神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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決戦のグレイス城編

第206話 青龍

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トゥールは刀を鞘に抑えたままムーの合図を待っている。

目の前に巨大な敵が聳え立っているが気にもせず、じっと目を瞑ってその時を待っていた。

タクティス「く、、目がまわる」

タクティスはリキッドと共にアイスロードを高速で滑っていた。
片手でリキッドに捕まり、もう片方の手には巨斧レオニダスを握りしめている。

リキッド「多数の触手の攻撃を避けるには複雑なルートをチョイスする他ない。酔ってもその手だけは離すなよ?」

タクティス「ああ、問題ない!!!」

タクティスは片手の巨斧で横切る触手を叩き斬った。
緑のオーラを纏っているタクティスの腕力ならば魔法を使わなくとも切断が可能である。

バキューン!!シュルシュルシュル

リリは着々と触手の数を減らしていた。

リリ「流石リキッド、これならガンガン数を減らせるね!」

目のない触手が誰を狙っているのかを把握するのは難しい、しかしタカの研ぎ澄まされた動体視力は触手の微細な初動を見逃さない。

身体中の魔術刻印がグリュグリュと動き、タカは人間離れした跳躍で高く飛び上がった。

そして渾身のストレートを叩き込む。

すると当たった触手の直線上にいる奥の触手が、巨大な怪物に喰われたかのように千切れた。

タカは完全に集中していた。

タカの身体は人の三倍の睡眠時間を要する。
性格も相まってタカは超スロースターターなのだが今は違う。なぜなら守るものがあるからだ。

タカ「フ、、、、」

横目でトゥールとムーの様子を窺った。
もう少し時間がかかりそうである。

二人のために時間を稼ぐどころか触手は残り数本となっていた。

リキッド「このまま押し切る!!」

リキッドがルートを変え、殲滅に向かったその時。

更に多くの触手が再生した。

リリ「嘘でしょ!?」

標的が突然増えたことでリリは動揺していた。

リキッドはすぐにルートを改め、触手の森を抜けようと模索した。
しかし抜け道がない。

リキッド「再生スピードが早すぎる、迂闊だったか」

ルートは上へ抜ける他ないが、触手はハエを叩くかの如く先端を振り上げている。
振り下ろされれば最後、二人の命はないだろう。

その時、タクティスはリキッドを片手で持ち上げた。

リキッド「何をする」

タクティス「これが最善の策だ、そうだろう?」

リキッド「、、、、ああ」

タクティスは思いっきりリキッドを上へと投げた。

緑のオーラによって身体能力が上限を超えているタクティスの投擲は一瞬にしてリキッドを触手の森から脱却させた。

リキッド「犠牲、とするにはまだ早いぞ。タクティス」

リキッドは膨大な魔力を消費して剣を十字に振り抜いた。

リキッド「アイスワールド」

パキパキと音をたてて刻まれた十字は触手の森へと侵入する。

すると触手達は根本から徐々に凍り出した。

リキッド「完全に凍らせることは出来ないだろうが動きを鈍らせることは出来る」

リキッドは空中からタカを見た。

そこにタカはいなかった。

リキッド「ふっ、このチームに指揮なんて必要ない」

リキッドはアイスロードで地上へ向かった。

一人取り残されたタクティスは凍りついていく触手を一本ずつ薙ぎ倒していた。

タクティス「道は開けないか、数が多すぎる」

すると正面の触手から風穴が空き、そこにタカが現れた。

タカ「こっちだ」

タカはタクティスの胸ぐらを掴んだ。

タクティス「お、、、」

魔力を足に集中させて猛スピードで触手の樹海を抜ける。

タクティス「おおおおおー!!!目がまわる!!」

あっという間に樹海の外へと抜けると、いつの間にか六人が集結していた。

ムー「ご苦労、十分な時間稼ぎだてめぇ等。そして時間切れだデストロイヤー」

ニヤけが止まらないムー。

リキッド「お手並み拝見といこうか」

剣を納め、腕組みをするリキッド。

タクティス「、、、、酔った」

白い床に倒れ込むタクティス。

リリ「あんたも移動系魔法習得しなさいよ」

タクティスをくすぐるリリ。

タカ「俺は少し寝、、、Zzz、、る」

仁王立ちで眠るタカ。

トゥール「よっしゃ、さっさとやっちまおうぜ」

トゥールは刀に手をかけた。

ムー「いつでも良いぞトゥール」

トゥール「んじゃ、やりまっせ!!」

トゥールは刀を抜いた。

トゥール「彼岸花!!」

トゥールが繰り出したのはかつてタケルを打ち破った全てを断ち切る斬撃、彼岸花。

蒼い斬撃が飛び交う、そしてそれらは空中で動きを止めている。

トゥール「お、、お!?」

ムー「ショータイムだ」

ムーの月魔法によりその斬撃が一点に集められる。

辺りに大量の水が流れ込むがそれらも何かに吸い上げられるように一点に吸い込まれていく。

トゥールの身体から湧き出る青いオーラもスルスルと吸い込まれていく。

トゥール「お、、、なんか一気に疲れたぞ」

ムー「魔力は出来るだけ僕のを使っているから多少の体力の消費は我慢してくれ」

ムーの身体から紫のオーラが湧き出る。
風、水、青のオーラを吸い込んだ一点には澄んだ青色の水晶玉のようなものが出来ていた。

紫のオーラがその水晶玉を包み込んだ。

ムー「さぁ、感じるだろ?あとは言霊を乗せて破壊しろ!!」

トゥールは言われるがまま刀を振るった。
頭に浮かぶ言葉は一つ、何も迷うことはない。

トゥール「青龍!!!!!!」

トゥールの一振りが水晶玉を割った。

すると、見る見るうちにそこに実体のない半透明な巨大な龍が姿を現した。

トゥール「おおおおお!!!なんぞや!!」

デストロイヤーをも凌ぐ大きさに一同は驚きを隠せない。

半透明な体の中には何かが渦巻いているようだ。

リリ「凄い!!綺麗!!」

龍に触れようとしたリリをリキッドが静止した。

リキッド「触れるな!指が消し飛ぶぞ」

リリ「え!?」

ムー「ふん、その通りだ」

タクティス「どういうことだ?」

ムー「見てりゃゴリラでも分かる」

青龍はゆっくりと動き出し、デストロイヤーの触手に触れた。
実体のない青龍をデストロイヤーの触手は通り抜ける、はずだった。
しかしそこに触手は無くなっていた。

そのまま青龍はデストロイヤーを包むようにゆっくりとただ通り過ぎた。

「、、、、、、、、、」

一同は唖然とした。

トゥール「おいおい、マジかよ」

そこには確かに巨大な怪物がいたはずだった。
しかし青龍が通り抜けるとそこには何も無くなっていた。

リリ「どーなってんの!?」

ムー「見てたか?説明なんていらねぇだろ、粉々になったってハナシだ」

タクティス「いや、見ていたが分からん」

いつの間にか青龍は消えていた。

リキッド「青龍の体内の渦はムーの月魔法が操った風と水だ。それらがトゥールの青のオーラによって極限まで鋭く磨がれた上で、紫のオーラで圧縮されていた。要するに動くミキサーのようなものだ」

リリ「待って、私がもし触ってたら」

ムー「てめぇの指は無くなっていたってハナシだ」

リリ「マジで洒落になんないっての!!」

トゥール「まぁ、お疲れってことで!」

リリ「いやいや!!あんたね!」

タカ「ふわぁ、、終わったか」

「そのようだね」

後ろからの声に一同は振り返った。

そこにはマイケルがいた。
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