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―煽動編―
バカサトリはサイテーですね
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――残された僕らは、ボーっとしながらお茶を飲んでいた。
ゆっくりと、そして、静かにお茶を飲むミィコの姿がなんとなく可愛いと思えた。
「サトリ、なんでミィコのこと見つめているんですか?」
「ミィコ、そうして静かにしていると可愛いのに、な」
「バカサトリ、意味の分からないことは言わないでください。そうやって、ミコのこと変な目で見るのをやめてください! サイテーですね」
ひどい言われようだ――あれ、以前にも、ミィコから同じこと言われたような?
「ミィコのそういう性格も可愛いと思えてくる」
僕はそれに構うことなくミィコに追い打ちをかける。
「バ、バカサトリ、いい加減にしてください。サトリに言われても嬉しくなんてないんです! 自信過剰ですか!? ミコ、怒りますよ! アイリもこんなサトリには気を付けてください!」
まるでミィコは、猫じゃらしで遊ぶ子猫のように、僕の言葉によって翻弄されている。これは興味深い。そして、ミィコは藍里まで巻き込もうとしている。
「え、あ――う、うん、私も気を付ける……」
突然ミィコから話を振られた藍里は上の空だ。
きっと、何に気を付けるのか理解していない。いや、理解していて返事をしていたくない、というのが僕の本音だ。藍里は僕に対して気を付けるとか、そんなこと思っていないはずだ! きっと!
なんだろう? 藍里の様子が変だ。
「藍里、もしかして、なにか――」
なんだか、僕は藍里の様子が気になった。
「え、ううん。なにもないですよ! ただ、ちょっとだけ疲れてしまっていて……ごめんなさい」
僕の問いかけに藍里は全力で否定する。
「あ、僕の方こそ、ごめん。幾何学的楽園でみんなクタクタだもんね。分かるよ」
「うん、ありがとうございます……さとりくん」
確かに藍里は疲れているのだろうけど、それだけじゃないような気もする。僕の考えすぎなのだろうか?
「ミコもすごく眠たいです。ユキネの幾何学的楽園、精神的な負荷が大きすぎますね。とっても危険です。でも、すごく楽しかったです」
「楽しかったのは、僕らと一緒だったから?」
「違います。アイリと一緒だったからです。サトリは関係ないです。断言します」
「うわ、ひどい……」
「ひどくないです! サトリはあくまでオマケです」
僕たちがそんなやりとりをしているうちに、雪音さんと三ケ田さんがこちらの世界へと戻ってきたようだ。
「雪音……これは、これはいったいなんなのだ? 具合が、悪い……まるで、ひどい乗り物酔いにでもなっているような感覚だ――すまないが、少しだけ、横にならせてくれ」
三ケ田さんは幾何学的楽園の影響で具合が悪そうだ。
「うん、六花を強制的に向こうの世界に引き込んだ影響。初回だったのも相まって、すごく負荷が大きかったかも。私のベッドを使っていいから、六花は向こうで休んでいて。後は、私が全部説明しておくから」
雪音さんはさらっと怖いことを言う。三ケ田さんに何かあったらどうするつもりだったのだろう?
「そ、そうか、よく分からないが、よろしく頼む」
そう言って三ケ田さんは、よろよろと雪音さんのベッドに向かい、そこで横になると、ほどなくしてスースーと寝息を立てながら眠ってしまった。
「さて、向こうの世界で、六花から異能超人についていろいろと聞くことができたよ! これから、そのことについてお話しします。結構、衝撃的よ?」
「ユキネ、前置きはいいので早くしてください」
雪音さんとミィコは相変わらずのやり取りをしていた。僕と藍里は黙って雪音さんの話に耳を傾けた。
「さて、まずは、異能超人とは何か? これに関しては海風博士の言っていた通り、元日を起点として突然変異を起こした人間たちの総称。そして、この突然変異を起こした人間たち――原則として、『インフィニティ』と『エタニティ』、この二種類の法則に基づいて、特殊な能力がその身に宿っている、と考えられているの」
「インフィニティ? エタニティ?」
僕はつい口に出して聞いてしまった。
「そ、インフィニティとエタニティ。幾何学的楽園で私が話したことを覚えてる? ミィコの能力には、命令セットのようなものがあって、さとりちゃんの能力には存在しないという話」
「ユキネ、それと何か関係があるのですか?」
「おおありもおおあり、オオアリクイよ!」
雪音さんは寒いギャグを飛ばした。僕らはドン引きだ。
「ユキネ、ちょっと今日は冷えますね。とても寒いので、暖房を強くしてもらえますか?」
「ミィコ、そういうのはいらないから!」
ミィコのツッコミに雪音さんは慌てている。
「それで、インフィニティとエタニティって、それとどんな関係があるんですか?」
僕は二人のやり取りに割って入った。
雪音さんは一呼吸置いて――
「ええとね――まず、さとりちゃんはインフィニティの能力者。そして、ミィコはエタニティの能力者。インフィニティの能力者は、とても不安定なの。その能力自体、どんなものなのかよく分からなくて、身近にいる同じインフィニティの能力者が不安定な状態だと、その能力が伝染し合って、能力が壊れることがある、みたい。逆にエタニティの能力者は、安定した能力を持っていて、命令セットのようなものが存在しているから、ある程度は自在にコントロールできるみたい。まだ、詳しい研究が出来てないから謎が多いみたいだけど、やっぱり、能力者はヒトゲノムに変化があるみたいね」
「それって、雪音さんが言っていた、ゲノムの拡張パックというやつですか?」
僕は幾何学的楽園で雪音さんがしていた話を思い出してからそう発言した。
「ご名答! そういうことよ! でもね、拡張パックはエタニティの能力者にしか存在しないんじゃないかっていう話を向こうの世界で六花としていたのよ」
「ユキネ、それはどういう意味ですか? インフィニティも能力者なのですよね?」
さすがのミィコも分かっていなかったようだが、僕には雪音さんの言うことが理解出来た――
ゆっくりと、そして、静かにお茶を飲むミィコの姿がなんとなく可愛いと思えた。
「サトリ、なんでミィコのこと見つめているんですか?」
「ミィコ、そうして静かにしていると可愛いのに、な」
「バカサトリ、意味の分からないことは言わないでください。そうやって、ミコのこと変な目で見るのをやめてください! サイテーですね」
ひどい言われようだ――あれ、以前にも、ミィコから同じこと言われたような?
「ミィコのそういう性格も可愛いと思えてくる」
僕はそれに構うことなくミィコに追い打ちをかける。
「バ、バカサトリ、いい加減にしてください。サトリに言われても嬉しくなんてないんです! 自信過剰ですか!? ミコ、怒りますよ! アイリもこんなサトリには気を付けてください!」
まるでミィコは、猫じゃらしで遊ぶ子猫のように、僕の言葉によって翻弄されている。これは興味深い。そして、ミィコは藍里まで巻き込もうとしている。
「え、あ――う、うん、私も気を付ける……」
突然ミィコから話を振られた藍里は上の空だ。
きっと、何に気を付けるのか理解していない。いや、理解していて返事をしていたくない、というのが僕の本音だ。藍里は僕に対して気を付けるとか、そんなこと思っていないはずだ! きっと!
なんだろう? 藍里の様子が変だ。
「藍里、もしかして、なにか――」
なんだか、僕は藍里の様子が気になった。
「え、ううん。なにもないですよ! ただ、ちょっとだけ疲れてしまっていて……ごめんなさい」
僕の問いかけに藍里は全力で否定する。
「あ、僕の方こそ、ごめん。幾何学的楽園でみんなクタクタだもんね。分かるよ」
「うん、ありがとうございます……さとりくん」
確かに藍里は疲れているのだろうけど、それだけじゃないような気もする。僕の考えすぎなのだろうか?
