10 / 31
閑話:月明かりの跳ねる夜(カーティス視点)
しおりを挟む 結局、心咲は一日中男子たちの注目の的だった。もう放課後なのに、まだ話しかけられている。私は少しだけ羨ましいと思ってしまっていた。
「おまたせ、帰ろっか」
心咲は男子たちを振りきったようだ。後ろの方で、未練がましく睨みつけてくる視線が突き刺さる。
「......うん」
私はそう言うと、歩き始める。心咲が悪くない事は分かってはいるけれど、嫉妬していないといえば嘘になる。
「それで、卓也くんには告白するの?」
帰り道、心咲は突然そう聞いてきた。
私は慌てて周りを見る。うちの生徒がいたら大変だ。幸い、制服姿の学生は見当たらなかった。
「告白なんてしないよ........」
口許を押さえながらニヤニヤしている心咲を睨みつける。結構からかわれるんだよね。私。
「......心咲はどうなの? 好きな人とかいないの?」
私は、仕返とばかりに聞いてみた。
「私? 私は好きな人いるよ?」
心咲は当たり前のような顔をして、衝撃の真実を告げてきた。私は今まで、そんな人がいる事なんて全然知らなかった。ポカンと口を開け、心咲を凝視する。
「......希美、すごいバカっぽいよ」
私は慌てて開けていた口を閉じる。しかし、相手は誰なんだろう。気になる。
「誰? 誰なの?」
興味津々で聞いてみたけど、心咲は笑うだけで教えてはくれない。こうなった心咲は絶対口を割らないのだ。
私は、もしかしてと思い、恐る恐る聞いてみた。
「......卓也の事好きなの?」
私がそう言った瞬間、心咲が吹き出した。
「あははは! 違う違う! 卓也くんじゃないよ」
そう聞いた私はほっと胸を撫で下ろした。良かった......心咲相手じゃ絶対勝てない......
「そんなに好きなのに、何で告白しないの?」
急に心咲は真剣な表情で聞いてくる。
「......だって、卓也って私の事女の子として見てないもん」
自分で言ってて、悲しくなってくる。思わずうつ向いてしまった。
「でも、好きって言ったら変わるかもよ?」
心咲は優しく、諭すように覗き込んできた。
「......そうかなぁ...検討してみる」
私はそう言うと、ほんの少しだけ溜まっていた涙を袖で払った。
次の日の放課後、帰ろうとしていた私を卓也が呼び止めてきた。
「希美! 今日一緒に帰らね?」
周りにいた何人かの男子がヒューヒューと冷やかしてきた。卓也は、
「そんなんじゃねえよ!」
と追い払う。遠くから、心咲がニヤニヤとこちらを見ていた。私は一緒に帰る事を考えると、自然と顔が赤くなっていくのを感じる。
「もう行くぞ!」
卓也は突然私の手を掴み、引っ張るように下駄箱へ連れていかれた。
「しかし、希美と帰るのも久しぶりだな」
卓也は嬉しそうに笑ってくる。もしかして、私にもチャンスがあるんじゃないか。そう思えるほどの眩しい笑顔だった。
「うん。そうだね」
私は慌てて卓也から目をそらした。今顔を見られたら、死んでしまう。
「うん? どうしたんだ?」
そんな私の思いなど知らない卓也は、肩に手を置き覗き込もうとしてくる。
「何でもないから!」
私は顔を見られないように、走り始めた。これで万が一見られても、赤くなっているのは走ったからだと誤魔化せる。
「待ってって!」
女の私が卓也の足に勝てるはずもなく、敢えなく捕まってしまった。
「......ここで休んでいこうぜ」
卓也が指差した方向には、小さい頃よく一緒に遊んでいた公園があった。
私と卓也は公園のブランコに無言で座る。小さい頃は余裕のあったブランコも、今は結構キツキツだ。横を見ると、何を考えているのか、真剣な卓也の表情に見とれてしまう。
.....もし、今告白したら、どうなるのかな。私は、心咲の言っていた言葉を思い出す。
『でも、好きって言ったら変わるかもよ?』
......そうだ。駄目で元々、言ってみるだけ。駄目だったらドッキリとか、嘘とかで誤魔化せばいい。
私が決心し、告白ようとした一瞬前、卓也が思い詰めた顔で話しかけてきた。
「......あのさ、心咲って付き合ってる奴とかいるのかな」
卓也は真剣な表情で私を見つめてくる。
「......なんで?」
私は薄々分かっていながらも、聞き返した。違っていて欲しい。何かの間違いであって欲しい。そう期待した。
「俺さ、小学生の時からずっと好きなんだよね。高校生になって、心咲、ますます綺麗になったじゃん? 早く告白しときたくてさ。協力してくんね?」
卓也は私を拝むように手のひらを合わせている。
まさか卓也が心咲の事好きだったなんて、全然知らなかった。そっか......
私は、卓也が心咲の事を『好き』とか『綺麗』とか言う度に、心が壊れそうに痛む。そうだよね。私じゃ、やっぱり駄目だよね......
「......卓也はさ、私が協力したら嬉しい?」
泣かないように必死にこらえ、聞いてみる。少し声が震えたかもしれない。
「うん! お願い!」
卓也は、本当に心咲の事が好きなんだろう。今まで見たこともないぐらいに必死にお願いしてくる。
「......分かった。いいよ」
私は笑顔を作り、卓也を見つめる。その顔は、今まで見た事も無いぐらいに輝いていた。でも、その笑顔を引き出したのは私じゃなくて、心咲なんだ......
「ありがとう! 俺頑張るから!」
卓也はそう言うと、ブランコから飛び降り、こちらを向いた。
「あっ! 今日バイトの面接だった! ごめん、俺行くね」
卓也は慌てて時計を見ると走り始める。しかし突然、、ピタッと止まり顔だけこちらを向いた。
「希美が彼氏作るときは手伝ってやるからな!」
そう言うと、走って公園を出ていった。
「私は卓也と恋人になりたかったんだけどな......」
誰もいない公園で一人で呟いてみた。我慢していた涙がこらえきれず、あふれでてきた。
「おまたせ、帰ろっか」
心咲は男子たちを振りきったようだ。後ろの方で、未練がましく睨みつけてくる視線が突き刺さる。
「......うん」
私はそう言うと、歩き始める。心咲が悪くない事は分かってはいるけれど、嫉妬していないといえば嘘になる。
「それで、卓也くんには告白するの?」
帰り道、心咲は突然そう聞いてきた。
私は慌てて周りを見る。うちの生徒がいたら大変だ。幸い、制服姿の学生は見当たらなかった。
「告白なんてしないよ........」
口許を押さえながらニヤニヤしている心咲を睨みつける。結構からかわれるんだよね。私。
「......心咲はどうなの? 好きな人とかいないの?」
私は、仕返とばかりに聞いてみた。
「私? 私は好きな人いるよ?」
心咲は当たり前のような顔をして、衝撃の真実を告げてきた。私は今まで、そんな人がいる事なんて全然知らなかった。ポカンと口を開け、心咲を凝視する。
「......希美、すごいバカっぽいよ」
私は慌てて開けていた口を閉じる。しかし、相手は誰なんだろう。気になる。
「誰? 誰なの?」
興味津々で聞いてみたけど、心咲は笑うだけで教えてはくれない。こうなった心咲は絶対口を割らないのだ。
私は、もしかしてと思い、恐る恐る聞いてみた。
「......卓也の事好きなの?」
私がそう言った瞬間、心咲が吹き出した。
「あははは! 違う違う! 卓也くんじゃないよ」
そう聞いた私はほっと胸を撫で下ろした。良かった......心咲相手じゃ絶対勝てない......
「そんなに好きなのに、何で告白しないの?」
急に心咲は真剣な表情で聞いてくる。
「......だって、卓也って私の事女の子として見てないもん」
自分で言ってて、悲しくなってくる。思わずうつ向いてしまった。
「でも、好きって言ったら変わるかもよ?」
心咲は優しく、諭すように覗き込んできた。
「......そうかなぁ...検討してみる」
私はそう言うと、ほんの少しだけ溜まっていた涙を袖で払った。
次の日の放課後、帰ろうとしていた私を卓也が呼び止めてきた。
「希美! 今日一緒に帰らね?」
周りにいた何人かの男子がヒューヒューと冷やかしてきた。卓也は、
「そんなんじゃねえよ!」
と追い払う。遠くから、心咲がニヤニヤとこちらを見ていた。私は一緒に帰る事を考えると、自然と顔が赤くなっていくのを感じる。
「もう行くぞ!」
卓也は突然私の手を掴み、引っ張るように下駄箱へ連れていかれた。
「しかし、希美と帰るのも久しぶりだな」
卓也は嬉しそうに笑ってくる。もしかして、私にもチャンスがあるんじゃないか。そう思えるほどの眩しい笑顔だった。
「うん。そうだね」
私は慌てて卓也から目をそらした。今顔を見られたら、死んでしまう。
「うん? どうしたんだ?」
そんな私の思いなど知らない卓也は、肩に手を置き覗き込もうとしてくる。
「何でもないから!」
私は顔を見られないように、走り始めた。これで万が一見られても、赤くなっているのは走ったからだと誤魔化せる。
「待ってって!」
女の私が卓也の足に勝てるはずもなく、敢えなく捕まってしまった。
「......ここで休んでいこうぜ」
卓也が指差した方向には、小さい頃よく一緒に遊んでいた公園があった。
私と卓也は公園のブランコに無言で座る。小さい頃は余裕のあったブランコも、今は結構キツキツだ。横を見ると、何を考えているのか、真剣な卓也の表情に見とれてしまう。
.....もし、今告白したら、どうなるのかな。私は、心咲の言っていた言葉を思い出す。
『でも、好きって言ったら変わるかもよ?』
......そうだ。駄目で元々、言ってみるだけ。駄目だったらドッキリとか、嘘とかで誤魔化せばいい。
私が決心し、告白ようとした一瞬前、卓也が思い詰めた顔で話しかけてきた。
「......あのさ、心咲って付き合ってる奴とかいるのかな」
卓也は真剣な表情で私を見つめてくる。
「......なんで?」
私は薄々分かっていながらも、聞き返した。違っていて欲しい。何かの間違いであって欲しい。そう期待した。
「俺さ、小学生の時からずっと好きなんだよね。高校生になって、心咲、ますます綺麗になったじゃん? 早く告白しときたくてさ。協力してくんね?」
卓也は私を拝むように手のひらを合わせている。
まさか卓也が心咲の事好きだったなんて、全然知らなかった。そっか......
私は、卓也が心咲の事を『好き』とか『綺麗』とか言う度に、心が壊れそうに痛む。そうだよね。私じゃ、やっぱり駄目だよね......
「......卓也はさ、私が協力したら嬉しい?」
泣かないように必死にこらえ、聞いてみる。少し声が震えたかもしれない。
「うん! お願い!」
卓也は、本当に心咲の事が好きなんだろう。今まで見たこともないぐらいに必死にお願いしてくる。
「......分かった。いいよ」
私は笑顔を作り、卓也を見つめる。その顔は、今まで見た事も無いぐらいに輝いていた。でも、その笑顔を引き出したのは私じゃなくて、心咲なんだ......
「ありがとう! 俺頑張るから!」
卓也はそう言うと、ブランコから飛び降り、こちらを向いた。
「あっ! 今日バイトの面接だった! ごめん、俺行くね」
卓也は慌てて時計を見ると走り始める。しかし突然、、ピタッと止まり顔だけこちらを向いた。
「希美が彼氏作るときは手伝ってやるからな!」
そう言うと、走って公園を出ていった。
「私は卓也と恋人になりたかったんだけどな......」
誰もいない公園で一人で呟いてみた。我慢していた涙がこらえきれず、あふれでてきた。
14
Twitter:こみあ(@komia_komia)
お気に入りに追加
906
あなたにおすすめの小説
転生ガチャで悪役令嬢になりました
みおな
恋愛
前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。
なんていうのが、一般的だと思うのだけど。
気がついたら、神様の前に立っていました。
神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。
初めて聞きました、そんなこと。
で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

犬とスローライフを送ってたら黒い噂のある公爵に突然求婚された令嬢
烏守正來
恋愛
マリエラはのんびりした性格の伯爵令嬢。美人で華やかな姉や優秀な弟とは違い、自他ともに認める凡人。社交も特にせず、そのうち田舎貴族にでも嫁ぐ予定で、飼い犬のエルディと悠々暮らしていた。
ある雨の日、商談に来ていた客人に大変な無礼を働いてしまったマリエラとエルディだが、なぜかその直後に客人から結婚を申し込まれる。
客人は若くして公爵位を継いだ美貌の青年だが、周りで不審死が相次いだせいで「血塗れの公爵」の二つ名を持つ何かと黒い噂の多い人物。
意図がわからず戸惑うマリエラはその求婚をお断りしようとするが。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる