神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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世界の終わり編

第221話 悪しき想いと清き想い

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半透明でキラキラと光る彼女は間違いなくアーヤカ姫だった。

リキッド「どうなっている?」

アーヤカ「、、、、、、」

アーヤカ姫は言葉を発さず、ニッコリと笑った。

そしてそのアーヤカ姫の前にまた一つ、光が集まっていく。

また光は人の形になり、一人の勇者の姿を形創る。

リキッド「ヒーロー、、、、」

そこにいたのは剣と盾を携え、リキッドと同じ構えをしたホワイトヘルムのヒーローがいた。

ヒーローは炎を発して飛び上がり、氷山の獣と戦い始めた。

獣はヒーローの炎によりダメージを受けているように見える。

リキッド「これは幻影じゃないのか?アーヤカ姫、ヒーロー、君達は確かにここにいるのか?」

その問いには答えない。

しかし二人ともリキッドを守ろうとしているのは明らかである。

リキッド「姫に戦わせるわけにはいかない」

リキッドは剣を強く握った。

リキッド「ヒーロー、俺が援護する。主戦力はお前だ」

獣は巨大な腕を振るった。

ヒーローはリキッドのアイスロードにより直撃を免れた。

リリ「ねぇ、これマズイんじゃない?」

辺りには同じように奇怪な咆哮が鳴り響き、虫のように魔物が湧き出した。

トゥール「妖魔!!この無限に湧き出る感じ、あの時と同じだ」

トゥールは花の都で奮闘した過去を思い出していた。

「ガァガァァァアア!!!」

魔物は水を得た魚のようにウヨウヨと動き出し、トゥール達に襲いかかった。

タクティスは巨斧を振るい、リリはナイフを振り回していた。

トゥール「魔法は使えない、体術のみで戦うしかない」

しかし魔物の力は強く、その数も凄まじかった。

セリアはツグルを抱きしめたまま目を瞑っている。

力を失ってもなおタカは常人ではない身体能力を有するが魔物と戦うことは出来ないだろう、ゼウスは未だにもがき苦しんでいる。

トゥール「リリ!!タクティス!!正念場だ、守り切るぞ!!」

タクティス「だが、、、数が多すぎる」

リリ「ごめん、私戦力にならないっぽい」

リリのナイフは魔物に少し傷をつけるだけだ、それよりも敵の攻撃を避けることで精一杯のように見える。

タクティス「ぐ、、、」

タクティスは魔物に噛みつかれながら、巨斧を振るっている。

このままでは全滅だ、そう思った時。

チリンチリン、チリンチリン

どこからか微かに鈴の音が聞こえた。

チリンチリン、チリンチリン

その音は次第に大きくなっていく。

トゥールの周りにキラキラと眩しい光が集まっていく。

チリンチリンチリン

その鈴の音がすぐ隣から聞こえ、トゥールが横を見ると、そこには風鈴のキムキムがいた。

チリンチリン

キムキムの風鈴の音につられるように、大勢の風の刃の者達が光となって具現化する。

トゥールの目の前に現れたのはトゥールの妻であるコケシだった。

トゥール「皆来てくれたんだな」

原理は分からない、でもトゥールは風の刃の皆との絆を確かに感じていた。
それと同時に悲しみが込み上げてきた。

トゥール「ごめん、俺、、、皆のこと守れなかった」

トゥールの都は妖魔と呼ばれる魔物に壊滅させられた。
トゥールは孤軍奮闘したが最終的には力及ばず、無の神に取り込まれてしまったのだ。

トゥール「ごめん」

悲しみに押し潰されそうなトゥールを見て、コケシはトゥールの肩に手を置いた。

その手に重さはなく、ただ日光のような暖かみが肩からじんわりと身体中に広がる。

コケシ「、、、、」

コケシは言葉を発さない、しかしその表情はトゥールを叱咤激励するようであった。
コケシは刀を握るトゥールの手にもう片方の手を添えた。

トゥール「そうだな、悲しんでる場合じゃない。この世界を救うんだ」

トゥールの表情を見て、コケシはトゥールの身体から手を離した。
そして背中に背負う弓を構えてトゥールを横目で見る。

トゥール「皆!!最後の頼みだ!!妖魔を殲滅し、この夜を超えるんだ!!!!」

トゥールの呼び声に応えるように風の刃の者達が風迅速で駆け抜け、魔物達を切り刻んでいく。

リリ「凄い!!!なんだか分からないけど、やっちゃえー!!!」

タクティス「トゥールの仲間なのか?」

見る見るうちに数が減っていく魔物達だったが、リキッドとヒーローは巨大な獣の猛攻に苦戦を強いられていた。

勇敢に攻めるヒーローを守るように、リキッドはアイスロードを展開して獣の攻撃をギリギリ避ける。

リキッド「一撃でも受けてみろ、身体が消し飛ぶぞ」

それでもヒーローは果敢に攻め入り、剣を突き刺す。そして剣を引き抜くと獣の皮膚は爆発した。
獣は明らかにダメージを負っている様子だが、未だ倒れる気配はない。

リキッドはふと背後からとてつもない気配を感じ、振り返った。

トゥールと背中合わせに弓を構える一人の男が、この巨大な獣を狙っているようだ。

トゥール「コヘ、お前も来てくれたんだな」

コヘ「、、、、、、」

その男はトゥールの大陸で最強と云われる男である。

トゥール「お前がいるなら、もう勝ちは確定だな」

トゥールは刀を鞘に納めた。

トゥール「リキッド!!!その獣から離れてくれ!!」

トゥールはリキッドに叫んだ。

リキッドはその指示に従い、アイスロードでヒーローを回収して遠ざかっていく。

トゥール「言葉を発せないんだろ?じゃあ代わりに俺が言ってやるよ、何度も近くで見てきた技だ」

トゥールは息を大きく吸って言い放った。

トゥール「強射、旋風、、、魔王!!!」

コヘは膨大な魔力が込められた風の矢を放った。

シュボォォオオオオオオ!!!!!

見えない筒状の風が通り抜け、巨大な獣の頭部が無くなっていた。




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