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決戦のグレイス城編

第193話 ユメゾウの願い

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ウォーーーンウォーーーンウォーーーン!!!

真夜中の施設内にサイレンの音が響き渡る。

オダルジョーの嫌な予感は的中した。

一度も開いたことのないガラス張りの部屋の扉が開いたのである。

「動くな!!!」

銃を持った兵士が扉の前に立ち、こちらを睨みつけている。

オダルジョー「何の騒ぎ?」

兵士「口を開くな!!少しでも不穏な動きがあれば撃つ!!」

扉の外で研究者や兵士達が右往左往している。

オダルジョー「、、、、、、」

「誰がメインエンジンを停止させたんだ!?」

「復旧はまだか!?」

「うわぁあ!!!バケモノが出てきた!!撃ち殺せ!!」

ババババババ!!!!!

銃声が響き渡り、魔造生物か兵士なのか分からない悲鳴が聞こえる。

オダルジョーはその場から動かなかった。

その時、施設内にアナウンスが鳴った。

「魔造生物の諸君、私はユメゾウである。メインエンジンを停止させた、復旧には最低でも一時間はかかる。その間にこの施設から脱出するんだ。ちなみに外の機械兵器も停止させてあるぞ、チャンスは一度しかない!!これを逃せば君たちの夢は叶わぬままだ。自由を手に入れろ!!今まで君たちのおかげで楽しく仕事をすることが出来た、ありがとう。これは私から君達への恩返しだ、絶対に受け取ってくれよ?皆無事に脱出するんだ」

ユメゾウのアナウンスと共に扉の外が尚のこと騒がしくなった。

きっと魔造生物が外へと出始めたのだろう。

オダルジョー「はぁ、、、、、今アナウンスしている人はさ、私達を助ける義理はないはずなんだよ。自分の人生には関係のない人達を助けようとしてるんだよ」

オダルジョーは胸の辺りがモヤモヤするのを感じていた。

オダルジョー「ねぇ兵士さん。これって悲しいってやつなのかな?それとも愛なのかな?」

兵士「動いたら撃つ!!!」

兵士の目には殺意が込められている。

またもアナウンスが鳴った。

「オダルジョー、ホーリー、君達は外に出ないつもりだろう?じゃあ本当のことを言おう。一時間後にこの施設は爆発する、私はコントロールルームを封鎖してそこからアナウンスしている。爆発前には私も外に出るつもりだ、外に出たらすぐ近くに鉄塔がある、そこで待ち合わせをしよう。そして教会で花を育てて売ろう。どうだ?楽しくなってきただろう?じゃあまた後でな」

願ってもないユメゾウの言葉にオダルジョーは自然とニヤけていた。

オダルジョー「兵士さん、これが愛なんだね。きっと」

オダルジョーが手をかざすと兵士は猛火に包まれた。

ゆっくりと扉の外へと出ると、隣のボックスから修道着を着た少女が血だらけで立っていた。

その目は赤く光っている。

少女はオダルジョーを見ると襲いかかってきた。

オダルジョーは咄嗟に蜘蛛の糸で少女の首を絞めた。

少女は泣きながら赤い目でオダルジョーを見つめている。

少女の手首のタグには[ホーリー]と書いてある。

オダルジョー「君もユメゾウの友達なのかい?だったら一緒に行こうよ。愛ってやつを探しに」

オダルジョーは闇魔法、束縛をかけた。

束縛は相手の心と身体の自由を奪う恐ろしい魔法である。

常に自分に縛り付けることになるので闇魔法の中でもリスクの大きい魔法だが、相手も同じ気持ちであればそのリスクは小さくなる。

ホーリーの赤い目はスッと色を失い、綺麗な青い瞳が現れた。

ホーリー「ありがとう、いや、まずはごめんなさいと言うべきだろうか」

オダルジョー「いや、どうぞよろしくじゃない?私はオダルジョー」

ホーリー「え、ああ、確かにそうかもしれない。どうぞこれからよろしくお願いします。ホーリーです」

二人は握手を交わそうとした。

バン!!!

しかし、発砲により二人は戦闘モードになった。

兵士達は逃げ出した魔造生物を殺すため容赦なく発砲してくる。

ホーリー「まずはここにいる兵士を全て殺そう、ああ、殺そう。ふふふ、ふふふふ」

ホーリーは人間離れした動きでスルスルと弾丸を避け、素手で兵士の心臓を貫いた。

オダルジョー「そうだね、殺しちゃった方がユメゾウも外に出やすいよね」

オダルジョーは迷わずに魔法を放った。

外へと出るのは難しくなかった。

オダルジョーとホーリーは全ての兵士を殺し尽くし外へ出た。そして鉄塔に辿り着いた。

少しの後、施設は爆発を繰り返し崩壊した。

二人はしばらくの間鉄塔の下でユメゾウを待っていた。

しかしユメゾウはなかなかやって来ない。

それでも二人は暗闇の中ユメゾウを待ち続けた。

そして、朝がやってきた。

オダルジョー「もう行こうか、ホーリー」

ホーリー「、、、ユメゾウは来ないんだね」

ユメゾウは来ないということを二人は分かっていた。

施設からこの鉄塔まではそれほど遠くない。

オダルジョー「ユメゾウはあの施設を出る気はなかったんだよ。私を逃すために嘘をついたんだ」

ホーリー「発作が起これば私はまた罪のない人を殺してしまう、だから私も外に出る気はなかったんだ。でもユメゾウに会えるならと思ってボックスを飛び出した」

オダルジョー「束縛の魔法の存在を教えてくれたのはユメゾウなんだ。もしかしたらユメゾウは私が君に束縛の魔法をかけることも想定済みだったのかもね」

ホーリー「どうしてユメゾウは来なかったんだろう」

オダルジョー「コントロールルームを封鎖しているって言ってたよね、施設の機能を停止させて爆発させるにはコントロールルームの中で操作し続ける必要があったんじゃないかな?」

ホーリー「じゃあユメゾウは死ぬ覚悟で私達を?」

オダルジョー「多分ね。でも分からない、施設に戻ってコントロールルームを見てみようか」

ホーリー「あの爆発の後だし、危ないよ?」

オダルジョー「死んだら死んだで別に良いよ」

二人は崩壊した施設へと戻った。

壁は崩れ、天井が落ちている場所もあったが二人の少女は何とか燃え盛るコントロールルームに辿り着いた。

その扉は開いていた。

ホーリー「私は身体から水を出せるよ」

ホーリーは水で炎を鎮火した。

そこには横たわる黒焦げの死体が転がっていた。

オダルジョー「、、、、、、、」

ホーリー「ユメゾウ、じゃないよね?」

オダルジョー「いや、ユメゾウだよ。私には分かる、ユメゾウの魔力がまだ少し残ってる。この死体は、、、ユメゾウだよ」

ホーリー「そんな、、、、」

ユメゾウの死体には銃弾の跡があった。

オダルジョー「ユメゾウは兵士に撃たれて死んだんだ、そりゃそうだよね。鍵を閉めてたとしても兵士はやってくるよね」

ホーリー「私がもっと早く兵士を皆殺しにしていれば!!!、、悔しい、、悔しい!!!」

ホーリーの目が赤く染まっていく。

オダルジョー「いや、ユメゾウはあのアナウンスの後にすぐ殺されたと思うよ。あえてコントロールルームの存在を晒したのは私達魔造生物が逃げやすくするためだね。今なら分かる、ここは出口とは真反対の場所に位置しているんだから」

ホーリー「自ら囮になったってこと?」

オダルジョー「ホーリー、これが愛なのかな?私には分からないよ」

ホーリー「分からない、でもユメゾウと一緒にまた笑い合いたかった。鉄塔に来てほしかった。ああ、ユメゾウ」

その後フォールドーン帝国の兵士や機械が爆発した施設へとやってきた。

二人はその場所から姿を消した。

そして二人はヘイスレイブの森で魔女に出会ったのだった。
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