神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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世界の終わり編

第223話 消える歌声

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トゥール「皆、、、ありがとう!!」

魔物は一掃され、光となった想い達は少しずつ消えていく。

コケシとコヘはトゥールの肩を優しく叩いた。

トゥール「ありがとう、本当にありがとう」

トゥールの言葉に笑みを浮かべ、二人は消えた。

リキッド「もう少しで俺もそっちに行くだろう。それまでの間、アーヤカ姫を頼だぞ。ヒーロー」

アーヤカ姫は怒った様子でリキッドに詰め寄ったが、ヒーローがそれを制止した。

リキッド「またな」

ヒーローはアーヤカ姫を引っ張るように消えていった。

リリ「なんかよく分からないけど、助かったよ」

ナイフを片手にリリが唖然としている。

タクティス「どうなることかと思ったぞ」

タクティスは傷を押さえながら、表情を歪めていた。

ゼウス「はぁ、、はぁ、、馴染んできたぞ、、、、物凄いパワーだ、、、」

ゼウスは床に手をつき、脂汗に塗れながら呼吸を整えている。

リキッド「準備が整ったようだな、セリア様、あなたが行くしかない」

ツグルは未だに目を瞑り、セリアに抱かれていた。

セリア「、、、、はい」

セリアはゆっくりとツグルを床に置き、涙を拭って立ち上がった。

その時、眩い大きな光がセリアの前で女性の姿へと具現化した。

セリア「!!!!!」

「セリア」

セリアは息を呑んだ。

セリア「お母、、様」

その女性はセリアの母であり、グレイス共和国を治めていたセレスティアだった。

リキッド「俺たちが守れなかった光だ」

リキッドはセレスティアに跪いた。

セレスティア「あなたを巻き込んでしまったこと、苦しませてしまったこと、ごめんなさい」

セレスティアはセリアを包み込むように抱き寄せた。

セリア「いいの、、、それよりも、お母様!ツグルを助けて!!この世界を守って!!、、お願い」

セレスティアは静かに頷いた。

セレスティア「今の私は想いを具現化しただけの存在。聖属性により声を復元出来たものの、私に出来ることは伝えることしかないの」

セレスティアはセリアの目を見てしっかりと言った。

セレスティア「この世界を救うことが出来るのはセリア、あなただけなの」

セリア「私は弱い!!歌って皆を癒せても、悪しき者達を倒すこともあの隕石を壊すことも出来ない!!、、ツグルを救うことも出来ない、、、、、」

セリアは泣きながら叫んだ。

セレスティアはセリアの涙を拭って静かに語りかけた。

セレスティア「この世界を救いたい?この少年を助けたい?」

セリア「はい!!!」

セレスティア「一つだけ方法があるわ。でもあなたは生涯その声とほとんどの聖属性を失うことになる」

セリアは迷わずに頷いた。

セリア「全く問題ありません!!」

セレスティア「そうよね、じゃあ始めるわ」

セレスティアはセリアの喉元に手を当て、何か呪文を唱えた。

すると小さな光の球がその喉から抜き取られた。

そして、その光の球をツグルの心臓部へと浸透させる。

セレスティア「これで良いわ、あなた達がこの世界を救うのね」

セリア「、、、、、、」

セリアは言葉を発しようとしたが、声が出ないようだ。

セレスティア「大丈夫、言葉がなくても伝わっているわ」

セレスティアはセリアを抱きしめ、そのまま光となって消えた。

ツグル「う、、、、うぅ、、」

ツグルは胸を押さえながらゆっくりと起き上がった。

セリア「、、、、、!!!」

セリアは涙を流しながら、ツグルに抱きついた。

ツグル「セリアが俺を助けてくれたのか」

セリア「、、、、」

ツグル「セリア?」

セリアが話せなくなっていることに気がついて、ツグルはセリアを心配そうに見つめた。

セリアはニッコリと笑った。

トゥール「知らず知らずのうちに、また大きなものを背負っちまったな、ツグル」

ツグルは何かを察したように、セリアを抱きしめた。

リキッド「始めるぞ」

その言葉を聞いてゼウスは立ち上がった。

ゼウスは両手を上へと掲げ、迫り来る巨大な隕石へと標準を定める。

ゼウス「神の裁き!!!」

ゼウスの両手からとてつもない雷の魔力が放たれる。

その凄まじい威力に一同は息を呑んだ。

リキッド「大陸一つ消し去るほどの魔力だな」

リリ「行けぇー!!!ゼウス!!!」

タクティス「頼む」

グレイス城にいる全員が空を見上げ、神の裁きが隕石を貫くことを期待していたに違いない。

ゼウス「、、、、、」

しかし、ゼウスは雷の放出をやめた。

トゥール「何をしている?まだだ!!」

ゼウス「俺は元科学者だ。残念ながら俺の魔力でもあの隕石を破壊できないことくらい分かる」

トゥール「なんだって!?」

皆の期待は虚しく、隕石には亀裂が入ったが破壊することが出来なかった。






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