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マイケルの自空間編

第150話 風鈴のキムキム

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肩の痛みに耐えながらトゥールは南へと走り続けた。

しかし、規定の時刻を30分もオーバーしてしまっていた。

トゥールがあまりにも遅いため、街の入り口で待っていたショーヘイが手を振っている。

ショーヘイ「お前遅すぎだろって、、、、肩どうしたんだよ!?」

血が滴り落ちるほどに衣服は真っ赤に染まっていた。

トゥール「ちょっと色々あってさ、、、やべぇ、間に合わなかった」

ショーヘイ「あ、ああ、とりあえず荷物渡してこい!俺はもう済んでるから」

トゥールはそのまま大急ぎで指定の場所まで走った。

大きな屋敷の前まで来て、扉を叩く。

トゥール「すみません!!足運びのトゥールです!!大変遅くなりました!!!」

中から厳格な雰囲気の男が姿を現した。

男「、、、、荷物はそこに置いておいてくれ」

トゥール「はい!!遅くなり、大変申し訳ございません!!」

男「そんなことはいい、君のおかげで数年働かなくても飯を食っていける」

トゥール「、、、どういうことですか?」

男の言っている意味が全く分からなかった。

男「沢山の小判を頂いた。風の刃からだ。君は至急都に来るようにと伝言を頂いている。肩を負傷しているようだからこれを渡すように、とも」

男の手には包帯が握られていた。

トゥールはその包帯を受け取った。

トゥール「え、ええと、、、、」

男「いいから都へ行ってくれ!!!そうしてくれなければ俺は小判を没収されちまう!!じゃあ分かった、仕事の依頼だ。これを都の知人の元まで届けてくれ、頼んだぞ!!」

男は小包を渡し、勢いよく扉を閉めた。

そこへショーヘイがやってきた。

ショーヘイ「カンカンに怒ってただろ?」

トゥール「いや、次の仕事を依頼された。都へ戻る」

ショーヘイは驚きを隠せない。

ショーヘイ「は!?マジで?それ絶対嫌がらせだろ、断っちまえよ」

トゥール「俺にもよく分からんが、頼まれた仕事は遂行するさ」

トゥールは頼まれた小包を藁袋へと入れた。

ショーヘイ「俺は流石に疲れたからこの街で一泊していくよ。とりあえず肩見せろ」

ショーヘイはトゥールの肩の傷を見て顔を顰めた。

ショーヘイ「おいおい、何がどうなったらこんな傷が出来て、何がどうなったらこの傷のまま走ることが出来るんだ?じっとしてろ」

ショーヘイは慣れた手つきでトゥールの肩に包帯を巻いた。

トゥール「お、おお!!すげぇ、さっきよりも全然良い!」

ショーヘイ「だろ?気をつけて行けよ、んであんま無理すんな」

トゥール「ありがとう!!すっかり夜になる前には都に辿り着くさ。じゃあ、またな!」

ショーヘイ「ああ、足運びをしてりゃどうせまた会うだろうから、再会したらまた一緒に仕事しようぜ」

トゥール「んだな!!」

トゥールは都を目指して北へと走り出した。

~~~~~~~~~~~~

空が薄暗くなってきた頃、トゥールは都へと辿り着いた。

指定の建物へと小包を届け、小判を頂く。

不思議な一日だったが今日という日が終わる。

どんなに忙しい一日でも、どんなに暇を持て余して過ごしても、一日というものは等しく終わる。

足運びとしての一日はいつだって忙しい。

都への贈り物を届けたというのに都に滞在することは出来ない。そういう決まりになっている。
都へは限られた人間しか住むことが出来ない。

トゥールは東の隣町の宿に泊まるために歩き出した。

今日はいつもよりも小判が一枚多いため、少し豪華な宿に泊まれるなぁと考えながら、夕食の良い香りが漂う都を出ようとしていた。

その時。

チャリン、チャリン

突然風鈴の音が鳴った。
それはトゥールのすぐ後ろから鳴っているように聞こえる。

トゥールは後ろを振り返った。

そこに眼鏡をかけた男が立ち、こちらを見ていた。

トゥール「良い夜ですねぇ~」

トゥールは笑顔でその男へと話しかけた。

男「そうですね」

トゥール「仕事柄、都には長居出来ませんが、この夕食の香りが私の足を引き止めますわ。なーんて」

男「ふふふ、確かにそうでしょうね」

男も笑っていた。

トゥール「都にお住まいですか?」

男「はい、そうですね」

トゥール「良い音の風鈴をお持ちだ。俺も今度都に来たら買おうかな~」

男「これは特別な風鈴でね。聞こえた者にしか私の姿は見えないのです」

トゥール「え?、、、、ははは、ご冗談を」

男は真顔で答えた。

男「本当ですよ。都に来たのは仕事のためですか?それとも、風の刃の伝言によってですか?」

トゥール「おっと、何故それを」

男は笑っている。

男「私は風の刃の参謀。風鈴のキムキムです。以後お見知り置きを」

深々と礼をするキムキムと名乗る男をトゥールは凝視した。

トゥール「、、、、えーーーとーーー。すみません、結論から言うと、今自分には何が起こっているんですか?妖魔と戦ってから何か変というか、、、」

キムキム「合格、ということですよ。東風のタケル様の推薦により、あなたは今日から風の刃です」

トゥール「はい?」

トゥールはさっぱり理解が出来なかった。

キムキム「なんて言っても分からないよね。まぁ良い、とにかく僕について来てよ。推薦で風の刃になる人なんて、君が初めてなんだから」

キムキムは花の城の方へと走っていく。

トゥール「よく分からないけども、とりあえず行ってみるかぁ」

仕事も終え、あとは寝るだけの今日という日を更に濃くする出来事がある。
そんな確信を胸に、トゥールはキムキムの後を追った。


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