177 / 229
決戦のグレイス城編
第177話 勝率0%
しおりを挟む
ツグル「よし、行くぞ」
呼吸を整えてツグルは立ち上がった。
カナメル「行くか」
火の玉を指先で転がして遊んでいたカナメルは立ち上がり、火の玉を握り潰した。
カナメル「この先にゼウスかオダルジョーがいたら撤退する。それはここに来る前に言ったよね?」
ツグル「トルコネで聞いた」
カナメル「、、、、」
ツグル「俺は行くぞ」
カナメル「そう言うと思ったよ。でも冷静に考えてみなよ、勝率0%の戦いに意味があると思うか?そんな無謀な賭けをするくらいなら勝率を上げるために時間を使った方が良いと思わないか?」
ツグル「そんな時間はない。もうここまで来てしまったし、ズミやさっきの男も命をかけてくれている。今更止まれない」
カナメル「そう言って勝てない相手に挑んでお前が死んだら、それこそもうこの世界を救う手段はなくなる。皆が今戦っている意味もなくなる」
カナメルは俯きながら言葉をかける。
ツグル「どうした、カナメルらしくないぞ。お前はいつも強気で、生意気で、どんな時も活路を見出す。俺が思うカナメルって奴はそういう奴だ。何を弱気になってるんだ?」
カナメル「これは感情の話じゃない。勝率、いや理論値の話だよ。お前が死ねば全てが0になる。無の神には死んでも勝つしかない。でもその前に死ぬなんてもっと許されない。でも実際ゼウスが相手だったら二人で束になったところで勝率は0だ。それなら一旦引くべきだ、例え仲間を置き去りにすることになろうとも」
ツグル「あの女魔術師の空間転送、、魔法?だったか。この迷宮は戻ることが出来ると思うか?進めば無の神に辿り着くことが出来ると言っていたが、あの儀式の間には進むための扉しかなかった。要するに戻ることは出来ないってことだ」
カナメルは大きくため息をついた。
カナメル「俺としたことが、そんな簡単なことを見落としていたなんてね」
ツグル「もう俺たちは進むしかないんだよ。だったらこれから先どんな敵が立ちはだかっても、勝つだけだ」
カナメル「確かに、ツグルの言うことが正論に思えてきたよ。BBの空間転送魔法は誤算だった。俺は弱気になっていたのか」
ツグルはカナメルの肩に手を置いた。
ツグル「カナメル、俺は死ぬつもりはない。俺が背負ってるものは出来ませんでしたで済まされるものじゃない。トゥール達の、全ての人達の想いを背負ってここまで来た。そんな俺の隣にいてくれるのがお前で良かった」
カナメル「、、、、、、」
ツグル「勝率は本当に0か?カナメル、俺はお前がいれば勝てない相手はいないと思っている。逆に俺は力不足か?だったら戦いの最中に成長してやる。相手の力、お前の頭脳、何だって良い。勝つためならなんだって盗むさ、俺にはそれが出来る。俺は怪物だからな、怪物の可能性をその理論値とやらに加算してくれよ」
カナメル「ふっ」
カナメルはニヤリと笑った。
カナメル「じゃあ微々たるものだろうけど、加算しておくよ」
ツグル「よし、じゃあ行こう」
ツグルは重い、大きな扉を開けた。
そこはグレイス城中心に位置する大庭園だった。
普段は綺麗な花が咲き誇り、壮大な景色を見ることが出来る。
グレイス城の中心に位置するため、城内の人々は皆その花を見て心を癒していた。
だが、今目の前に広がる花々は全て焼け焦げている。
雷が直撃したかのような光景にツグルは息を呑んだ。
大庭園の中心が光り輝いている。
バチバチと音をたて、そこに胡座をかいて座っているのは最も出会いたくない敵だった。
ゼウス「ようやく来たか。お前達が侵入者第一号だ、随分と待たされた」
ツグル「ゼウス!!!!、、、、」
カナメル「、、、、、」
カナメルは顔を顰めている。
ゼウス「どうやら俺は侵入者を全て殲滅しなきゃいけないらしい。奴の命令に従うのは癪だが、強者と戦うチャンスという誘い文句には一理ある。この身体を試させてくれ」
バキバキと音をたててゼウスの筋肉が膨れ上がる。
そこには魔術刻印がしっかりと刻み込まれている。
ツグル「カナメル」
カナメル「、、、、、」
ツグル「カナメル!!!!」
ツグルはカナメルの肩を叩いた。
カナメル「なんだよ」
ツグル「ビビってんじゃねぇだろうな?」
カナメル「まさか。戦略を練っていたところだよ」
カナメルはニヤリと笑った。
ツグル「なら良い。勝つぞ」
カナメル「ああ」
カナメルは引きつる笑顔をそっと真顔に戻した。
呼吸を整えてツグルは立ち上がった。
カナメル「行くか」
火の玉を指先で転がして遊んでいたカナメルは立ち上がり、火の玉を握り潰した。
カナメル「この先にゼウスかオダルジョーがいたら撤退する。それはここに来る前に言ったよね?」
ツグル「トルコネで聞いた」
カナメル「、、、、」
ツグル「俺は行くぞ」
カナメル「そう言うと思ったよ。でも冷静に考えてみなよ、勝率0%の戦いに意味があると思うか?そんな無謀な賭けをするくらいなら勝率を上げるために時間を使った方が良いと思わないか?」
ツグル「そんな時間はない。もうここまで来てしまったし、ズミやさっきの男も命をかけてくれている。今更止まれない」
カナメル「そう言って勝てない相手に挑んでお前が死んだら、それこそもうこの世界を救う手段はなくなる。皆が今戦っている意味もなくなる」
カナメルは俯きながら言葉をかける。
ツグル「どうした、カナメルらしくないぞ。お前はいつも強気で、生意気で、どんな時も活路を見出す。俺が思うカナメルって奴はそういう奴だ。何を弱気になってるんだ?」
カナメル「これは感情の話じゃない。勝率、いや理論値の話だよ。お前が死ねば全てが0になる。無の神には死んでも勝つしかない。でもその前に死ぬなんてもっと許されない。でも実際ゼウスが相手だったら二人で束になったところで勝率は0だ。それなら一旦引くべきだ、例え仲間を置き去りにすることになろうとも」
ツグル「あの女魔術師の空間転送、、魔法?だったか。この迷宮は戻ることが出来ると思うか?進めば無の神に辿り着くことが出来ると言っていたが、あの儀式の間には進むための扉しかなかった。要するに戻ることは出来ないってことだ」
カナメルは大きくため息をついた。
カナメル「俺としたことが、そんな簡単なことを見落としていたなんてね」
ツグル「もう俺たちは進むしかないんだよ。だったらこれから先どんな敵が立ちはだかっても、勝つだけだ」
カナメル「確かに、ツグルの言うことが正論に思えてきたよ。BBの空間転送魔法は誤算だった。俺は弱気になっていたのか」
ツグルはカナメルの肩に手を置いた。
ツグル「カナメル、俺は死ぬつもりはない。俺が背負ってるものは出来ませんでしたで済まされるものじゃない。トゥール達の、全ての人達の想いを背負ってここまで来た。そんな俺の隣にいてくれるのがお前で良かった」
カナメル「、、、、、、」
ツグル「勝率は本当に0か?カナメル、俺はお前がいれば勝てない相手はいないと思っている。逆に俺は力不足か?だったら戦いの最中に成長してやる。相手の力、お前の頭脳、何だって良い。勝つためならなんだって盗むさ、俺にはそれが出来る。俺は怪物だからな、怪物の可能性をその理論値とやらに加算してくれよ」
カナメル「ふっ」
カナメルはニヤリと笑った。
カナメル「じゃあ微々たるものだろうけど、加算しておくよ」
ツグル「よし、じゃあ行こう」
ツグルは重い、大きな扉を開けた。
そこはグレイス城中心に位置する大庭園だった。
普段は綺麗な花が咲き誇り、壮大な景色を見ることが出来る。
グレイス城の中心に位置するため、城内の人々は皆その花を見て心を癒していた。
だが、今目の前に広がる花々は全て焼け焦げている。
雷が直撃したかのような光景にツグルは息を呑んだ。
大庭園の中心が光り輝いている。
バチバチと音をたて、そこに胡座をかいて座っているのは最も出会いたくない敵だった。
ゼウス「ようやく来たか。お前達が侵入者第一号だ、随分と待たされた」
ツグル「ゼウス!!!!、、、、」
カナメル「、、、、、」
カナメルは顔を顰めている。
ゼウス「どうやら俺は侵入者を全て殲滅しなきゃいけないらしい。奴の命令に従うのは癪だが、強者と戦うチャンスという誘い文句には一理ある。この身体を試させてくれ」
バキバキと音をたててゼウスの筋肉が膨れ上がる。
そこには魔術刻印がしっかりと刻み込まれている。
ツグル「カナメル」
カナメル「、、、、、」
ツグル「カナメル!!!!」
ツグルはカナメルの肩を叩いた。
カナメル「なんだよ」
ツグル「ビビってんじゃねぇだろうな?」
カナメル「まさか。戦略を練っていたところだよ」
カナメルはニヤリと笑った。
ツグル「なら良い。勝つぞ」
カナメル「ああ」
カナメルは引きつる笑顔をそっと真顔に戻した。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる