげな声が聞こえてきます。
「なぜお前は拒まない」
尋ねるカーティスの言葉に閉じていた目を開けて、ジッと私を見るカーティスを見返して。
その真っ直ぐなアイスブルーの瞳に射抜かれて、私はもうそれ以上自分の気持ちを誤魔化しきれず。
とうとう、自分の心の一番柔らかい部分から溢れだしてしまったこの気持ちを、そのまま口にしてしまいました。
「だって、私、貴方のことが嫌いじゃないんですもの」
多分、これは私の今まで生きてきた一生の中で、一番勇気を振り絞って紡いだ言葉です。
それを聞いたカーティスが、一瞬その瞳に驚きを浮かべ、そして──。
そして困ったように私を見ました。
その顔で、私はすぐに自分の過ちに気づいてしまいました。
でももうそれ以上そのまま顔を見続ける勇気がなくて、顔を背けて続けます。
「契約が必要な貴方には都合がいいでしょ」
言葉にすると、それは思っていた以上に胸に鋭く突き刺さり。
正直、ここまで色々私が欲しいもの、必要なものを与えてくれているカーティスに、これ以上何かを求めること自体間違っています。
私の結婚は、親の決めた婚約にしろ、この悪魔との契約にしろ、決して『私』という個人を望んで決められたものではありません。
だから、恋だの愛だのを期待するのは間違っているのです。
それでも、いつの間にか私の中には、この悪魔が愛おしいと感じる気持ちが勝手に育ってて。
ずっと無視してきました。
身体だけならきっと傷つかない。きっとそれでも満たされて満足出来るって言い聞かせてきました。
前世でも今世でも、お一人様が長い人生です。
筋肉さえ、血まみれ筋肉さえあれば、私の日々は幸せなのです。そのはず、だったのに。
なのに、昨日の夜のキスも、今夜のキスも、私に期待を持たせるには充分すぎて。
悪魔であるカーティスにそんな感情があるはずないと思うのに、自分の気持ちを抑えられなくて。
私は泣きません。泣いてしまったら今困った顔をした悪魔を余計困らせるでしょうし、私自身取り繕いようがなくなります。
でもせめて今すぐ手を放して欲しい……私が逃げていつも通り、キツく当たれるようになるまで時間が欲しいのに。
私の思いとは裏腹に、後ろ頭を支えていたカーティスの手が私を引き寄せ、両腕で優しく自分の胸に抱き寄せます。
これじゃ逃げられないし顔も見れません。
そんな私の頭上から、カーティスの苦しげな声が響いてきました。
「お前が望むよりも前から、俺がお前を望んでいたと言ったら、お前は信じてくれるか?」
カーティスに抱え込まれた私の顔は、今カーティスの胸に押し付けられています。
カーティスの前の広く開いた夜着の間から露出した素肌に、直接私の頬があたって、薄い夜着越しにカーティスの鼓動が低く耳にこだまし始めました。
「いっそセド王子を殺して全て終わらせようと何度思ったか」
カーティスの物騒な言葉には、いつも以上に彼の感情が素直に見えて、私の鼓動も徐々に上がっていきます。
「請願は、決して必ず叶えなければならないものではない。俺の力を以てすれば、時間はかかるがやりようはいくらでもあった」
「そ、そうだったのね」
そりゃこんなに好き勝手魔法が使えちゃうような魔王様ですものね……。
「だがお前があの家を買ったと知った時、俺は俺の悪魔としての欲望に負けた。それが事実だ」
その声には、カーティスの葛藤とたっぷりの自嘲が含まれていて。
思ってもみなかったカーティスの内心が、もし先程の困惑した顔の理由なのだとしたら……。
「だから今更俺がなにを言っても信じては貰えぬだろう。それでも……」
カーティスの大きな手が、抱え込んでいた私の頭を上向かせます。
私と真っ直ぐに視線を合わせたカーティスの顔には、もう先程見かけた困惑は微塵も見えません。その代わりに、たったいま紡がれたカーティスの心のまま、私に向き合う真摯な二つの瞳が彼の昂ぶる思いを灯してジッと私に据えられていて。
