1 / 5
おじいさんとネコ
しおりを挟む
――その野良犬は孤独でした。
野良犬は人間たちの住む街の片隅で、孤独にひっそりと暮らしていました。
そんな人間たちは、まだ食べられるものまでゴミ箱に捨てていきます。
野良犬にとっては、それがごちそうのようにも思えました。
あるとき、野良犬が路地裏でゴミ箱を漁っていると、人間の話声が聞こえてきます。
なぜか、その野良犬には、不思議と人間たちの会話が理解できてしまうようです。
そして、その人間たちにはどうやら困りごとがあるようです。
「何か困りごとかい?」
野良犬は不意に人間の言葉を発してしまいました。
人間の言葉を発してしまった野良犬は、自分自身に驚いてその場から逃げ出《だ》してしまいました。
人間たちも驚いて逃げていきました。
「どうしよう、人間の言葉が分かるし、話せるようになったぞ」
野良犬は考えました。
その結果――人間たちの行動を観察し、声を聴き、知識を蓄えていくようになりました。
野良犬は、美味しいものが食べられるお店で廃棄品が出る時間を調査し、人間に気付かれないように上質な食料を調達する――という、知恵を付けました。
人間たちは廃棄品が荒らされていることに気がついていません。
野良犬は、ゴミ袋を荒らさずにコッソリとお目当ての食べ物だけを狙って取り出しているからです。
野良犬は、人間たちに警戒されないよう、コッソリと行動するのが得意になりました。
ある日、野良犬は考えます――
「そろそろ、雨露をしのげる立派な家が欲しい」
そこで、街のいたる所をうろうろして情報収集を行いました。
「街はずれにある大きなお屋敷には、孤独な盲目の老人が住んでいる――」
それを聞いた野良犬は、盲目の老人の家にコッソリと棲みつくことを考えました。
でも、野良犬はもう少しだけ賢く考えます。
コッソリ棲みついたらどうなるだろう?
不審に思われでもしたら駆除業者を呼ばれてしまうかもしれないし、老人を驚かせてしまうかもしれない。
それなら、いっその事、野良猫のふりでもしてみたらどうだろうか?
野良犬は、野良猫が人間達から餌をもらっているのを普段から目にしています。
――早速、野良犬は野良猫作戦を開始しました。
野良犬は、おじいさんの家の窓をトントンと叩くと『にゃ~ん』と鳴いてみせます。
それに気づいたおじいさんは、窓を開けて、まんまと野良犬を招き入《い》れます。
野良犬はしてやったりという顔をしつつも、猫のふりを続けました。
「にゃ~ん」
「おお、ふさふさな猫だね。迷子かい? 今、ミルクを用意してあげるから待っていなさい。」
野良犬は野良猫作戦が予想以上に上手くいったことを喜びました。
――差し出されたミルクを飲みほした野良犬は、寂しそうな猫の鳴き真似をしました。
「にゃ~ん……」
「おや、ネコ、お前も独りぼっちなのかい? 私も妻を亡くしてからは独りぼっちでね……。好きなだけここにいるといいよ」
「にゃ~ん!」
「おお、ネコよ。そんなに嬉しいかい? 自分の家だと思って、好きに暮らしなさい」
こうして、喋る犬のネコと盲目の老人の奇妙な共同生活が始まったのです。
はたして、ネコは、犬だということを老人に悟られないように暮らしていけるのでしょうか?
野良犬は人間たちの住む街の片隅で、孤独にひっそりと暮らしていました。
そんな人間たちは、まだ食べられるものまでゴミ箱に捨てていきます。
野良犬にとっては、それがごちそうのようにも思えました。
あるとき、野良犬が路地裏でゴミ箱を漁っていると、人間の話声が聞こえてきます。
なぜか、その野良犬には、不思議と人間たちの会話が理解できてしまうようです。
そして、その人間たちにはどうやら困りごとがあるようです。
「何か困りごとかい?」
野良犬は不意に人間の言葉を発してしまいました。
人間の言葉を発してしまった野良犬は、自分自身に驚いてその場から逃げ出《だ》してしまいました。
人間たちも驚いて逃げていきました。
「どうしよう、人間の言葉が分かるし、話せるようになったぞ」
野良犬は考えました。
その結果――人間たちの行動を観察し、声を聴き、知識を蓄えていくようになりました。
野良犬は、美味しいものが食べられるお店で廃棄品が出る時間を調査し、人間に気付かれないように上質な食料を調達する――という、知恵を付けました。
人間たちは廃棄品が荒らされていることに気がついていません。
野良犬は、ゴミ袋を荒らさずにコッソリとお目当ての食べ物だけを狙って取り出しているからです。
野良犬は、人間たちに警戒されないよう、コッソリと行動するのが得意になりました。
ある日、野良犬は考えます――
「そろそろ、雨露をしのげる立派な家が欲しい」
そこで、街のいたる所をうろうろして情報収集を行いました。
「街はずれにある大きなお屋敷には、孤独な盲目の老人が住んでいる――」
それを聞いた野良犬は、盲目の老人の家にコッソリと棲みつくことを考えました。
でも、野良犬はもう少しだけ賢く考えます。
コッソリ棲みついたらどうなるだろう?
不審に思われでもしたら駆除業者を呼ばれてしまうかもしれないし、老人を驚かせてしまうかもしれない。
それなら、いっその事、野良猫のふりでもしてみたらどうだろうか?
野良犬は、野良猫が人間達から餌をもらっているのを普段から目にしています。
――早速、野良犬は野良猫作戦を開始しました。
野良犬は、おじいさんの家の窓をトントンと叩くと『にゃ~ん』と鳴いてみせます。
それに気づいたおじいさんは、窓を開けて、まんまと野良犬を招き入《い》れます。
野良犬はしてやったりという顔をしつつも、猫のふりを続けました。
「にゃ~ん」
「おお、ふさふさな猫だね。迷子かい? 今、ミルクを用意してあげるから待っていなさい。」
野良犬は野良猫作戦が予想以上に上手くいったことを喜びました。
――差し出されたミルクを飲みほした野良犬は、寂しそうな猫の鳴き真似をしました。
「にゃ~ん……」
「おや、ネコ、お前も独りぼっちなのかい? 私も妻を亡くしてからは独りぼっちでね……。好きなだけここにいるといいよ」
「にゃ~ん!」
「おお、ネコよ。そんなに嬉しいかい? 自分の家だと思って、好きに暮らしなさい」
こうして、喋る犬のネコと盲目の老人の奇妙な共同生活が始まったのです。
はたして、ネコは、犬だということを老人に悟られないように暮らしていけるのでしょうか?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。
以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。
不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。
クラゲの魔女
しろねこ。
児童書・童話
クラゲの魔女が現れるのは決まって雨の日。
不思議な薬を携えて、色々な街をわたり歩く。
しゃっくりを止める薬、、猫の言葉がわかる薬食べ物が甘く感じる薬、――でもこれらはクラゲの魔女の特別製。飲めるのは三つまで。
とある少女に頼まれたのは、「意中の彼が振り向いてくれる」という薬。
「あい♪」
返事と共に渡された薬を少女は喜んで飲んだ。
果たしてその効果は?
いつもとテイストが違うものが書きたくて書きました(n*´ω`*n)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中です!
めちゃくちゃやさしい鬼もいる
未来の小説家
児童書・童話
みんながおもっている鬼ってどんな鬼?
鬼ってこわいとみんなおもってるかもしれないけれどやさしい鬼もかわいい鬼もいるんだよ。
※第13回絵本児童書大賞エントリー作品です
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
それゆけ!しろくま号
七草すずめ
児童書・童話
これは、大人になったあなたのなかにいる、子供のころのあなたへおくるお話です。
サイドミラーはまるい耳。ひなた色をした体と、夜空の色をしたせなか。
しろくま号は、ヒナタとミツキを、どこへだって連れて行ってくれるのです。
さあ、今日はどんなところへ、冒険に出かける?
ドラゴンの愛
かわの みくた
児童書・童話
一話完結の短編集です。
おやすみなさいのその前に、一話ずつ読んで夢の中。目を閉じて、幸せな続きを空想しましょ。
たとえ種族は違っても、大切に思う気持ちは変わらない。そんなドラゴンたちの愛や恋の物語です。
ナミダルマン
ヒノモト テルヲ
児童書・童話
だれかの流したナミダが雪になって、それが雪ダルマになると、ナミダルマンになります。あなたに話しかけるために、どこかに立っているかもしれません。あれ、こんなところに雪ダルマがなんて、思いがけないところにあったりして。そんな雪ダルマにまつわる短いお話を集めてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる