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婚姻編
婚姻編5 魔王様は疲れてた
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「疲れた……」
別邸に戻ったカーティスが、着替えを終えて夕食の席に降りてきてこぼした最初の言葉がこれでした。
この別邸の夕食は、このサイズのお屋敷にしては少しこじんまりとした、たった八人がけのダイニングテーブルで供されています。
それでも使用人は無言ですし、静かで声はよく聞こえます。
夕食時、普段カーティスはあまり話しません。まるでそれが当たり前という顔であっというまに食べていなくなってしまうのです。
ですから、ため息のような言葉でも、ちょっと気になってしまいました。
「今日の怪我はやっぱり辛かったんじゃないの?」
普通の人ならもっと心配しますが、相手は自称魔王様のカーティスです。どのくらいの怪我が大怪我なのか、全く想像がつきません。
その証拠に、今日ノーラのお店に来たときもピンピンしているように見えましたし。
でも、治療後はやけにぐったりと疲れた様子で、珍しく私が仕事を終えるまで奥で休んでいました。
もしかしたら、今日の怪我は本当に辛かったのかも?
そう思って尋ねたのですが。
「あ、ああ。まあ、な」
なのにカーティスの答えは煮えきらず、それが余計不安を誘います。
「そんなに辛くなるなら、毎日怪我なんてしてこなければいいのに……」
「ああ、そうだな」
だから思わずそう言ってしまったのですが、いつもならすぐ反論してくるカーティスが、珍しく生返事を返してきました。
だから後悔してしまいます。
私だって、カーティスが来てくれるのが嫌なわけではないのです。ただ、怪我ばかりしてくるのが心配なだけで。
「夕食、もう少し軽いものにしてもらいましょうか?」
ここのご飯は美味しいけれど、量が結構多いのです。普段のカーティスはそれをほとんど食べてしまいますが、今日の怪我はお腹にもありました。
前世と違って傷薬は非常によく効きますが、だからって内臓まで治っているのかは確かめたことがありません。
席が遠いので私の表情がよく見えていなかったのでしょう、繰り返し言い続けてやっと、私が本気で心配しているのが伝わったようです。
カーティスが少し驚いたように間を私を見て、ちょっと考えてから、突然立ち上がりました。
「そうだな。今夜は部屋で頂こう。できれば薬の知識がある、君が一緒だとうれしい」
薬の知識なんてまだ大してないけれど、こんなカーティスは初めてなので出来れば一人にはしたくありません。
「そ、そうね。では私も一緒に部屋で頂きます」
そう言って私達が立ち上がると、それを聞いていたセバスチャンがすぐに了解したと頭を下げてキッチンへ飛んでいきました。
上階へ続く階段を上がる途中、カーティスが私に尋ねます。
「俺の部屋で大丈夫か?」
普段の俺様カーティスからは想像もつかない弱々しい声でそんなことを聞かれては、断ることも出来ません。
「そうね、食べてすぐ休むならそのほうがいいと思うわ」
仕方ないわよね。そう思って私もカーティスについて彼の部屋に入りました。
カーティスの部屋に入るのはこれが初めてです。
てっきり私の部屋と同じような作りかと思っていたのですが、その部屋は驚くほど殺風景で、ベッドとデスクが一つしかありません。
これじゃ一緒にご飯なんて無理よね。
そう思っている私のすぐ横で、カーティスがパチンと指を鳴らします。
ただその仕草一つで、ガランとしていた部屋に小さなティー・テーブルと椅子が二つ現れました。
「本当に魔法って便利よね」
私の呟きに、カーティスがやっといつものような偉そうな笑みを浮かべます。
でもすぐにまた疲れたようにため息をつき、その椅子の一つに腰掛けました。
「待ってカーティス、そんなに疲れているならベッドで食べたら?」
まるで死にかけのボクサーのような姿で椅子に座ったカーティスがあまりに不憫で、思わずそう言ってしまいました。
でもすぐに、だらしないと怒られるかしらとカーティスを見れば。
一瞬キョトンとした顔でこちらを見たかティースが、
「あ、ああ。そうさせてもらおう」
視線を彷徨わせつつ頬をかき、また立ち上がって私から逃げるようにベッドへ向かいます。
カーティスの様子がおかしいのが気になりますが、私なにかしたのでしょうか?