「俺はお前が愛おしい」
こぼれ落ちたその言葉は、そのまま私の唇に押しつけられました。
先程までの優しさ以上に、溢れ出るカーティスの情愛を含んだそのキスは、よっぽど深く私を貪り、蹂躙していきます。
肌に押し付けられるカーティスの身体の熱と、その唇から流し込まれる激情に、私の身も心も熱を帯び。
私も彼の唇からあふれる愛情を少しでも受け取りたくて、いつしか必死で彼にしがみついていました。
長い口づけのあと、息も絶え絶えの私の顔をカーティスが覗き込んで、嬉しそうに、そして少し満足げに笑います。
「どうやら、俺はお前を選んで正解だったらしい。お前の唇はどんな美酒より俺を酔わせる」
そう言って、額にキスを落としてまた私を強く抱き寄せました。
そのまま腕の中の私を真っ直ぐに見下ろしたカーティスが、真剣な眼差しで尋ねます。
「お前は俺の言葉を信じるか?」
私は……。
初めてカーティスの気持ちを知ることが出来て、そこに私が求めていた以上のものがあったことに、喜びと驚きが渦巻いて、まだ気持ちが整理出来ません。
しかも信じろと言う彼は間違いなく悪魔なのです。
それでも。
たとえ彼の言葉に嘘があったとして、それは私の気持ちを変えられるものではありません。そしてそれ以上に、私は彼のこの言葉を心の底から信じたいと思ってしまいました。
だから私はただ無言で彼に頷き返し、視線から逃げるようにその広い胸に自分から顔を埋め。
そんな私をまた優しく抱きしめたカーティスが、嬉しげに私の耳にささやきます。
「さっきはああ言ったが、婚姻は次の満月までお預けだ」
「え?」
「その日が一番お前を気持ちよくさせてやれる」
とんでもない理由で待ったがかかるらしいです。
でもそれ以前に私、まだ結婚というか、契を交わす約束なんてしてないと思うのですが……!?
勝手に進みだしてしまったその話を止めようと、慌てて顔をあげようとしてるのに、カーティスがしっかり抱きしめてきて動けません。
「そんながっかりするな。それまでじっくり愛でてやるから三日なんてあっという間だ」
「え、三日!? 待ってそんなっ……!!」
いいなんてまだ言ってない、そう言い返そうとして声が引きつりました。
だって私の耳に囁いていたカーティスが、言葉の最後に私の耳に歯を立てたのです。
「ドロドロにとろけるまで愛してやるから覚悟しろよ、愛しい花嫁殿」
カーティスの甘い言葉が耳から直で脳を襲います。同時にカーティスの唇が、何度も音を立てて私の耳にキスを繰り返し。
その度に柔らかく甘い衝撃が身体を駆け抜けて、思わず身体が震えます。
そんな私の腰をカーティスの太い腕が抱き寄せて、その指先が妖しく私の腰をなぞり始め。
カーティスの太い腕に抱えこまれ、抵抗もできずに好き勝手に撫でられるたび、自分でも驚くほど身体が跳ねて震えがきます。
それを喜ぶように耳にキスをしていたカーティスがクククと喉の奥で笑うのが聞こえて、恥ずかしくて身をよじろうとしたのに、逆に脚を絡められて身動き出来なくなりました。
「俺の花嫁はよっぽど敏感らしい」
じわじわと耳たぶを食みつつ、意地悪を言うカーティスに反抗しようにも力が入らず。
「い……ゃ……」
「抗えるなら抗うといい。抗えなくなるまで続けてやるから」
そんな私の気を知ってか知らずか、嬉しげに悪魔が囁きます。
その言葉とともにカーティスの唇が開かれて、私の耳を容赦なく攻めたてて……。
「ひぁ……」
「そんなに……暴れるな……」
直に脳まで響く水音と、カーティスの甘い声、そして艶かしい感触の連続に、頭がボーッとして身体が勝手にはね続けてしまいます。
「そんな……ねだらなくて、も……もっと、してやるから……」
ねだっているわけない、そうじゃなくて抑えきれない衝動で身体が勝手に動いちゃうだけで。
逃れようと身をよじってもすぐに抑え込まれて、カーティスは動きを止めてくれません。
こ、これ一体どこに行っちゃうの?
刺激が強すぎてどうしていいのかわからず、力いっぱいカーティスにしがみつきます。
「ああ、なにも知らない小娘のクセに……なんでそんなに嬉しそうに」
なのに喘ぐようにそう言ったカーティスが、私の耳から顔をあげ。
そしてしがみついていた私を引き剥がし、私の身体を軽く持ち上げて、ぐるりと向きを変えてしまいました。
「ダメだ。このままだと俺が待てなくなる。お前にはもっと大切な話もしなけりゃならぬのに……」
後ろから聞こえてきたカーティスの声には喜び、戸惑い、それに微かな悲しみと、複雑に沢山の感情が絡み合っていて、それまでの行為でぼやけていた頭がすっと冷め始めます。
「え……?」
振り返って問いただそう、そう思っていたのに、
「話は明日だ、今はお前をもっと感じさせたい……」
耳元で囁かれたカーティスの低い声のあまりの妖艶さに、思わず身体がブルリと震えてしまいました。
言葉通り、後ろから抱きついたカーティスがまた私を愛で始めます。エスカレートしていくカーティスの愛撫に逃げ場もなく、
「──……ぇ!!」
「我慢するな……声を聞かせろ」
思わず漏れそうになった声を唇を引き結んで我慢したのに、私を抱き止めていた手が私の口に伸び、カーティスの太い指が私の唇を押し割って、無理やり私の口を開かせます。
「ふ……ふぁ……」
ひどいです、私はもうしがみつくものもなく、声も抑えられずにカーティスの好き勝手に玩ばれて。
耳を満たすカーティスの声に自分の声が混ざりだし、恥ずかしさに身が震え、そこにカーティスの太い指先が私の敏感な場所を探り当て。
「……!!!」
「……お前、ここの快感をもう知ってたな。いい子だ。もっと感じろ」
そ、そんなの知らない……こともないけど全然違う!
絶え間なく与えられる真っ白な刺激が脳幹を焼き、耳から流し込まれるカーティスの刹那気な吐息が私の理性を溶かしつくして、降るように与え続けられる刺激が私の鋭敏に研ぎ澄まされた頂点を貫いて。
「これで終わると思うなよ」
震える私の耳に、悪魔が嬉しそうに囁きます。
でももう抗う気力も拒否する力もなく、私は声もなくそのまま意識を飛ばしてしまいました。
私もカーティスが休む邪魔にならないよう、部屋に戻ろうと立ち上がろうとしたのですが……
「カーティス、あなた本当に大丈夫?」
「ああ、少し苦しいだけだ」
気づいたら、カーティスがベッドに伸ばした脚にかがみ込むようにして俯いています。
身体の大きなカーティスがそんな格好をしていると、まるでしょんぼりしたクマのようで余計哀愁が漂っていて。
「気持ち悪い?」
「いや」
「じゃあお腹が痛いとか?」
お腹の傷が心配になって尋ねましたが、カーティスがどちらにも頭を横に振って、
「単に胸のあたりがこう……」
そう言って心臓の辺りを掴みました。
「え! 大変、そんなの私じゃとても診れないわ、どうしましょうノーラに連絡つくかしら」
心臓って、心臓麻痺とか心筋梗塞なんかだったら私じゃなにもできないじゃない!
これはやっぱり蛇の毒が残っていたのかも……。
でも慌てる私を今度はカーティスが少し焦ったように止めに入ります。
「い、いやいや、ノーラはダメだ。ノーラを呼ぶような痛みじゃない。ノーラじゃなくお前がここにいてくれ」
「でも私じゃなにもしてあげられないわよ?」
正直に自分の無力を訴えてるのに、カーティスが無言でただ私をジッと見つめて来ます。
さっきスープを飲ませてあげたりしたせいでしょうか、そんな仕草がやけにしょんぼりして見えて。
「しょうがないわね。貴方が寝付くまでだけよ」
弱ってるときに独りが辛いのは私にもよくわかります。
前世では子供の頃お母さんが一緒に寝てくれたりしてましたが、今世では必要ならいつでもメイドを呼びなさいと言われて、誰も付き添ってはくれませんでした。
今日くらい、一緒にいてあげてもいいわよね。どーせ朝には潜りこまれてたんですから、ここで寝かしつけて私が帰っても同じようなものだし。
なんて思っていると。
「何してるの!?」
唐突に、カーティスが着ていたシャツを脱ぎ始めています。
慌てて尋ねる私を、少し熱っぽい顔で見返して、
「服を脱がねば寝づらかろう」
首をかしげてそんなこと言われましても。
半分脱ぎかけの白いシャツからのぞく大胸筋と腹直筋がもうたまらな過ぎて迷惑です!
「だからって!」
なんて言って止めればいいのよ!
困って言葉に詰まった私を見たカーティスが、
「仕方ない……」
ため息混じりに指を鳴らします。
途端、カーティスの服がよく見かけてる彼の夜着に入れ代わり、同時に私の服までいつもの夜着に入れ代わっていました。
「便利というか、もう何でもアリね」
私が自分の夜着に驚いている間に、カーティスが当たり前のようにベッドに入ろうとしています。
その上で私の腕を掴んで引き寄せられて布団までかけられて。
待ってこれはいくらなんでもおかしいですよね?
いつも私のベッドに潜り込まれているとはいえ、これはかなり意味合いが違いませんか?
戸惑いと不安からカーティスを見れば、
「一緒にいてくれるのだろう」
目前の悪魔がやけに情けない顔でこちらを見ています。
これに負けてはいけない気もするのですが。
「カーティス、近い」
「ああ」
文句を言っても私の腕を掴んで放しません。
こんな向かい合わせにベッドに並んでいたのでは、私のほうまで胸が痛くなってきて。
でも一体なんで私の胸が痛くなるのでしょう。
いえ、私だってちょっとくらい理由には心当たりがあるのです。
多分、これは、きっと……
認めてしまえば楽になります。でも同時に、胸の奥に押し込んで無視し続けてきた気持ちを認めてしまうと、カーティスと二人の時間が余計辛くなる気がして。
だって、カーティスにとって私は単なる契約者なのですから。
「ねえ、カーティス。そう言えば私達は本当に結婚するの?」
だから、ほんの少し話題を変えようと、それだけの理由で尋ねただけだったのですが。
「結婚してもらうのは、契約の一部だったな。嫌か?」
逆に問返されて言葉に詰まってしまいました。
正直、嫌じゃないから困るのです。
結婚までしてしまったら、もう私にはカーティスを拒む理由がなくなります。いえ、今だって、もしカーティスが本気で迫ってきたら、私は多分もう拒んだりしないのかも……
「まあ、そんなすぐというわけにはいかないだろう」
「そう、なの?」
なんとなく、婚約から結婚はすぐに来るものだと思っていました。だからカーティスの答えが意外で、つい問返しましたが、
