221 / 229
世界の終わり編
第221話 悪しき想いと清き想い
しおりを挟む半透明でキラキラと光る彼女は間違いなくアーヤカ姫だった。
リキッド「どうなっている?」
アーヤカ「、、、、、、」
アーヤカ姫は言葉を発さず、ニッコリと笑った。
そしてそのアーヤカ姫の前にまた一つ、光が集まっていく。
また光は人の形になり、一人の勇者の姿を形創る。
リキッド「ヒーロー、、、、」
そこにいたのは剣と盾を携え、リキッドと同じ構えをしたホワイトヘルムのヒーローがいた。
ヒーローは炎を発して飛び上がり、氷山の獣と戦い始めた。
獣はヒーローの炎によりダメージを受けているように見える。
リキッド「これは幻影じゃないのか?アーヤカ姫、ヒーロー、君達は確かにここにいるのか?」
その問いには答えない。
しかし二人ともリキッドを守ろうとしているのは明らかである。
リキッド「姫に戦わせるわけにはいかない」
リキッドは剣を強く握った。
リキッド「ヒーロー、俺が援護する。主戦力はお前だ」
獣は巨大な腕を振るった。
ヒーローはリキッドのアイスロードにより直撃を免れた。
リリ「ねぇ、これマズイんじゃない?」
辺りには同じように奇怪な咆哮が鳴り響き、虫のように魔物が湧き出した。
トゥール「妖魔!!この無限に湧き出る感じ、あの時と同じだ」
トゥールは花の都で奮闘した過去を思い出していた。
「ガァガァァァアア!!!」
魔物は水を得た魚のようにウヨウヨと動き出し、トゥール達に襲いかかった。
タクティスは巨斧を振るい、リリはナイフを振り回していた。
トゥール「魔法は使えない、体術のみで戦うしかない」
しかし魔物の力は強く、その数も凄まじかった。
セリアはツグルを抱きしめたまま目を瞑っている。
力を失ってもなおタカは常人ではない身体能力を有するが魔物と戦うことは出来ないだろう、ゼウスは未だにもがき苦しんでいる。
トゥール「リリ!!タクティス!!正念場だ、守り切るぞ!!」
タクティス「だが、、、数が多すぎる」
リリ「ごめん、私戦力にならないっぽい」
リリのナイフは魔物に少し傷をつけるだけだ、それよりも敵の攻撃を避けることで精一杯のように見える。
タクティス「ぐ、、、」
タクティスは魔物に噛みつかれながら、巨斧を振るっている。
このままでは全滅だ、そう思った時。
チリンチリン、チリンチリン
どこからか微かに鈴の音が聞こえた。
チリンチリン、チリンチリン
その音は次第に大きくなっていく。
トゥールの周りにキラキラと眩しい光が集まっていく。
チリンチリンチリン
その鈴の音がすぐ隣から聞こえ、トゥールが横を見ると、そこには風鈴のキムキムがいた。
チリンチリン
キムキムの風鈴の音につられるように、大勢の風の刃の者達が光となって具現化する。
トゥールの目の前に現れたのはトゥールの妻であるコケシだった。
トゥール「皆来てくれたんだな」
原理は分からない、でもトゥールは風の刃の皆との絆を確かに感じていた。
それと同時に悲しみが込み上げてきた。
トゥール「ごめん、俺、、、皆のこと守れなかった」
トゥールの都は妖魔と呼ばれる魔物に壊滅させられた。
トゥールは孤軍奮闘したが最終的には力及ばず、無の神に取り込まれてしまったのだ。
トゥール「ごめん」
悲しみに押し潰されそうなトゥールを見て、コケシはトゥールの肩に手を置いた。
その手に重さはなく、ただ日光のような暖かみが肩からじんわりと身体中に広がる。
コケシ「、、、、」
コケシは言葉を発さない、しかしその表情はトゥールを叱咤激励するようであった。
コケシは刀を握るトゥールの手にもう片方の手を添えた。
トゥール「そうだな、悲しんでる場合じゃない。この世界を救うんだ」
トゥールの表情を見て、コケシはトゥールの身体から手を離した。
そして背中に背負う弓を構えてトゥールを横目で見る。
トゥール「皆!!最後の頼みだ!!妖魔を殲滅し、この夜を超えるんだ!!!!」
トゥールの呼び声に応えるように風の刃の者達が風迅速で駆け抜け、魔物達を切り刻んでいく。
リリ「凄い!!!なんだか分からないけど、やっちゃえー!!!」
タクティス「トゥールの仲間なのか?」
見る見るうちに数が減っていく魔物達だったが、リキッドとヒーローは巨大な獣の猛攻に苦戦を強いられていた。
勇敢に攻めるヒーローを守るように、リキッドはアイスロードを展開して獣の攻撃をギリギリ避ける。
リキッド「一撃でも受けてみろ、身体が消し飛ぶぞ」
それでもヒーローは果敢に攻め入り、剣を突き刺す。そして剣を引き抜くと獣の皮膚は爆発した。
獣は明らかにダメージを負っている様子だが、未だ倒れる気配はない。
リキッドはふと背後からとてつもない気配を感じ、振り返った。
トゥールと背中合わせに弓を構える一人の男が、この巨大な獣を狙っているようだ。
トゥール「コヘ、お前も来てくれたんだな」
コヘ「、、、、、、」
その男はトゥールの大陸で最強と云われる男である。
トゥール「お前がいるなら、もう勝ちは確定だな」
トゥールは刀を鞘に納めた。
トゥール「リキッド!!!その獣から離れてくれ!!」
トゥールはリキッドに叫んだ。
リキッドはその指示に従い、アイスロードでヒーローを回収して遠ざかっていく。
トゥール「言葉を発せないんだろ?じゃあ代わりに俺が言ってやるよ、何度も近くで見てきた技だ」
トゥールは息を大きく吸って言い放った。
トゥール「強射、旋風、、、魔王!!!」
コヘは膨大な魔力が込められた風の矢を放った。
シュボォォオオオオオオ!!!!!
見えない筒状の風が通り抜け、巨大な獣の頭部が無くなっていた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる