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―邂逅編―
自分勝手だよ
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「ごめんね、藍里。その通り……父さんは身勝手だ。私だって人間なんだ、感情で動いてしまうこともある。私は、藍里と、藍里の生きるこの世界、どちらも守りたい――私はこれから政府のもとへと出向き、その罪を償う。そして、私にとって、これが藍里と一緒に居られる最後の瞬間になるかもしれない。だから、少しでも一緒に楽しい時間を過ごしたかった。そんな身勝手な父親を許してほしい」
「お父さん……」
藍里はとても悲しそうな表情をしている。
「わかりました。僕は、藍里を全力で守ります」
僕は、藍里をこれ以上悲しませたくないという気持ちからなのか、勢いでそう言っていた。
「仕方ないですね、お受けいたしましょう。私がお人好しでよかったですね。それにしても、アンリさんに言われたときは軽い気持ちでいたけど、まさかこんな展開になるなんて……」
雪音さんも渋々と了承していた。
「ミコに任せてください。アイリに変な虫が近寄ってこないようにしっかりと見守っています。そこにいるサトリみたいな害虫もしっかりと見張っておきますので」
「あの、ミィコさん? ちょっと、害虫っていうのは、ひどいかなぁって」
「あ、ごめんなさい。害獣でしたね」
ミィコに散々な言い方をされて、僕は少し悲しくなった。
「みんな、協力してくれてありがとう。世界を元に戻すことはできないけれど、ループの先の未来は必ず存在している。ループを引き起こす何か、トリガーのようなものも存在しているはずだ。私も、政府研究所での活動が許されるようであれば、トリガーの手掛かりを探ることくらいはできるだろう」
海風博士は明るく振る舞っているが、内心では絶望の中、後悔と自責の念に苛まれていることだろう。
「ループに関して一つ気になる点が……僕らだけじゃなく、全世界、宇宙までもがループしているってことですよね? 誰かがこの現象に気付いたりしないのでしょうか?」
僕は、海風博士に疑問を投げかけた。
「おそらく、強い影響が出ているのは私たちの周りだけだろう。人類にそれを知るすべはない。万が一、メメント・デブリが残っていたとしても、デジャヴのようにしか思われないだろう。そのため、この地球上でループしていることに気が付くものはごく僅かだろう……だが、宇宙には我々の想像を遥かに超えた知的生命体が存在している可能性も高く、このループにも気付いているかもしれない。現状が長引けば――最悪、人類は未知の存在から粛清される可能性もある」
海風博士は、人類よりも宇宙への影響を懸念しているようだ。
それにしても、なぜ人類はこれ程までのオーバーテクノロジーであるキューブをいとも簡単に月面で入手できたのだろうか? 僕たちは何者かに試されているのだろうか?
あからさまに月で発見した未知の物体、実はとんでもない代物でした……というのはどうしても腑に落ちない。
どちらにせよ、このループを止める方法が分からなければ、海風博士の言うように未知の存在から粛清の対象とされるかもしれない。
そして、ループのトリガー……。
僕に残る『メメント・デブリ』、藍里の持つ未知のコア、最期の記憶『メメント・モリ』――
僕は閃いた。
もしかすると、僕の死に対する恐怖や拒絶によって、藍里の持つコアが何らかの反応、もしくはなんらかの共鳴をしてタイムループを引き起こしているのではないだろうか? 僕が自らの死を受け入れることで、ループが止まるのだとしたら……? 僕の犠牲によって、世界が救われるのだとすれば――
――室内に鳴り響く呼び出し音。そろそろ退出時間、フロントからそのお知らせだろう。
「はい。わかりました」
雪音さんが内線電話の受話器を取り、フロントの指示に従っていた。
「というわけで、お開きの時間です。さあ、退室するよ~」
雪音さんはみんなを急かした。
みんな大慌てで、食べ散らかしたプレートとグラスをひとまとめにしてから部屋を後にした。
ミィコが返却物の入ったカゴを持っているのだが、お使いに行く小さな女の子みたいでなんだか微笑ましく感じる。本当に、口を開かなければ幼気な少女という感じですごく可愛い。本当に。
――海風博士と雪音さんがフロントで支払いしている間に僕らは店の外に出た。
すぐに海風博士と雪音さんも店の外に出てきた。
「ご馳走様でした!」
海風博士にみんな口をそろえて言った。
「今日は楽しかったよ。みんな本当にありがとう。藍里のこと、よろしくお願いします……藍里、どうか、父さんを、許してほしい」
海風博士は悲しげな表情をしていた……と、同時に安堵感も得られているというような印象を受けた。
「お父さん……」
藍里は言葉に詰まっていた。
「私から、最後に――キューブは、オーバーテクノロジーによって、滅びの運命を辿った文明が、その警告として残してくれたもの……我々人類もいつか、その域に到達するかもしれない。火星と同じような運命を辿らないために――いや、もうやめよう」
火星? どういうことだろう?
海風博士にも海風博士なりの考えがあるのだろうか……?
「お父さん……」
藍里はとても悲しそうな表情をしている。
「わかりました。僕は、藍里を全力で守ります」
僕は、藍里をこれ以上悲しませたくないという気持ちからなのか、勢いでそう言っていた。
「仕方ないですね、お受けいたしましょう。私がお人好しでよかったですね。それにしても、アンリさんに言われたときは軽い気持ちでいたけど、まさかこんな展開になるなんて……」
雪音さんも渋々と了承していた。
「ミコに任せてください。アイリに変な虫が近寄ってこないようにしっかりと見守っています。そこにいるサトリみたいな害虫もしっかりと見張っておきますので」
「あの、ミィコさん? ちょっと、害虫っていうのは、ひどいかなぁって」
「あ、ごめんなさい。害獣でしたね」
ミィコに散々な言い方をされて、僕は少し悲しくなった。
「みんな、協力してくれてありがとう。世界を元に戻すことはできないけれど、ループの先の未来は必ず存在している。ループを引き起こす何か、トリガーのようなものも存在しているはずだ。私も、政府研究所での活動が許されるようであれば、トリガーの手掛かりを探ることくらいはできるだろう」
海風博士は明るく振る舞っているが、内心では絶望の中、後悔と自責の念に苛まれていることだろう。
「ループに関して一つ気になる点が……僕らだけじゃなく、全世界、宇宙までもがループしているってことですよね? 誰かがこの現象に気付いたりしないのでしょうか?」
僕は、海風博士に疑問を投げかけた。
「おそらく、強い影響が出ているのは私たちの周りだけだろう。人類にそれを知るすべはない。万が一、メメント・デブリが残っていたとしても、デジャヴのようにしか思われないだろう。そのため、この地球上でループしていることに気が付くものはごく僅かだろう……だが、宇宙には我々の想像を遥かに超えた知的生命体が存在している可能性も高く、このループにも気付いているかもしれない。現状が長引けば――最悪、人類は未知の存在から粛清される可能性もある」
海風博士は、人類よりも宇宙への影響を懸念しているようだ。
それにしても、なぜ人類はこれ程までのオーバーテクノロジーであるキューブをいとも簡単に月面で入手できたのだろうか? 僕たちは何者かに試されているのだろうか?
あからさまに月で発見した未知の物体、実はとんでもない代物でした……というのはどうしても腑に落ちない。
どちらにせよ、このループを止める方法が分からなければ、海風博士の言うように未知の存在から粛清の対象とされるかもしれない。
そして、ループのトリガー……。
僕に残る『メメント・デブリ』、藍里の持つ未知のコア、最期の記憶『メメント・モリ』――
僕は閃いた。
もしかすると、僕の死に対する恐怖や拒絶によって、藍里の持つコアが何らかの反応、もしくはなんらかの共鳴をしてタイムループを引き起こしているのではないだろうか? 僕が自らの死を受け入れることで、ループが止まるのだとしたら……? 僕の犠牲によって、世界が救われるのだとすれば――
――室内に鳴り響く呼び出し音。そろそろ退出時間、フロントからそのお知らせだろう。
「はい。わかりました」
雪音さんが内線電話の受話器を取り、フロントの指示に従っていた。
「というわけで、お開きの時間です。さあ、退室するよ~」
雪音さんはみんなを急かした。
みんな大慌てで、食べ散らかしたプレートとグラスをひとまとめにしてから部屋を後にした。
ミィコが返却物の入ったカゴを持っているのだが、お使いに行く小さな女の子みたいでなんだか微笑ましく感じる。本当に、口を開かなければ幼気な少女という感じですごく可愛い。本当に。
――海風博士と雪音さんがフロントで支払いしている間に僕らは店の外に出た。
すぐに海風博士と雪音さんも店の外に出てきた。
「ご馳走様でした!」
海風博士にみんな口をそろえて言った。
「今日は楽しかったよ。みんな本当にありがとう。藍里のこと、よろしくお願いします……藍里、どうか、父さんを、許してほしい」
海風博士は悲しげな表情をしていた……と、同時に安堵感も得られているというような印象を受けた。
「お父さん……」
藍里は言葉に詰まっていた。
「私から、最後に――キューブは、オーバーテクノロジーによって、滅びの運命を辿った文明が、その警告として残してくれたもの……我々人類もいつか、その域に到達するかもしれない。火星と同じような運命を辿らないために――いや、もうやめよう」
火星? どういうことだろう?
海風博士にも海風博士なりの考えがあるのだろうか……?
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