神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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分裂のトルコネ編

第141話 教師として

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足が氷結し動くことが出来ない二人は必死に抵抗を試みた。

炎で溶かそうとするもその氷が溶けることはなかった。

次第に身体中が凍りつき、抵抗することも出来なくなっていく。

カナメル「ここで死ぬべきなのか?俺は認めない、、、」

リキッド「運命はいつだって残酷なものさ」

リキッドの迷いのない氷撃が襲いくる。

その時、氷は風に切り刻まれ、ツグル達の目の前で粉々になった。

何者かの魔法により、一瞬であたり一面が霧に包まれる。

ツグル「なんだ!?」

そして何者かが耳元で囁く。

「カナメル、今は見逃してあげる。でももしまたここに来たら、勝ち目のない戦いに身を投じる大馬鹿者ということで次は敵として迎え撃つわ。教師として、ね」

カナメル「あんたは、、、ビッグブリッジ先生!?」

霧が濃くて姿は見えない。

「あら、覚えていてくれたのね。でも会うのはこれが最後、、、美意識の高いあなたがこちら側につくとは思えないもの。悪く思わないでね」

ビッグブリッジ先生と呼ばれた女性の声が遠くなっていく。

~~~~~~~~~~~~

気が付けば身体の氷結は解けていた。

霧が晴れると、そこはトルコネの闘技場だった。

ツグル「どうなっているんだ、、、俺たちはグレイス城の中にいたはずだ」

カナメル「ビッグブリッジ先生による強制転移魔法だ。こんなに遠距離に飛ばすなんて、いつから魔力を練っていたのか。どれだけの魔力を消費したことか、、、いや、こんなのは不可能だ。闇魔法を行使したか」

ツグル「どっちにしても、救われた、、んだよな?」

カナメル「そうらしい」

ツグル「そのビッグブリッジ先生ってのは何者なんだ?」

カナメル「アカデミー時代に基礎魔法を教えてくれていた先生だ」

ツグル「そうなのか、、、、」

カナメル「何があったかは知らないけど、どうやら味方ではないらしい」

ツグル「それでも何故か救ってくれた」

カナメル「もうグレイス城には来るなと言っていたな」

ツグル「それでも俺は行く。セリアが待っているから」

カナメル「そうだろうね。だけど勝ち目がないってのは間違いない」

ツグル「セリアがどこにいるか知ってるか?」

カナメル「おそらく玉座の間。無の神が嘘をついていないとしたらだけど」

ツグル「カナメルのいた儀式の間までは敵がいなかった。あそこまで敵と遭遇せずに行けたとしたら、玉座の間まではあと少しだ」

カナメル「でも玉座の間にはきっと無の神がいる」

ツグル「だからこそ、俺が行かなきゃダメなんだ」

カナメル「、、、その言い方も気になるんだけど、リキッドという人が言っていたお前を殺すわけにはいかないってのも気になる。何か知っているなら情報を共有しておきたい」

ツグル「分かった」

ツグルはリキッドから聞いた話を全てカナメルへと話した。

自分しか無の神と戦うことが出来ないこと、トゥール達六人はもう既に死んでいるということ。
無の神の力は弱まっている、だからこそ転生術を成功させないためにカナメルを殺そうとしていたこと、、、、

全てを聞いたカナメルは驚きはしなかった。

カナメル「ふーん、なるほどね。だとしたらこの展開は俺にとってベストなのかもしれない」

ツグル「どういうことだ?」

カナメル「あの場で死ぬには呆気なさすぎる。転生は別に俺じゃなくても成功してしまうんだろ?じゃあどちみち早く無の神を倒さなければならない」

ツグル「確かにそうだ」

カナメル「俺があの場に留まりたかった理由はヘイスレイブを人質にされているからだ。でもこうして助かってしまった。もし隠れて過ごしていたら、俺を誘き出すためにヘイスレイブは潰されるだろう。だったら」

ツグル「だったら?」

カナメルはニヤリと笑って呟いた。

カナメル「俺も行こう」

ツグル「勝ち目は無いんじゃないのか?」

カナメル「ああ、ほぼゼロ。でもそれでも良い、負けたら俺はまた儀式の間に閉じ込められるだけさ。それでヘイスレイブが助かるならそれで良いし、ツグルが無の神を倒せたならそれこそハッピーエンドだ」

相変わらずブレないカナメルの独特の思考回路に、ツグルは笑ってしまった。

ツグル「でも、カナメルがいるなら心強い。正直一人で行くのは心細かったんだ」

カナメル「お前が弱音を吐くとは珍しい。だが、もしゼウスに遭遇したり、オダルジョーとホーリーがいた場合は撤退する。俺は捕まっても良いけど、お前はそうはいかない」

ツグル「分かった」

カナメル「それより」

カナメルは氷塊となっているトゥールを指差した。

カナメル「あれはトゥール本人か?」

ツグル「、、、、ああ。セリアを無の神へ引き渡したのは、トゥールなんだ」

カナメル「裏切ったってこと?」

ツグル「うん」

カナメル「ふーん、、、、」

カナメルは手に炎を灯しながら、氷塊に触れた。

ツグル「何をしているんだ?」

カナメル「氷を解かしてるんだよ」

ツグル「、、、、大丈夫なのか?」

カナメル「さぁね、まぁ説得はしてみるさ。この人がいるのといないのとでは、この作戦の成功率が驚くほど変わってくる」

ツグル「確かにトゥールは強い、でも一人増えただけで戦況はそんなにも傾くものだろうか?」

カナメル「トゥールっていう人間が味方になると、いつだって何故か軍になるのさ」

ツグル「どういうことだ?」

カナメル「フォールドーンの時もそうだっただろ?何故かこの人が動くとつられて皆動いてしまう。台風の目みたいな人間なのさ。だからこの人はこんなところで止まっていてはダメだ、動いてもらわなくちゃ」

確かにそうだったかもしれない、とツグルは思った。
トゥールに出会ってから物語は大きく動き出した。

カナメル「解かすのに結構時間がかかるから、好きにして良いよ」

じわじわと氷が解ける音が鳴っていた。







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