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第三章 焚き火を囲んで
第18話 焚き火を囲んで
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サンゾウホウシの遺体を埋葬し、四人は焚き火の周りに座っていた。
魔界の恐ろしさを知って怖気付いたのか、英気を養っているのか、誰一人として言葉を発さないため分からない。
沈黙を破ったのはシノンだった。
「俺は聖剣の守り手なんて肩書きがついているが、俺の悲願は王政の廃止だ」
突然何を言い出すのか、三人はシノンの言葉に耳を傾けた。
「俺の一族は聖剣を守り、聖剣を手にする者を守るという使命があった。いつだって勇者様とやらは王族から選出されるが、俺の一族はいつも酷い仕打ちを受けてきたんだ。奴等は俺達を無下に扱い、聖剣を冒涜した。俺の家族は皆、捨て駒のように扱われて死んだ。そして聖剣の守り手として俺が唯一の生き残りというわけだ。最後まで生き残ったからには悲願を果たしたい。魔王を倒して平等な世界を作る、そのためにも魔王を倒すのは勇者じゃダメなんだ。あんな奴等にこれ以上権力を持たせるわけにはいかない」
三人はシノンの話を静かに聞いていた。
そしてバツフォイが口を開いた。
「わざわざ魔王を倒そうなんていう王族以外の人間はそうそういないだろう?俺様達が現れてラッキーだったな」
シノンはニヤリと笑った。
「ああ、俺はこう見えても魔王を殺る気満々なのさ。だからこれからも頼むぜ、お前達」
「運が良かったな、この攻撃魔法の天才であるバツフォイ様がついてるんだから」
バツフォイの言葉を聞いたシノンが、素朴な疑問を口にする。
「ところでお前はどうして攻撃魔法に拘ってるんだ?どうせなら色んな魔法を覚えたほうが良いだろ」
「確かにそうですよね!使えないよりも、使えるけど使わない方がカッコいいですよ」
「貴様も使えないだろ!ハッカイ!」
「確かに!そうでした!」
ハッカイの天然ボケとバツフォイのツッコミを見届け、アッパレーが頷いた。
「ここから先の道のりは険しくなるべ。せっかくの機会だ、少し休んでいこう」
アッパレーの言葉を聞いて、バツフォイは静かに頷いた。
「いいだろう、俺様の過去を話してやる」
バツフォイは懐から杖を取り出した。
「この杖は、本当は俺様の物じゃない。とある天才魔法使いが使っていたものだ。名はハマオニーという。ハマオニーはポリーハッターと肩を並べるほどの強者だった」
バツフォイは杖を眺めながら語り出した。
「その前に、俺様の家系について話しておこう。俺様の本名はドラゴン・バツフォイ、我がドラゴン家は様々な攻撃魔法編み出した名家だ。そして禁術である死の呪文を生み出した家系でもある」
「死の呪文って、バツフォイの目を奪ったあの呪文か?」
アッパレーは鋼鉄のトロールとの戦いを思い出した。
「そうだ、死の呪文は代償と引き換えに強力な効果を発動する禁術だ。そんな物騒なものを開発した我が一家は忌み嫌われ、皆謎の死を遂げた。死の呪文で死んだのか、殺されたのかは分からない。だがそんなことはどうでも良い、俺様は死んだ方がマシだと思えるような幼少期を過ごした。人間不信になってもおかしくない人生だったと今なら思う。ハマオニーに出会うまでは」
バツフォイは悲しげに言葉を続ける。
「忌み嫌われていた俺様に対して、なんの偏見もなく話しかけてくれた。そしていつからかハマオニーといつも一緒にいるようになった。彼女はいつも攻撃魔法を誉めてくれて、俺様の一家についても尊敬してくれた。我がドラゴン家を初めて誇らしく思えたんだ。そして二人で死の呪文についての書物を読み漁った」
バツフォイの目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「あの頃は、バカみたいにとにかく強くなることだけを考えていた。そしてある日鋼鉄のトロールが現れた。生徒も先生方も応戦したが、鋼鉄のその身体に効く魔法はなかった。そして誰もが逃げ出したが、二人だけは逃げなかった。俺様とハマオニーだ、鍛え上げた攻撃魔法を試す良い機会だと思ったんだ。本当にバカだった、俺様はトロールの餌食になりかけた、その時、ハマオニーは封印の死の呪文を放った。トロールは動かなくなった、そしてハマオニーは塵となって消えた」
バツフォイは自分が涙を流していることに気が付き、急いで涙を拭った。
「ふん、まぁ、、、アッパレーは知っていると思うが、その鋼鉄のトロールは俺様が倒した!復讐は果たした。ハマオニーが誉めてくれた攻撃魔法を極め、あいつが正しかったことを世に知らしめてやる。これは俺様の自己満足かもしれないが関係ない。歪んだ考えなのも分かっている。攻撃魔法を極めることがハマオニーを存在させ続ける唯一の方法だと思っている。今まではそれだけの想いだった。でも今は違う、ハマオニーのために鍛え続けた攻撃魔法が魔王討伐のために必要だったなんて夢物語を実現させようとしているんだ」
語り尽くしてバツフォイは恥ずかしくなったのか、すぐに杖を懐にしまった。
「だから必ず魔王を倒す。貴様達もいっそう気を引き締めてくれたまえ」
魔界の恐ろしさを知って怖気付いたのか、英気を養っているのか、誰一人として言葉を発さないため分からない。
沈黙を破ったのはシノンだった。
「俺は聖剣の守り手なんて肩書きがついているが、俺の悲願は王政の廃止だ」
突然何を言い出すのか、三人はシノンの言葉に耳を傾けた。
「俺の一族は聖剣を守り、聖剣を手にする者を守るという使命があった。いつだって勇者様とやらは王族から選出されるが、俺の一族はいつも酷い仕打ちを受けてきたんだ。奴等は俺達を無下に扱い、聖剣を冒涜した。俺の家族は皆、捨て駒のように扱われて死んだ。そして聖剣の守り手として俺が唯一の生き残りというわけだ。最後まで生き残ったからには悲願を果たしたい。魔王を倒して平等な世界を作る、そのためにも魔王を倒すのは勇者じゃダメなんだ。あんな奴等にこれ以上権力を持たせるわけにはいかない」
三人はシノンの話を静かに聞いていた。
そしてバツフォイが口を開いた。
「わざわざ魔王を倒そうなんていう王族以外の人間はそうそういないだろう?俺様達が現れてラッキーだったな」
シノンはニヤリと笑った。
「ああ、俺はこう見えても魔王を殺る気満々なのさ。だからこれからも頼むぜ、お前達」
「運が良かったな、この攻撃魔法の天才であるバツフォイ様がついてるんだから」
バツフォイの言葉を聞いたシノンが、素朴な疑問を口にする。
「ところでお前はどうして攻撃魔法に拘ってるんだ?どうせなら色んな魔法を覚えたほうが良いだろ」
「確かにそうですよね!使えないよりも、使えるけど使わない方がカッコいいですよ」
「貴様も使えないだろ!ハッカイ!」
「確かに!そうでした!」
ハッカイの天然ボケとバツフォイのツッコミを見届け、アッパレーが頷いた。
「ここから先の道のりは険しくなるべ。せっかくの機会だ、少し休んでいこう」
アッパレーの言葉を聞いて、バツフォイは静かに頷いた。
「いいだろう、俺様の過去を話してやる」
バツフォイは懐から杖を取り出した。
「この杖は、本当は俺様の物じゃない。とある天才魔法使いが使っていたものだ。名はハマオニーという。ハマオニーはポリーハッターと肩を並べるほどの強者だった」
バツフォイは杖を眺めながら語り出した。
「その前に、俺様の家系について話しておこう。俺様の本名はドラゴン・バツフォイ、我がドラゴン家は様々な攻撃魔法編み出した名家だ。そして禁術である死の呪文を生み出した家系でもある」
「死の呪文って、バツフォイの目を奪ったあの呪文か?」
アッパレーは鋼鉄のトロールとの戦いを思い出した。
「そうだ、死の呪文は代償と引き換えに強力な効果を発動する禁術だ。そんな物騒なものを開発した我が一家は忌み嫌われ、皆謎の死を遂げた。死の呪文で死んだのか、殺されたのかは分からない。だがそんなことはどうでも良い、俺様は死んだ方がマシだと思えるような幼少期を過ごした。人間不信になってもおかしくない人生だったと今なら思う。ハマオニーに出会うまでは」
バツフォイは悲しげに言葉を続ける。
「忌み嫌われていた俺様に対して、なんの偏見もなく話しかけてくれた。そしていつからかハマオニーといつも一緒にいるようになった。彼女はいつも攻撃魔法を誉めてくれて、俺様の一家についても尊敬してくれた。我がドラゴン家を初めて誇らしく思えたんだ。そして二人で死の呪文についての書物を読み漁った」
バツフォイの目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「あの頃は、バカみたいにとにかく強くなることだけを考えていた。そしてある日鋼鉄のトロールが現れた。生徒も先生方も応戦したが、鋼鉄のその身体に効く魔法はなかった。そして誰もが逃げ出したが、二人だけは逃げなかった。俺様とハマオニーだ、鍛え上げた攻撃魔法を試す良い機会だと思ったんだ。本当にバカだった、俺様はトロールの餌食になりかけた、その時、ハマオニーは封印の死の呪文を放った。トロールは動かなくなった、そしてハマオニーは塵となって消えた」
バツフォイは自分が涙を流していることに気が付き、急いで涙を拭った。
「ふん、まぁ、、、アッパレーは知っていると思うが、その鋼鉄のトロールは俺様が倒した!復讐は果たした。ハマオニーが誉めてくれた攻撃魔法を極め、あいつが正しかったことを世に知らしめてやる。これは俺様の自己満足かもしれないが関係ない。歪んだ考えなのも分かっている。攻撃魔法を極めることがハマオニーを存在させ続ける唯一の方法だと思っている。今まではそれだけの想いだった。でも今は違う、ハマオニーのために鍛え続けた攻撃魔法が魔王討伐のために必要だったなんて夢物語を実現させようとしているんだ」
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