2 / 9
第二話
しおりを挟む
私たち二人は、無意識のうちに暗い道を避けていたため、本来のルートから外れてしまっていたようだ。
ついには、ナビ代わりに使っていたスマートフォンも、運悪くバッテリー切れを起こしてしまっていた。
2時間ほど歩いたところで、私たちは、歩く方角が完全に間違っていることに気が付いた。
私たちは、まったくの別方面へと向かっていたのだ。
今いる場所から最寄りの駅までたどり着き、そこで地図を確認し、向かう方角をしっかりと把握してから、私たちは再出発する。
今度こそ、間違いなく自宅にたどり着けるはず、だった。
進む道に人通りはほぼなく、車道には車が一台も走っていない。
ライトもない、スマートフォンのバッテリーもない、街頭の明かりは心許ない、そんな状況が私の中で得体の知れない恐怖を掻き立てる。
恐怖心からか、焦りからか、私たちは家路を急ぐあまり、周囲の確認を怠っていた。
車道を渡る途中に、路地から、大型のトラックが右折してくる。
慌てた恋人が、そのまま車道を渡り切ってしまおうと反対側目掛けて駆け出した。
それが、間違いの元だった。
トラックは、私たちの存在に気付いていなかったのだ。
そして、そのトラックは反対車線をショートカットするような形で侵入してきた。
そのため、先を行く恋人は、運悪くも、トラックに轢かれてしまったのだ。
トラックは、人間を轢いたことには気が付かず、そのまま前進し続ける。
――メキメキという音と、何かが破裂するような不快な音が私の耳の中でこだまする。
トラックはそのままいなくなり、残されたのは、無残な姿となり果てた恋人と、ただ、呆然と立ち尽くす私だけ。
その光景は、私の脳裏に焼き付き、恋人がトラックに轢かれる瞬間の、あの不快な音が、私の頭の中でループし続けていた。
その音は、その時よりもさらに激しさを増し、グシャグシャという音や、ビチャビチャという肉片の飛び散る音、恋人の叫び声までも追加して、その状況が頭の中で勝手に補完されていた。
精神が崩壊する寸前のところで、私は我に返り、近くにある公衆電話まで走り、緊急ダイヤルに電話をかけた。
私は心が張り裂けそうだった。
――そこからはよく覚えていない。
おそらく、そのまま現場に戻り、恋人の無残な姿を、ただ眺めていただけなのだろう。
いや、恋人と話をしていた、そんな気もする。
何を話していたかな? 『今日の花火大会、綺麗だったね』とか、『ファミレスで、ドリンク、もう少し飲んでおけばよかった』とか、かな。
どうやって自宅に戻ったのかも覚えていない。
ついには、ナビ代わりに使っていたスマートフォンも、運悪くバッテリー切れを起こしてしまっていた。
2時間ほど歩いたところで、私たちは、歩く方角が完全に間違っていることに気が付いた。
私たちは、まったくの別方面へと向かっていたのだ。
今いる場所から最寄りの駅までたどり着き、そこで地図を確認し、向かう方角をしっかりと把握してから、私たちは再出発する。
今度こそ、間違いなく自宅にたどり着けるはず、だった。
進む道に人通りはほぼなく、車道には車が一台も走っていない。
ライトもない、スマートフォンのバッテリーもない、街頭の明かりは心許ない、そんな状況が私の中で得体の知れない恐怖を掻き立てる。
恐怖心からか、焦りからか、私たちは家路を急ぐあまり、周囲の確認を怠っていた。
車道を渡る途中に、路地から、大型のトラックが右折してくる。
慌てた恋人が、そのまま車道を渡り切ってしまおうと反対側目掛けて駆け出した。
それが、間違いの元だった。
トラックは、私たちの存在に気付いていなかったのだ。
そして、そのトラックは反対車線をショートカットするような形で侵入してきた。
そのため、先を行く恋人は、運悪くも、トラックに轢かれてしまったのだ。
トラックは、人間を轢いたことには気が付かず、そのまま前進し続ける。
――メキメキという音と、何かが破裂するような不快な音が私の耳の中でこだまする。
トラックはそのままいなくなり、残されたのは、無残な姿となり果てた恋人と、ただ、呆然と立ち尽くす私だけ。
その光景は、私の脳裏に焼き付き、恋人がトラックに轢かれる瞬間の、あの不快な音が、私の頭の中でループし続けていた。
その音は、その時よりもさらに激しさを増し、グシャグシャという音や、ビチャビチャという肉片の飛び散る音、恋人の叫び声までも追加して、その状況が頭の中で勝手に補完されていた。
精神が崩壊する寸前のところで、私は我に返り、近くにある公衆電話まで走り、緊急ダイヤルに電話をかけた。
私は心が張り裂けそうだった。
――そこからはよく覚えていない。
おそらく、そのまま現場に戻り、恋人の無残な姿を、ただ眺めていただけなのだろう。
いや、恋人と話をしていた、そんな気もする。
何を話していたかな? 『今日の花火大会、綺麗だったね』とか、『ファミレスで、ドリンク、もう少し飲んでおけばよかった』とか、かな。
どうやって自宅に戻ったのかも覚えていない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
短な恐怖(怖い話 短編集)
邪神 白猫
ホラー
怪談・怖い話・不思議な話のオムニバス。
ゾクッと怖い話から、ちょっぴり切ない話まで。
なかには意味怖的なお話も。
※追加次第更新中※
YouTubeにて、怪談・怖い話の朗読公開中📕
https://youtube.com/@yuachanRio
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
七つの不思議のその先に願い事1つ叶えましょう
桜月 翠恋
ホラー
オカルトサークルという名目で今日も怖い話の好きな仲のいい8人が集まり今日も楽しくお話をする
『ねぇねぇ、七不思議、挑戦してみない?』
誰が言ったのか、そんな一言。
この学校の七不思議は他と少し違っていて…
8人が遊び半分に挑戦したのは…
死が待ち受けているゲームだった……
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ツギハギ・リポート
主道 学
ホラー
拝啓。海道くんへ。そっちは何かとバタバタしているんだろうなあ。だから、たまには田舎で遊ぼうよ。なんて……でも、今年は絶対にきっと、楽しいよ。
死んだはずの中学時代の友達から、急に田舎へ来ないかと手紙が来た。手紙には俺の大学時代に別れた恋人もその村にいると書いてあった……。
ただ、疑問に思うんだ。
あそこは、今じゃ廃村になっているはずだった。
かつて村のあった廃病院は誰のものですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる