神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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始まりの歌声編

第14話 君に許されたいから

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ムーの転送魔法で外へと飛んだ五人は、森の中でこれからのことを話し合っていた。

トゥール「この世界は俺の知っている世界とは違うらしい、きっと皆もそうだろうと思う」

ムー「場所も何もかも知らねぇな。そんな場所で、これからどーする」

リリ「まずは指輪を外さなきゃ、だね」

タクティス「ああ、最優先事項だ。またいつ人を傷つけてしまうか。。。」

トゥール「そうだな、それとリキッドを救う方法も探さなきゃ」

タカ「俺たちも無の空間で自我を失ったことは何度もある。その度に皆で戦って、目覚めさせた」

リリ「そうだよね!じゃあ~リキッドをフルボッコにすれば元に戻るかも!」

ムー「てめぇら何にも分かってねぇな」

タカ「どういうことだ?」

ムー「あの黒い手に捕まってからの魔力の流れは異常だ。自我を失ってるなんてレベルじゃない。
現に俺たちだって、女王に力を与えられるまで目覚めなかっただろ?」

トゥール「てことは、違う方法を探さなきゃいけないってことか。セレスティア様の加護のような、闇を消し去る力が」

ムー「そういうことだ」

トゥール「でももう、セレスティア様はいない。。」

ムー「娘がいる」

リリ「そういえばそんなこと言ってたね!」

タクティス「俺は賛成しかねる。俺たちの都合で娘さんを巻き込みたくない」

ムー「何言ってんだタクティス、僕達は手段を選んでる場合じゃねぇ」

タクティス「だが、また人を危険な目にあわせてしまうかもしれない!!」

ムー「は、見損なったよ」

トゥール「娘さんに助けてもらうかどうかは後回しだ。まずはリリの言う通り、指輪を何とかしなければならない」

ムー「頭悪いのか君達は。女王が指輪の闇を払ったんだぜ?じゃあ娘も同じことが出来る。
リキッドのことも彼女が救えるかもしれない。
この二つは、繋がってるんだ」

タクティス「確信はないだろ」

リリ「でもなーんにも分からない私達は、何一つ確信なんてないもんね」

ムー「その通りだ、推測を確かなものに変えていくしかねぇ」

タクティス「。。。。」

タカ「1つだけ確かなことがある。俺たちは無の神に現状勝てないってことだ」

トゥール「そうだな、あいつも何とかしなきゃ」

タクティス「俺はもう、戦いたくない」

ムー「その図体でよく言うねぇ、戦わないならお前はただのゴリラだぜ」

タクティス「何だっていい、俺はもう罪のない人達を傷つけたくない。この力で、身体で、力無き者達を殺してしまいたくない」

トゥール「その気持ちは分かる。それでも良い。
でも俺は指輪を外すし、リキッドも助けるし、無の神も倒す」

ムー「甘いなトゥールは」

トゥール「タクティス、俺はお前の指輪も外す。だから待っていてくれ、生きていてくれ」

タクティス「トゥール。。。」



リリは空中に何やら映像を映し出し、謎の機械を操作している。


リリ「へぇ、この大陸は3つの国が戦争をしているみたいだね」

トゥール「そんなことも分かるのか?」

リリ「私を誰だと思ってんの?まぁこれも推測に過ぎないけど。三つの国があるってのはほぼ100%間違いないね」

ムー「そうか、んでどーする」

タカ「とにかく情報を集めるしかない」

トゥール「そうだな、効率よく情報を集めるために全員散り散りになった方が良いかもな」

ムー「賛成だ、僕も一人の方が動きやすい」

リリ「ちなみにねぇ、ここから東にある国は魔力が尋常じゃなく高いみたい。北西の国は、、、見たことない兵器を所持してるね」

トゥール「俺はこの辺りを探索することにするよ、セレスティア様のことが何か分かるかもしれない」

ムー「魔力かぁ、そそられるねぇ。僕は東を拠点に情報を仕入れるよ」

リリ「私は北西に行くかな、機械に興味あるしね!!」

タカ「俺は情報を集めながら転々とする。私事だが調べたいこともあるんだ」

ムー「お前は森に帰れよ、タクティス」

タクティス「。。。。」

トゥール「タクティス、お前は誰よりも心優しい。
俺はタクティスの優しいところが好きだ。
だから、これからも優しさを失わずに生きていてほしい」

リリ「そうだね~、まぁ各々元気で!ってことで」

タカ「てことで、俺は少し寝る」

ムー「知ってるか?睡眠は三時間で十分なんだよ、ってもう寝たか」

トゥール「タカは一日の半分は寝てるからな、情報を集められるか不安だ、、」

ムー「僕に任せろ、こいつでビッグニュースを届けてやる」


ムーは召喚魔法を使い、小さなコウモリを召喚した。


ムー「定期的にこいつを飛ばす、こいつの視覚情報は僕と繋がっているんだ。こっちからは文書を送りつける。情報共有ってことだ。まぁ、僕の気が向いたらだけどな」

トゥール「ありがとう、助かる」


ガサガサ!!

茂みから音がする。
きっと小動物か何かだろう。

リリ「あのさぁ、さっきから気付いてて言わなかったんだけどね。実は私達ずっとつけられてたの」

ムー「はぁ?なわけねぇよ。魔力は感じなかった」

リリー「んー、魔力ほとんどないもん。子供だし」

ムー「話を聞かれていたか。殺しとくか」

タクティス「ムー、そのつもりなら俺はお前を止める」

ムー「嘘だよ、ムキになんなって。出てこいよ、小動物」


すると茂みの中から、ポッチャリとした少年が出てきた。
手には剣が握られている。

少年は震えながら剣先をこちらに向けた。

ムー「はぁーあ。魔力の無駄遣いしたくねぇけど、記憶消すか。それなら良いだろ?ゴリラの英雄さん」

タクティス「ああ、仕方ない」

トゥール「待ってくれ、話をしたい」

リリ「話すって、何を」



トゥールは少年に歩み寄る。



少年は震えた声で言い放った。

少年「来るな!!それ以上近づいたら、斬る!!
お前達は、、、父を、、殺した!!」

タクティス「父?」

ムー「とは言われても玉座までの記憶がねぇしな」

リリ「ごめんね~、殺したのかも」


少年は涙を流しながら、叫んだ。


少年「玉座にいたのは!!俺の父だ!!」

トゥール「あの屈強な剣士か」

ムー「殺したのは俺らじゃねぇ、無の神だ」

リリ「んーでも同じようなもんなのかも」

タクティス「すまない。。彼を守ることが出来なかった。。」

ムー「謝るなよ、マジで俺たちが殺ったみてぇじゃん」

トゥール「君は、玉座での出来事を見ていたのか?」

少年「全部、、、、見てた」

タクティス「残酷だ。。」



少年は一歩、一歩とこちらに向かって来る。


ムー「もういいだろ、流石に可哀想だから父さんが殺された光景も全部消してやるわ。今日はもう魔力切れだな、きっと」

トゥール「待ってくれ、君の名前は」

フルネス「、、、フルネス、、、、フルネス・シンゴニュート。ノッチー・シンゴニュート将軍の実の息子だ」

トゥール「そうか、フルネス。本当に申し訳ない」


そう言ってトゥールは土下座をした。


リリ「トゥール、たまにあの謝り方するよね、変な文化~」

ムー「今から記憶消すんだから、んなことしなくて良いよ」

トゥール「フルネス、どうしたら俺は君に許される」

フルネス「、、、死んでもらう」

トゥール「分かった、その剣で、俺を好きにしてくれ」

フルネス「!!!!」


トゥールは刀を地面に置き、手を広げた。


ムー「おい、マジで言ってんのかよ」

リリ「あれ、これマズイんじゃないの?」

タクティス「トゥール、、」


フルネスは剣を握りしめ、駆け出す!


フルネス「、、、覚悟ぉぉぉ!!!!」

ムー「馬鹿野郎が!!!」



フルネスの剣が、トゥールの心臓を貫いたかのように見えた。


リリ「嘘、、、」

だが、フルネスの剣はグニャリとひん曲がっていて、それが貫いたのは心臓の少し上あたりだった。

タクティス「ムー、ありがとう。。。」

ムー「こんな無駄死にする奴がいるか!ボケが」


ムーはギリギリのところで魔法を使い、フルネスの剣を曲げたのだった。


フルネス「どうして、、、」

トゥール「っ、、、何がだ、、」

フルネス「どうして避けなかった」

トゥール「、、、君に、、、許されたかったからだ。。。」


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