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第四章 魔王討伐
第23話 魔王戦
しおりを挟む「クックック、少しは楽しめそうだな」
魔王は身体から何本もの触手を生やし、アッパレー達を追い詰める。
アッパレーは触手を木こりの斧で断ち切るが、切っても切っても新たな触手が生え、一向に近づけない。
「アッチチ!!サケーロ!!」
バツフォイも炎魔法や風魔法で触手に対抗するが、同様に魔王に攻撃が届かない。
シノンの弓矢も触手が邪魔をして本体に命中しないようだ。
「一気に型をつける、貴様の出番だ!」
バツフォイはハッカイに呼びかける。
「分かりました、消滅させます!」
ハッカイは長い詠唱を始める。
「クックック、出来ると思っているのかね?」
魔王は身体から黒い大きな針をいくつも噴射した。
それらはハッカイに狙いを定めている。
「ボンバンバン!!」
バツフォイは爆発魔法でそれらを吹き飛ばすも、数が多過ぎて対処しきれない。
「ハッカイ!避けろ!!」
バツフォイはハッカイに叫んだが、ハッカイは詠唱を続けている。
「私はもう逃げません、例えこの身に矢が刺さろうと槍が刺さろうと、私はもう逃げません。時間をかければかけるほど状況は悪くなる、そうでしょう?バツフォイさん!」
確かにその通りだった。
アッパレー達には回復魔法も防御魔法もなく、長期戦になればなるほど状況は悪化していく。
反対に魔王はまだ余裕の表情で触手を増やし続けている。
きっと魔王はまだ本気を出していない。
バツフォイも同じ読みだった。
だが、このままではハッカイが蜂の巣になってしまう。
そう思ったその時。
アッパレーは走りながらハッカイを担ぎ上げた。
「そのまま詠唱を続けろ!おらがおめぇの足になる!」
一瞬詠唱が止まったものの、この旅で成長を遂げたハッカイは驚異的な集中力で詠唱を続ける。
黒い針はアッパレーを追いかけるが、アッパレーの俊足が辛うじて針の猛攻を交わしていた。
「いけます!」
ハッカイがそう叫んだ時、魔王が嬉しそうに呟く。
「時間切れだ」
すると触手が巨大化し、バツフォイとシノンに絡みついた。
二人は魔王の盾になるように高々と掲げられている。
「、、、私はどうしたら」
戸惑うハッカイに向けて、勇者フラペチーノが叫ぶ。
「魔法を放て!これはチャンスだ!」
それに被せるように戦士アッパレーが叫ぶ。
「ダメだ!二人は絶対に助ける!」
ハッカイは魔法を放たなかった。
「クックック、これだから人間は弱い」
触手に力が入り、捕らえられているシノンとバツフォイは苦しそうにもがいている。
黒い針に追われているアッパレーとハッカイに助け出す余裕はない。
「ボンバンバン!」
その時、壁際にもたれていたポリーハッターがなけなしの魔力を振り絞り、爆発魔法を放った。
ハッターの魔法によりバツフォイが触手から逃れる。
「ふん、それでこそボクマーツ最優秀生徒だな。だがそんなことは俺様も出来る!ボンバンバン!」
バツフォイの爆発魔法により多くの触手が吹き飛ぶ。
「ふふ、確かに君の攻撃魔法の威力はボクマーツイチかもしれないね」
ハッターは感心したように笑った。
バツフォイの魔法により自由を取り戻したシノンは大きく距離をとり、叫んだ。
「待たせたな!さぁ、お前の出番だ!!」
その声が確かにハッカイへと届く。
「はい!任せてください!」
ハッカイの杖が光り輝く。
「裁きよ!!」
魔王の足元に魔法陣が描かれる。
「何だこれは!」
魔王は危険を察知して触手を身体に巻き付け、ガードの姿勢をとった。
そして魔王城の天井を突き破り、巨大な光線が魔王へと降り注ぐ。
「グァァアアぁぁあ!!!!」
魔王の絶叫が数秒間続き、一同は身構えた。
しかし、焼け焦げた床の上で魔王は確かにそこに立っていた。
「クックック、やるようだな!しかし触手を滅したのみで我は無傷だ!そろそろ本気を出してやる」
魔王の身体が怪しく光出した。
「いや、残念だが時間切れだ!」
シノンの矢が魔王の脳天を貫いた。
「な、、に、、、?」
「触手さえなきゃ、お前に攻撃することなんて容易い。ああそうだ、動かない方が良いぜ?その矢には痺れ草をたっぷり含ませてあるからな、身体の自由はもう効かない」
「クックック、、、そんなもの、、、我には、、グォォオオオ!!!!」
魔王は無理矢理身体を動かし、第二形態へと変貌を遂げようとしている。
腕が猛獣の姿へと形を変えた。
「総攻撃を仕掛けるぞ!」
バツフォイの号令で各々が一斉に魔王へと攻撃を放つ。
「攻撃は、最大の防御だ!」
アッパレーの言葉に、一同は心の炎を燃やす。
ここで倒しきるしかない、全員の心は一致していた。
総攻撃が魔王を襲っている中、アッパレーはその首を斬ろうと飛び上がった。
しかし、猛獣の腕で弾き飛ばされ、木こりの斧が粉々に砕け散ってしまった。
「最後は俺が仕留める!邪魔だ!」
勇者フラペチーノは最後の力を振り絞り駆け出した。
しかし途中で脚がもつれ、その場に倒れ込んだ。
その拍子に聖剣は勇者の手を離れ、宙を舞う。
それと同時にアッパレーは飛び上がる。
アッパレーは空中で聖剣を手にし、魔王の頭目掛けて一直線に滑空した。
「これで終わりだべ!」
アッパレーは魔王の頭に聖剣を突き刺した。
第二形態へと変貌を遂げようとしていた魔王だったが、アッパレーが聖剣を脳天に突き刺したことにより動きを止めた。
「クックック、、、まさか我が、、負けるとは、、」
魔王は夜霧となり消滅した。
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