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始まりの歌声編

第10話 秘密基地

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蠢く人型の何かはロウソクに照らされながら奇妙に笑った。

モモ「将軍!!!ここにも奴等が!!」

モモは勇敢に立ち向かおうと構えた。

すると蠢く人型の何かは、低いねっとりとした声で言葉を発した。

「おかえり」

フルネス「ただいま」

それにフルネスが返す。

モモ「え?」

ダイス「あぁぁー!!!!俺たちはもう終わりだぁぁぁ、、、あ、、あ、、」

窮地に立たされたせいか酔いが醒めているダイスはパニックに陥っている。

「うるせぇな、マジで食っちまおうか」

人型の何かは面白そうにダイス目掛けてニヤリと笑った。

フルネス「やめろズミ、彼等には今余裕がない」

ズミ「冗談だよ。それより飯、食うか?」

フルネス「いや、話が先だ。トゥールはどうした」

ズミ「昨日の朝に出てから帰ってきてないね」

フルネス「そうか」

ズミ「フルネスこそ、昨日からヘイスレイブとの戦じゃなかったのか?まぁ俺たち以外の人間を招くってこたぁ、察しだが」

何気なく会話する二人を、四人は呆然と見つめていた。

それに気付いたのか、ズミと呼ばれた異形の者はゆっくりとこちらを見て言った。

ズミ「いらっしゃい、まぁ座れよ」

真ん中のテーブルには椅子が八脚用意されてある。

ダイスとモモは指示されるまま、席に着いた。

ズミ「背中の嬢ちゃんはベッドを使いな」

ツグル「ありがとう」

セリアをベッドに寝かせ、席に着いた。

ダイス「あ、あの!!あ、あ、あなたはー、ええとその」

ズミ「俺は人間じゃねぇよ、いや、かつては人間だったのかもなぁ。まぁ、今となってはどーでも良い話だ」

察したようにズミはダイスに語りかけた。

ダイス「そ、そうっすかぁ。。」

これ以上は聞けないと言わんばかりに、ダイスはツグルに目配せする。

ツグル「トゥールはいつ戻る?」

フルネス「お前はトゥールを知っているのか?」

ツグル「昨日の朝にセレスティア様の墓前で会った。セリアがあいつの指輪を破壊したら、王が襲ってきたんだ、そして今日の出来事だ。
何がどうなっている?知っていることを全て教えてくれ」

フルネス「そうか、、指輪を破壊出来たのか。セリア様がやったのか?」

モモ「セリア、様??」

フルネス将軍がセリアを様付けで呼んだことに、モモとダイスは驚く。

フルネス「君たちはセリア様の護衛ではないのか?」

ツグル「知っているのは俺だけだよ。2人は何も知らない」

フルネス「そうか、だがこうなってしまった以上知らないわけにはいかない」

そう言うとフルネスはセリアがセレスティア様の実の娘で、再生の女神の末裔だという話をした。

ダイス「あの~ちょっとよく分かんないんですけど」

モモ「どうして今まで黙ってたの!?」

ツグル「バレたら、セリアは全ての国から狙われる。いや、国からだけじゃなく、金目当てで狙う者もいるかもしれない」

フルネス「君の判断は正しい、感謝する」

ツグル「別に、俺はセリアを守りたいだけだ」

セリアはぐったりとベッドで眠っている。

ダイス「ええと、要するにセリアはマジでヤバイ奴ってこと?」

モモ「要せてないし!!」

ツグル「セリアには、物質を一瞬で復元、治癒する能力があるってことだ。それだけじゃなく、闇の力に対抗する力がある」

ダイス「マジかよ。。。」

。。。。


沈黙を破ったのは刀を腰にかけた男だった。

トゥール「フルネスはいるか!?グレイス王国が大変なことに!!」

トゥールは階段を駆け下り、部屋の中を見渡す。

トゥール「勢揃いだな!」

ズミ「おかえり」

トゥール「ただいま」

そう言うと席に座った。
ズミは棚から何やら怪しげな薬を持ち出し、セリアに近づいた。

ツグルは思わず立ち上がる。

ズミ「そう殺気立つなよ。解熱剤さ、かなり高熱のようだからな」

ズミはヌルっとした低い声で言った。

フルネス「集まったな、話を整理しよう」

フルネスは壁を指でなぞった、するとなぞった部分が光となって壁に浮き出る。

トゥール「昨日、セリアが指輪に触れると、黒く大きな光柱が天高く上がった。そしてリバイバルボイスを使うと指輪が割れた。
その直後、漆黒の騎士が物凄い勢いで襲ってきたんだ」

モモとダイスは分からないながらも真剣に話を聞いているようだった。

フルネスは壁に時系列を書き、出来事を書きこんでいる。

ズミ「トゥールは王と一戦交えたのか?」

トゥール「ああ、だが気付いた時には墓の前で倒れていた。あたりは凍結していた、きっと王は強力な魔法を使える」

ツグル「負けたのか?」

トゥール「多分な、羽織に剣傷があった、おそらく心臓を貫かれたんだろうと思うが、セレスティア様が何らかの方法で助けてくれた、のかもしれない」

フルネス「何も分からないというわけだな」

トゥール「まぁ~そうだな」

フルネス「だが、魔法を使う相当な手練れということだ」

トゥール「そう!!それよりも!!王国で何があった」


フルネスは壁に文字を書きながら説明する。

フルネス「俺は昨日の朝、ヘイスレイブの進行を阻止するためにグレイス領エボルブに赴いた。
だが、朝から兵達全員がやつれた顔をしていて、何かがおかしいとは思っていた。
エボルブへ向かう途中、倒れる者も出てきた。
途中襲ってくる者も出てきて、トゥールの言っていた自我失と同じ現象だと思った。
それで急いで城へ引き返すと、黒い鎧を纏った謎の軍勢がたくさんいた。
ナイトロードを進んでいるうちに微かに指輪に力を感じて、セリア様が近いと感じたんだ」

ツグル「フルネス将軍はどうして自我失??ってやつになっていないんだ?」

フルネス「俺の指輪は他の騎士達とは違う、父ノッチーと同じく、セレスティア様直々に頂いた物だ」

トゥール「おそらく光の加護が宿ってるんだな」

フルネス「だからセリア様のネックレスにも反応した」

ツグル「じゃあ、昨日の朝もしかして」

フルネス「ああ、確信は無かったが、あの時から予感はしていた」

昨日の行進のときフルネス将軍がこちらを見ていた気がしたことを思い出した。

トゥール「というか、どうして突然皆自我を失って、闇に飲まれたんだ?」

フルネス「分からない、だが、騎士達の指輪は黒く光っていた。おそらくどこかにいる無の神が、指輪に力を一気に送り込んだと推測出来る」

トゥール「じゃあ、もしかして、俺も昨日指輪を破壊してもらってなかったら、危なかった感じかな?」

ズミ「そもそも、昨日トゥールが指輪を破壊したから無の神が焦って闇の力を送り込んだんじゃないか?」

フルネス「おそらくな、しかも、十年間闇の力を少しずつ送り込まれているお前は、確実に闇落ちしていただろうな」

トゥール「良かったぁ、、、いや、良くない!!皆が危ない!!」

トゥールが叫ぶと、ベッドにいるセリアが起き上がって言った。

セリア「大丈夫、かもしれないです。闇の力は、グレイス王国から遠ざかるにつれて弱まっています。きっとグレイス領から出ればほとんど闇の力の影響を受けていません」

トゥール「本当か!?」

セリア「はい、私も少しづつ、良くなってきました」

ツグル「そんな顔でよく言うよ。まだ寝てろよ、、、、頼むから」

セリア「う、うん。ごめんね」

セリアは横になり、目を閉じた。

ズミ「全く、、、病人なんだぞ?もう少し言い方があるんじゃないか」

ツグル「あんたには、関係ない」

知らない人にそう言われると、思わず言い方がキツくなるものだ。

セリアの話によると、グレイス城から遠ざかるにつれ闇の力が弱まっているとのことだ。あの時、グレイス城内にて、闇の力に敏感なセリアが参っていたのはそのせいだと思った。

どうやら騎士の指輪に闇の力が送られ、自我失という現象を起こし、人々を襲い始めるらしい。

トゥール達、空から降ってきた六人も一度は闇の力に染まり、グレイス王国を落とした。
セレスティア様の加護により闇の力に対抗出来たが、十年という長い月日を経て、また闇の力に呑まれそうになっていたという。

フルネスは壁を見つめながら黙り込んでいる、トゥールもテーブルの一点を見つめたまま固まってしまった。

長い沈黙。

トントントントントン

台所ではズミが野菜を切り始め、その音だけが響いている。

トゥール「タクティスが、危ないかもしれない」

トゥールがポツリと呟いた。

フルネス「そうか、彼はグレイス領だったな。でもヘイスレイブ寄りだから、望みはあるが」

トゥール「ちょっと見てくる」

トゥールはそう言うと部屋を飛び出した。

フルネス「おい、、、って、ここからじゃ何日かかると思ってるんだ、黒い鎧もいるだろうに」

ズミ「まぁ、あいつは本気になったら止められないタイプだからな。出来る出来ないで物事を考えないんだ」

フルネス「そうだったな。もう夜だし、視界も悪いだろうに」

ズミ「心配なら、行ってきても良いぞ?ガキの面倒は俺が見てやるよ」

フルネス「、、、、、、」

フルネスは一瞬考えたが、大剣を背負って部屋を出た。


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