「失礼します」
「ああ、ありがとう。ではこちらに」
すぐに夕食を運んできてくれたメイドさんにお礼を言って、さっきカーティスが出してくれたテーブルに並べて頂きます。
そこからまずは食べやすそうなスープのお皿を選んで、ベッドの上のカーティスに持っていきました。
「これなら大丈夫かしら」
私が食べ物を運ぶのをカーティスが珍しそうに見ていますが、病気のときくらいは私だって優しくします。
特にこんなことをしていると、昔ネイサンの面倒を見ていた頃を思い出してしまいます。
本当は全てメイドに任せるべきなのですが、ネイサンが私の名を呼んで泣くのでよく私がベッドで食べさせてあげていました。
多分、そんなことを思い出していたせいでしょう。
気づけば私はそのままの流れでスプーンでスープを掬って、それをカーティスに差し出していました。
そんな私をカーティスがまたもキョトンとした顔で見返してきて、それと目があって初めて、私は今自分がしていることに意識がいきます。
「じ、自分で食べられるわよね、は、はい、どうぞ」
スプーンとお皿を一緒にカーティスに押し付けるように差し出すと、そこでカーティスに両手の手首を掴まれてしまいました。
「折角そこまでしたなら、最後までしてくれてもいいんだぞ」
私の両手を掴んでるクセに、いつもの勢いがなく、まるで懇願するような目でそんな事いわれちゃうと、私だってそのままやめる訳には行かなくなって。
結局そのままカーティスのすぐ側ににじり寄って、ベッドの上でカーティスにスープを飲ませるハメになりました。
いえ、ネイサンで慣れてますよ?
だから全っ然大丈夫ですよ?
手が震えたりなんてしませんよ?
……いえ、本当に本当のことを言ってしまえば、ほんのちょっとだけ緊張しています。
だって、形の綺麗なカーティスの唇が私の差し出すスプーンを咥え、ちょっとずつそれを飲んでくれるのがなんかその、すごく、色っぽく思えて。
その仕草につい、見惚れてしまいます。
カーティスって本当に綺麗に食べるわよね。
こうしていれば、なんか美形のペットを餌付けしてるようでちょっと楽しいかも。
「お前も食べないのか」
一心にスープを運んでいてすっかり忘れてました。そういえば私もまだご飯を食べていません。
でも私が食べていたらカーティスに食べさせて上げられないし。
そう思っていると。
「あとは自分でたべられるから大丈夫だ」
そう言っておきながら、私がベッドから降りようとするとその手を掴んで、
「お前もここで食べればいい」
そういうカーティスの顔が、気のせいじゃなくちょっと赤くなってます。
これは……
「ちょっと待ってカーティス」
私は思いっきりカーティスに近づいて、その額に手を当てました。
「熱があるわけじゃなさそう。でもいくら薬が効いて傷が治っても、やっぱり身体への負担は残るわよね。次からは強精剤も一緒に出したほうがいいのかしら」
「それは絶対やめてくれ。休むどころか眠れなくなる」
「そ、それも困るわね」
そっか、ただ精力つけても困っちゃうわよね。
「じゃあほら、しっかりご飯食べて」
カーティスの答えにまた昨日の夜を思い出し、慌てて付け足した私は二人分の主菜のお皿とフォークを持ってベッドに戻ります。
そしてカーティスの隣に座って自分のごはんを食べ始めました。
ちょっとお行儀は悪いけれど、こんな時くらいはいいですよね?
さて今日の夕食はすじ肉のワイン煮込みとじゃがいものお団子、それに根野菜のロースト。
この地方ではなく、食べ慣れた私たちがいたファーレス王国の料理です。わざわざ私の為にファーレスの料理人さんを雇ってくれてるみたいで、本当にここのご飯は美味しくて毎日楽しみにしています。
しかも今日のカーティスの体調を見てわざわざ柔らかい料理に変えてくれたようです。
今日も思ったとおり、ワイン煮込みはナイフがなくても充分切れるほど柔らかく、ダンプリングに肉の旨味が溶け出したワインソースがよく絡んで美味しいったら……。
ふと横を見ればカーティスがジッとこちらを見ています。見てますが。
「見てるばかりで全然食べてないじゃないの。しっかり食べて寝たほうがいいわ」
私がそう言うと、やっと思い出したように自分のお皿に手をつけました。
そういえば以前はカーティスも薬師として、我がロワール家の夕飯の席にも来ていました。そのころはこんなふうに一緒に食べる日が来るとは思っていませんでしたが。
「こうして顔の見える距離で食べれば美味いものだな」
フォークを片手にボソリとカーティスが言いました。
それはその通り。私も以前はよく寂しがるネイサンと二人で部屋でお食事したりしていたので分かります。
そしてカーティスには悪いけれど、私は毎日ノーラと向かい合わせで楽しくお昼を食べていたりします。だから……
カーティスだけ仲間はずれはちょっと可愛そうよね。
「カーティスがそう言うのなら、私もあまり堅苦しくない夕食で構いません」
でも上手く伝えられなくて、言い方が少し可愛げのない物言いになってしまいます。
いえいえ、ここで私が可愛い必要はどこにもないハズ!
そんな事を考えてると、何故か恥ずかしくなってきて誤魔化すように立ち上がりかけ、
「あ、ご、ごめんなさい!」
私の持っていたお皿から残っていたソースが飛び出してカーティスの布団に染みをつけてしまい。
「問題ない」
でも今一度カーティスが指を鳴らせば、今溢れたソースが時間を巻き戻すように全てお皿に戻っていきました。
「そんなこともできちゃうのね」
「この程度ならばな」
そう言いながら、私の食べ終えたお皿と自分のお皿を一緒に投げると、こちらも狙ったようにさっきのテーブルに真っ直ぐ飛んでいって、音もたてずに静かに着地しました。
「あなた曲芸師でも充分やっていけそう」
思わず私がそう言えば、カーティスが呆れた声で答えます。
「お前は魔王をなんだと思ってるんだ」
え、魔法が使える中二病マッチョ……だなんてことはもちろん口に出しては言えませんでした。
別邸に戻ったカーティスが、着替えを終えて夕食の席に降りてきてこぼした最初の言葉がこれでした。
この別邸の夕食は、このサイズのお屋敷にしては少しこじんまりとした、たった八人がけのダイニングテーブルで供されています。
それでも使用人は無言ですし、静かで声はよく聞こえます。
夕食時、普段カーティスはあまり話しません。まるでそれが当たり前という顔であっというまに食べていなくなってしまうのです。
ですから、ため息のような言葉でも、ちょっと気になってしまいました。
「今日の怪我はやっぱり辛かったんじゃないの?」
普通の人ならもっと心配しますが、相手は自称魔王様のカーティスです。どのくらいの怪我が大怪我なのか、全く想像がつきません。
その証拠に、今日ノーラのお店に来たときもピンピンしているように見えましたし。
でも、治療後はやけにぐったりと疲れた様子で、珍しく私が仕事を終えるまで奥で休んでいました。
もしかしたら、今日の怪我は本当に辛かったのかも?
そう思って尋ねたのですが。
「あ、ああ。まあ、な」
なのにカーティスの答えは煮えきらず、それが余計不安を誘います。
「そんなに辛くなるなら、毎日怪我なんてしてこなければいいのに……」
「ああ、そうだな」
だから思わずそう言ってしまったのですが、いつもならすぐ反論してくるカーティスが、珍しく生返事を返してきました。
だから後悔してしまいます。
私だって、カーティスが来てくれるのが嫌なわけではないのです。ただ、怪我ばかりしてくるのが心配なだけで。
「夕食、もう少し軽いものにしてもらいましょうか?」
ここのご飯は美味しいけれど、量が結構多いのです。普段のカーティスはそれをほとんど食べてしまいますが、今日の怪我はお腹にもありました。
前世と違って傷薬は非常によく効きますが、だからって内臓まで治っているのかは確かめたことがありません。
席が遠いので私の表情がよく見えていなかったのでしょう、繰り返し言い続けてやっと、私が本気で心配しているのが伝わったようです。
カーティスが少し驚いたように間を私を見て、ちょっと考えてから、突然立ち上がりました。
「そうだな。今夜は部屋で頂こう。できれば薬の知識がある、君が一緒だとうれしい」
薬の知識なんてまだ大してないけれど、こんなカーティスは初めてなので出来れば一人にはしたくありません。
「そ、そうね。では私も一緒に部屋で頂きます」
そう言って私達が立ち上がると、それを聞いていたセバスチャンがすぐに了解したと頭を下げてキッチンへ飛んでいきました。
上階へ続く階段を上がる途中、カーティスが私に尋ねます。
「俺の部屋で大丈夫か?」
普段の俺様カーティスからは想像もつかない弱々しい声でそんなことを聞かれては、断ることも出来ません。
「そうね、食べてすぐ休むならそのほうがいいと思うわ」
仕方ないわよね。そう思って私もカーティスについて彼の部屋に入りました。
カーティスの部屋に入るのはこれが初めてです。
てっきり私の部屋と同じような作りかと思っていたのですが、その部屋は驚くほど殺風景で、ベッドとデスクが一つしかありません。
これじゃ一緒にご飯なんて無理よね。
そう思っている私のすぐ横で、カーティスがパチンと指を鳴らします。
ただその仕草一つで、ガランとしていた部屋に小さなティー・テーブルと椅子が二つ現れました。
「本当に魔法って便利よね」
私の呟きに、カーティスがやっといつものような偉そうな笑みを浮かべます。
でもすぐにまた疲れたようにため息をつき、その椅子の一つに腰掛けました。
「待ってカーティス、そんなに疲れているならベッドで食べたら?」
まるで死にかけのボクサーのような姿で椅子に座ったカーティスがあまりに不憫で、思わずそう言ってしまいました。
でもすぐに、だらしないと怒られるかしらとカーティスを見れば。
一瞬キョトンとした顔でこちらを見たかティースが、
「あ、ああ。そうさせてもらおう」
視線を彷徨わせつつ頬をかき、また立ち上がって私から逃げるようにベッドへ向かいます。
カーティスの様子がおかしいのが気になりますが、私なにかしたのでしょうか?
「失礼します」
「ああ、ありがとう。ではこちらに」
すぐに夕食を運んできてくれたメイドさんにお礼を言って、さっきカーティスが出してくれたテーブルに並べて頂きます。
そこからまずは食べやすそうなスープのお皿を選んで、ベッドの上のカーティスに持っていきました。
「これなら大丈夫かしら」
私が食べ物を運ぶのをカーティスが珍しそうに見ていますが、病気のときくらいは私だって優しくします。
特にこんなことをしていると、昔ネイサンの面倒を見ていた頃を思い出してしまいます。
本当は全てメイドに任せるべきなのですが、ネイサンが私の名を呼んで泣くのでよく私がベッドで食べさせてあげていました。
多分、そんなことを思い出していたせいでしょう。
気づけば私はそのままの流れでスプーンでスープを掬って、それをカーティスに差し出していました。
そんな私をカーティスがまたもキョトンとした顔で見返してきて、それと目があって初めて、私は今自分がしていることに意識がいきます。
「じ、自分で食べられるわよね、は、はい、どうぞ」
スプーンとお皿を一緒にカーティスに押し付けるように差し出すと、そこでカーティスに両手の手首を掴まれてしまいました。
「折角そこまでしたなら、最後までしてくれてもいいんだぞ」
私の両手を掴んでるクセに、いつもの勢いがなく、まるで懇願するような目でそんな事いわれちゃうと、私だってそのままやめる訳には行かなくなって。
結局そのままカーティスのすぐ側ににじり寄って、ベッドの上でカーティスにスープを飲ませるハメになりました。
いえ、ネイサンで慣れてますよ?
だから全っ然大丈夫ですよ?
手が震えたりなんてしませんよ?
……いえ、本当に本当のことを言ってしまえば、ほんのちょっとだけ緊張しています。
だって、形の綺麗なカーティスの唇が私の差し出すスプーンを咥え、ちょっとずつそれを飲んでくれるのがなんかその、すごく、色っぽく思えて。
その仕草につい、見惚れてしまいます。
カーティスって本当に綺麗に食べるわよね。
こうしていれば、なんか美形のペットを餌付けしてるようでちょっと楽しいかも。
「お前も食べないのか」
一心にスープを運んでいてすっかり忘れてました。そういえば私もまだご飯を食べていません。
でも私が食べていたらカーティスに食べさせて上げられないし。
そう思っていると。
「あとは自分でたべられるから大丈夫だ」
そう言っておきながら、私がベッドから降りようとするとその手を掴んで、
「お前もここで食べればいい」
そういうカーティスの顔が、気のせいじゃなくちょっと赤くなってます。
これは……
「ちょっと待ってカーティス」
私は思いっきりカーティスに近づいて、その額に手を当てました。
「熱があるわけじゃなさそう。でもいくら薬が効いて傷が治っても、やっぱり身体への負担は残るわよね。次からは強精剤も一緒に出したほうがいいのかしら」
「それは絶対やめてくれ。休むどころか眠れなくなる」
「そ、それも困るわね」
そっか、ただ精力つけても困っちゃうわよね。
「じゃあほら、しっかりご飯食べて」
カーティスの答えにまた昨日の夜を思い出し、慌てて付け足した私は二人分の主菜のお皿とフォークを持ってベッドに戻ります。
そしてカーティスの隣に座って自分のごはんを食べ始めました。
ちょっとお行儀は悪いけれど、こんな時くらいはいいですよね?
さて今日の夕食はすじ肉のワイン煮込みとじゃがいものお団子、それに根野菜のロースト。
この地方ではなく、食べ慣れた私たちがいたファーレス王国の料理です。わざわざ私の為にファーレスの料理人さんを雇ってくれてるみたいで、本当にここのご飯は美味しくて毎日楽しみにしています。
しかも今日のカーティスの体調を見てわざわざ柔らかい料理に変えてくれたようです。
今日も思ったとおり、ワイン煮込みはナイフがなくても充分切れるほど柔らかく、ダンプリングに肉の旨味が溶け出したワインソースがよく絡んで美味しいったら……。
ふと横を見ればカーティスがジッとこちらを見ています。見てますが。
「見てるばかりで全然食べてないじゃないの。しっかり食べて寝たほうがいいわ」
私がそう言うと、やっと思い出したように自分のお皿に手をつけました。
そういえば以前はカーティスも薬師として、我がロワール家の夕飯の席にも来ていました。そのころはこんなふうに一緒に食べる日が来るとは思っていませんでしたが。
「こうして顔の見える距離で食べれば美味いものだな」
フォークを片手にボソリとカーティスが言いました。
それはその通り。私も以前はよく寂しがるネイサンと二人で部屋でお食事したりしていたので分かります。
そしてカーティスには悪いけれど、私は毎日ノーラと向かい合わせで楽しくお昼を食べていたりします。だから……
カーティスだけ仲間はずれはちょっと可愛そうよね。
「カーティスがそう言うのなら、私もあまり堅苦しくない夕食で構いません」
でも上手く伝えられなくて、言い方が少し可愛げのない物言いになってしまいます。
いえいえ、ここで私が可愛い必要はどこにもないハズ!
そんな事を考えてると、何故か恥ずかしくなってきて誤魔化すように立ち上がりかけ、
「あ、ご、ごめんなさい!」
私の持っていたお皿から残っていたソースが飛び出してカーティスの布団に染みをつけてしまい。
「問題ない」
でも今一度カーティスが指を鳴らせば、今溢れたソースが時間を巻き戻すように全てお皿に戻っていきました。
「そんなこともできちゃうのね」
「この程度ならばな」
そう言いながら、私の食べ終えたお皿と自分のお皿を一緒に投げると、こちらも狙ったようにさっきのテーブルに真っ直ぐ飛んでいって、音もたてずに静かに着地しました。
「あなた曲芸師でも充分やっていけそう」
思わず私がそう言えば、カーティスが呆れた声で答えます。
「お前は魔王をなんだと思ってるんだ」
え、魔法が使える中二病マッチョ……だなんてことはもちろん口に出しては言えませんでした。
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