「俺との結婚はそれそのまま、お前の身体を奪うことになるからな」
「え?」
「前に言っただろう。俺たち悪魔の婚姻は身体での契だ」
返ってきた追加情報が私の予想をかなり上回っていて。
「お前はいますぐそれを俺に許せるのか?」
その上、いつの間にか距離を詰めていたカーティスの顔が、本当に至近距離から私を覗き込んで尋ねてくるのです。
それを私はただ見つめ返すばかりで、断ることも頷くことも出来ません。
ただ間違いなく胸の痛みとともに、許してもいい、そういう思いがそこにあることをこれ以上無視することもできませんでした。
そんな無言の私を見つめるカーティスの瞳が、ゆるく欲望を灯し、私の腕を放したカーティスのその大きな手が私の後頭部に添えられて。
「お前が許すなら、今すぐだって俺は……」
すぐ目前で紡がれたカーティスの呟きは、その唇から吐息とともに私に届き、甘い口づけとその温かい唇の中に消えていきました。
私は目を閉じ、そして……
カーティスの口づけは長く、そして静かで、まるで労るようにただ優しく私の唇を何度もついばみ、されるがままの私の唇を確かめるように何度も味わい尽くし。
ゆっくりと離れていくその唇に寂しさすら感じていると、すぐ近くからカーティスの切なげな声が聞こえてきます。
「なぜお前は拒まない」
尋ねるカーティスの言葉に閉じていた目を開けて、ジッと私を見るカーティスを見返して。
その真っ直ぐなアイスブルーの瞳に射抜かれて、私はもうそれ以上自分の気持ちを誤魔化しきれず。
とうとう、自分の心の一番柔らかい部分から溢れだしてしまったこの気持ちを、そのまま口にしてしまいました。
「だって、私、貴方のことが嫌いじゃないんですもの」
多分、これは私の今まで生きてきた一生の中で、一番勇気を振り絞って紡いだ言葉です。
それを聞いたカーティスが、一瞬その瞳に驚きを浮かべ、そして──。
そして困ったように私を見ました。
その顔で、私はすぐに自分の過ちに気づいてしまいました。
でももうそれ以上そのまま顔を見続ける勇気がなくて、顔を背けて続けます。
「契約が必要な貴方には都合がいいでしょ」
言葉にすると、それは思っていた以上に胸に鋭く突き刺さり。
正直、ここまで色々私が欲しいもの、必要なものを与えてくれているカーティスに、これ以上何かを求めること自体間違っています。
私の結婚は、親の決めた婚約にしろ、この悪魔との契約にしろ、決して『私』という個人を望んで決められたものではありません。
だから、恋だの愛だのを期待するのは間違っているのです。
それでも、いつの間にか私の中には、この悪魔が愛おしいと感じる気持ちが勝手に育ってて。
ずっと無視してきました。
身体だけならきっと傷つかない。きっとそれでも満たされて満足出来るって言い聞かせてきました。
前世でも今世でも、お一人様が長い人生です。
筋肉さえ、血まみれ筋肉さえあれば、私の日々は幸せなのです。そのはず、だったのに。
なのに、昨日の夜のキスも、今夜のキスも、私に期待を持たせるには充分すぎて。
悪魔であるカーティスにそんな感情があるはずないと思うのに、自分の気持ちを抑えられなくて。
私は泣きません。泣いてしまったら今困った顔をした悪魔を余計困らせるでしょうし、私自身取り繕いようがなくなります。
でもせめて今すぐ手を放して欲しい……私が逃げていつも通り、キツく当たれるようになるまで時間が欲しいのに。
私の思いとは裏腹に、後ろ頭を支えていたカーティスの手が私を引き寄せ、両腕で優しく自分の胸に抱き寄せます。
これじゃ逃げられないし顔も見れません。
そんな私の頭上から、カーティスの苦しげな声が響いてきました。
「お前が望むよりも前から、俺がお前を望んでいたと言ったら、お前は信じてくれるか?」
カーティスに抱え込まれた私の顔は、今カーティスの胸に押し付けられています。
カーティスの前の広く開いた夜着の間から露出した素肌に、直接私の頬があたって、薄い夜着越しにカーティスの鼓動が低く耳にこだまし始めました。
「いっそセド王子を殺して全て終わらせようと何度思ったか」
カーティスの物騒な言葉には、いつも以上に彼の感情が素直に見えて、私の鼓動も徐々に上がっていきます。
「請願は、決して必ず叶えなければならないものではない。俺の力を以てすれば、時間はかかるがやりようはいくらでもあった」
「そ、そうだったのね」
そりゃこんなに好き勝手魔法が使えちゃうような魔王様ですものね……。
「だがお前があの家を買ったと知った時、俺は俺の悪魔としての欲望に負けた。それが事実だ」
その声には、カーティスの葛藤とたっぷりの自嘲が含まれていて。
思ってもみなかったカーティスの内心が、もし先程の困惑した顔の理由なのだとしたら……。
「だから今更俺がなにを言っても信じては貰えぬだろう。それでも……」
カーティスの大きな手が、抱え込んでいた私の頭を上向かせます。
私と真っ直ぐに視線を合わせたカーティスの顔には、もう先程見かけた困惑は微塵も見えません。その代わりに、たったいま紡がれたカーティスの心のまま、私に向き合う真摯な二つの瞳が彼の昂ぶる思いを灯してジッと私に据えられていて。
「俺はお前が愛おしい」
こぼれ落ちたその言葉は、そのまま私の唇に押しつけられました。
先程までの優しさ以上に、溢れ出るカーティスの情愛を含んだそのキスは、よっぽど深く私を貪り、蹂躙していきます。
肌に押し付けられるカーティスの身体の熱と、その唇から流し込まれる激情に、私の身も心も熱を帯び。
私も彼の唇からあふれる愛情を少しでも受け取りたくて、いつしか必死で彼にしがみついていました。
長い口づけのあと、息も絶え絶えの私の顔をカーティスが覗き込んで、嬉しそうに、そして少し満足げに笑います。
「どうやら、俺はお前を選んで正解だったらしい。お前の唇はどんな美酒より俺を酔わせる」
そう言って、額にキスを落としてまた私を強く抱き寄せました。
そのまま腕の中の私を真っ直ぐに見下ろしたカーティスが、真剣な眼差しで尋ねます。
「お前は俺の言葉を信じるか?」
私は……。
初めてカーティスの気持ちを知ることが出来て、そこに私が求めていた以上のものがあったことに、喜びと驚きが渦巻いて、まだ気持ちが整理出来ません。
しかも信じろと言う彼は間違いなく悪魔なのです。
それでも。
たとえ彼の言葉に嘘があったとして、それは私の気持ちを変えられるものではありません。そしてそれ以上に、私は彼のこの言葉を心の底から信じたいと思ってしまいました。
だから私はただ無言で彼に頷き返し、視線から逃げるようにその広い胸に自分から顔を埋め。
そんな私をまた優しく抱きしめたカーティスが、嬉しげに私の耳にささやきます。
「さっきはああ言ったが、婚姻は次の満月までお預けだ」
「え?」
「その日が一番お前を気持ちよくさせてやれる」
とんでもない理由で待ったがかかるらしいです。
でもそれ以前に私、まだ結婚というか、契を交わす約束なんてしてないと思うのですが……!?
勝手に進みだしてしまったその話を止めようと、慌てて顔をあげようとしてるのに、カーティスがしっかり抱きしめてきて動けません。
「そんながっかりするな。それまでじっくり愛でてやるから三日なんてあっという間だ」
「え、三日!? 待ってそんなっ……!!」
いいなんてまだ言ってない、そう言い返そうとして声が引きつりました。
だって私の耳に囁いていたカーティスが、言葉の最後に私の耳に歯を立てたのです。
「ドロドロにとろけるまで愛してやるから覚悟しろよ、愛しい花嫁殿」
カーティスの甘い言葉が耳から直で脳を襲います。同時にカーティスの唇が、何度も音を立てて私の耳にキスを繰り返し。
その度に柔らかく甘い衝撃が身体を駆け抜けて、思わず身体が震えます。
そんな私の腰をカーティスの太い腕が抱き寄せて、その指先が妖しく私の腰をなぞり始め。
カーティスの太い腕に抱えこまれ、抵抗もできずに好き勝手に撫でられるたび、自分でも驚くほど身体が跳ねて震えがきます。
それを喜ぶように耳にキスをしていたカーティスがクククと喉の奥で笑うのが聞こえて、恥ずかしくて身をよじろうとしたのに、逆に脚を絡められて身動き出来なくなりました。
「俺の花嫁はよっぽど敏感らしい」
じわじわと耳たぶを食みつつ、意地悪を言うカーティスに反抗しようにも力が入らず。
「い……ゃ……」
「抗えるなら抗うといい。抗えなくなるまで続けてやるから」
そんな私の気を知ってか知らずか、嬉しげに悪魔が囁きます。
その言葉とともにカーティスの唇が開かれて、私の耳を容赦なく攻めたてて……。
「ひぁ……」
「そんなに……暴れるな……」
直に脳まで響く水音と、カーティスの甘い声、そして艶かしい感触の連続に、頭がボーッとして身体が勝手にはね続けてしまいます。
「そんな……ねだらなくて、も……もっと、してやるから……」
ねだっているわけない、そうじゃなくて抑えきれない衝動で身体が勝手に動いちゃうだけで。
逃れようと身をよじってもすぐに抑え込まれて、カーティスは動きを止めてくれません。
こ、これ一体どこに行っちゃうの?
刺激が強すぎてどうしていいのかわからず、力いっぱいカーティスにしがみつきます。
「ああ、なにも知らない小娘のクセに……なんでそんなに嬉しそうに」
なのに喘ぐようにそう言ったカーティスが、私の耳から顔をあげ。
そしてしがみついていた私を引き剥がし、私の身体を軽く持ち上げて、ぐるりと向きを変えてしまいました。
「ダメだ。このままだと俺が待てなくなる。お前にはもっと大切な話もしなけりゃならぬのに……」
後ろから聞こえてきたカーティスの声には喜び、戸惑い、それに微かな悲しみと、複雑に沢山の感情が絡み合っていて、それまでの行為でぼやけていた頭がすっと冷め始めます。
「え……?」
振り返って問いただそう、そう思っていたのに、
「話は明日だ、今はお前をもっと感じさせたい……」
耳元で囁かれたカーティスの低い声のあまりの妖艶さに、思わず身体がブルリと震えてしまいました。
言葉通り、後ろから抱きついたカーティスがまた私を愛で始めます。エスカレートしていくカーティスの愛撫に逃げ場もなく、
「──……ぇ!!」
「我慢するな……声を聞かせろ」
思わず漏れそうになった声を唇を引き結んで我慢したのに、私を抱き止めていた手が私の口に伸び、カーティスの太い指が私の唇を押し割って、無理やり私の口を開かせます。
「ふ……ふぁ……」
ひどいです、私はもうしがみつくものもなく、声も抑えられずにカーティスの好き勝手に玩ばれて。
耳を満たすカーティスの声に自分の声が混ざりだし、恥ずかしさに身が震え、そこにカーティスの太い指先が私の敏感な場所を探り当て。
「……!!!」
「……お前、ここの快感をもう知ってたな。いい子だ。もっと感じろ」
そ、そんなの知らない……こともないけど全然違う!
絶え間なく与えられる真っ白な刺激が脳幹を焼き、耳から流し込まれるカーティスの刹那気な吐息が私の理性を溶かしつくして、降るように与え続けられる刺激が私の鋭敏に研ぎ澄まされた頂点を貫いて。
「これで終わると思うなよ」
震える私の耳に、悪魔が嬉しそうに囁きます。
でももう抗う気力も拒否する力もなく、私は声もなくそのまま意識を飛ばしてしまいました。
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