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分裂のトルコネ編

第116話 氷の貴族

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トゥールの刀が振り上げられた。

ツグルは最後の最後まで、トゥールに期待をしていた。

もしかしたら、気が変わるんじゃないかと。

何故だか分からないが、ここで命を落とすとは思えなかった。

しかし、トゥールは意を決したように目を見開き、刀を振り下ろした。

ここで死ぬわけには、、、、

ツグルは腕を変形しようと試みたが、極限まで高めた脚の黒化のせいかコントロールが出来ない。

その時、地面から氷塊が突き出し、トゥールの刀を止めた。

そのまま氷塊は範囲を広げ、トゥールへと伸びていく。

トゥールは空中を蹴りながら、観客席へと避難した。

「さて、どうしたものか?」

闘技場の入り口から、貴族風の格好をした男が歩いてきた。

貴族風の男「まぁ、いいか」

その男はツグルに手を差し伸べ、起き上がらせた。

ツグル「助かった」

貴族風の男「君が噂の怪物君だな?マイケルから話は聞いてるよ」

ツグル「父さんから!?あんたは何者なんだ?」

貴族風の男「話は後だ、まずはあのド阿呆をなんとかするのが先だ」

トゥールは何故だか嬉しそうに目を輝かせている。

トゥール「身体は大丈夫なのか?リキッド」

リキッド「ああ、お陰様で。こうしてちゃんと会うのは十年ぶりか、久々の再会だというのに、どうしてこうなってしまうのか」

ツグル「リキッドって、漆黒の騎士の中の人、、、だよな?」

リキッド「そうだな、俺は漆黒の騎士だった。この十年間は、、、思い出したくもないね」

リキッドは剣と盾を手に取り、剣先をトゥールへと向けた。

リキッド「トゥールのことだ、何かしらの正義の為に動いてるんだろうが、、、再生の女神と怪物を守るのが今の俺のミッションなんでね。悪いが、ここは俺も引くわけにはいかない、マイケルとの約束もあるからな」

トゥール「リキッドのことだ、目標のためならば手段を選ばない。話し合いで解決出来る相手じゃないことくらい分かっているさ」

リキッド「そりゃ、お互い様ってもんだろ」

トゥール「病み上がりで申し訳ないが、手加減は出来ないぞ」

リキッド「安心しな、この十年間、嫌というほど人を殺してきた。よし、じゃあ殺し合うってことで良いんだな?」

トゥール「そうするしかないらしい、覚悟しろよ」

トゥールは居合の構えをとる。

リキッド「無の空間での自我失を思い出すなぁ」

トゥール「居合、、旋風、、、」

リキッド「アイスウォール」

二人の間に分厚い氷の壁が出現した。

トゥール「獺祭!!!」

氷の壁が真っ二つになり、氷塊が滑り落ちる。

リキッド「クラッシュ」

リキッドの掛け声と共に大きな氷塊は極小の氷粒へと形を変える。

リキッド「身体についた細雪は、時間経過と共に動きを封じる」

トゥールは姿を消していたが、極小の氷の粒がトゥールの移動の軌跡を描いていた。

リキッド「アイスウォール」

リキッドの背後からトゥールが刀を振るった、しかしほぼ同時に氷の壁が出現し、その斬撃を防ぐ。

トゥールはその後も現れては消え、現れては消え、あらゆる方向から攻撃を繰り出すも、リキッドの氷に止められてしまった。

リキッド「アイスファング」

トゥールを追うように尖った氷塊が突き出す。

リキッド「まぁ、流石に追いつけないか」

追いかける氷の牙がトゥールを捉えることは出来なかった。

離れた位置に現れたトゥールは居合の構えをしている。

トゥール「居合、、、暴風、、、」

リキッドは自分の周囲を氷の壁で包み込む。

ツグルはモモ達を守るように手を広げた。

やはり黒化と変形のコントロールが出来ない。
そのことに気付いたのか、リキッドがツグル達の周りをアイスウォールで包んだ。

トゥール「天狗舞!!極!!!」

広範囲に荒れ狂う風が吹き荒れる。

トゥールの斬撃が空間全てを切り刻み、氷は粉々に粉砕された。

その隙にリキッドは螺旋状の氷の道を作り、スルスルと滑りながら上空へと登っていく。

粉々になった氷の粒はまた再形成し、氷の牙となってトゥールを襲った。

完璧なまでの攻防一体の戦術。

ツグルはリキッドの戦い方に感銘を受けていた。

リキッド「相変わらず速いな、トゥール。これならどうだ」

リキッドが指を鳴らすと、上空へと伸びる巨大な氷の道は崩壊し、ガラガラと音を立てて落ちていった。

トゥール「居合、、旋風、、、」

トゥールは居合の構えを取り、鞘の中に風を集めている。

トゥール「獺祭!!乱舞!!!」

トゥールは抜刀と居合を繰り返し、一撃必殺の獺祭を幾度となく繰り返していく。

リキッド「これはマズイな、アイスウォール!!」

リキッドは氷塊を貫通して襲いくる風の刃に対して守りを固めた。

氷塊は次々と切り刻まれ、粉々になった氷の粒が光に反射してキラキラと輝いている。

リキッドは目を細めて地上を見下ろしたがそこにトゥールの姿はない。

トゥール「居合、、、突風、、」

四方八方からトゥールの声がする。

リキッドは身の回りを氷で包み、トゥールの攻撃に備えている。

トゥール「浦霞!!乱舞!!」

四方八方からトゥールの斬撃を受け、氷の壁はすぐに砕け散った。

その速すぎる動きから残像が残り、トゥールが分身しているようにも見える。

全ての攻撃を防ぎ切ったリキッドが小さく呟く。

リキッド「仕留める時は背後からくるよな、それがトゥールの癖だ」

リキッドは振り返った。

案の定、背後からトゥールが迫っていたが、リキッドはトゥールの斬撃を盾で防いだ。

すぐに剣で反撃をしようと試みたが、トゥールの高速の剣捌きにより、剣を弾かれてしまう。

リキッド「接近戦じゃ分が悪いか」

刀捌きを盾で防ぐも、空いた腹部に強烈な蹴りが入り、リキッドは地面に向かって急落下した。

リキッド「ゴホッゴホッ、、、、参った参った、俺の負けだ」

リキッドは両手を上げ、降参の意思を示している。

着地をしたトゥールはリキッドの言葉を聞き、刀を鞘に収めた。

トゥールの身体の至るところが氷結しているのが見てとれる。

トゥール「正直なところ、身体が凍ってこれ以上は戦いたくなかった、引いてくれて助かったよ」

リキッド「はぁ、まぁこれから先どうするかは一旦置いておいて、せっかくちゃんと再会出来たんだ、握手でもしようか」

リキッドはトゥールに向けて手を差し出した。

トゥール「そうだな、まずは再会を喜ぶべきだった、ごめんよ」

トゥールはリキッドへ歩み寄り、リキッドの手をグッと握った。

リキッド「悪いな、だが今のトゥールは間違っている。少し頭を冷やせよ」

トゥール「え?」

カキン!!!

繋いだリキッドの手から、一瞬でトゥールの身体が凍ってしまった。

パキパキパキパキ

その後トゥールを包むように身体が氷塊へ変化していく。

リキッド「こいつはな、優し過ぎるんだ。だから判断を誤る」

一瞬で人を氷の塊にしてしまうリキッドの力に、ツグルは恐怖すら感じた。

ツグル「あのトゥールが、、一瞬で負けた」

リキッド「いや、一瞬じゃない。最初に砕かせた巨大な氷の壁、その極小の氷の粒をトゥールの身体の中に入れていた。準備が整うまで時間が必要だった。正直なことを言うと、少しでも油断すれば俺の首は斬られていただろうな」

ツグル「あんた達はどうやってそんなに強くなったんだ?」

リキッド「さぁな、俺はmustをこなし続けただけさ。生きていれば、立場、環境によってやらなければいけないことが迫り来るだろ?それを全てこなしただけ。別に努力なんてしてないよ、それを努力だと言う人もいるんだろうが」

ツグル「、、、、そうか」

リキッド「とりあえず、そこの三人を安全な場所へ移そう。崩壊した宿屋の地下に俺は眠っていたんだ、おそらくトゥールがそうしたんだろう」

どこよりも安全な宿屋。
トゥールがそんなことを言っていた、とセリアが言っていたことを思い出した。

ツグル「その宿屋なら知っている、行こう」

リキッドは倒れ込むリリの元へと歩いた。

リキッド「どうせ張り切って無茶したんだろう、そういうキャラじゃないくせに。後のことは俺に任せろ」

リキッドはゆっくりとリリを抱き上げた。

ツグルも、モモを抱き上げようとした。

ツグル「、、、、、、重い」

無理だと判断し、肩に担いだ。

二人は無理だと判断したツグルは、ダイスを引き摺りながら歩いた。

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