「ミコもすごく眠たいです。ユキネの幾何学的楽園、精神的な負荷が大きすぎますね。とっても危険です。でも、すごく楽しかったです」
「楽しかったのは、僕らと一緒だったから?」
「違います。アイリと一緒だったからです。サトリは関係ないです。断言します」
「うわ、ひどい……」
「ひどくないです! サトリはあくまでオマケです」
僕たちがそんなやりとりをしているうちに、雪音さんと三ケ田さんがこちらの世界へと戻ってきたようだ。
「雪音……これは、これはいったいなんなのだ? 具合が、悪い……まるで、ひどい乗り物酔いにでもなっているような感覚だ――すまないが、少しだけ、横にならせてくれ」
三ケ田さんは幾何学的楽園の影響で具合が悪そうだ。
「うん、六花を強制的に向こうの世界に引き込んだ影響。初回だったのも相まって、すごく負荷が大きかったかも。私のベッドを使っていいから、六花は向こうで休んでいて。後は、私が全部説明しておくから」
雪音さんはさらっと怖いことを言う。三ケ田さんに何かあったらどうするつもりだったのだろう?
「そ、そうか、よく分からないが、よろしく頼む」
そう言って三ケ田さんは、よろよろと雪音さんのベッドに向かい、そこで横になると、ほどなくしてスースーと寝息を立てながら眠ってしまった。
「さて、向こうの世界で、六花から異能超人についていろいろと聞くことができたよ! これから、そのことについてお話しします。結構、衝撃的よ?」
「ユキネ、前置きはいいので早くしてください」
雪音さんとミィコは相変わらずのやり取りをしていた。僕と藍里は黙って雪音さんの話に耳を傾けた。
「さて、まずは、異能超人とは何か? これに関しては海風博士の言っていた通り、元日を起点として突然変異を起こした人間たちの総称。そして、この突然変異を起こした人間たち――原則として、『インフィニティ』と『エタニティ』、この二種類の法則に基づいて、特殊な能力がその身に宿っている、と考えられているの」
「インフィニティ? エタニティ?」
僕はつい口に出して聞いてしまった。
「そ、インフィニティとエタニティ。幾何学的楽園で私が話したことを覚えてる? ミィコの能力には、命令セットのようなものがあって、さとりちゃんの能力には存在しないという話」
「ユキネ、それと何か関係があるのですか?」
「おおありもおおあり、オオアリクイよ!」
雪音さんは寒いギャグを飛ばした。僕らはドン引きだ。
「ユキネ、ちょっと今日は冷えますね。とても寒いので、暖房を強くしてもらえますか?」
「ミィコ、そういうのはいらないから!」
ミィコのツッコミに雪音さんは慌てている。
「それで、インフィニティとエタニティって、それとどんな関係があるんですか?」
僕は二人のやり取りに割って入った。
雪音さんは一呼吸置いて――
「ええとね――まず、さとりちゃんはインフィニティの能力者。そして、ミィコはエタニティの能力者。インフィニティの能力者は、とても不安定なの。その能力自体、どんなものなのかよく分からなくて、身近にいる同じインフィニティの能力者が不安定な状態だと、その能力が伝染し合って、能力が壊れることがある、みたい。逆にエタニティの能力者は、安定した能力を持っていて、命令セットのようなものが存在しているから、ある程度は自在にコントロールできるみたい。まだ、詳しい研究が出来てないから謎が多いみたいだけど、やっぱり、能力者はヒトゲノムに変化があるみたいね」
「それって、雪音さんが言っていた、ゲノムの拡張パックというやつですか?」
僕は幾何学的楽園で雪音さんがしていた話を思い出してからそう発言した。
「ご名答! そういうことよ! でもね、拡張パックはエタニティの能力者にしか存在しないんじゃないかっていう話を向こうの世界で六花としていたのよ」
「ユキネ、それはどういう意味ですか? インフィニティも能力者なのですよね?」
さすがのミィコも分かっていなかったようだが、僕には雪音さんの言うことが理解出来た――
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