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第二章 集う凡人達
第10話 おらはおめぇが好きだからだ!
しおりを挟む三人は疲弊した身体を何とか動かし、僧侶の里へと戻った。
ハッカイが僧侶達に怪鳥を倒したことを伝えたが、誰も信じてはくれなかった。
アッパレーの身体とバツフォイの魔力のダメージが大きかったため、二人は数日間、僧侶の里で身体を癒すことにした。
その間も僧侶達は結界を張り続けていたが、怪鳥が来なくなったことを不思議に思い、ヨンゾウホウシがハッカイを呼び出した。
ハッカイは詳細に怪鳥との戦いを語り、僧侶達はようやくハッカイの話を信じたのだった。
そしてヨンゾウホウシはハッカイと共に、アッパレーとバツフォイの元へとやってきた。
「ありがとうございます、あなた方とジュウサンゾウホウシのおかげでこの里は救われました」
ヨンゾウホウシが三人にお礼を言った。
「私は何もやっていませんが、この二人は本当に勇敢でした」
ハッカイは二人を讃えるように手を広げる。
「いや、あの怪鳥を倒したのは貴様だ。攻撃魔法の天才として貴様をライバルにしてやる」
バツフォイは偉そうにハッカイの肩を叩いた。
「そうでしたか、回復魔法を使えない僧侶など意味がないと言われてきた、あのジュウサンゾウホウシが活躍する日がくるとは夢にも思いませんでした」
「私も同感です」
ヨンゾウホウシの言葉にハッカイが同調した。
「あなた方はこれからどこへ向かわれるのですか?」
「巨獣の森だ」
アッパレーが胸を張って答えた。
「とはいえ相当時間をロスした、勇者様とやらは今頃どこにいるのやら」
バツフォイが半分笑いながら言った。
「それでも行くしかねぇべ」
アッパレーは堂々と答える。
「あなた方には回復魔法を使える者が必要です。特にアッパレーさん、あなたの傷は酷いものでした。私達が治療しなければ今頃どうなっていたことか」
ヨンゾウホウシはアッパレーの身を案じた。
確かに、アッパレーはタイクーツ村を旅立ってからというもの、ほとんど休息を取らずに駆け抜けてきた。
道中、身体に深く傷を負ったが治療をせずにここまで来たのだった。
「そう思うのであれば、僧侶を一人連れて行っても良いか?回復魔法は今後必要になる」
バツフォイは試すようにヨンゾウホウシに問いかけた。
「そうですね、、、あなた方には怪鳥を倒してくれた恩があります。良いでしょう、修行中の身ではありますが、ジュウニゾウホウシを同行させましょう」
その言葉を聞いたアッパレーは首を横に振った。
「いいや、おらはジュウサンゾウホウシのハッカイが良い!」
「待て待て待て、確かにハッカイの攻撃魔法の威力は俺様も認める。だが今後の俺様達の旅には回復魔法を使える奴が必要だ」
バツフォイは慌ててアッパレーを止めた。
しかしアッパレーは譲らず、声を張り上げる。
「おらはハッカイが良い!おめぇと一緒に旅がしたいんだ!」
その真っ直ぐな言葉を聞いたハッカイの目から涙がこぼれ落ちた。
「私は、、回復魔法を使えないのですよ?」
「それがどうした、おらも使えない!」
「私の攻撃魔法は、詠唱に時間がかかりますよ?」
「おらは魔法すら使えない!」
アッパレーはハッカイの問いに即答する。
「何故私を選んでくれるのですか?」
「おらはおめぇが好きだからだ!」
アッパレーの言葉に撃ち抜かれたかのように、ハッカイは胸を抑えて泣き出した。
「うぅ、、う、、、ありがとう。こんな私を必要としてくれて」
一部始終を見ていたバツフォイはやれやれと手を広げた。
「まぁ確かに、貴様と俺様の連携は悪くない。貴様が良ければ、この坊主頭の我儘に付き合ってやってくれ」
「それで、おめぇはおら達と旅をするのか?」
ハッカイは大きく頷いた。
「はい、よろしくお願いします!」
ヨンゾウホウシはうんうんと頷いている。
「ジュウサンゾウホウシ、あなたはこの里では落ちこぼれと言われていましたが、きっとあなたにしか出来ないことがこの世にはあるのでしょう。行きなさい、そしてあなたにしか出来ないことを成し遂げなさい」
「はい、、、行って参ります!」
ハッカイは涙を拭い、ヨンゾウホウシを見つめた。
ヨンゾウホウシは優しく微笑みかけた。
「行くぞ!巨獣の森へ!」
アッパレーは意気揚々と歩き出した。
「先に言っておくが、あの坊主頭と共に旅をするのは過酷極まりないからな」
バツフォイはハッカイに忠告をしたが、その言葉を聞いたハッカイはワクワクした表情でこう答えた。
「楽しい旅になりそうです!」
ハッカイはアッパレーの元へと駆け寄った。
バツフォイはやれやれと手を広げ、ニヤリと笑った。
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