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―邂逅編―
フォトンエネルギーリアライズ
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西暦2000年1月3日、午前6時――
夜明け――
僕は、薄暗い部屋を照らすために、光子再生法を照明のように使用する。こうすることにより、光子光源としての応用が可能となったのだ。
これで暗い夜道も安心だ。とても便利な能力に感動していた。
思い描いていた攻撃的な能力とは程遠くとも、これだけ便利な能力がたった一夜にして使えた感動は計り知れない。
しかし、人目のあるところで使うのは、いささかハイリスクだろう。
――それだけではなかった。
左手の擦り傷を確認するため、僕は包帯をほどく。
すると、包帯をほどいた僕の左手、その手のひらの擦り傷……治りかけではあるが、その傷口がほぼふさがっている。これは驚異的な速さと言えるだろう。
光子再生法は、細胞組織の再生を最適化する効果でもあるのだろうか? 実に興味深い。
そのおかげで、僕の左手が日常生活に支障をきたすようなことはないだろう。
あれ? でも、昨夜の時点ですでに傷が癒えていたような気もする……まあ、考えていても仕方がない。
しばらくして、藍里から電話がかかってきた。
「もしもし――」
「さとりくんですか!? 手掛かり、見つかりました! 昨夜、お父さんの部屋に入ったら机の上に『藍里』って書かれた紙があって、よく見ると小さく、『3-裏』って書かれていたんです。私、最初は何のことか分からなかったのですけど、周りをよく見てみると机の引き出しに番号が振ってあって、3番目の引き出しの裏を見たらプリペイド携帯が張りつけてあったんです! そしたら、今日の朝早く、そのプリペイド携帯にお父さんから電話がかかってきて――」
藍里は僕に、昨夜からの出来事を一気に伝えてきた。その電話越しからも分かるくらい嬉しそうな声で。
「本当に!? よかった。じゃあ、8時頃に駅前で落ち合おうか」
僕の心情的に『今すぐに――』とでも言いたかったが、身支度と心の準備をする時間を考慮した。呑気とかトロいとかそういうものではない。断じて。
「分かりました! 目的地はその時にお伝えしますね」
――終話。
僕はそのまま部屋から出て階段を降り、居間に向かった。
親は揃ってテレビに向かい、流れている朝のニュースに夢中だ。
『――電気街では、焦げて甘い匂いのする謎の巨大球体が発見され――番組の途中ですが、速報をお伝えします。先ほどのニュースでお伝えしていた、一部地域での異変についての情報が入りました。Y2K問題による影響で、政府研究機関の機器に何らかのトラブルが発生している模様です。また、本日の午前中に緊急会見を予定しているとの情報も入りました――』
なるほど、これだけ能力者の情報が出てくれば、メディアも政府も抑え込むのは難しいということか。
「おはよう」僕は二人に声をかけた。
「ああ、おはよう」
父親はチラッとこちらを見て挨拶をした後、すぐさまテレビの方に顔を向けた。
「おはよう。汚れたハンカチ、玄関に置きっぱなしになっていたから、洗って乾かしておいたわよ。これ、借りものなんでしょ?」
藍里に借りたハンカチを母親が洗って乾かして、アイロンがけまでしてくれたようだ。ありがたい。
でも、綺麗になったとはいえ、一度、血の付いてしまったハンカチを返していいものなのだろうか? 僕は悩みながらもテーブルの上に置いてあるハンカチを回収した。
「ありがとう。助かるよ」
「どういたしまして。でも、可愛いハンカチね、女の子のでしょ? 愛唯ちゃんのかな? さとりは愛唯ちゃんと仲がいいものね~」
「いや、違うよ」
「え、違うの?」
母親とそんなやりとりをしていると、父親がテレビを見ながら僕に話しかけてくる。
「なあ、おい。さとりは変なことに巻き込まれたりなんてしてないか? 元旦からこの辺で異常なことが起きているっていうじゃないか」
「え、ああ、うん。街が『騒がしいかな』とは思ったけど、特には……」
僕はおどけた様子で言った。
「そうか。まあ、不可解な出来事を野次馬根性で知りたいと思うのは無理もない、人間だからな……だがな、その好奇心から、命を落としかねない軽率な行動だけはするんじゃないぞ。それと、色々と嗅ぎまわって政府に目を付けられないようにな」
父親はテレビに目を向けながら僕にそう呟いた。
隣に居る母親も『うんうん』と頷いている。親は何か感づいているのだろうか?
それとも、『人類は、好奇心により文明を発展させたが、過剰な好奇心により、いずれその身を滅ぼす』とでも言いたいのだろうか――僕の考えすぎか。
「ああ、分かったよ」
僕はそう言って、キッチンに用意されていた朝食を素早く平らげ、自室に戻って身支度を整えた。
――約束の時間まで1時間半。駅前までは10分もかからないだろう。
携帯電話を見てみたが愛唯から連絡はない。アンリさんの言葉や起こりうる未来のことを考えると、僕から愛唯に連絡するのを躊躇ってしまう。
――愛唯が恋しい。
ダメだ、しばらくは愛唯のことを忘れよう。
夜明け――
僕は、薄暗い部屋を照らすために、光子再生法を照明のように使用する。こうすることにより、光子光源としての応用が可能となったのだ。
これで暗い夜道も安心だ。とても便利な能力に感動していた。
思い描いていた攻撃的な能力とは程遠くとも、これだけ便利な能力がたった一夜にして使えた感動は計り知れない。
しかし、人目のあるところで使うのは、いささかハイリスクだろう。
――それだけではなかった。
左手の擦り傷を確認するため、僕は包帯をほどく。
すると、包帯をほどいた僕の左手、その手のひらの擦り傷……治りかけではあるが、その傷口がほぼふさがっている。これは驚異的な速さと言えるだろう。
光子再生法は、細胞組織の再生を最適化する効果でもあるのだろうか? 実に興味深い。
そのおかげで、僕の左手が日常生活に支障をきたすようなことはないだろう。
あれ? でも、昨夜の時点ですでに傷が癒えていたような気もする……まあ、考えていても仕方がない。
しばらくして、藍里から電話がかかってきた。
「もしもし――」
「さとりくんですか!? 手掛かり、見つかりました! 昨夜、お父さんの部屋に入ったら机の上に『藍里』って書かれた紙があって、よく見ると小さく、『3-裏』って書かれていたんです。私、最初は何のことか分からなかったのですけど、周りをよく見てみると机の引き出しに番号が振ってあって、3番目の引き出しの裏を見たらプリペイド携帯が張りつけてあったんです! そしたら、今日の朝早く、そのプリペイド携帯にお父さんから電話がかかってきて――」
藍里は僕に、昨夜からの出来事を一気に伝えてきた。その電話越しからも分かるくらい嬉しそうな声で。
「本当に!? よかった。じゃあ、8時頃に駅前で落ち合おうか」
僕の心情的に『今すぐに――』とでも言いたかったが、身支度と心の準備をする時間を考慮した。呑気とかトロいとかそういうものではない。断じて。
「分かりました! 目的地はその時にお伝えしますね」
――終話。
僕はそのまま部屋から出て階段を降り、居間に向かった。
親は揃ってテレビに向かい、流れている朝のニュースに夢中だ。
『――電気街では、焦げて甘い匂いのする謎の巨大球体が発見され――番組の途中ですが、速報をお伝えします。先ほどのニュースでお伝えしていた、一部地域での異変についての情報が入りました。Y2K問題による影響で、政府研究機関の機器に何らかのトラブルが発生している模様です。また、本日の午前中に緊急会見を予定しているとの情報も入りました――』
なるほど、これだけ能力者の情報が出てくれば、メディアも政府も抑え込むのは難しいということか。
「おはよう」僕は二人に声をかけた。
「ああ、おはよう」
父親はチラッとこちらを見て挨拶をした後、すぐさまテレビの方に顔を向けた。
「おはよう。汚れたハンカチ、玄関に置きっぱなしになっていたから、洗って乾かしておいたわよ。これ、借りものなんでしょ?」
藍里に借りたハンカチを母親が洗って乾かして、アイロンがけまでしてくれたようだ。ありがたい。
でも、綺麗になったとはいえ、一度、血の付いてしまったハンカチを返していいものなのだろうか? 僕は悩みながらもテーブルの上に置いてあるハンカチを回収した。
「ありがとう。助かるよ」
「どういたしまして。でも、可愛いハンカチね、女の子のでしょ? 愛唯ちゃんのかな? さとりは愛唯ちゃんと仲がいいものね~」
「いや、違うよ」
「え、違うの?」
母親とそんなやりとりをしていると、父親がテレビを見ながら僕に話しかけてくる。
「なあ、おい。さとりは変なことに巻き込まれたりなんてしてないか? 元旦からこの辺で異常なことが起きているっていうじゃないか」
「え、ああ、うん。街が『騒がしいかな』とは思ったけど、特には……」
僕はおどけた様子で言った。
「そうか。まあ、不可解な出来事を野次馬根性で知りたいと思うのは無理もない、人間だからな……だがな、その好奇心から、命を落としかねない軽率な行動だけはするんじゃないぞ。それと、色々と嗅ぎまわって政府に目を付けられないようにな」
父親はテレビに目を向けながら僕にそう呟いた。
隣に居る母親も『うんうん』と頷いている。親は何か感づいているのだろうか?
それとも、『人類は、好奇心により文明を発展させたが、過剰な好奇心により、いずれその身を滅ぼす』とでも言いたいのだろうか――僕の考えすぎか。
「ああ、分かったよ」
僕はそう言って、キッチンに用意されていた朝食を素早く平らげ、自室に戻って身支度を整えた。
――約束の時間まで1時間半。駅前までは10分もかからないだろう。
携帯電話を見てみたが愛唯から連絡はない。アンリさんの言葉や起こりうる未来のことを考えると、僕から愛唯に連絡するのを躊躇ってしまう。
――愛唯が恋しい。
ダメだ、しばらくは愛唯のことを忘れよう。
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