神殺しの怪物と六人の約束

決戦のグレイス城編

第197話 騎士の試練

ツグルはフェイントをかけながら城内へと続くナイトロードを駆け抜ける。

それを逃すまいとリョーガは目を光らせ、凄まじい動体視力で的確にツグルを捉えていた。

リョーガ「甘い！！」

ツグル「くっ！！」

リョーガの槍をツグルは黒い剣でなんとか防いだ。
しかし、血の力で身体能力が上昇しているリョーガに力負けしてしまう。

空いた手で反撃することは出来ず、両手で黒い剣を握りしめる。

その隙を逃すことなく、リョーガはもう片方の手に握りしめる剣を振り下ろそうとした。

しかし腕が何かに固定されているようだ。

リョーガの腕には地面から伸びる植物が絡み付いていた。

ダイス「させねぇよ！」

リョーガ「この程度で止められると思ったら大間違いですね」

リョーガは華麗な槍捌きで植物を断ち切りながらツグルにも攻撃を仕掛ける。

リョーガ「圧倒的な戦力差をみせてあげましょう！」

リョーガの槍が赤く光った。
禍々しい魔力により空間が歪んでいる。

ツグルは足を黒化させ距離をとろうとした。

しかし足が動かない。

よく見ると地面から伸びる鎖に繋がれていた。

リョーガの不敵な笑みを見て、やられたと思った。

その時、モモが間に割って入った。

モモ「友達を守れないようじゃ、何一つ守れないよね！！」

モモは防護壁を展開し、槍を受け止めようとしている。

ツグル「モモ、やめろ！！流石に無理だ」

モモ「出来る出来ないの問題じゃない！！守ると決めたものを守るのが騎士ってもんでしょ？」

リョーガ「じゃあその清き精神ごと串刺しにしてあげましょう！！」

リョーガの槍がモモの防護壁にぶつかった。

あまりの威力にモモは顔を歪める。

モモ「ツグル！！今のうちに行って！！」

ツグル「分かった」

ツグルは城の扉へと走り出した。

リョーガ「させません！」

リョーガは亀裂の入った防護壁から槍を引っこ抜き、投擲の構えをとる。

地面からいくつもの蔦が伸び、リョーガを捉えようとするが、それを読んでいたリョーガが空中へと飛び上がった。

リョーガ「この槍の真価は投擲にて発揮される！！血槍クレッシエンド！！！」

呼び名と共に放たれた槍は禍々しい赤い魔力を帯び、空間を歪ませている。

避けるには間に合わない、ツグルは受け止めようと腕を翼に変え、守りの構えをとった。

ふと横に目をやると、フルネス将軍が大剣を構えながらツグルの元へと向かっているのが見える。

モモ「迂闊だった！！」

モモは走り出した、しかし間に合わないことは分かっている。

ダイスは奥歯を噛み締めながら、リョーガに狙いを定めていた。

絶体絶命の状況にツグルは苦しそうである。

その時、フルネス将軍がツグルを守るように割って入った。

ツグル「な、、、」

そして剣を地面に突き刺し巨大な防護壁を出現させた。

フルネス「、、、、」

リョーガ「なんの真似ですか、フルネスさん」

槍はその壁を突破出来ず、主人の元へと帰っていく。

リョーガ「グレイスウォールだと、、、突破出来るわけがないでしょう」

巨大な透明の壁は城下町を真っ二つに隔てるように建てられた。

半分にはリョーガとダイスが、もう半分にはフルネスとモモ、ツグルがいる。

ツグル「フルネス将軍、、、、」

ツグルはフルネスの背中を見ながら、城内の扉を開けて中へと消えた。

残されたモモは今の出来事に戸惑っている。

モモ「フルネス将軍！！意識があるってことだよね？」

フルネス「、、、、、」

フルネスは口を開かない。

モモ「答えて！！フルネス将軍なんでしょ！？」

フルネス「、、、、、」

フルネスは大剣を引き抜き、モモの元へと歩き出した。

モモ「、、、、、、」

そしてモモの目の前まで来ると、大剣を振り上げた。

モモ「嫌だ、、、戦いたくない。やっぱりあなたはフルネス将軍だよ」

ダイス「モモ！！！戦え！！！」

壁の向こうからダイスが叫んでいる。

ダイス「こいつは俺に任せろ！！お前は目の前の敵を倒せ！！！」

モモはメイスを握りしめ、フルネスの大剣を受け止めた。

モモの目から涙がこぼれ落ちた。