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ヘイスレイブ王国編

第25話 大魔導師ムー

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「ん?パーティでもやってんのか?僕も混ぜてくれよ」

気がつくと、マキニウムと黄金の魔障壁の間には黒いローブを着た若者が浮いていた。

マキニウム「ムー様!!!ムー様!!!来てくれたのですか!?」

ムー「僕の可愛いペットが何者かに殺られてね、文句を言いに来たのさ」

黄金の魔障壁は大きな音を立てて崩れ去った。

それと同時にローブの男は光線に掌を向けた

ムー「、、、眩しいなぁ。。。眩しすぎる」

何をしたのか、一瞬で光線はドロドロとした黒い泥に変わり、それを放っていた鳳凰はジタバタと苦しそうにもがき出した。

鳳凰の足踏みで宮殿が揺れる。

ムー「うるせぇな、室内でS級召喚魔法を唱えたクソ野郎はどいつだ」

そう言って紫一色の小さなコウモリを放つ。
そのコウモリは鳳凰の元までヨタヨタと飛び、胴体に触れると、液体と化して鳳凰の中へ侵食した。

そして数秒後、鳳凰はドロドロと黒い液体に変形して、跡形もなく溶けた。

ムー「魔法国家がこんなレベルじゃ、大陸が泣くな」

マキニウム「ありがとうございます、助かりました」


急に静寂が訪れた広大な玉座の間には、黒い液体が滴っている。


ムー「おい、カナメル。その魔術、誰が教えたと思ってんだ?」

ムーは遠くにいるカナメルに届くよう、声を発した。

カナメル「ムー?なんでここに。。。久しぶりだね」

カナメルは玉座の前にユラユラと浮いているムーに向かってぶっきらぼうに呟いた。

ムー「君、片腕はどうした」

カナメル「今の戦いでやられた」

ムー「ざまぁ、そんなことよりさ。僕の可愛いコウモリを落とした奴がいるんだ。心当たりはあるかい?」

カナメル「コウモリ??」

ムー「そうだ、小さくてキュートなコウモリだ。親友にプレゼントしたものなんだ。でも、ヘイスレイブの何者かがそれを焼き殺したのさ。いや、ヘイスレイブの誰かが指揮する部隊に、かな」

カナメル「!?」

ムー「困ったなぁ、僕の怒りは頂点に達しているんだけど?このままだと怒りに身を任せて、ヘイスレイブ城を落としかねない」

カナメル「、、、あれ、ムーのだったのかぁ、、、、」

カナメルはつまらない顔をしている

ムー「どうした?カナメル。何か、知っているのかな?なぁ?カナメル君。もしかして、君が命じていたりして、僕のコウモリを撃ち落とせと」

カナメル「いや、別に」

ムー「知らないかぁ、僕の怒りを収める他の手段が必要だ。再生の女神?だっけ。それを僕に引き渡して欲しいね」

マキニウム「それは出来ませんな」

ムー「僕はどうしても再生の女神が欲しい、僕の怒りを収めるには十分な程にね」

マキニウム「しかし、、ですなぁ。。。」

ムー「僕はこの国にどれだけの魔法を提供したかなぁ。まだまだ教えられる魔法は腐るほどあるし、僕が教えた転送魔法は今や全兵士習得必須魔法になっているそうじゃないか。それに再生の女神が僕の元に来れば、大陸を統一出来る程に強力な魔法を開発し、提供出来るかもな。あ、それよりも怪我はないかい?マキニウム。さっきの鳳凰の光線をまともに受けていたら、死んでいたかもしれないね。僕がたまたまやってきて良かった」

マキニウム「再生の女神はお渡しします、今後とも、ヘイスレイブ王国をよろしくお願い致します、、、、、」

ムー「最初からそう言えば良いんだよ、デブ」

ムーは契約書を召喚し、マキニウムにサインをさせた。

ムー「これからあの子は僕の所有物だ、指一本でも触れてみろ、消すぞ」

四天王達は唖然としている。


ムー「君がセリアか?トゥールから情報は入っている」

ムーと呼ばれた魔導師は床に倒れるように座るセリアにユラユラと飛び寄った。

セリア「ツグルが、、、ツグルが。。。」

ムー「ん?ああ、あそこに寝そべっている怪物は君の友達か?」

ムーはそう言うと指を鳴らした。

すると床一面に広がっていた黒い液体は気化し、床が露わになった。

ムーが怪物に向けて手を開くと、怪物の身体から黒い霧が溢れ出した。
霧はムーの手の中へと吸い込まれていく。

徐々に怪物は姿を変え、現れたのはツグルだった。

セリア「え、、、ツグル、、ツグル!!!!」

セリアは中央に横たわるツグルの元へと駆け寄る。
そして抱き抱え、泣いた。

ダイス「どういうことだ?あの怪しい兄ちゃんは何をしたんだ?」

モモ「分からない、でも只者じゃないことは分かる」

その声に反応したムーが空中の格子を見つめる。

ムー「あそこに囚われている者たちを解放しろ」

マキニウムは兵達に指示をし、ダイスとモモは自由を取り戻した。
二人もセリアとツグルの元に駆け寄った。

モモ「本当にツグルだ、、」

ダイス「良かった、、俺、マジで死んだかと」

広い玉座の間に、三人の泣き声が響く。

マキニウムは何だか居心地悪そうに咳払いをした。

ムー「おい、いつまでここにいる気だ?もう君達と彼女は関係ないはずだ。兵達をここから退かせろ。そしててめぇもだ、マキニウム、四天王の雑魚共も」

マキニウムはため息をつき、この部屋から出るよう指示をした。兵達はゾロゾロと入り口から出ていく、四天王の三人と王は転送魔法でどこかへ消えた。

カナメル「、、、、、」

ムー「てめぇもだ、カナメル」

カナメルは小さく返事をして、転がっているレイピアと共に消えた。

広大な玉座の間には五人だけになった。
人がいなくなると、尚のことこの空間が広かったことに気付かされる。

セリア「あ、あの、、ありがとうございます」

セリアは玉座に座るローブの男に向かって頭を下げた。

ムー「僕のコウモリを労ってくれたお礼さ」

モモ「コウモリってもしかして、、」

ダイス「こいつのことか?」

ダイスはポケットにしまっていたコウモリを両手で差し出した。

するとムーは瞬間移動をして、ダイスの目の前に現れた。

ダイス「す、す、す、すんません!!可哀想だったんで、後で治療出来るかもって思って、あの、ポケッ、ポケットにしまっていましたぁぁ!!!」

ダイスは必死にムーに謝る。

ムーのミステリアスな空気は三人に恐怖を与えた。
現に今ここで起こっていた全ての出来事をたった一人で収めてしまった人物だ。

モモ「あの!この子を傷つけたのは私達じゃないんです!」

ムー「分かっている、このコウモリは僕の特殊召喚獣だ。僕はこの子の見た世界を同じように見ることが出来る。だから全てを知っている」

ダイス「そ、そうだったんすか」

ムー「ありがとう、この子を大切にしてくれて」

ダイス「い、いや、そんな感謝される程のことじゃないっすよ」

ムー「でも、同時にてめぇがこの子に浴びせた罵声の数々も知っている」

ムーの高い鼻がライトに照らされ影となっている。
宙に浮いているせいか見下ろされる形となり、ダイスの恐怖心は頂点まで達していた。

ダイス「すんませんでしたぁぁぁぁ!!!」

ムーはじっとダイスを睨んだ後、ツグルのことを凝視して言った。

ムー「調べたいことがある、てめぇら四人はこれから僕と一緒に来てもらう」

ムーは転送魔法を唱え、玉座の間を後にした。




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