神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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決戦のグレイス城編

第175話 迷宮

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ツグルとカナメルはグレイスの城下町へと至る門をくぐった。

そこにはナイトロードが伸び、その先にグレイス城が見える、、、はずだった。

しかしそこは儀式の間だった。

ツグル「どうなってるんだ?」

カナメル「敵の術にハマったか」

ツグル「一旦戻ろう」

戻ろうと後ろを振り返るとそこに扉はなかった。

カナメル「進むしか無さそうだな」

「そう、進むしかないの。来るなと言ったのに来てしまったのだから」

反響する声は聞き覚えがある。

カナメル「なるほど、あんたの魔法でグレイス城の構造をバラバラに作り替えたわけか」

ツグル「あの時助けてくれた人か?」

「はぁ、どうして来てしまったのかしら?カナメルらしくない選択ね。次は敵として迎え討つと言ったはずよ?」

カナメル「教師として教え子である俺を助けるのは分かるけど、あんたはツグルまで助けた。そっちサイドとしては無の神を倒す可能性があるこいつを生かしておくメリットはないはずだけど?」

「だから、私は本当は味方なんじゃないか?そんな幼稚な推測をしたのかしら」

薄暗い儀式の間の中央付近に霧が現れた。
霧はゆっくりと人型を形成し、一人の女魔術師が現れた。

BB「だとしたら答えはノー。私は正真正銘あなた方の敵よ」

ツグル「じゃあどうして俺を助けてくれた?」

BB「さぁね~強いて言えばあの氷の剣士と二人きりになってみたかった。とか」

カナメル「まぁ良い、どちみち超えなきゃならない壁だ。あんたを倒さなきゃこの迷宮は無くならない。トゥールが呼んだ援軍も足止めをされてしまう。先には進めそうだけど、無の神へは辿り着けないんでしょ?」

BBは微笑んだ。

BB「辿り着けるわよ」

カナメル「ふーん、ちなみにそうするメリットはあるの?」

BB「私は争いのない平和な世界を創りたいのよ。そのためには絶対に誰にも負けない強者が全てを支配する必要がある。私は無の神すら試しているのよ。もし無の神が負けたら、きっと私が望む世界はどこにもない」

カナメル「そりゃ、人は生きている限り争い続けるだろうね。その中でどう生きるかが面白いんだけどなぁ」

ツグル「無の神が支配する世界には本当に争いがないのか?」

BB「ええ、だって誰も敵わないもの。どれだけ抗っても無意味。無意味なことを続けられるほど人は強くないのよ」

ツグル「俺は無の神を倒す。その後の世界で争いが起こったとしても止めてみせる。人の手で平和な世界を創り上げてみせる」

BB「って言ってるけど。カナメルはそれが実現可能だと思っているのかしら?」

カナメルはニヤリと笑った。

カナメル「まぁ無理だろうね」

BBはニッコリと微笑んだ。

BB「流石、私の教え子だわ」

カナメル「でも」

カナメルは言葉を続ける。

カナメル「ツグルやトゥールみたいな馬鹿正直で真っ直ぐな奴等がいるなら、絶対的な平和とまでは言わなくても近しいものは創れるんじゃないかって期待してる。というか、どんな世界になるのか俺は楽しみなんだよ。無の神が支配する面白みのない世界よりもよっぽどね」

BB「へぇ~、あなた意外と闇とは程遠い人間なのね」

カナメル「どう思われてるのか知らないけど、他の人よりも美意識の優先順位が高いんじゃないかな?」

BB「でしょうね。じゃあ久々の授業を始めましょうか」

カナメル「あんたの授業を無料で受けられるなんて光栄だよ」

カナメルの手に炎が灯る。

BBは足元から大量の水を噴射した。

ツグルは足を黒化させ、BBの首元を狙う。

カナメル「不用意に近づかない方が良い。相手は魔術のプロだ」

ツグル「分かった」

ツグルはいつでも動けるように用意をしながらBBとの距離を維持した。

カナメル「それにしても水なんて、ちゃんと対策してくれるじゃん」

BB「今になって他属性を習得しておけば良かったなんて弱音は吐かないでね?私は何度もそうした方が良いと言ったはずよ」

カナメル「オダルジョーみたいに器用じゃないからね。俺はナオティッシモ先生の教え通り、一つの属性を特化させることを選んだ。それを後悔したことは今のところないね。多分これからもないと思うけど」

BB「嫌味が上手ね」

水は鮫を形造り、ツグルとカナメルに襲いかかった。

ツグルはシャドウウォールでそれを止めた。
しかし水は弾けて液体に戻り、壁を越えて再度迫って来た。

カナメルはエンハツで鮫の猛攻を避けている。

BB「さて、どこから攻撃を仕掛けてくるか」

鮫の数はどんどん増えている。

カナメル「そこだ!、、、」

避けながらカナメルは炎の鳥を放った。

しかしBBに触れることなくそれは鎮火した。

カナメル「水の膜を張っていたか、そりゃそうだよね」

BBの背後からツグルの黒い大型手裏剣が迫る。
しかし鋼鉄の壁が出現し、手裏剣は跳ね返った。

ツグル「まだだ!!」

ツグルは魔力を放出し、壁の内側に黒き刃を出現させた。

BB「変わった魔法を使うのね」

黒き刃は水の膜を突き破った。
BBは後ろへと飛び退き、刃を避ける。

カナメル「俺の対策はしてるようだけど、ツグルの対策はしていないみたいだね。そうだろうと思ったよ」

飛び退いた地面に大きな赤い魔法陣が形成された。

BB「いつの間に、、、水魔法霧散、、収束!!」

水で作られた鮫の大群は一瞬で消え去った。
赤い魔法陣から火柱が上がるのと同時にBBの足元で多量の水が渦を巻く。

火柱は煙を上げながら消化した。

ツグル「はぁぁあ!!!!」

ツグルは黒化した足で素早くBBへと近づいたが、瞬きをした瞬間に鋼鉄の檻が形成され、囚われていた。

ツグルが次の手を考える前に、柵の隙間からカナメルの炎剣カーマインが投げ込まれる。

咄嗟にカナメルを見ると、彼はニヤけていた。

おそらくこれは「行け」ということなのだろう。

ツグルはカーマインを手に取り、鋼鉄の柵を薙ぎ払った。

柵は熱で赤く光り、弾け飛んだ。

ツグルはそのままBBへと距離を詰める。

BB「仕方ないわね、水爆」

BBは斬られる前に足元の水を爆発させた。

ツグル「ぐはぁ!!!、、、」

ツグルは水の圧にやられ、吹き飛んだ。

カナメル「水爆なんて荒っぽい魔法使うんですね。今の連携は結構ヤバかったってことですか」

カナメルはわざとらしくBBを挑発している。

ツグル「いってぇ、、、」

咄嗟に翼に変形させガードをしたものの、衝撃を全て防げたわけではなかった。

BB「魔法としては雑だけど、連携としては満点をあげるわ」

BBは水浸しになっていた。

カナメル「どうやら転移は間に合わなかったみたいですね。ってことは硬化でダメージを減らしたってところか」

BB「他属性を使えない割に、ちゃんと勉強はしているのね。正解よ」

カナメル「広範囲の空間の構造を変えるような大掛かりな魔法を発動させてるんだ。転移魔法のような大技は使えないんでしょ?燃費の良い魔法だけで戦ってくれるなら全然勝ち目はあるね」

カナメルの挑発は止まらない。

BB「そうやって迷宮を解除させるつもりだろうけど、その手には乗らないわよ。魔法は奥が深いの、大技を使わなくとも使い方次第で敵を圧倒出来る」

カナメル「ふーん、是非ともお見せ願いたいね」

その時、とある者がBBの後ろに現れた。

BB「誰?」

そこには思いもよらぬ人物が立っていた。






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