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エンドレス・ラブ
31 そしてエンドレス・ラブ ― 5 ―
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「帰ってきちゃったな」
「帰ってきちゃいましたね」
二人で扉を抜ければ、そこは辺境伯邸の私たち二人の寝室だった。
窓の外、空が薄らと明らんで来てるってことは、それなりに時間が過ぎたみたい。
そっか、もうこっちとあっちで流れる時間に差がなくなっちゃったんだ。
「これからこっちで過ごす時間は向こうでも過ぎちゃうんですよね」
「そういうことになるな。心配か?」
アーロンが気遣わしそうに私の顔を覗き込む。
「んー、ちょっと色々面倒なことにはなりそうな気がします」
「そうなのか?」
一応あっちの私は今まだ高校二年生だし、学校に妊娠しましたって報告したら大騒ぎになっちゃうかも。今更受験なんてする気はないけど、出席日数足りなくて卒業出来ないのは困るかな?
でも高校の卒業資格ってこっちじゃなんの役にも立たないんだよね……
「ま、悩むだけ無駄ですね」
もうアーロンと生きてくって決めたんだし、時間だってあるんだから細かいことは考えるのよそうっと。
そう吹っ切って笑顔でアーロンを見返したら、アーロンが心配そうに見返してきた。
「お前、りえ姉の影響で余計能天気に磨きかかってないか?」
失礼な!
それから二人でベッドに入って、私たちは残る時間を話し明かした。
私はアーロンに絶界で起きたこと、レシーネさんのことを全部話した。
アーロンも私にお父さんたちと旅してた頃の話を色々してくれた。
エッチもしないで夜を明かすのなんて、結婚以来初めてかもしれない。
次の朝、きっちり迎えにきたタイラーさんとピピンさんに引きずられるようにして、アーロンは非常に物足りなさそうな顔のまま、またもお仕事に帰って行った。
あ、そうそう、この前の勇者覚醒時に私の首輪に一気に魔晶石が貯まっちゃってた。それを使うことで、ここと旧フレイバーンのお城の間に設置した緊急用の転移魔法陣でピピンさんたちも自力でここに来れるようになったんだけど。今のところアーロンをお城に連れ戻すのが最も緊急度の高い事案らしい。
アーロンがこの辺境域を含む南の元公爵領を拝領するらしい、そうタイラーさんに教えられたのはそれから一週間ほど過ぎた頃だった。この前の争いで、南の公爵様が揃って裏切りを働いたとかで、二名は逃亡、一人は自殺しちゃったんだそう。幸い二つの公爵領にはいい後継者さんがいたみたいなんだけど、この辺境を含む地域の公爵さんは独り身で後継者もなく、タイラーさん曰く「丁度いい、じゃなかった、困ったからアーロン様に押し付ける」ってピピンさんが言ってらしたらしい。
アーロンと連れ立って出かけたタイラーさんが行方不明になったってピピンさんから緊急連絡が辺境伯邸に飛んで来たのがその数日後。
「アエリア様からならきっと連絡が繋がるはずです」
そう言ってピピンさんに泣きつかれて、私も何度もアーロンにメッセージ送ってみたんだけど。毎回「その件は心配するな」しか返事が返ってこなくて。
一晩明けて次の日。
なぜか「アレフィーリアの公爵家の長男」って肩書きをお土産に持たされたタイラーさんが、げっそりやつれた様子で辺境伯邸に戻ってきた。
知らせを聞いたピピンさんが緊急用の転移魔法陣でここに飛んできた時には、なぜか前公爵領の引継ぎ資料がここの客間に積み上がってて、大公様直筆の任命書まで一緒に置いてあった。
どうやらタイラーさん、一晩で伯爵様から公爵様に出世しちゃったらしい。アーロンの代わりにここの公爵領を押しつけられちゃうみたい。
任命書を見たピピンさんが哀れみと同情の籠もった目でタイラーさんを見てたけど、任命式の日取りに気づいた途端目を剥いて、慌てて授爵式用の一張羅を仕立てに二人でお城に帰ってっちゃった。あれっきり、よっぽど忙しいのかお二人の顔を見てない。アーロンは週一で必ず戻ってきてるけど。
私はといえば。
アーロンとも話し合い、辺境伯邸のみんなにも私の事情を説明して、週のうち四日は日本の学校へ、残りはこっちに帰ってきてスチュワードさんの授業を受けてます。
ただ、双子の妊娠はそれはそれは大変で、ここしばらく毎日悪阻と闘いながらの授業なんだけど。
お腹はまだ全然目立たないし、学校には最近体調不良が続いてるって言って誤魔化し続けてる。そのうち両親と一緒に説明しに行くのかなぁ。
そういえば、あれからも時々ウィリアム王子がここに来てたりする。私と一緒にスチュワードさんの授業を受けてるの。お兄さんのピエール王子と違い、魔力量は少なくても魔法が好きみたい。
まだ六歳なのにすごく真剣に勉強してるから、私の時みたいになにか目標があるのかと尋ねてみたら、「あいつだけには国を任せられない。アーロンが間違っても大公に祭り上げられないよう、僕がしっかりしなくちゃいけないんだ」って暗い目で言われちゃった。
それを定期報告でお話したらピピンさんは感動にむせび泣いてたし、タイラーさんまでやる気になってお城で特別に処世術やら政治やらの授業も始めるんだそう。
私も、アーロンが私以外には割と人でなしなの知ってるから正直納得。ウィル君はとっても真面目でいい子だし「一緒に頑張ろうね!」って応援しておいた。
あ、私も「ウィル君」呼びのままでいいって言われちゃった。確かに居候してた時は知らなくてそう呼んでたけど、国の王子様を「ウィル君」呼びで本当にいいんだろうか……
でもウィル君、口ではあんなこと言いつつ、アーロンが暇そうなの見つけると自分から絡みに行ってる。アーロンも満更じゃないみたいで、たまに剣の稽古なんかもつけてるみたい。
出産予定日は来年の初春。最近はアーロンも色々手加減してくれてる。
代わりに以前より二人で話をする時間が増えたかも。話すことは本当に尽きなくて。
毎日が大切な今の連続で、私たちはいつも今を大切に生きていて。
だからきっと、この国がこれからどう変わっても、二つの世界がどうなったとしても、私たち二人の歳がどう流れていこうとも。
私たちはこれからも、ずっと、ずっと、ずっと。
ず~~~~~っと幸せに暮らしていきます。
エンドレス・ラブ (完)
「帰ってきちゃいましたね」
二人で扉を抜ければ、そこは辺境伯邸の私たち二人の寝室だった。
窓の外、空が薄らと明らんで来てるってことは、それなりに時間が過ぎたみたい。
そっか、もうこっちとあっちで流れる時間に差がなくなっちゃったんだ。
「これからこっちで過ごす時間は向こうでも過ぎちゃうんですよね」
「そういうことになるな。心配か?」
アーロンが気遣わしそうに私の顔を覗き込む。
「んー、ちょっと色々面倒なことにはなりそうな気がします」
「そうなのか?」
一応あっちの私は今まだ高校二年生だし、学校に妊娠しましたって報告したら大騒ぎになっちゃうかも。今更受験なんてする気はないけど、出席日数足りなくて卒業出来ないのは困るかな?
でも高校の卒業資格ってこっちじゃなんの役にも立たないんだよね……
「ま、悩むだけ無駄ですね」
もうアーロンと生きてくって決めたんだし、時間だってあるんだから細かいことは考えるのよそうっと。
そう吹っ切って笑顔でアーロンを見返したら、アーロンが心配そうに見返してきた。
「お前、りえ姉の影響で余計能天気に磨きかかってないか?」
失礼な!
それから二人でベッドに入って、私たちは残る時間を話し明かした。
私はアーロンに絶界で起きたこと、レシーネさんのことを全部話した。
アーロンも私にお父さんたちと旅してた頃の話を色々してくれた。
エッチもしないで夜を明かすのなんて、結婚以来初めてかもしれない。
次の朝、きっちり迎えにきたタイラーさんとピピンさんに引きずられるようにして、アーロンは非常に物足りなさそうな顔のまま、またもお仕事に帰って行った。
あ、そうそう、この前の勇者覚醒時に私の首輪に一気に魔晶石が貯まっちゃってた。それを使うことで、ここと旧フレイバーンのお城の間に設置した緊急用の転移魔法陣でピピンさんたちも自力でここに来れるようになったんだけど。今のところアーロンをお城に連れ戻すのが最も緊急度の高い事案らしい。
アーロンがこの辺境域を含む南の元公爵領を拝領するらしい、そうタイラーさんに教えられたのはそれから一週間ほど過ぎた頃だった。この前の争いで、南の公爵様が揃って裏切りを働いたとかで、二名は逃亡、一人は自殺しちゃったんだそう。幸い二つの公爵領にはいい後継者さんがいたみたいなんだけど、この辺境を含む地域の公爵さんは独り身で後継者もなく、タイラーさん曰く「丁度いい、じゃなかった、困ったからアーロン様に押し付ける」ってピピンさんが言ってらしたらしい。
アーロンと連れ立って出かけたタイラーさんが行方不明になったってピピンさんから緊急連絡が辺境伯邸に飛んで来たのがその数日後。
「アエリア様からならきっと連絡が繋がるはずです」
そう言ってピピンさんに泣きつかれて、私も何度もアーロンにメッセージ送ってみたんだけど。毎回「その件は心配するな」しか返事が返ってこなくて。
一晩明けて次の日。
なぜか「アレフィーリアの公爵家の長男」って肩書きをお土産に持たされたタイラーさんが、げっそりやつれた様子で辺境伯邸に戻ってきた。
知らせを聞いたピピンさんが緊急用の転移魔法陣でここに飛んできた時には、なぜか前公爵領の引継ぎ資料がここの客間に積み上がってて、大公様直筆の任命書まで一緒に置いてあった。
どうやらタイラーさん、一晩で伯爵様から公爵様に出世しちゃったらしい。アーロンの代わりにここの公爵領を押しつけられちゃうみたい。
任命書を見たピピンさんが哀れみと同情の籠もった目でタイラーさんを見てたけど、任命式の日取りに気づいた途端目を剥いて、慌てて授爵式用の一張羅を仕立てに二人でお城に帰ってっちゃった。あれっきり、よっぽど忙しいのかお二人の顔を見てない。アーロンは週一で必ず戻ってきてるけど。
私はといえば。
アーロンとも話し合い、辺境伯邸のみんなにも私の事情を説明して、週のうち四日は日本の学校へ、残りはこっちに帰ってきてスチュワードさんの授業を受けてます。
ただ、双子の妊娠はそれはそれは大変で、ここしばらく毎日悪阻と闘いながらの授業なんだけど。
お腹はまだ全然目立たないし、学校には最近体調不良が続いてるって言って誤魔化し続けてる。そのうち両親と一緒に説明しに行くのかなぁ。
そういえば、あれからも時々ウィリアム王子がここに来てたりする。私と一緒にスチュワードさんの授業を受けてるの。お兄さんのピエール王子と違い、魔力量は少なくても魔法が好きみたい。
まだ六歳なのにすごく真剣に勉強してるから、私の時みたいになにか目標があるのかと尋ねてみたら、「あいつだけには国を任せられない。アーロンが間違っても大公に祭り上げられないよう、僕がしっかりしなくちゃいけないんだ」って暗い目で言われちゃった。
それを定期報告でお話したらピピンさんは感動にむせび泣いてたし、タイラーさんまでやる気になってお城で特別に処世術やら政治やらの授業も始めるんだそう。
私も、アーロンが私以外には割と人でなしなの知ってるから正直納得。ウィル君はとっても真面目でいい子だし「一緒に頑張ろうね!」って応援しておいた。
あ、私も「ウィル君」呼びのままでいいって言われちゃった。確かに居候してた時は知らなくてそう呼んでたけど、国の王子様を「ウィル君」呼びで本当にいいんだろうか……
でもウィル君、口ではあんなこと言いつつ、アーロンが暇そうなの見つけると自分から絡みに行ってる。アーロンも満更じゃないみたいで、たまに剣の稽古なんかもつけてるみたい。
出産予定日は来年の初春。最近はアーロンも色々手加減してくれてる。
代わりに以前より二人で話をする時間が増えたかも。話すことは本当に尽きなくて。
毎日が大切な今の連続で、私たちはいつも今を大切に生きていて。
だからきっと、この国がこれからどう変わっても、二つの世界がどうなったとしても、私たち二人の歳がどう流れていこうとも。
私たちはこれからも、ずっと、ずっと、ずっと。
ず~~~~~っと幸せに暮らしていきます。
エンドレス・ラブ (完)
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